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初めてなんて……っ、宇佐神さんの嘘吐きぃぃ……ッ!
※宇佐神視点
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「あ、あの……俺、先に寝ます、ね……」
リビングのソファに座り、寝る前のちょっとした時間に後ろからハグをして、愛を確かめ合っていたはずなのに、僕がパジャマの裾から手を入れて素肌に触れると、響くんはビクッと反応して僕から離れていってしまった。
その足が目指すのは僕らの寝室。
――ああ……、また今日も逃げられてしまった。
付き合ってからも2人の触れ合いの時間は変わっていない。ハグ、キス、までは簡単に出来るのにそれ以上を許してくれないのは、どうしてなのだろう?
僕たちはまだキスから先に進めていない。こんなことなら再会のときに無理に我慢しなければ良かった。
「響くん、僕に触られるの嫌?」
ベッドの縁に座って、掛け布団の上から響くんに声を掛ける。
すぐに、布団の下でぶんぶんと彼が首を横に振ってるのが分かった。
「じゃあ、恥ずかしいだけ?」
だから、いまも布団の下に隠れてるの? と布団の上から軽くトントンと叩く。
「……いや、あの、嫌とかじゃなくて……、えっと……宇佐神さんはなんでも上手だから……、きっとエッチなことも上手で……、俺は自分のあられもない姿を見られるのが恥ずかしいんです……」
布団にもぐったままで響くんは白状した。それを聞いて、思わず、ニコニコ顔になってしまう。
「なんて可愛いらしい理由なんだろう? 響くんは僕に期待と心配をしてくれてるんだね? でも、大丈夫、ごめんね、僕、こう見えて初めてだから」
医者に激しい運動を止められていて、いままでそういうことをしてはいけない人生だった。この歳で童貞だなんて恥ずかしいことかもしれないけれど、この初めてを響くんにもらってもらえたなら、すごく幸せだろうなと思う。
「ねえ、響くん、僕の初めてもらってくれる?」
そろりと布団をめくりながら、僕は響くんの顔を覗き込んだ。
「あ、う……、あの、俺も初めてなんです……」
目が合った彼はあわわと唇を震わせながら真っ赤な顔をしていた。
――ああ……、可愛いな、僕の響くん……。
初めての理由が、ずっと三重野くんへの初恋を引きずっていたから、ってことだったら少し嫉妬してしまうけれど。
「じゃあ、一緒に成長していこう?」
「は、はい……」
僕がするりと頬を撫でると響くんは少しだけ緊張を解いた顔をして、そう返事をくれた。でも、乗り気じゃないのは可哀想だな。僕の雰囲気作りが悪いんだね。
いま、「好きだよ、愛してる」なんて言葉を口にしたら、響くんは逆に身を引いてしまうだろうな。彼の性格からすれば、そんなことは容易に予想できる。なら、それじゃあどうするか。
唇や敏感なところへの直接的な刺激は避けて、じっくりゆっくり、キスをして触れていく。
まずは髪。響くんの髪は艶やかな黒で僕の好きな香りがする。
「ん……、宇佐神さ……」
「大丈夫」
優しく声を掛けながら唇は前髪から目元、両手は頬や手へ。それから次は手で触れたところへ口づけていく。手の平とか甲とか指とか。
すると、不思議と、ああ、この手を許しても大丈夫かもしれない、と思ってくる。
「……んっ、ぁ……」
響くんは、いま自分がどんなに甘い声を出してるのか、気付いているのだろうか。
僕は片手で軽く喉に触れて、そこに口づけを数個落としただけだ。まあ、人にとっての急所ってやつは性感帯にもなるっていうからね。首筋とか内ももとか、嚙り付いたら、もっとあられもない声を上げてくれるんだろうな。
ああ、いけない。つい気持ちが急いてしまう。響くんをぐちゃぐちゃにしてやりたい……だなんて、僕の悪い癖だなあ。響くんは大事にしてあげなくちゃ。
「……うさみ、さ……あつい……」
大したことはしてないけれど、響くんはもともと感度が良いんだろうな、とろんとした瞳で僕を見て、どうしたらいいか分からないって顔をしていた。
「ん? うん、手伝ってあげようね」
お揃いの黒いパジャマの前を開けてあげると、響くんの綺麗な胸元があらわになる。
ほんとうに綺麗だ。僕の身体と違って傷一つない。
「上、脱いじゃおうね」
小さい子に言い聞かせるように優しくパジャマの上を脱がして、なにかを言われる前に、響くんの胸の突起に手を伸ばす。
「ぁ……」
僕の手が左の乳首を掠めると響くんの口から小さな声が漏れた。
困ったような、眉間に皺を寄せた顔が可愛い。
「気持ちいい?」
そっと、今度は右の乳首に唇を寄せて、尋ねてみる。
「わかんな……っ」
分かんないと言うわりには唇を噛んで、響くんはなにか、身体の底から湧き上がってくる感覚に堪えているようだった。
――乳首もかたくなってるし、えっちだなぁ、響くん。
響くんのすべてを見ていたら、堪らなくなってしまった。
「んッ、ふ……、んぅ……っ」
乳首を指先で執拗に弄りながら、響くんの唇を貪る。舌を絡めて、上顎をくすぐって……もう考える余裕もないのだろう、彼が僕から逃げることはなかった。
――足、もじもじしちゃって……、可愛いなぁ。
僕の下で、太ももをこすり合わせるように響くんが静かに悶えているのが僕には分かった。
下もすべて脱がして、そこにある熱に触れてあげたら、喜ぶかな?
それとも我に返って僕のもとから逃げてしまう?
