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七海ちゃんの手作り弁当
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「はい 空也 弁当」
と笑いながら俺に黄色いハンカチに包まれた手作り弁当を渡してくれる 七海ちゃんは今日も可愛い
昼休憩美術室に二人きり
今日は下級生達全員 林間学校で居ないから気持ち良く風が入ってくる窓際に机を移動させる
夏休みにもかかわらず声を枯らし練習に励んでいた運動部もお昼休憩に入ったようで 今は静かだ
「ありがとう」
と笑顔を返し向かいの席に座る
弁当蓋を開けると色鮮やかなおかずが目に飛び込んできた
「うわ、凄。これ七海ちゃんが?」
「うん、前よりは上手くなってるはずだよ」
以前七海ちゃんから弁当を貰った時俺が苦手だと言ったものはちゃんと避けてくれてるし、苦手な食べ物も少し入っているが食べやすいように工夫されている
「ありがとう。凄く嬉しいよ」
「良かった」
と嬉しそうに笑う七海ちゃん 俺は早速卵焼きを口に運ぶとふんわりした食感に優しい甘味が広がる
「うん、美味しい!」
「よかったぁ」
と胸を撫で下ろす七海ちゃんに思わず笑みが溢れる
七海ちゃんはお向かいに住む所謂 幼馴染って奴で 姉の珊瑚さん 双子の妹の美海と幼い妹の真珠ちゃんと叔父
叔母さんは真珠ちゃんを産んだ時にお亡くなりになってしまったため…今は五人で暮らしている
うちの親父は叔父さんの親友で母と叔母さんも仲良く家族ぐるみのお付き合いをしていて 一人っ子だった俺は兄弟の様に七海ちゃんと育って今に至るってわけだ
元気で明るい事が最大の売りである俺と おっとりと優しい七海ちゃんはナイスなコンビだと思う
今は「美術部」で部長と副部長をやってる つっても部員5人だし新設校で文化部が無かったので一念発起して七海ちゃん中心で作った部だから上も下無いんだけどね
「ご馳走様、美味かった。いつも悪いな」
と弁当箱を返す
「全然、5人分も6人分も一緒だもん」
と答える七海ちゃん
ふと家族全員の弁当+俺の弁当を作ってるんだなと思いめぐらす
「でもなぁ……作ってもらってばっかりで……」
「気にしないでよ」
と優しく微笑む七海ちゃん そんな所が堪らなく好きだと俺は思う
「それに お弁当の代金叔母さんからいただいてるから これって最早アルバイトだよ」
と七海ちゃんがニコニコと笑いながら小首を傾けた
少し長めの黒髪がサラサラと白い額を滑る
「そうかぁ……なら遠慮無く」
「うん、遠慮なんてしなくて大丈夫」
と七海ちゃんがにこっと笑う そんな七海ちゃんを俺はいつの間にか好きになっていたんだと思う もっとも今だに告白出来ずにいるヘタレだけどね……
七海ちゃんは俺に甘いし 俺の事を好いていてくれてる事に確信を持ってはいる
が しかし それは幼馴染としてだろう… そして七海ちゃんは男だという最大の壁にぶち当たる
俺は七海ちゃんを好きになると同時に 自分がマイノリティである事を自覚した そして悩んだ 悩んだ結果が今の関係だ……
この関係が心地良いし 七海ちゃんを困らせたくない……
「どうしたの?」
そんな俺の思いなど知る由もない七海ちゃんが不思議そうに俺を見つめる そんな仕草にすらドキッとさせられて、俺は思わず苦笑いするしか無かった
「いや、なんでも」
と返す俺に
「変なの」
とクスクス笑う七海ちゃんはやっぱり可愛いなと思う 漏れてしまいそうになる心を隠しながら俺は疑問を口にした
「珊瑚ねぇはまぁ 家事は無理だとして 美海はお弁当作り参加しないの?」
珊瑚ねぇは本当に家事に向いてない…頭はいい県下でも有名な大学の院生をやってるけど…本当に家事はダメダメだ七海ちゃんいわくひとつの事の集中力は凄いけどマルチになにかするのが苦手でカレーとスープとサラダなんていうオーソドックスなメニューでも同時進行させると何かしら失敗してしまうらしい…
