タイムカプセルを開けた日からサイコパスに愛されています。【社会人BL】

純鈍

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14.宇佐神さん、俺はあなたのためなら死ねます

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 ◆ ◆ ◆

 尋ねて来たのは毛利と名雪だけではなかった。

 さらに一ヶ月後のある日、休日であるにも関わらず、誰かが夜にエントランスのインターホンを鳴らした。淡い期待は、まだ頭を掠める。

 でも、この間にも何度か毛利と名雪が来ていたから、また二人だと思った。実際には俺の考えた誰でもなかった。

「どうしたんですか、内野さん」

 部屋の玄関の扉を開け、声を掛ける。 

「こんばんは。突然、すみません」

 俺と顔を合わせた彼はぺこっと頭を下げた。

 内野さんといえば、ストーカーになってしまった元カノから宇佐神さんが救った人だ。

「入りますか?」
「いえ、俺はここで。ちょっと用があって寄っただけなので」

 俺が尋ねると内野さんは控えめな様子でニコッと笑った。

 そして、なにやら、自分の斜め掛けバッグを探って「中川さん、利き手はどちらですか?」と聞いてくる。

 ――用事? なんで、利き手?

「え、っと……右手ですね」

 戸惑いながらも一応、素直に答えた。

「じゃあ、左手を貸してもらっていいですか?」

 まさかの利き手とは逆のほうを要求される。

「ああ、はい」

 理由が分からないまま俺は大人しく左手を内野さんのほうに差し出した。左手の薬指には未だに宇佐神さんからもらった指輪が嵌まっている。

「宇佐神さんから頼まれていたんです。自分になにかあったら、二ヶ月後くらいに中川さんの利き腕じゃないほうに着けてくれって」

 そう言いながら、内野さんはバッグから出した何かを俺の左手首に着けた。そして、向こうも意味が分かっていないらしく

「これ、猫の首輪ですよね? なんなんですか?」

 自分を助けてくれた宇佐神さんの頼みだから、仕方なく着けましたけど、みたいな雰囲気で聞かれる。

 たしかに、これは猫の首輪だ。外で枝とかに引っ掛かったときのために猫の首輪はカチッと簡単に嵌まるタイプで、同じように簡単に外れるようになっている。

 ちなみに色は紺色でなんの柄もないシンプルなデザイン。そこに鳴ってるか鳴ってないか微妙な小さい銀色の鈴がついている。

 内野さんに聞かれて困った。

「俺にもよく分からないです」

 あの人の考えが俺にも分かるわけがない。

「中川さんにも分からないんですね。まあ、一応、頼まれた通り届けましたんで」

 顔を見合わせた内野さんは苦笑いを浮かべながら「では」と帰っていった。

 ――なんで、いまさら首輪?

 左手首に嵌まった首輪を見つめて考える。

 宇佐神さんは俺のことをペットみたいな言い方をしてるときがあったけど、犬系のほうだと思ってた。じゃなくて、こんなの腕に着けてたら、余計に宇佐神さんのこと思い出してしまうじゃないか。

 ほんと、あの人の考えることは分からない。


 ◆ ◆ ◆

 何ヶ月目かの朝が来た。玄関からのガチャッという音で目覚める。そして

「ん……」

 カーテンの隙間から入る朝陽を見て、寝ぼけた頭で考える。

 昨夜、ちゃんと玄関の鍵は閉めたはずだ。大家さんと俺と宇佐神さん以外にこの部屋の鍵を持っている人間はいない。住んでいていいと言ったのだから、大家さんが勝手に入ってくることはないだろう。

 ――ということは……

「宇佐神さん……!?」

 ガバッと宇佐神さんのベッドから起き上がり、半ば転びそうになりながら寝室から出た。

「宇佐神さん!」

 リビングに宇佐神さんの姿はない。でも、そのまま走って玄関に向かう。

「宇佐神さん……」
「ただいま、響くん」

 そこに宇佐神さんは立っていた。やっと帰ってきたんだ。

 ニコニコと笑う顔は最後に見たときと変わらない。

 よかった、やっぱり生きていたんじゃないか。だって、宇佐神さんはサイコパスだ。俺を騙して揶揄っていたに違いない。最低だ。でも
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