そう心配していたら、響くんがキスの合間に
「ん、うさみさ……、さわっ、て……」
僕の右手を取って、下のほうにそろりと持っていった。
――わあ……、可愛い……。まさか、自分から僕の手を取ってくれるなんて……いじめたくなってしまうな。
「にっ……!」
――鳴いた、可愛い。
我慢できなくなって、僕が勢い良く下着ごとパジャマの下を脱がすと響くんは驚いたような顔をして小さく猫みたいに鳴いた。それから
「う、宇佐神しゃ……、俺だけじゃ嫌です……!」
キスでとろけたような顔で、それでも僕の腕を掴んで強く止めた。
――ふーん、少し我に返って、そこは嫌がるんだ?
ふふっと笑ってしまいそうになる。そこをなんとか堪えて、僕は「分かったよ。僕も脱ごうね」と言って、潔くすべてを自分の身から剥ぎ取った。
胸の傷痕を彼に見られるのは、いつぶりだろう?
「ふふっ、気になる?」
チラッと見られただけで、ゾクリとした。笑って僕が尋ねると
「あ、ご、ごめんなさい……」
響くんは申し訳なさそうに目を逸らした。でも、ぜんぜんいいんだ。僕は触ってほしいし、逆に傷跡が性感帯だったりする。
「触ってもいいよ?」
今度は僕の番だ。身を屈めながら響くんの手を取って、自分の胸の真ん中に持っていく。普通の生活ではつかない、大きな傷跡だ。
「あ、う……痛くないですか……?」
僕の傷跡にそろりと指先で触れながら、響くんは心配するように言ってくれたけど、彼が少し怯えているのを見るのもゾクゾクする。怯えた目、震える指先、ゾワゾワして気持ちいい。
もう万全なのは僕の心だけじゃないんだけどな。
「痛くて、こうなる?」
「えっ、あ……」
僕がかたく剃り立ったペニスを響くんのへそのあたりに軽くこすりつけると、響くんは反射的にそちらを見て、見てはいけないものを見てしまったというようにすぐに目をそらした。顔が真っ赤だ。いいや、耳まで。
――ほんと、可愛いなあ、照れちゃってうろたえて……。
「わっ!」
もう逃がす気はなくて、虐める気も満々で、僕は自分の腰と響くんの腰が密着するように彼を抱え上げた。彼の足の間に僕の身体があるから、彼は足を閉じることが出来ない。
「う、宇佐神さ……」
「響くん、こうやって握って」
ついつい、いじめたくなってしまうんだよなあ、僕の加虐心が黙ってくれない。兜合わせにして、握らせれば、お互いのペニスの存在が痛いほど分かるっていうのに、僕ってば、ほんと意地悪だよね。
歪んで上がる口角、と見せかけて優しい笑みで誤魔化し
「一緒に気持ちよくなろうね」
響くんの手を自分の手で覆った。
危ない。ここで響くんを虐め倒してしまったら、2度と僕と触れ合ってくれなくなるかもしれない。響くんは普通の子で繊細なのだから。
「ん、ぁ……っ」
僕が手を動かす度に響くんの口から甘い声が漏れる。
とろんとした瞳がどうしたらいいか分からないみたいに僕を見つめてて、またキスをしたくなった。
「気持ち、いいね」
「ぁ、い、きもち……っ、ん」
響くんの瞳を見つめ返して、可愛らしい返事を聞いて、その唇を自らの唇で塞いだ。
「んぅ、ん、ふっ、ぁ」
ついばむようなキスから舌を絡めるような深いキスにして、お互いのペニスを少し乱暴に扱くとぐちゅぐちゅと厭らしい水音が聞こえてくる。先端から漏れ出した液体が混ざり合って、もう二人の境がなくなりそうだった。
――熱い……。
「ぁ、ンっ……はあ、うさみさ……俺……っ、もう……」
「ん、いいよ……、一緒にイこう?」
「ぁ、ああ――ッ……!」
「……っ!」
僕と響くんが果てるのはほとんど同時だった。ビクビクンッと腰を震わせて熱を吐き出す響くんが敏感過ぎて、本当に可愛い。
好きな人とするえっちなことって、身体だけじゃなくて心も気持ちいいんだなと思った。まだどきどきしてる。
「はぁ……」
乱れた呼吸をお互いに整えていたら、いつの間にか目をつむっていた響くんと視線が合って、彼がまたカァッと赤くなった。
なにをしても照れてゆでだこみたいになってて可愛い。
「上手にイけたね、響くん」
「あ……」
響くんの目元にちゅっとキスをして、彼の身体をベッドに横たえる。
「こんなところまで垂れてる」
「ぅ、あ……っ!」
もう逃がす気はないから、響くんが恥ずかしがることも堂々と口にして、彼の後ろに触れるとヒクッとそこが反応した。本当に敏感なんだな、と思う。
「ちょっとごめんね」
響くんの両足を拡げるように持ち上げると、彼の秘部がぬらりと光って見えた。
「あの……」
不安そうな瞳と視線が合致する。
「大丈夫、僕、初めてだから」
響くんが心配し続けているのはずっとそこだろうと思って、再度言っておいた。自分があられもない姿になることを恐れてるなんて……ほんと、可愛いなあ。
「ゆっくりね」
髪をするりと撫でて、用意しておいたローションを取り出す。精液で濡れているといっても、初めてだから、これは使わないと響くんに怪我をさせてしまうからね。
「ん……っ」
「あれ……?」
たっぷりとローションで濡らして、十分にぬめりを持った中指を響くんの中に挿入して気付く。おかしい、初めてにしてはすんなりと僕の指が埋まっていく。
「響くん、ここ使ったことあるの?」
思わず、ピタリと動きが止まった。
「じ、じぶんで……いや、でも、あんまり気持ちよくなくて……」
焦りと照れと不安が入り交じったような声と反応で響くんが答える。
「よかった」
「よか、よかった……?」
響くんは僕の言葉に戸惑ってるけど、正直、ほっとした。初めてと言っていたのが嘘かもしれないと思ったときの絶望感と響くんに触れた誰かへのふつふつと湧き上がる苛立ちと、でどうにかなってしまうところだった。
それにしても響くん、自分のアナルに興味があるなんて、意外だったな。君もちゃんと男の子なんだね。性に貪欲だなんて。
「動かすね」
「ん……っ」
指を増やして、響くんの弱いところを探る。狭くて熱い内壁が僕の指に吸い付いてくるのがひどくいやらしい。
「宇佐神さん、なんか、ヘン……」
「痛い?」
「ちがっ、ちがくて……あ、んっ」
腹側を探って、ぐちぐちと二本の指を動かすと響くんの口から可愛い声が出た。
――あれあれ? 気持ちよくないんじゃなかったっけ?
