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第8話【元パーティの慢心】
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第8話【元パーティの慢心】
その頃、マルセルたちは王都郊外のダンジョンに挑んでいた。
石造りの通路が奥へと続いている。
松明の明かりが、湿った壁を照らしていた。
「次だ」
マルセルが剣を構える。
通路の先から、ゴブリンが三体現れた。
「はい」
ブライトが盾を構え、前に出る。
マルセルの剣が一閃。
ゴブリンが倒れる。
カミラの魔法が炸裂し、残る二体も消し飛んだ。
「楽勝だな」
マルセルが笑う。
ブライトが頷いた。
「ええ、順調です」
リナが杖を握りしめながら、倒れたゴブリンを見つめる。
いつもと同じ。
いつも通り、勝てている。
でも。
「リナ、どうした」
カミラが声をかけてきた。
「あ、いえ」
リナは首を振る。
気のせいだ。
何も問題ない。
「行くぞ」
マルセルが先へ進む。
三人が後に続いた。
通路を抜けると、広い部屋に出た。
天井は高く、柱が何本も立っている。
部屋の奥に、また敵の気配。
「オークか」
ブライトが呟く。
体格の良い豚顔の魔物が、斧を持って立っていた。
「任せろ」
マルセルが飛び出す。
剣と斧がぶつかり合う。
火花が散った。
「くっ」
マルセルが一歩下がる。
オークの力は強い。
だが、それだけだ。
「【炎弾】」
カミラの魔法がオークの脇腹に命中する。
怯んだ隙を、マルセルが突く。
剣がオークの胸を貫いた。
「よし」
マルセルが剣を引き抜く。
オークが崩れ落ちた。
「マルセル、大丈夫?」
カミラが駆け寄る。
「ああ、問題ない」
マルセルが息を整える。
少し、疲れた気がする。
いや、気のせいだろう。
「休憩しますか?」
ブライトが提案した。
「いや、このまま進む」
マルセルが首を振る。
「まだ余裕だ」
「そうですか」
ブライトが従う。
リナは黙って、マルセルの背中を見つめた。
汗が、いつもより多い。
呼吸も、少し荒い。
でも、言えない。
また「気にしすぎだ」
と言われるだけだ。
さらに奥へ進む。
廊下は薄暗く、足音だけが響く。
カミラがマルセルの隣を歩いていた。
「ねえ、マルセル」
「何だ」
「本当に、大丈夫?」
「心配するな」
マルセルが笑う。
「アクセルがいなくても、俺たちは強い」
「そう、ね」
カミラが小さく頷いた。
マルセルは自信に満ちている。
きっと、大丈夫だ。
でも。
心の奥に、小さな不安が残る。
「そういえば」
ブライトが口を開いた。
「アクセルさん、今頃どうしてるんでしょうね」
「知るか」
マルセルが吐き捨てる。
「あんな無能、考えるだけ無駄だ」
「そう、ですね」
ブライトが引き下がる。
リナが唇を噛む。
アクセルは、無能じゃない。
そう思う。
でも、誰にも言えなかった。
次の部屋で、ゴブリンの群れと遭遇した。
五体。
いつもなら、簡単だ。
「行くぞ」
マルセルが剣を振るう。
一体、二体と倒していく。
ブライトが盾で防ぎ、カミラが魔法で援護する。
リナが回復魔法を唱える準備をした。
戦いは、すぐに終わった。
「やっぱり、余裕だな」
マルセルが笑う。
だが、その顔には汗が滲んでいた。
「マルセル、傷」
カミラが指摘する。
マルセルの腕に、浅い切り傷があった。
「これくらい、どうってことない」
マルセルが手で拭う。
「リナ、治せ」
「はい」
リナが回復魔法を唱える。
傷が塞がった。
でも、リナは気づいていた。
いつもなら、こんな傷は負わない。
マルセルの動きが、ほんの少し鈍い。
ほんの少しだけ。
でも、確かに。
さらに奥へ。
部屋を三つ抜けた。
敵は次々と現れたが、どれも倒せた。
マルセルたちは勝ち続けている。
「問題ないじゃないか」
マルセルが満足げに言う。
「アクセルなんて、いらなかったんだ」