しかし美海はテキパキと要領よくて 家事もこなせそうに見えるんだけどな
「朝練がきつそうだから僕が朝食とお弁当作りは中心にやってるけど 夕食は美海も頑張ってるよ」
そう言いながら七海ちゃんが ラケットを振る素振りをして見せる
「そっか 美海も大変なんだ」
と俺はしみじみした
美海はテニス部に入っている
うちの高校はかなり強くてそのぶん練習も凄くハードらしい
運動神経だけはそこそこの俺は中学の頃 美海ともダブルスを組んでいたのでキラキラした目で 一緒にテニス部に入ろうと言われた事を思い出す…
テニスは長くやっていたし そこそこ運動も出来ていたので美海とも楽しくダブルスのコンビは組んではいたが
美海と俺ではテニスにかける本気度合が違っていたし 部員を探して困っていた七海ちゃんに協力したかったんだよね
絵を描くのもわりと好きだったし 体格が良い方だから
『そんな!!体格の無駄遣いだよ!!』
とか 仲の良い体育系の級友達からかなり突っ込まれたけどクラブ選択は自由意志だからね
「私を差し置いて 二人だけでイチャイチャして狡いって 美海が愚痴るんだよね はぁ
だって美海クラブ違うしさ」
と七海ちゃんが肩を竦めるのに 弁当後に飲んでいた珈琲を吹きかける
「ぐっ……ゲホゲホッ……」
「何やってんの?」
と七海ちゃんが可笑しそうに俺を見つめるので俺は恨みがましい視線を返すしかない……
美海よ勘弁してくれ……そんな気持ちが隠しきれずに顔に出ていたんだと思う そんな俺をどう思ったのかは分からんが七海ちゃんが
「じゃぁ 続きがんばろ」
と言って立ち上がるのに俺も倣って立ち上がった
そして二人でそれぞれ描きかけのキャンバスに向かう
ちらりと七海ちゃんの絵を見やると 綺麗な碧が目に飛び込んできた
クラブを新設するにあたって 顧問を引き受けてくれた先生は放任で生徒のやりたい事をやりたいようにやらせてくれる
現在 七海ちゃんは日本画を描いている
あぁキラキラしてる夏の海……穏やかで美しい…
綺麗だなぁ と心の中で呟きながら 俺は自分の掘りかけである版画原画の置いてある机の前に座り直したのだった
と笑いながら俺に黄色いハンカチに包まれた手作り弁当を渡してくれる 七海ちゃんは今日も可愛い
昼休憩美術室に二人きり
今日は下級生達全員 林間学校で居ないから気持ち良く風が入ってくる窓際に机を移動させる
夏休みにもかかわらず声を枯らし練習に励んでいた運動部もお昼休憩に入ったようで 今は静かだ
「ありがとう」
と笑顔を返し向かいの席に座る
弁当蓋を開けると色鮮やかなおかずが目に飛び込んできた
「うわ、凄。これ七海ちゃんが?」
「うん、前よりは上手くなってるはずだよ」
以前七海ちゃんから弁当を貰った時俺が苦手だと言ったものはちゃんと避けてくれてるし、苦手な食べ物も少し入っているが食べやすいように工夫されている
「ありがとう。凄く嬉しいよ」
「良かった」
と嬉しそうに笑う七海ちゃん 俺は早速卵焼きを口に運ぶとふんわりした食感に優しい甘味が広がる
「うん、美味しい!」
「よかったぁ」
と胸を撫で下ろす七海ちゃんに思わず笑みが溢れる
七海ちゃんはお向かいに住む所謂 幼馴染って奴で 姉の珊瑚さん 双子の妹の美海と幼い妹の真珠ちゃんと叔父
叔母さんは真珠ちゃんを産んだ時にお亡くなりになってしまったため…今は五人で暮らしている
うちの親父は叔父さんの親友で母と叔母さんも仲良く家族ぐるみのお付き合いをしていて 一人っ子だった俺は兄弟の様に七海ちゃんと育って今に至るってわけだ
元気で明るい事が最大の売りである俺と おっとりと優しい七海ちゃんはナイスなコンビだと思う
今は「美術部」で部長と副部長をやってる つっても部員5人だし新設校で文化部が無かったので一念発起して七海ちゃん中心で作った部だから上も下無いんだけどね
「ご馳走様、美味かった。いつも悪いな」
と弁当箱を返す
「全然、5人分も6人分も一緒だもん」
と答える七海ちゃん
ふと家族全員の弁当+俺の弁当を作ってるんだなと思いめぐらす