思わずニヤリと笑いたくなって、また堪える。その代わりに腕を伸ばした状態で響くんの耳元に唇を寄せて
「えっちな音してるね」
「やっ……」
少し意地悪な囁きをプレゼントした。響くんは切なそうな顔をしたけど、僕は手を止める気はない。
「宇佐神さ……、ダメ……ッ」
耳朶を噛みながら内壁の膨らみを激しく指で刺激すると響くんは僕の腕を震える指で掴んできた。
「大丈夫だよ」
未知の感覚が怖いのかな? と思って優しく声を掛ける。でも、そういうことじゃなかったみたいで
「ちが……、だって、こんな……ぁっ……自分で触ったときは、こんな、気持ちよくなかった……のに……んぁっ!」
涙目でかぶりを振りながら響くんはビクッと身体を震わせて軽くイったみたいだった。
「甘イキしちゃった?」
「う、宇佐神さんがぁ……っ」
「うんうん、ビックリしちゃったね、泣かないで」
甘えるように泣きついてくる響くんの頬を撫でて、数個キスを落とす。
嬉しいなぁ、響くんがこうなってるのが僕の所為っていうのが、堪らなく愛しい。もっと、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。
「もうここでやめておく?」
これはぜんぜん本意じゃないって言ったら嫌悪されるかもだけど、一応、響くんの顔を覗き込んで意思を確認する。でも、響くんが、え、という顔をしたのを僕は見逃さなかった。
――へぇ、嫌がらないんだ? めずらしい。愛を感じるなあ。
「ごめん、杞憂だったね」
「宇佐神さ……?」
ニコニコ顔が止まらない。そんな僕に優しく押し倒された響くんは涙目で戸惑っていて、すごく可愛い。もう止まってあげられない。いいや、あげない……。
「うさ……はっ、あっ――!」
「挿入れただけで、また甘イキしちゃったの?」
本当に響くんは感度がいい。まだ半分くらいしか腰を進めていないのに、中がキュンキュン締まって、彼が甘イキしたことが分かった。
――響くんのナカ、熱いなぁ……。生物の身体って感じがする。
「う、宇佐神さん、初めてって……」
「うん、初めてだよ?」
涙を溜めた瞳が戸惑いから少しずつ怯えに表情を変えていく。だから、僕はニコニコのままで響くんのお腹をツツっと指でなぞった。
「宇佐神さんの嘘つきぃぃ……ッ」
「嘘じゃないよ」
――君で何万回も想像したけど。
「ひゅっ」
おっと、笑顔を浮かべていたはずなのに、響くんは僕の心の中に気付いたらしい。声にならない悲鳴みたいなのが出た。
僕がどれだけ君で妄想してきたと思う? 足腰立たなくなるまで、突いて、イかせて、ぐずぐずのとろとろにして、ぐちゃぐちゃに、って、ずっと頭の中で決めてたんだ。
僕の脳内でイメージされる響くんは毎回100%乱れてた。
試してみたいこともたくさんある。
「ねえ、響くん、知ってる? 一回中で甘イキしちゃうと癖になっちゃうんだって」
スルスルと響くんのお腹をさすりながら、僕は彼の内ももにキスをした。
――慣れたら外から押しても中でイけるようになるとか……。
きっと響くんはもう戻れないだろうなあ。だって、もう癖のスイッチ、中から押しちゃったもの。
「ぁ……っ、ダメッ! イっ、イってるから……!」
ペニスの先端で響くんの前立腺を抉るように何度も責めると響くんは頭を振りながら、ガクガクと足を震わせて身悶える。甘イキというより、もう何回も中でイってて、ペニスからも先走りが止まらない。
でも、僕もやっぱり意地悪だよね、響くんがどこまでイけるのか見てみたい。
「こらこら逃げちゃダメだよ」
イってるところに腰を打ちつけると響くんは何回でも中でイく。それをしてたら、無意識なのか、人間の危機的本能なのか、響くんがうつ伏せで逃げようとするから、僕は彼の両手首を上から押さえつけて、阻止した。それだけで、ひどく気分が高揚する。
「イッてる?」
「んんっ」
絶対、中でイッてるのにシーツを両手で握りながらぶんぶんと首を横に振る響くん。きゅうっと締め付ける感覚で分かるのに、へえ、響くんは僕にイッてるって言わなきゃイッてる最中にガツガツされないと思ってるんだ? はぁ……、僕の最愛の人は可愛いなぁ。
溜息が出てしまうくらい可愛いと思うなんて、なかなかないことだろう。
「あぁ、奥、開いてきたね。どうしようか」
トントンと奥を何度もノックしていたからか、閉ざされていた響くんの中が少しずつ開いてきたのが分かった。僕のだったら、まだまだ奥も責められるけど、響くんも初めてだからなあ……。
「ダメ、おくっ、ダメダメダメッ」
逃れられない僕の下でぐちゃぐちゃな顔して響くんが首を左右に振る。そんなにダメダメ言われると余計にいじめたくなるんだけど、さすがに可哀想かな。でも、意地悪もしたくなる。響くんが可愛いから。
「奥、挿入っちゃいそうだね……」
挿入れる気はないけど、わざと意地悪してぐぐっと奥にペニスを押しつける。すると
「だ、め、はいっちゃう……!」
本気で挿入ってしまうと思ったのか、響くんは衝撃と怯えた目で僕のことを見た。
挿入らないんだな、これが……。
