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三森まり

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夢も見ない深い眠りからフワリと浮上する意識、薄く瞳を開けると見慣れない天井と滑らかな毛布の感触に風祭はゆっくりと起き上がった。

「疲れているんだろう、まだ、寝てて良いぞ
腹が減っているなら簡単なものなら作るが」

ベッドから少し離れた位置にある机から振り返る一宮が静かに声をかけてきた。
自分のために明かりが落とされていたのだろう室内の中、そこだけが明るい。
古風なフォルムのディスクライトが磨きあげられた飴色の木製の机とラフな姿をした一宮そして彼の手元にある分厚い書籍を照らしている。

「すまない」

「今日のお前は謝ってばっかりだ、他の言語を聞きたいな」

思わず謝罪の言葉を口にする自分の側に近づく一宮が苦笑している気配に、風祭が覚悟を決めたように唇を開いた。

「今日、俺に珈琲をかけた女性は今祠堂と付き合っているひとだ…
彼女は…時々、俺を自分より優先する祠堂に苛立っていたんだと思う…

祠堂はそんなつもりじゃないのに、彼女を大切にしてるのに…」

「ライバルとして嫉妬されたんだな…」

返された一宮の言葉に風祭が、再び顔から色を無くした。

「俺と祠堂はそんな仲じゃない」

「まぁ、祠堂はそんな気は無いんだろうが…
お前は違うだろ」

疑問ではなく肯定して語られる一宮の言葉に風祭はきつく唇を噛み締めた。

「… 皆は、気付いているんだろうか…」

震える声で問う風祭に答えず、一宮が自分を覗きこんでくる。
その秀麗な顔が切なげに歪んだ…

「俺は…お前が好きだ…友情を超えて…
お前は気づいていたか?」

囁くようなその声に、風祭は息を飲む。

「気づかれないように注意していたからな…多分…誰にも気づかれてはいないだろう…
でも俺はお前を見ていたから…ずっと…だから…祠堂へのお前の想いに気がついた」

彼女も同じなんだろう…と、答える一宮の言葉に祠堂の側にいる事さえ許されない己を風祭は知る。
湧き上がる胸に込み上げる熱が頬を流れてるて落ちてゆくのを他人事にように感じる…それを不思議に想いながら瞬きすると水滴がポタポタと自分の顎から零れ落ちた。

「泣かないでくれ…」

自分の事でも無いのに苦しげな一宮の声に、彼の顔を仰ぎ見る。
滲む視界に瞳を閉じると、瞼の上に一宮の唇が落ちてきた。
自分の涙を拭う優しい感触に掻き抱かれたその腕に、疲れた身体が心地良く温められる。

「お願いだから泣かないでくれ…」

一宮の懇願に、拙い笑を作りながら風祭は自らその腕を伸ばしたのだった。

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