9 / 16
CASE3:西本圭の場合 一
しおりを挟む
俺の名前は、西本圭(にしもとけい)。職業は、無職。強いて言うなら、俺の職業は…、とある人物のストーカーだ。
もちろん、本当のことを言えばこれは職業でも何でもなく、また褒められたものでもないが、俺はそんなことは気にしない。俺は、そのとある女性に対するストーキング行為に、一般のヤツが仕事にかける熱量以上のものをかけているし、そのことに誇りすら感じてもいる。(まあ、「歪んだプライド」と世間のヤツは思うだろうが。)
ここで、その「とある人物」のことに触れておこう。そいつの名前は、北川美香。彼女は、なかなかのべっぴんさんで、正直、俺は彼女の顔がタイプだ。だから俺は、「ストーキング」という行為を通して彼女と触れ合うことが、とても楽しい。(もちろんそれは一方通行の思いだ。そして、このことは誰にも理解されなくていい。)
特に、俺は彼女が鏡を見ているのを見るのが好きだ。鏡を見ている時の彼女は、本当に幸せそうで、それを見ているこっちまで、幸せのおすそ分けをしてもらえるような、そんな顔をする。
その顔から察するに、どうやら彼女は、自分の美貌が大好きらしい。(これはあくまで俺の「読み」に過ぎないが、十中八九当たっているだろう。)
そんな彼女が、今日は鏡の前で、一人ファッションショーをしている。彼女はこの日、近くのショッピングモールで買い物を楽しみ、そして家に帰って来てから、元々の手持ちの服と、新しく買った服などを合わせて、「ああでもない。こうでもない。」といった表情をしながら、新しいコーディネートを模索していた。
そして、俺はそんな彼女を、とある場所でじっくり見ていた。一応弁解しておくが、俺は決して、いやらしい目で彼女を見てはいない。(まあ、ストーカーの分際で、また「タイプ」だとか何だとか言っておいて、「俺の言うことを信用しろ。」と言う方がおかしな話かもしれないが。)ただ、俺は本当に、彼女をいやらしい目では、見ていないのだ。
だから、今日のように彼女が鏡の前に立つ時も、俺は決して、彼女の下着姿や、裸の姿が見たいのではない。(さらに追加で説明しておくが、彼女は部屋着の上から新しく買った服などを胸の前で合わせていた。と、いうわけで、俺は彼女のランジェリー姿などを見ることができたわけではない。)俺は、ただ純粋に、彼女の生活が、見たいのだ。(「何が純粋だ!」と一般的な感覚を持ったヤツなら言うだろう。しかし、俺は他の同業者、つまり「ストーカー」とは違う、と力説しておきたい。俺は、彼女と交わりたいのではない。ただ純粋に、彼女を「見たい」のだ。)
鏡の前でファッションショーをする彼女は、彼女のナルシスト的な性格も手伝い、とてもいい表情をしていた。
『彼女が幸せなら、俺も幸せだ。』
俺はその顔を見て、彼女の恋人が思うような気持ちを、勝手に持った。(もちろん、この気持ちは彼女には伝わっていない。)
そして、この日の彼女の1日も終わり、彼女が眠りに就いた…その瞬間、
俺の中で、ある思いが芽生えた。それは、
『俺の存在を、彼女に知らしめたい。』
という、ものである。
俺は、比較的大人しめの、ストーカーだ。だから、(自分の中では当然のことであるが)彼女に危害を加えようという気持ちは、全くない。俺はただ単純に、彼女を見られればいい…俺は、そう思っていた。
しかし、それだけでは、彼女に俺の存在を、気づいてもらうことはできない…。俺は、俺にしては珍しく、そんな思いに支配された。(この辺り、俺は他のヤツと同じ、レベルの低い「ストーカー」に成り下がりつつあるのかもしれない。)
しかし、あからさまなことをする気分には、今はなれない。俺の頭の中の理性的な部分(ほんの数パーセントかもしれないが)は、そう告げている。そして、考えに考えた挙げ句…、
俺は、小さな痕跡を残すことにした。
それは、彼女が十分に寝静まった、後のことであった。俺は、彼女に自分の存在を気づかれないように、そうっと、そうっと、行動を起こした。そして…、
彼女の部屋の、置き物の配置を変えた。
他のヤツなら、このことに気づかないかもしれない。しかし、彼女をずっと見てきた俺には、確信があった。
『彼女は、絶対に、部屋に起こった異変に気づく。』
そして彼女は朝起きた後、案の定俺の残した痕跡に気づき、