思わず口角が上がりそうになる。ゾクゾクする。僕は響くんが怯えているのを見るのがこんなにも楽しくて嬉しいけど、響くんにはさすがにもう嫌われてしまうかも。そろそろ甘やかしてあげようかな。
「響くん、意地悪してごめんね、こっち向いて」
そっと響くんの両手を解放して、身体を自分のほうに引っ張り上げる。
「んっ……」
挿入したまま向き合うように抱っこすると、ピクッと反応して響くんは泣きそうな目で僕を見ていた。響くんの手首、僕が強く掴んでたから僕の手の痕がついてる。
「文句、言ってもいいんだよ?」
彼の涙目を見つめながら僕はいつもの笑顔を顔に貼り付けた。
たぶん、文句を言われても僕の性格を変えてあげることは出来ないけど。
「……好き、です、宇佐神さん……」
僕の首に響くんの両腕が回ったと思ったら、ぐっと引き寄せられて、軽く唇にキスをされた。
――ああ、本当に、君って子は……。
「は……ははっ……」
素で笑ってしまった。こんなときに笑うなんて、って響くんには怒られてしまうかもだけど、文句を言われると思ってたら、まさか好きだと言ってキスまでしてくれるとは。
「宇佐神さん……?」
「いや、笑ってごめん、意外だったから拍子抜けしちゃって。僕も響くんのこと大好きだよ」
いつもの笑い方を忘れそうになって、でも、なんとか持ち直して、僕は眉間に皺を寄せそうになっていた響くんにキスを返した。僕のは触れるだけのキスじゃないけど。
「んぅ……っ」
舌を絡めれば、響くんはすぐにとろけた顔になる。
「はぁ……、えっちだね、すごく可愛い」
「うさみさ……っ、ぁ」
とろんとした瞳とか、ピンク色に上気した肌とか、自分の体液でべたべたになった身体とか、甘い声とか、響くんの全部に堪らなくなって、耳とか首筋、胸にキスを落とす。
「前もちゃんと触ってあげようね」
「ぁう、ぁ、あ……ッ」
響くんのペニスをぐりぐりと扱くとそれに反応するように中が締まって気持ちがいい。求められてるみたいで嬉しくなる。
「うしゃみさん……ぁっ、も……」
ぐちゃぐちゃといういやらしい音を立てながら、響くんの腰を揺すると彼は堪らなそうに目を細めた。
「響くん……っ、好き、愛してる」
「うしゃみしゃ……好……き……ぁ、っ」
一緒に果てるとき、僕はぎゅっと響くんを抱きしめた。聞こえていた激しい心臓の音は僕のものなのか、響くんのものなのか……。
これじゃあ肉体的にも絶対離してあげられないじゃないか。
◆ ◆ ◆
「どうしたの?」
少し温めのお湯を張った浴槽で響くんを前にして二人で入っていて、僕は心配になり、ついに尋ねた。冷静になって、やっぱり怒っているのか、恥ずかしがってるだけなのか、響くんが、ぜんぜん話してくれない。
「僕とのセックス、気持ちよくなかった?」
「いや、ちがっ、死ぬほど気持ちよかったですけど、その……」
僕の質問に思わず返してしまった、みたいな反応が可愛いけど、そのあとの言葉が出てこない。しゅんっと背中が小さくなる。
「なに? 言ってごらん」
響くんの背中を見つめて、僕は文句を言われる覚悟だった。なのに響くんったら
「お、俺、初めてなのに……み、乱れすぎ、じゃなかったですか……? 恥ずかしいです!」
一人で首まで真っ赤になって、両手で顔を覆うからバシャッとお湯が飛んだ。なにをそんなに照れることがあるのだろう。
「なにも恥ずかしいことないよ。僕は嬉しいよ? 君がちゃんと”初めての”僕で気持ちよくなってくれて」
「……ぅう……」
こんな励まし方で合ってるのだろうか、という感じで響くんのことを後ろから抱きしめるけれど、彼は唸るばかりである。
「でもさ」
「はい?」
気になってることがあって、僕がそこまで口にしてみると響くんの唸りが止まった。まあ、両手はまだ顔を隠してるけれど。
「もう宇佐神さんとはしたくない、とか言わないんだ?」
顔を隠したままの響くんに流し目を向けながら僕は彼の耳元で言った。
快楽っていう魔法から解けたら僕は嫌われると思ってた。だから、それが気になった。嫌われなくても恥ずかしがって、もうしてくれないかと……。
「それは……」
「ん?」
そろりと響くんの両手が彼の顔から離れていく。
「宇佐神さんの本当の顔が見れるから……」
「へぇ」
横目でやっと視線が合ったと思ったら、可愛いこと言うじゃないか、僕の響くん。セックスしてるとき、僕ってどんな顔してるんだろう? 今度、鏡の前で響くんのこと犯してみようかな。
チラッとお風呂場の鏡に視線を向けて、僕は響くんの首筋にキスをした。
「なんですか?」
「んー? 内緒」
ビクッと真っ赤になって文句言いたそうな顔に僕はいつもの笑顔を向けた。
リビングのソファに座り、寝る前のちょっとした時間に後ろからハグをして、愛を確かめ合っていたはずなのに、僕がパジャマの裾から手を入れて素肌に触れると、響くんはビクッと反応して僕から離れていってしまった。
その足が目指すのは僕らの寝室。
――ああ……、また今日も逃げられてしまった。
付き合ってからも2人の触れ合いの時間は変わっていない。ハグ、キス、までは簡単に出来るのにそれ以上を許してくれないのは、どうしてなのだろう?
