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第1話「聖女の目覚め、運命の記憶」
断頭台の上で、彼は微笑んでいた。
銀色の瞳が、最期まで誇り高く輝いている。
刃が振り下ろされる——その瞬間、私は叫んだ。
「いやあああああっ!」
目を開けると、そこは大聖堂だった。
白い大理石の床。天井から降り注ぐ光。祭壇の前に立つ聖職者たち。
私は両手を見下ろす。震えていた。
今のは——
「ノエリア様」
聖職者の声が遠くから聞こえる。
ノエリア?
その名前に、記憶が雪崩のように流れ込んできた。
前世。日本。大学生。
深夜まで乙女ゲーム『聖女の試練』
をプレイしていた。
推しキャラは、冷酷な軍師アルセイン・セイヴラン。
黒髪。銀色の瞳。整った顔立ち。孤高の天才。
だが、彼のルートは全て悲劇で終わる。
理由は——聖女が第一王子派閥に協力するから。
第二王子派閥の軍師である彼は、孤立し、最後は反逆罪で処刑される。
そして今。
私は、そのゲームの世界にいる。
聖女ノエリア・リュミナリアとして。
「ノエリア様、聖女認定の儀式を続けますが」
老司祭の声が耳に入る。
周囲を見渡すと、貴族や聖職者が大勢集まっていた。
辺境貴族の娘が、聖女の力を覚醒させた。
それがこの儀式の意味だったはず。
「は、はい」
声が震える。
老司祭が祈りの言葉を唱え始めた。
私の手から、淡い光が溢れ出す。
聖女の力。
祭壇に置かれた枯れた花々が、一瞬で満開になった。
観衆がどよめく。
「これは……なんという力だ」
「聖女様だ」
称賛の声が響く。
だが、私の心は別のことでいっぱいだった。
さっき見た光景。
あれは前世でプレイしたゲームの、アルセインルートのバッドエンドだ。
断頭台で処刑される彼。
何度プレイしても、どのルートを選んでも、彼は死ぬ。
理由は単純だった。
原作の聖女が、第一王子エドウィンの派閥に協力したから。
聖女の力を得た第一王子派閥が、第二王子派閥を粛清する。
その過程で、アルセインは処刑される。
つまり——
私が第一王子派閥に協力しなければ、歴史は変わる。
儀式が終わり、観衆が拍手する。
私は祭壇を降りた。
第一王子エドウィンが、穏やかな笑顔で近づいてくる。
「聖女殿、おめでとうございます」
金髪。青い瞳。優しげな表情。
原作では、この人が最終的にアルセインを処刑する。
「後日、改めてお話を」
彼が軽く一礼する。
私は冷たく頷いた。
「はい」
短く。そっけなく。
エドウィンの眉が、わずかに動く。
驚いているのだろう。
聖女が、こんなに無愛想だとは思わなかったはずだ。
貴族たちが囁き合う声が聞こえる。
「聖女様、随分と冷たい方だ」
「第一王子殿下にあの態度」
「高慢なのでは」
視線が痛い。
だが、私は決めた。
推しを救うためなら、悪女になればいい。
第一王子派閥の敵になればいい。
原作の聖女は謙虚で従順だった。
だから取り込まれた。
ならば私は、正反対になる。
高圧的で、傲慢で、誰の命令も聞かない聖女に。
大聖堂を出ると、夕日が美しかった。
王宮が遠くに見える。
あそこに、推しがいる。
まだ会ったことはない。
でも、彼を守る。
絶対に。
「お嬢様」
侍女が声をかける。
「聖女の館へご案内いたします」
「ありがとう」
私は歩き出した。
聖女の館。
そこで、作戦を立てよう。
アルセインの処刑フラグを、全て回避する計画を。
原作のイベントを思い出す。
北方反乱。
宮廷陰謀。
数々の罠。
全ての破滅フラグを、私が潰す。
館に着くと、一人の少女が待っていた。
平民らしき、質素な服装。
長い茶色の髪。優しそうな目。
彼女は深くお辞儀をした。
「初めまして、聖女様。私はリリアナと申します」
原作ヒロインだ。
第一王子と恋に落ちる、心優しい平民の少女。
確か、原作では聖女と仲良くなるはずだった。
でも、私は悪女を演じる。
冷たく言った。
「初めまして。私は貴族です。敬語を使いなさい」
リリアナの目が、一瞬だけ驚きに見開かれた。
すぐに涙が浮かぶ。
「も、申し訳ございません」
彼女は慌てて頭を下げ、走り去った。
侍女が困惑した顔で私を見る。
私は内心で謝った。
(ごめんなさい、リリアナさん)
(でも、これも演技なの)
(悪女を演じなければ、推しが死ぬ)
部屋に入ると、窓から王宮が見えた。
あの中に、アルセインがいる。
明日、王宮の戦略会議がある。
そこで、初めて彼と会える。
推しとの初対面。
緊張する。
でも、悪女を演じなければ。
第二王子派閥に接近しなければ。
彼を救うために。
私は机に向かい、ノートを開いた。
『悪女作戦』
と書く。
目標:第一王子派閥から嫌われる。
目標:第二王子派閥に接近。
目標:アルセインの処刑フラグを全て回避。
ペンを走らせながら、心の中で誓う。
私は悪女になる。
推しを救うために。
どんな代償を払っても。
窓の外で、星が瞬き始めた。
長い戦いの、始まりだった。
--------
新作『前世の推しのために悪女を演じます、聖女として転生しましたが』の1話を見つけて読んでいただき、ありがとうございます。
本日は7時、8時、9時、10時にも投稿予定で、計5話お届けします!
