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CASE2:南沢由紀の場合 三
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その晩、由紀は夢を見た。その夢の中で、由紀は地元の、スクランブル交差点で信号待ちをしていた。すると、(6月、ということもあり)曇り空から、雨がぽつぽつと降り始めて来た。
『参ったな…。今日は傘、持ってきてない…。
ちゃんと、持って来れば良かったな…。
とりあえず、今日は早く帰ろう…。』
そう思った由紀は、信号が青になった瞬間から、小走りに交差点を渡ろうとした。(その日はたまたまラフな格好で、スニーカーを履いていたので、走る上で支障はなかった。)
しかし、その時の由紀は下を向いて走っており、前方不注意であった。そのため、由紀は前から交差点を渡って来た人に気づかず、由紀とその人は、ぶつかってしまった。そして、ぶつかった拍子に転げようとした由紀の腕を、その人は優しく引っ張り、由紀が転げるのは間一髪で防がれた。そして―、
由紀はその男性の、姿・顔をまじまじと見た。
その男性は背が高かったので、由紀は大きく見上げることとなった。その顔は―、
とても優しそうで、由紀のことを、微笑みながら見つめている。
その男性の様子を見た由紀は、理由もなく、その男性が誰であるか、確信した。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。怪我がなくて、本当に良かったです。」
「それで…、いきなりこんなことを訊いて、申し訳ありませんが、あなたは―、
リョウさんですか?」
「ユキさん、私は―、」
その男性から、男性自身の名前を聞く直前に、由紀は目が覚めた。
『ちょっと、今の、夢?』
由紀は、
『せっかくリョウさんに逢えたと思ったのに…。』
と思ったので、少しがっかりした。(もちろん、たとえ夢でなくてもその男性が「リョウさん」である、という確たる証拠はないが。)
夢から覚め、少し落ち着いた由紀は、とりあえず朝のコーヒーを淹れた。由紀はいつもはコーヒーをブラックで飲むことが多いが、その日はミルク・砂糖がたっぷり入った、甘いコーヒーを飲みたい気分であった。(それは、由紀にとって甘い、甘過ぎる夢を見たせいかもしれない。)
コーヒーを飲みながら、由紀はさっきの夢について、思いを巡らした。
『私、リョウさんの夢を見るなんて、やっぱり、リョウさんのことを意識してるんだな…。
それに、私には確信がある。途中で目が覚めたけど、あれは間違いなく、リョウさんだ。』
そして、由紀はふと、あることを思い出した。
『そういえば、
『誰かが夢に出て来た時は、その誰かは夢を見ている人のことを想っている。』
っていう昔の人の考え方を、聞いたことがある。
と、いうことは、リョウさんも私のことを、想っている?
…想っているのに、何か理由があって、私と逢えない?
だとしたら、その理由は何だろう…?』
由紀は、そんな可能性は低い、ということを頭では理解しながらも、そう思った自分の「感情」を、止められなかった。
『そうだ。私たちは、両想いの可能性だってある。
それが結ばれないのは、何か理由があるんだ!』
そして、由紀は携帯をおもむろに触りだした。すると―、
1件のメッセージが、目に留まった。
それは、由紀が待ち望んでいた―、リョウからのメッセージだ。
由紀ははやる気持ちを抑えて、そのメッセージを開け、読み始めた。
―ユキさんへ
この前は、一方的なメッセージを送ってしまい、申し訳ありません。
改めて言っておきますが、僕は決して、ユキさんのことが、嫌いなわけではありません。
ただ、あの時「逢えない」と言ったのには、理由がありました。―
ここまで読んだ由紀は、
『やっぱり、私の勘は当たっていた!』
と思い、メッセージの続きを読んだ。
―でも、ユキさんの再度のメッセージを見て、「このままではいけない。」と思い、もう1度ユキさんに、メッセージを送ることにしました。
ユキさん。僕も、ユキさんのことが好きです。ユキさんに、惹かれています。だから僕も、自分の気持ちに、正直になります。
今度、お逢いできませんか?
…場所は、○○○で、いかがでしょう?