僕たちはまだキスから先に進めていない。こんなことなら再会のときに無理に我慢しなければ良かった。
「響くん、僕に触られるの嫌?」
ベッドの縁に座って、掛け布団の上から響くんに声を掛ける。
すぐに、布団の下でぶんぶんと彼が首を横に振ってるのが分かった。
「じゃあ、恥ずかしいだけ?」
だから、いまも布団の下に隠れてるの? と布団の上から軽くトントンと叩く。
「……いや、あの、嫌とかじゃなくて……、えっと……宇佐神さんはなんでも上手だから……、きっとエッチなことも上手で……、俺は自分のあられもない姿を見られるのが恥ずかしいんです……」
布団にもぐったままで響くんは白状した。それを聞いて、思わず、ニコニコ顔になってしまう。
「なんて可愛いらしい理由なんだろう? 響くんは僕に期待と心配をしてくれてるんだね? でも、大丈夫、ごめんね、僕、こう見えて初めてだから」
医者に激しい運動を止められていて、いままでそういうことをしてはいけない人生だった。この歳で童貞だなんて恥ずかしいことかもしれないけれど、この初めてを響くんにもらってもらえたなら、すごく幸せだろうなと思う。
「ねえ、響くん、僕の初めてもらってくれる?」
そろりと布団をめくりながら、僕は響くんの顔を覗き込んだ。
「あ、う……、あの、俺も初めてなんです……」
目が合った彼はあわわと唇を震わせながら真っ赤な顔をしていた。
――ああ……、可愛いな、僕の響くん……。
初めての理由が、ずっと三重野くんへの初恋を引きずっていたから、ってことだったら少し嫉妬してしまうけれど。
「じゃあ、一緒に成長していこう?」
「は、はい……」
僕がするりと頬を撫でると響くんは少しだけ緊張を解いた顔をして、そう返事をくれた。でも、乗り気じゃないのは可哀想だな。僕の雰囲気作りが悪いんだね。
いま、「好きだよ、愛してる」なんて言葉を口にしたら、響くんは逆に身を引いてしまうだろうな。彼の性格からすれば、そんなことは容易に予想できる。なら、それじゃあどうするか。
唇や敏感なところへの直接的な刺激は避けて、じっくりゆっくり、キスをして触れていく。
まずは髪。響くんの髪は艶やかな黒で僕の好きな香りがする。
「ん……、宇佐神さ……」
「大丈夫」
優しく声を掛けながら唇は前髪から目元、両手は頬や手へ。それから次は手で触れたところへ口づけていく。手の平とか甲とか指とか。
すると、不思議と、ああ、この手を許しても大丈夫かもしれない、と思ってくる。
「……んっ、ぁ……」
響くんは、いま自分がどんなに甘い声を出してるのか、気付いているのだろうか。
僕は片手で軽く喉に触れて、そこに口づけを数個落としただけだ。まあ、人にとっての急所ってやつは性感帯にもなるっていうからね。首筋とか内ももとか、嚙り付いたら、もっとあられもない声を上げてくれるんだろうな。
ああ、いけない。つい気持ちが急いてしまう。響くんをぐちゃぐちゃにしてやりたい……だなんて、僕の悪い癖だなあ。響くんは大事にしてあげなくちゃ。
「……うさみ、さ……あつい……」
大したことはしてないけれど、響くんはもともと感度が良いんだろうな、とろんとした瞳で僕を見て、どうしたらいいか分からないって顔をしていた。
「ん? うん、手伝ってあげようね」
お揃いの黒いパジャマの前を開けてあげると、響くんの綺麗な胸元があらわになる。
ほんとうに綺麗だ。僕の身体と違って傷一つない。
「上、脱いじゃおうね」
小さい子に言い聞かせるように優しくパジャマの上を脱がして、なにかを言われる前に、響くんの胸の突起に手を伸ばす。
「ぁ……」
僕の手が左の乳首を掠めると響くんの口から小さな声が漏れた。
困ったような、眉間に皺を寄せた顔が可愛い。
「気持ちいい?」
そっと、今度は右の乳首に唇を寄せて、尋ねてみる。
「わかんな……っ」
分かんないと言うわりには唇を噛んで、響くんはなにか、身体の底から湧き上がってくる感覚に堪えているようだった。
――乳首もかたくなってるし、えっちだなぁ、響くん。
響くんのすべてを見ていたら、堪らなくなってしまった。
「んッ、ふ……、んぅ……っ」
乳首を指先で執拗に弄りながら、響くんの唇を貪る。舌を絡めて、上顎をくすぐって……もう考える余裕もないのだろう、彼が僕から逃げることはなかった。
――足、もじもじしちゃって……、可愛いなぁ。
僕の下で、太ももをこすり合わせるように響くんが静かに悶えているのが僕には分かった。
下もすべて脱がして、そこにある熱に触れてあげたら、喜ぶかな?
それとも我に返って僕のもとから逃げてしまう?
そう心配していたら、響くんがキスの合間に
「ん、うさみさ……、さわっ、て……」
僕の右手を取って、下のほうにそろりと持っていった。
――わあ……、可愛い……。まさか、自分から僕の手を取ってくれるなんて……いじめたくなってしまうな。
「にっ……!」
――鳴いた、可愛い。
我慢できなくなって、僕が勢い良く下着ごとパジャマの下を脱がすと響くんは驚いたような顔をして小さく猫みたいに鳴いた。それから
「う、宇佐神しゃ……、俺だけじゃ嫌です……!」
キスでとろけたような顔で、それでも僕の腕を掴んで強く止めた。
――ふーん、少し我に返って、そこは嫌がるんだ?