「でもなぁ……作ってもらってばっかりで……」
「気にしないでよ」
と優しく微笑む七海ちゃん そんな所が堪らなく好きだと俺は思う
「それに お弁当の代金叔母さんからいただいてるから これって最早アルバイトだよ」
と七海ちゃんがニコニコと笑いながら小首を傾けた
少し長めの黒髪がサラサラと白い額を滑る
「そうかぁ……なら遠慮無く」
「うん、遠慮なんてしなくて大丈夫」
と七海ちゃんがにこっと笑う そんな七海ちゃんを俺はいつの間にか好きになっていたんだと思う もっとも今だに告白出来ずにいるヘタレだけどね……
七海ちゃんは俺に甘いし 俺の事を好いていてくれてる事に確信を持ってはいる
が しかし それは幼馴染としてだろう… そして七海ちゃんは男だという最大の壁にぶち当たる
俺は七海ちゃんを好きになると同時に 自分がマイノリティである事を自覚した そして悩んだ 悩んだ結果が今の関係だ……
この関係が心地良いし 七海ちゃんを困らせたくない……
「どうしたの?」
そんな俺の思いなど知る由もない七海ちゃんが不思議そうに俺を見つめる そんな仕草にすらドキッとさせられて、俺は思わず苦笑いするしか無かった
「いや、なんでも」
と返す俺に
「変なの」
とクスクス笑う七海ちゃんはやっぱり可愛いなと思う 漏れてしまいそうになる心を隠しながら俺は疑問を口にした
「珊瑚ねぇはまぁ 家事は無理だとして 美海はお弁当作り参加しないの?」
珊瑚ねぇは本当に家事に向いてない…頭はいい県下でも有名な大学の院生をやってるけど…本当に家事はダメダメだ七海ちゃんいわくひとつの事の集中力は凄いけどマルチになにかするのが苦手でカレーとスープとサラダなんていうオーソドックスなメニューでも同時進行させると何かしら失敗してしまうらしい…
しかし美海はテキパキと要領よくて 家事もこなせそうに見えるんだけどな
「朝練がきつそうだから僕が朝食とお弁当作りは中心にやってるけど 夕食は美海も頑張ってるよ」
そう言いながら七海ちゃんが ラケットを振る素振りをして見せる
「そっか 美海も大変なんだ」
と俺はしみじみした
美海はテニス部に入っている
うちの高校はかなり強くてそのぶん練習も凄くハードらしい
運動神経だけはそこそこの俺は中学の頃 美海ともダブルスを組んでいたのでキラキラした目で 一緒にテニス部に入ろうと言われた事を思い出す…
テニスは長くやっていたし そこそこ運動も出来ていたので美海とも楽しくダブルスのコンビは組んではいたが
美海と俺ではテニスにかける本気度合が違っていたし 部員を探して困っていた七海ちゃんに協力したかったんだよね
絵を描くのもわりと好きだったし 体格が良い方だから
『そんな!!体格の無駄遣いだよ!!』
とか 仲の良い体育系の級友達からかなり突っ込まれたけどクラブ選択は自由意志だからね
「私を差し置いて 二人だけでイチャイチャして狡いって 美海が愚痴るんだよね はぁ
だって美海クラブ違うしさ」
と七海ちゃんが肩を竦めるのに 弁当後に飲んでいた珈琲を吹きかける
「ぐっ……ゲホゲホッ……」
「何やってんの?」
と七海ちゃんが可笑しそうに俺を見つめるので俺は恨みがましい視線を返すしかない……
美海よ勘弁してくれ……そんな気持ちが隠しきれずに顔に出ていたんだと思う そんな俺をどう思ったのかは分からんが七海ちゃんが
「じゃぁ 続きがんばろ」
と言って立ち上がるのに俺も倣って立ち上がった
そして二人でそれぞれ描きかけのキャンバスに向かう
ちらりと七海ちゃんの絵を見やると 綺麗な碧が目に飛び込んできた
クラブを新設するにあたって 顧問を引き受けてくれた先生は放任で生徒のやりたい事をやりたいようにやらせてくれる
現在 七海ちゃんは日本画を描いている
あぁキラキラしてる夏の海……穏やかで美しい…
綺麗だなぁ と心の中で呟きながら 俺は自分の掘りかけである版画原画の置いてある机の前に座り直したのだった
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