リョウより。―
『えっ!?○○○?どうしてそんな所で待ち合わせ?』
由紀は、意外な待ち合わせの場所に、少し戸惑った様子である。
『でも、リョウさんは私に逢ってくれるんだ。
だったら場所なんてどこでもいい。私は、
リョウさんに逢いたい。』
由紀は瞬時にそう思い、気持ちを切り替えた。
―リョウが指定した、由紀との待ち合わせ場所、その意外な場所とは―。
『参ったな…。今日は傘、持ってきてない…。
ちゃんと、持って来れば良かったな…。
とりあえず、今日は早く帰ろう…。』
そう思った由紀は、信号が青になった瞬間から、小走りに交差点を渡ろうとした。(その日はたまたまラフな格好で、スニーカーを履いていたので、走る上で支障はなかった。)
しかし、その時の由紀は下を向いて走っており、前方不注意であった。そのため、由紀は前から交差点を渡って来た人に気づかず、由紀とその人は、ぶつかってしまった。そして、ぶつかった拍子に転げようとした由紀の腕を、その人は優しく引っ張り、由紀が転げるのは間一髪で防がれた。そして―、
由紀はその男性の、姿・顔をまじまじと見た。
その男性は背が高かったので、由紀は大きく見上げることとなった。その顔は―、
とても優しそうで、由紀のことを、微笑みながら見つめている。
その男性の様子を見た由紀は、理由もなく、その男性が誰であるか、確信した。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。怪我がなくて、本当に良かったです。」
「それで…、いきなりこんなことを訊いて、申し訳ありませんが、あなたは―、
リョウさんですか?」
「ユキさん、私は―、」
その男性から、男性自身の名前を聞く直前に、由紀は目が覚めた。
『ちょっと、今の、夢?』
由紀は、
『せっかくリョウさんに逢えたと思ったのに…。』
と思ったので、少しがっかりした。(もちろん、たとえ夢でなくてもその男性が「リョウさん」である、という確たる証拠はないが。)
夢から覚め、少し落ち着いた由紀は、とりあえず朝のコーヒーを淹れた。由紀はいつもはコーヒーをブラックで飲むことが多いが、その日はミルク・砂糖がたっぷり入った、甘いコーヒーを飲みたい気分であった。(それは、由紀にとって甘い、甘過ぎる夢を見たせいかもしれない。)
コーヒーを飲みながら、由紀はさっきの夢について、思いを巡らした。
『私、リョウさんの夢を見るなんて、やっぱり、リョウさんのことを意識してるんだな…。
それに、私には確信がある。途中で目が覚めたけど、あれは間違いなく、リョウさんだ。』
そして、由紀はふと、あることを思い出した。
『そういえば、
『誰かが夢に出て来た時は、その誰かは夢を見ている人のことを想っている。』
っていう昔の人の考え方を、聞いたことがある。
と、いうことは、リョウさんも私のことを、想っている?
…想っているのに、何か理由があって、私と逢えない?
だとしたら、その理由は何だろう…?』
由紀は、そんな可能性は低い、ということを頭では理解しながらも、そう思った自分の「感情」を、止められなかった。
『そうだ。私たちは、両想いの可能性だってある。
それが結ばれないのは、何か理由があるんだ!』
そして、由紀は携帯をおもむろに触りだした。すると―、
1件のメッセージが、目に留まった。
それは、由紀が待ち望んでいた―、リョウからのメッセージだ。
由紀ははやる気持ちを抑えて、そのメッセージを開け、読み始めた。
―ユキさんへ
この前は、一方的なメッセージを送ってしまい、申し訳ありません。
改めて言っておきますが、僕は決して、ユキさんのことが、嫌いなわけではありません。
ただ、あの時「逢えない」と言ったのには、理由がありました。―
ここまで読んだ由紀は、
『やっぱり、私の勘は当たっていた!』
と思い、メッセージの続きを読んだ。
―でも、ユキさんの再度のメッセージを見て、「このままではいけない。」と思い、もう1度ユキさんに、メッセージを送ることにしました。
ユキさん。僕も、ユキさんのことが好きです。ユキさんに、惹かれています。だから僕も、自分の気持ちに、正直になります。
今度、お逢いできませんか?
…場所は、○○○で、いかがでしょう?
リョウより。―
『えっ!?○○○?どうしてそんな所で待ち合わせ?』
由紀は、意外な待ち合わせの場所に、少し戸惑った様子である。
『でも、リョウさんは私に逢ってくれるんだ。
だったら場所なんてどこでもいい。私は、
リョウさんに逢いたい。』
由紀は瞬時にそう思い、気持ちを切り替えた。
―リョウが指定した、由紀との待ち合わせ場所、その意外な場所とは―。
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