ふふっと笑ってしまいそうになる。そこをなんとか堪えて、僕は「分かったよ。僕も脱ごうね」と言って、潔くすべてを自分の身から剥ぎ取った。
胸の傷痕を彼に見られるのは、いつぶりだろう?
「ふふっ、気になる?」
チラッと見られただけで、ゾクリとした。笑って僕が尋ねると
「あ、ご、ごめんなさい……」
響くんは申し訳なさそうに目を逸らした。でも、ぜんぜんいいんだ。僕は触ってほしいし、逆に傷跡が性感帯だったりする。
「触ってもいいよ?」
今度は僕の番だ。身を屈めながら響くんの手を取って、自分の胸の真ん中に持っていく。普通の生活ではつかない、大きな傷跡だ。
「あ、う……痛くないですか……?」
僕の傷跡にそろりと指先で触れながら、響くんは心配するように言ってくれたけど、彼が少し怯えているのを見るのもゾクゾクする。怯えた目、震える指先、ゾワゾワして気持ちいい。
もう万全なのは僕の心だけじゃないんだけどな。
「痛くて、こうなる?」
「えっ、あ……」
僕がかたく剃り立ったペニスを響くんのへそのあたりに軽くこすりつけると、響くんは反射的にそちらを見て、見てはいけないものを見てしまったというようにすぐに目をそらした。顔が真っ赤だ。いいや、耳まで。
――ほんと、可愛いなあ、照れちゃってうろたえて……。
「わっ!」
もう逃がす気はなくて、虐める気も満々で、僕は自分の腰と響くんの腰が密着するように彼を抱え上げた。彼の足の間に僕の身体があるから、彼は足を閉じることが出来ない。
「う、宇佐神さ……」
「響くん、こうやって握って」
ついつい、いじめたくなってしまうんだよなあ、僕の加虐心が黙ってくれない。兜合わせにして、握らせれば、お互いのペニスの存在が痛いほど分かるっていうのに、僕ってば、ほんと意地悪だよね。
歪んで上がる口角、と見せかけて優しい笑みで誤魔化し
「一緒に気持ちよくなろうね」
響くんの手を自分の手で覆った。
危ない。ここで響くんを虐め倒してしまったら、2度と僕と触れ合ってくれなくなるかもしれない。響くんは普通の子で繊細なのだから。
「ん、ぁ……っ」
僕が手を動かす度に響くんの口から甘い声が漏れる。
とろんとした瞳がどうしたらいいか分からないみたいに僕を見つめてて、またキスをしたくなった。
「気持ち、いいね」
「ぁ、い、きもち……っ、ん」
響くんの瞳を見つめ返して、可愛らしい返事を聞いて、その唇を自らの唇で塞いだ。
「んぅ、ん、ふっ、ぁ」
ついばむようなキスから舌を絡めるような深いキスにして、お互いのペニスを少し乱暴に扱くとぐちゅぐちゅと厭らしい水音が聞こえてくる。先端から漏れ出した液体が混ざり合って、もう二人の境がなくなりそうだった。
――熱い……。
「ぁ、ンっ……はあ、うさみさ……俺……っ、もう……」
「ん、いいよ……、一緒にイこう?」
「ぁ、ああ――ッ……!」
「……っ!」
僕と響くんが果てるのはほとんど同時だった。ビクビクンッと腰を震わせて熱を吐き出す響くんが敏感過ぎて、本当に可愛い。
好きな人とするえっちなことって、身体だけじゃなくて心も気持ちいいんだなと思った。まだどきどきしてる。
「はぁ……」
乱れた呼吸をお互いに整えていたら、いつの間にか目をつむっていた響くんと視線が合って、彼がまたカァッと赤くなった。
なにをしても照れてゆでだこみたいになってて可愛い。
「上手にイけたね、響くん」
「あ……」
響くんの目元にちゅっとキスをして、彼の身体をベッドに横たえる。
「こんなところまで垂れてる」
「ぅ、あ……っ!」
もう逃がす気はないから、響くんが恥ずかしがることも堂々と口にして、彼の後ろに触れるとヒクッとそこが反応した。本当に敏感なんだな、と思う。
「ちょっとごめんね」
響くんの両足を拡げるように持ち上げると、彼の秘部がぬらりと光って見えた。
「あの……」
不安そうな瞳と視線が合致する。
「大丈夫、僕、初めてだから」
響くんが心配し続けているのはずっとそこだろうと思って、再度言っておいた。自分があられもない姿になることを恐れてるなんて……ほんと、可愛いなあ。
「ゆっくりね」
髪をするりと撫でて、用意しておいたローションを取り出す。精液で濡れているといっても、初めてだから、これは使わないと響くんに怪我をさせてしまうからね。
「ん……っ」
「あれ……?」
たっぷりとローションで濡らして、十分にぬめりを持った中指を響くんの中に挿入して気付く。おかしい、初めてにしてはすんなりと僕の指が埋まっていく。
「響くん、ここ使ったことあるの?」
思わず、ピタリと動きが止まった。
「じ、じぶんで……いや、でも、あんまり気持ちよくなくて……」
焦りと照れと不安が入り交じったような声と反応で響くんが答える。
「よかった」
「よか、よかった……?」
響くんは僕の言葉に戸惑ってるけど、正直、ほっとした。初めてと言っていたのが嘘かもしれないと思ったときの絶望感と響くんに触れた誰かへのふつふつと湧き上がる苛立ちと、でどうにかなってしまうところだった。
それにしても響くん、自分のアナルに興味があるなんて、意外だったな。君もちゃんと男の子なんだね。性に貪欲だなんて。
「動かすね」
「ん……っ」
指を増やして、響くんの弱いところを探る。狭くて熱い内壁が僕の指に吸い付いてくるのがひどくいやらしい。
「宇佐神さん、なんか、ヘン……」
「痛い?」
「ちがっ、ちがくて……あ、んっ」
腹側を探って、ぐちぐちと二本の指を動かすと響くんの口から可愛い声が出た。
――あれあれ? 気持ちよくないんじゃなかったっけ?
思わずニヤリと笑いたくなって、また堪える。その代わりに腕を伸ばした状態で響くんの耳元に唇を寄せて
「えっちな音してるね」
「やっ……」
少し意地悪な囁きをプレゼントした。響くんは切なそうな顔をしたけど、僕は手を止める気はない。
「宇佐神さ……、ダメ……ッ」
耳朶を噛みながら内壁の膨らみを激しく指で刺激すると響くんは僕の腕を震える指で掴んできた。
「大丈夫だよ」
未知の感覚が怖いのかな? と思って優しく声を掛ける。でも、そういうことじゃなかったみたいで
「ちが……、だって、こんな……ぁっ……自分で触ったときは、こんな、気持ちよくなかった……のに……んぁっ!」
涙目でかぶりを振りながら響くんはビクッと身体を震わせて軽くイったみたいだった。
「甘イキしちゃった?」
「う、宇佐神さんがぁ……っ」
「うんうん、ビックリしちゃったね、泣かないで」
甘えるように泣きついてくる響くんの頬を撫でて、数個キスを落とす。
嬉しいなぁ、響くんがこうなってるのが僕の所為っていうのが、堪らなく愛しい。もっと、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。
「もうここでやめておく?」
これはぜんぜん本意じゃないって言ったら嫌悪されるかもだけど、一応、響くんの顔を覗き込んで意思を確認する。でも、響くんが、え、という顔をしたのを僕は見逃さなかった。
――へぇ、嫌がらないんだ? めずらしい。愛を感じるなあ。
「ごめん、杞憂だったね」
「宇佐神さ……?」
ニコニコ顔が止まらない。そんな僕に優しく押し倒された響くんは涙目で戸惑っていて、すごく可愛い。もう止まってあげられない。いいや、あげない……。
「うさ……はっ、あっ――!」
「挿入れただけで、また甘イキしちゃったの?」
本当に響くんは感度がいい。まだ半分くらいしか腰を進めていないのに、中がキュンキュン締まって、彼が甘イキしたことが分かった。
――響くんのナカ、熱いなぁ……。生物の身体って感じがする。
「う、宇佐神さん、初めてって……」
「うん、初めてだよ?」
涙を溜めた瞳が戸惑いから少しずつ怯えに表情を変えていく。だから、僕はニコニコのままで響くんのお腹をツツっと指でなぞった。
「宇佐神さんの嘘つきぃぃ……ッ」
「嘘じゃないよ」
――君で何万回も想像したけど。
「ひゅっ」
おっと、笑顔を浮かべていたはずなのに、響くんは僕の心の中に気付いたらしい。声にならない悲鳴みたいなのが出た。
僕がどれだけ君で妄想してきたと思う? 足腰立たなくなるまで、突いて、イかせて、ぐずぐずのとろとろにして、ぐちゃぐちゃに、って、ずっと頭の中で決めてたんだ。
僕の脳内でイメージされる響くんは毎回100%乱れてた。
試してみたいこともたくさんある。
「ねえ、響くん、知ってる? 一回中で甘イキしちゃうと癖になっちゃうんだって」
スルスルと響くんのお腹をさすりながら、僕は彼の内ももにキスをした。
――慣れたら外から押しても中でイけるようになるとか……。
きっと響くんはもう戻れないだろうなあ。だって、もう癖のスイッチ、中から押しちゃったもの。
「ぁ……っ、ダメッ! イっ、イってるから……!」
ペニスの先端で響くんの前立腺を抉るように何度も責めると響くんは頭を振りながら、ガクガクと足を震わせて身悶える。甘イキというより、もう何回も中でイってて、ペニスからも先走りが止まらない。
でも、僕もやっぱり意地悪だよね、響くんがどこまでイけるのか見てみたい。
「こらこら逃げちゃダメだよ」
イってるところに腰を打ちつけると響くんは何回でも中でイく。それをしてたら、無意識なのか、人間の危機的本能なのか、響くんがうつ伏せで逃げようとするから、僕は彼の両手首を上から押さえつけて、阻止した。それだけで、ひどく気分が高揚する。
「イッてる?」
「んんっ」
絶対、中でイッてるのにシーツを両手で握りながらぶんぶんと首を横に振る響くん。きゅうっと締め付ける感覚で分かるのに、へえ、響くんは僕にイッてるって言わなきゃイッてる最中にガツガツされないと思ってるんだ? はぁ……、僕の最愛の人は可愛いなぁ。
溜息が出てしまうくらい可愛いと思うなんて、なかなかないことだろう。
「あぁ、奥、開いてきたね。どうしようか」
トントンと奥を何度もノックしていたからか、閉ざされていた響くんの中が少しずつ開いてきたのが分かった。僕のだったら、まだまだ奥も責められるけど、響くんも初めてだからなあ……。
「ダメ、おくっ、ダメダメダメッ」
逃れられない僕の下でぐちゃぐちゃな顔して響くんが首を左右に振る。そんなにダメダメ言われると余計にいじめたくなるんだけど、さすがに可哀想かな。でも、意地悪もしたくなる。響くんが可愛いから。
「奥、挿入っちゃいそうだね……」
挿入れる気はないけど、わざと意地悪してぐぐっと奥にペニスを押しつける。すると
「だ、め、はいっちゃう……!」
本気で挿入ってしまうと思ったのか、響くんは衝撃と怯えた目で僕のことを見た。
挿入らないんだな、これが……。