「そうね」
カミラが同意する。
「むしろ、今の方がスムーズだわ」
ブライトも頷いた。
「確かに、戦闘は早く終わりますね」
リナだけが、黙っていた。
本当に、そうだろうか。
戦いは勝っている。
でも、何かが違う。
何かが、足りない気がする。
「リナ、お前も思うだろ?」
マルセルがこちらを見た。
「え、あ、はい」
リナは慌てて頷く。
「やっぱりな」
マルセルが胸を張る。
「俺たちは、正しかったんだ」
そして、階段を見つけた。
下へと続く、石の階段。
「あった」
ブライトが指さす。
「次のフロアだ」
マルセルが近づいた。
階段の先は、暗い。
冷たい空気が吹き上げてくる。
「次は、ボスフロアか」
「おそらく」
ブライトが頷く。
「準備はいいか?」
マルセルが三人を見た。
「はい」
ブライトが即答する。
「大丈夫よ」
カミラが微笑む。
リナは、答えられなかった。
喉が、渇いている。
心臓が、早く打つ。
何か、いる。
階段の先に。
何か、とても強いものが。
「リナ?」
マルセルの声。
「は、はい。大丈夫です」
リナは無理に笑顔を作った。
「よし」
マルセルが階段に足をかける。
「行くぞ。ボス戦だ」
「はい」
ブライトとカミラが続く。
リナも、後を追った。
足が、重い。
でも、止まれない。
止まったら、また文句を言われる。
階段を降りる。
一段、また一段。
空気が、どんどん冷たくなる。
湿度も上がっている。
血の臭いが、かすかにした。
「このダンジョン、いつもより雰囲気が悪いな」
ブライトが呟く。
「気にするな」
マルセルが言い切る。
「どうせ、雑魚ボスだ」
カミラが杖を握りしめる。
リナは祈るように、杖を抱いた。
どうか、無事に。
どうか。
階段の先に、扉が見えてきた。
大きな、鉄の扉。
マルセルが扉に手をかける。
「準備はいいな」
「はい」
「ええ」
「……はい」
三人が答える。
マルセルが扉を押した。
重い音を立てて、扉が開く。
その先に広がるのは、広大な空間。
そして、奥に見える巨大な影。
リナの予感は、正しかった。
その頃、マルセルたちは王都郊外のダンジョンに挑んでいた。
石造りの通路が奥へと続いている。
松明の明かりが、湿った壁を照らしていた。
「次だ」
マルセルが剣を構える。
通路の先から、ゴブリンが三体現れた。
「はい」
ブライトが盾を構え、前に出る。
マルセルの剣が一閃。
ゴブリンが倒れる。
カミラの魔法が炸裂し、残る二体も消し飛んだ。
「楽勝だな」
マルセルが笑う。
ブライトが頷いた。
「ええ、順調です」
リナが杖を握りしめながら、倒れたゴブリンを見つめる。
いつもと同じ。
いつも通り、勝てている。
でも。
「リナ、どうした」
カミラが声をかけてきた。
「あ、いえ」
リナは首を振る。
気のせいだ。
何も問題ない。
「行くぞ」
マルセルが先へ進む。
三人が後に続いた。
通路を抜けると、広い部屋に出た。
天井は高く、柱が何本も立っている。
部屋の奥に、また敵の気配。
「オークか」
ブライトが呟く。
体格の良い豚顔の魔物が、斧を持って立っていた。
「任せろ」
マルセルが飛び出す。
剣と斧がぶつかり合う。
火花が散った。
「くっ」
マルセルが一歩下がる。
オークの力は強い。
だが、それだけだ。
「【炎弾】」
カミラの魔法がオークの脇腹に命中する。
怯んだ隙を、マルセルが突く。
剣がオークの胸を貫いた。
「よし」
マルセルが剣を引き抜く。
オークが崩れ落ちた。
「マルセル、大丈夫?」
カミラが駆け寄る。
「ああ、問題ない」
マルセルが息を整える。
少し、疲れた気がする。
いや、気のせいだろう。
「休憩しますか?」
ブライトが提案した。
「いや、このまま進む」
マルセルが首を振る。
「まだ余裕だ」
「そうですか」
ブライトが従う。
リナは黙って、マルセルの背中を見つめた。
汗が、いつもより多い。
呼吸も、少し荒い。
でも、言えない。
また「気にしすぎだ」
と言われるだけだ。
さらに奥へ進む。
廊下は薄暗く、足音だけが響く。
カミラがマルセルの隣を歩いていた。
「ねえ、マルセル」
「何だ」
「本当に、大丈夫?」
「心配するな」
マルセルが笑う。
「アクセルがいなくても、俺たちは強い」
「そう、ね」
カミラが小さく頷いた。
マルセルは自信に満ちている。
きっと、大丈夫だ。
でも。
心の奥に、小さな不安が残る。
「そういえば」
ブライトが口を開いた。
「アクセルさん、今頃どうしてるんでしょうね」
「知るか」
マルセルが吐き捨てる。
「あんな無能、考えるだけ無駄だ」
「そう、ですね」
ブライトが引き下がる。
リナが唇を噛む。
アクセルは、無能じゃない。
そう思う。
でも、誰にも言えなかった。
次の部屋で、ゴブリンの群れと遭遇した。
五体。
いつもなら、簡単だ。
「行くぞ」
マルセルが剣を振るう。
一体、二体と倒していく。
ブライトが盾で防ぎ、カミラが魔法で援護する。
リナが回復魔法を唱える準備をした。
戦いは、すぐに終わった。
「やっぱり、余裕だな」
マルセルが笑う。
だが、その顔には汗が滲んでいた。
「マルセル、傷」
カミラが指摘する。
マルセルの腕に、浅い切り傷があった。
「これくらい、どうってことない」
マルセルが手で拭う。
「リナ、治せ」
「はい」
リナが回復魔法を唱える。
傷が塞がった。
でも、リナは気づいていた。
いつもなら、こんな傷は負わない。
マルセルの動きが、ほんの少し鈍い。
ほんの少しだけ。
でも、確かに。
さらに奥へ。
部屋を三つ抜けた。
敵は次々と現れたが、どれも倒せた。
マルセルたちは勝ち続けている。
「問題ないじゃないか」
マルセルが満足げに言う。
「アクセルなんて、いらなかったんだ」
「そうね」
カミラが同意する。
「むしろ、今の方がスムーズだわ」
ブライトも頷いた。
「確かに、戦闘は早く終わりますね」
リナだけが、黙っていた。
本当に、そうだろうか。
戦いは勝っている。
でも、何かが違う。
何かが、足りない気がする。
「リナ、お前も思うだろ?」
マルセルがこちらを見た。
「え、あ、はい」
リナは慌てて頷く。
「やっぱりな」
マルセルが胸を張る。
「俺たちは、正しかったんだ」
そして、階段を見つけた。
下へと続く、石の階段。
「あった」
ブライトが指さす。
「次のフロアだ」
マルセルが近づいた。
階段の先は、暗い。
冷たい空気が吹き上げてくる。
「次は、ボスフロアか」
「おそらく」
ブライトが頷く。
「準備はいいか?」
マルセルが三人を見た。
「はい」
ブライトが即答する。
「大丈夫よ」
カミラが微笑む。
リナは、答えられなかった。
喉が、渇いている。
心臓が、早く打つ。
何か、いる。
階段の先に。
何か、とても強いものが。
「リナ?」
マルセルの声。
「は、はい。大丈夫です」
リナは無理に笑顔を作った。
「よし」
マルセルが階段に足をかける。
「行くぞ。ボス戦だ」
「はい」
ブライトとカミラが続く。
リナも、後を追った。
足が、重い。
でも、止まれない。
止まったら、また文句を言われる。
階段を降りる。
一段、また一段。
空気が、どんどん冷たくなる。
湿度も上がっている。
血の臭いが、かすかにした。
「このダンジョン、いつもより雰囲気が悪いな」
ブライトが呟く。
「気にするな」
マルセルが言い切る。
「どうせ、雑魚ボスだ」
カミラが杖を握りしめる。
リナは祈るように、杖を抱いた。
どうか、無事に。
どうか。
階段の先に、扉が見えてきた。
大きな、鉄の扉。
マルセルが扉に手をかける。
「準備はいいな」
「はい」
「ええ」
「……はい」
三人が答える。
マルセルが扉を押した。
重い音を立てて、扉が開く。
その先に広がるのは、広大な空間。
そして、奥に見える巨大な影。
リナの予感は、正しかった。
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