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銀色の瞳が、最期まで誇り高く輝いている。
刃が振り下ろされる——その瞬間、私は叫んだ。
「いやあああああっ!」
目を開けると、そこは大聖堂だった。
白い大理石の床。天井から降り注ぐ光。祭壇の前に立つ聖職者たち。
私は両手を見下ろす。震えていた。
今のは——
「ノエリア様」
聖職者の声が遠くから聞こえる。
ノエリア?
その名前に、記憶が雪崩のように流れ込んできた。
前世。日本。大学生。
深夜まで乙女ゲーム『聖女の試練』
をプレイしていた。
推しキャラは、冷酷な軍師アルセイン・セイヴラン。
黒髪。銀色の瞳。整った顔立ち。孤高の天才。
だが、彼のルートは全て悲劇で終わる。
理由は——聖女が第一王子派閥に協力するから。
第二王子派閥の軍師である彼は、孤立し、最後は反逆罪で処刑される。
そして今。
私は、そのゲームの世界にいる。
聖女ノエリア・リュミナリアとして。
「ノエリア様、聖女認定の儀式を続けますが」
老司祭の声が耳に入る。
周囲を見渡すと、貴族や聖職者が大勢集まっていた。
辺境貴族の娘が、聖女の力を覚醒させた。
それがこの儀式の意味だったはず。
「は、はい」
声が震える。
老司祭が祈りの言葉を唱え始めた。
私の手から、淡い光が溢れ出す。
聖女の力。
祭壇に置かれた枯れた花々が、一瞬で満開になった。
観衆がどよめく。
「これは……なんという力だ」
「聖女様だ」
称賛の声が響く。
だが、私の心は別のことでいっぱいだった。
さっき見た光景。
あれは前世でプレイしたゲームの、アルセインルートのバッドエンドだ。
断頭台で処刑される彼。
何度プレイしても、どのルートを選んでも、彼は死ぬ。
理由は単純だった。
原作の聖女が、第一王子エドウィンの派閥に協力したから。
聖女の力を得た第一王子派閥が、第二王子派閥を粛清する。
その過程で、アルセインは処刑される。
つまり——
私が第一王子派閥に協力しなければ、歴史は変わる。
儀式が終わり、観衆が拍手する。
私は祭壇を降りた。
第一王子エドウィンが、穏やかな笑顔で近づいてくる。
「聖女殿、おめでとうございます」
金髪。青い瞳。優しげな表情。
原作では、この人が最終的にアルセインを処刑する。
「後日、改めてお話を」
彼が軽く一礼する。
私は冷たく頷いた。
「はい」
短く。そっけなく。
エドウィンの眉が、わずかに動く。
驚いているのだろう。
聖女が、こんなに無愛想だとは思わなかったはずだ。
貴族たちが囁き合う声が聞こえる。
「聖女様、随分と冷たい方だ」
「第一王子殿下にあの態度」
「高慢なのでは」
視線が痛い。
だが、私は決めた。
推しを救うためなら、悪女になればいい。
第一王子派閥の敵になればいい。
原作の聖女は謙虚で従順だった。
だから取り込まれた。
ならば私は、正反対になる。
高圧的で、傲慢で、誰の命令も聞かない聖女に。
大聖堂を出ると、夕日が美しかった。
王宮が遠くに見える。
あそこに、推しがいる。
まだ会ったことはない。
でも、彼を守る。
絶対に。
「お嬢様」
侍女が声をかける。
「聖女の館へご案内いたします」
「ありがとう」
私は歩き出した。
聖女の館。
そこで、作戦を立てよう。
アルセインの処刑フラグを、全て回避する計画を。
原作のイベントを思い出す。
北方反乱。
宮廷陰謀。
数々の罠。
全ての破滅フラグを、私が潰す。
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第一王子と恋に落ちる、心優しい平民の少女。
確か、原作では聖女と仲良くなるはずだった。
でも、私は悪女を演じる。
冷たく言った。
「初めまして。私は貴族です。敬語を使いなさい」
リリアナの目が、一瞬だけ驚きに見開かれた。
すぐに涙が浮かぶ。
「も、申し訳ございません」
彼女は慌てて頭を下げ、走り去った。
侍女が困惑した顔で私を見る。
私は内心で謝った。
(ごめんなさい、リリアナさん)
(でも、これも演技なの)
(悪女を演じなければ、推しが死ぬ)
部屋に入ると、窓から王宮が見えた。
あの中に、アルセインがいる。
明日、王宮の戦略会議がある。
そこで、初めて彼と会える。
推しとの初対面。
緊張する。
でも、悪女を演じなければ。
第二王子派閥に接近しなければ。
彼を救うために。
私は机に向かい、ノートを開いた。
『悪女作戦』
と書く。
目標:第一王子派閥から嫌われる。
目標:第二王子派閥に接近。
目標:アルセインの処刑フラグを全て回避。
ペンを走らせながら、心の中で誓う。
私は悪女になる。
推しを救うために。
どんな代償を払っても。
窓の外で、星が瞬き始めた。
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