思わず口角が上がりそうになる。ゾクゾクする。僕は響くんが怯えているのを見るのがこんなにも楽しくて嬉しいけど、響くんにはさすがにもう嫌われてしまうかも。そろそろ甘やかしてあげようかな。
「響くん、意地悪してごめんね、こっち向いて」
そっと響くんの両手を解放して、身体を自分のほうに引っ張り上げる。
「んっ……」
挿入したまま向き合うように抱っこすると、ピクッと反応して響くんは泣きそうな目で僕を見ていた。響くんの手首、僕が強く掴んでたから僕の手の痕がついてる。
「文句、言ってもいいんだよ?」
彼の涙目を見つめながら僕はいつもの笑顔を顔に貼り付けた。
たぶん、文句を言われても僕の性格を変えてあげることは出来ないけど。
「……好き、です、宇佐神さん……」
僕の首に響くんの両腕が回ったと思ったら、ぐっと引き寄せられて、軽く唇にキスをされた。
――ああ、本当に、君って子は……。
「は……ははっ……」
素で笑ってしまった。こんなときに笑うなんて、って響くんには怒られてしまうかもだけど、文句を言われると思ってたら、まさか好きだと言ってキスまでしてくれるとは。
「宇佐神さん……?」
「いや、笑ってごめん、意外だったから拍子抜けしちゃって。僕も響くんのこと大好きだよ」
いつもの笑い方を忘れそうになって、でも、なんとか持ち直して、僕は眉間に皺を寄せそうになっていた響くんにキスを返した。僕のは触れるだけのキスじゃないけど。
「んぅ……っ」
舌を絡めれば、響くんはすぐにとろけた顔になる。
「はぁ……、えっちだね、すごく可愛い」
「うさみさ……っ、ぁ」
とろんとした瞳とか、ピンク色に上気した肌とか、自分の体液でべたべたになった身体とか、甘い声とか、響くんの全部に堪らなくなって、耳とか首筋、胸にキスを落とす。
「前もちゃんと触ってあげようね」
「ぁう、ぁ、あ……ッ」
響くんのペニスをぐりぐりと扱くとそれに反応するように中が締まって気持ちがいい。求められてるみたいで嬉しくなる。
「うしゃみさん……ぁっ、も……」
ぐちゃぐちゃといういやらしい音を立てながら、響くんの腰を揺すると彼は堪らなそうに目を細めた。
「響くん……っ、好き、愛してる」
「うしゃみしゃ……好……き……ぁ、っ」
一緒に果てるとき、僕はぎゅっと響くんを抱きしめた。聞こえていた激しい心臓の音は僕のものなのか、響くんのものなのか……。
これじゃあ肉体的にも絶対離してあげられないじゃないか。
◆ ◆ ◆
「どうしたの?」
少し温めのお湯を張った浴槽で響くんを前にして二人で入っていて、僕は心配になり、ついに尋ねた。冷静になって、やっぱり怒っているのか、恥ずかしがってるだけなのか、響くんが、ぜんぜん話してくれない。
「僕とのセックス、気持ちよくなかった?」
「いや、ちがっ、死ぬほど気持ちよかったですけど、その……」
僕の質問に思わず返してしまった、みたいな反応が可愛いけど、そのあとの言葉が出てこない。しゅんっと背中が小さくなる。
「なに? 言ってごらん」
響くんの背中を見つめて、僕は文句を言われる覚悟だった。なのに響くんったら
「お、俺、初めてなのに……み、乱れすぎ、じゃなかったですか……? 恥ずかしいです!」
一人で首まで真っ赤になって、両手で顔を覆うからバシャッとお湯が飛んだ。なにをそんなに照れることがあるのだろう。
「なにも恥ずかしいことないよ。僕は嬉しいよ? 君がちゃんと”初めての”僕で気持ちよくなってくれて」
「……ぅう……」
こんな励まし方で合ってるのだろうか、という感じで響くんのことを後ろから抱きしめるけれど、彼は唸るばかりである。
「でもさ」
「はい?」
気になってることがあって、僕がそこまで口にしてみると響くんの唸りが止まった。まあ、両手はまだ顔を隠してるけれど。
「もう宇佐神さんとはしたくない、とか言わないんだ?」
顔を隠したままの響くんに流し目を向けながら僕は彼の耳元で言った。
快楽っていう魔法から解けたら僕は嫌われると思ってた。だから、それが気になった。嫌われなくても恥ずかしがって、もうしてくれないかと……。
「それは……」
「ん?」
そろりと響くんの両手が彼の顔から離れていく。
「宇佐神さんの本当の顔が見れるから……」
「へぇ」
横目でやっと視線が合ったと思ったら、可愛いこと言うじゃないか、僕の響くん。セックスしてるとき、僕ってどんな顔してるんだろう? 今度、鏡の前で響くんのこと犯してみようかな。
チラッとお風呂場の鏡に視線を向けて、僕は響くんの首筋にキスをした。
「なんですか?」
「んー? 内緒」
ビクッと真っ赤になって文句言いたそうな顔に僕はいつもの笑顔を向けた。
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純鈍さんも元気そうで良かった!作品楽しみにしてるね(*^^*)
ありがとうございます!
元気そうで良かったです!
お久しゅうです〜
お気に入りしちゃった。じっくり楽しんで読み始めましたー
二色さんだあ!お久しぶりです!
ありがとうございます!
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