警察に、その件について相談した。
もちろん、本当のことを言えばこれは職業でも何でもなく、また褒められたものでもないが、俺はそんなことは気にしない。俺は、そのとある女性に対するストーキング行為に、一般のヤツが仕事にかける熱量以上のものをかけているし、そのことに誇りすら感じてもいる。(まあ、「歪んだプライド」と世間のヤツは思うだろうが。)
ここで、その「とある人物」のことに触れておこう。そいつの名前は、北川美香。彼女は、なかなかのべっぴんさんで、正直、俺は彼女の顔がタイプだ。だから俺は、「ストーキング」という行為を通して彼女と触れ合うことが、とても楽しい。(もちろんそれは一方通行の思いだ。そして、このことは誰にも理解されなくていい。)
特に、俺は彼女が鏡を見ているのを見るのが好きだ。鏡を見ている時の彼女は、本当に幸せそうで、それを見ているこっちまで、幸せのおすそ分けをしてもらえるような、そんな顔をする。
その顔から察するに、どうやら彼女は、自分の美貌が大好きらしい。(これはあくまで俺の「読み」に過ぎないが、十中八九当たっているだろう。)
そんな彼女が、今日は鏡の前で、一人ファッションショーをしている。彼女はこの日、近くのショッピングモールで買い物を楽しみ、そして家に帰って来てから、元々の手持ちの服と、新しく買った服などを合わせて、「ああでもない。こうでもない。」といった表情をしながら、新しいコーディネートを模索していた。
そして、俺はそんな彼女を、とある場所でじっくり見ていた。一応弁解しておくが、俺は決して、いやらしい目で彼女を見てはいない。(まあ、ストーカーの分際で、また「タイプ」だとか何だとか言っておいて、「俺の言うことを信用しろ。」と言う方がおかしな話かもしれないが。)ただ、俺は本当に、彼女をいやらしい目では、見ていないのだ。
だから、今日のように彼女が鏡の前に立つ時も、俺は決して、彼女の下着姿や、裸の姿が見たいのではない。(さらに追加で説明しておくが、彼女は部屋着の上から新しく買った服などを胸の前で合わせていた。と、いうわけで、俺は彼女のランジェリー姿などを見ることができたわけではない。)俺は、ただ純粋に、彼女の生活が、見たいのだ。(「何が純粋だ!」と一般的な感覚を持ったヤツなら言うだろう。しかし、俺は他の同業者、つまり「ストーカー」とは違う、と力説しておきたい。俺は、彼女と交わりたいのではない。ただ純粋に、彼女を「見たい」のだ。)
鏡の前でファッションショーをする彼女は、彼女のナルシスト的な性格も手伝い、とてもいい表情をしていた。
『彼女が幸せなら、俺も幸せだ。』
俺はその顔を見て、彼女の恋人が思うような気持ちを、勝手に持った。(もちろん、この気持ちは彼女には伝わっていない。)
そして、この日の彼女の1日も終わり、彼女が眠りに就いた…その瞬間、
俺の中で、ある思いが芽生えた。それは、
『俺の存在を、彼女に知らしめたい。』
という、ものである。
俺は、比較的大人しめの、ストーカーだ。だから、(自分の中では当然のことであるが)彼女に危害を加えようという気持ちは、全くない。俺はただ単純に、彼女を見られればいい…俺は、そう思っていた。
しかし、それだけでは、彼女に俺の存在を、気づいてもらうことはできない…。俺は、俺にしては珍しく、そんな思いに支配された。(この辺り、俺は他のヤツと同じ、レベルの低い「ストーカー」に成り下がりつつあるのかもしれない。)
しかし、あからさまなことをする気分には、今はなれない。俺の頭の中の理性的な部分(ほんの数パーセントかもしれないが)は、そう告げている。そして、考えに考えた挙げ句…、
俺は、小さな痕跡を残すことにした。
それは、彼女が十分に寝静まった、後のことであった。俺は、彼女に自分の存在を気づかれないように、そうっと、そうっと、行動を起こした。そして…、
彼女の部屋の、置き物の配置を変えた。
他のヤツなら、このことに気づかないかもしれない。しかし、彼女をずっと見てきた俺には、確信があった。
『彼女は、絶対に、部屋に起こった異変に気づく。』
そして彼女は朝起きた後、案の定俺の残した痕跡に気づき、
警察に、その件について相談した。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる