【完結】前世の推しのために悪女を演じます、聖女として転生しましたが

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第15話「魔女の本性」

 目を覚ますと、天井が見えた。

 白い天井。

 見覚えがある。

 聖女の館。

 私の部屋。

 身体を起こす。

 重い。

 全身が痛む。

 でも、動ける。

 扉が開く。

 侍女が、驚いた顔で入ってくる。

「お嬢様!」

「目を覚まされたのですね」

「どのくらい眠っていたの?」

 声がかすれる。

「一晩です」

 侍女が、水を持ってくる。

 飲む。

 喉が、潤う。

「公爵が、お嬢様を連れて戻られました」

「ずっと、心配されていました」

 アルセイン。

 彼は、無事なのか。

「公爵は?」

「王宮におられます」

 侍女が答える。

「緊急会議だと」

 会議。

 証拠を、持って行ったのだ。

 私も、行かないと。

「服を」

 立ち上がる。

 ふらつく。

 侍女が、支える。

「お嬢様、まだ無理を」

「大丈夫」

 私は、服を着る。

 白い聖女の衣装。

 髪を整える。

 鏡を見る。

 顔色が悪い。

 でも、行かないと。

 推しのそばに。

 ---

 王宮の謁見の間。

 扉を開けると、既に会議が始まっていた。

 国王。

 第一王子エドウィン。

 第二王子ヴィクター。

 多くの貴族たち。

 そして──

 中央に、縛られたマーカス伯爵。

 アルセインが、証拠を提示していた。

 黒い本。

 書類の束。

 全てが、机の上に並べられている。

「陛下」

 アルセインの声が、響く。

「これらが、決定的な証拠です」

 国王が、書類を手に取る。

 読む。

 その表情が、険しくなる。

「マーカス伯爵」

 国王の声が、重い。

「これは、本当か」

 マーカスは、黙っている。

 顔が、蒼白だ。

 もう、言い訳はできない。

 証拠が、全てを語っている。

「反乱計画」

 国王が、読み上げる。

「リリアナという魔女への資金提供」

「聖女暗殊計画」

「第二王子派閥粛清計画」

 貴族たちが、ざわつく。

「なんということだ」

「伯爵が、こんなことを」

 国王が、立ち上がる。

「マーカス伯爵」

 宣言する。

「お前を、反逆罪で拘束する」

 衛兵たちが、マーカスを連行する。

 彼は、何も言わない。

 ただ、憎しみの目で私を見る。

 でも、もう終わりだ。

 彼の陰謀は、暴かれた。

 その時──

 扉が開いた。

 誰かが、入ってくる。

 白いドレス。

 長い茶色の髪。

 優しそうな顔。

 リリアナ。

「陛下」

 彼女が、涙を流す。

「お許しください」

「私は、マーカス伯爵に騙されて」

 泣き崩れる。

 完璧な演技。

 エドウィンが、駆け寄る。

「リリアナ」

 彼が、彼女を抱きしめる。

「大丈夫だ」

「もう、終わったんだ」

 リリアナが、顔を上げる。

 涙を拭う。

 そして──

 その顔が、変わった。

 優しい表情が、消える。

 冷たく。

 邪悪な笑みが、浮かぶ。

「終わった?」

 その声は──

 昼間の優しい声ではない。

 低く。

 禍々しい。

「まだ、始まってもいないわ」

 リリアナが、手を掲げる。

 黒い霧が、溢れ出す。

 部屋中に、広がる。

 貴族たちが、悲鳴を上げる。

「何だ、これは!」

「魔法だ!」

 エドウィンが、後ろに飛び退く。

「リリアナ……お前は」

「ようやく気づいた?」

 リリアナが、嘲笑する。

「愚かな王子様」

 その身体が、変化する。

 白いドレスが、黒いローブに。

 優しい顔が、冷酷に。

 魔女の本性を、露わにした。

「私は、リリアナ」

 彼女が、宣言する。

「闇の魔女」

「お前たち全員を」

「葬り去る」

 黒い霧が、刃になる。

 貴族たちに、襲いかかる。

 悲鳴。

 逃げ惑う人々。

 混乱。

 私は、前に出る。

 手を掲げる。

 光の壁を、展開する。

 黒い刃が、光に阻まれる。

 消えていく。

 リリアナが、私を見る。

「聖女」

 憎悪に満ちた声。

「邪魔をするのね」

「当然です」

 私は、答える。

「あなたを、止めます」

 リリアナが、笑う。

「止められるかしら」

 彼女の手から、黒い炎が溢れ出す。

 私に向かって、飛んでくる。

 避ける。

 炎が、床を焼く。

 石が、溶ける。

 危険だ。

 私も、反撃する。

 光の槍を、放つ。

 リリアナに、直撃する。

 だが──

 彼女は、黒い盾で防ぐ。

 光が、弾かれる。

 リリアナの力は、強い。

 私の光だけでは、足りない。

「アルセイン!」

 私は、叫ぶ。

 彼が、剣を抜く。

 リリアナの横に回る。

 剣が、閃く。

 だが、リリアナは避ける。

 素早い。

 黒い触手を、放つ。

 アルセインに、襲いかかる。

 彼が、斬る。

 触手が、断ち切られる。

 だが、すぐに再生する。

 また、襲いかかる。

 私は、光で援護する。

 触手を、焼く。

 リリアナが、舌打ちする。

「二人がかりとは」

 彼女の力が、さらに強くなる。

 黒い霧が、濃くなる。

 部屋中が、闇に包まれる。

 視界が、奪われる。

 息苦しい。

 毒だ。

 貴族たちが、倒れていく。

 国王も、膝をつく。

 エドウィンが、叫ぶ。

「やめろ、リリアナ!」

 彼が、剣を抜く。

 リリアナに、向かう。

 だが──

 黒い刃が、彼を阻む。

 剣が、弾かれる。

 エドウィンが、倒れる。

「殿下!」

 騎士たちが、駆け寄る。

 だが、次々と黒い刃に倒される。

 リリアナの力は、圧倒的だ。

 私は、決意した。

 全力を出す。

 聖女の力を、全て解放する。

 もう、隠さない。

 躊躇わない。

 推しを守るために。

 みんなを守るために。

「浄化の光よ」

 私は、叫ぶ。

「全ての闇を、払いたまえ!」

 身体中から、光が溢れ出す。

 眩い光。

 部屋中を、満たす。

 黒い霧が、消えていく。

 闇が、払われる。

 リリアナが、悲鳴を上げる。

「きゃああああ!」

 光が、彼女を直撃する。

 黒いローブが、燃える。

 魔女の力が、弱まる。

 私は、さらに力を込める。

 全てを。

 最後の一滴まで。

「封印の光!」

 光の鎖が、リリアナを縛る。

 彼女の手。

 足。

 身体。

 全てを。

 リリアナが、もがく。

「やめて!」

「離して!」

 だが、鎖は解けない。

 光が、彼女の力を封印する。

 魔女の力が、消えていく。

 リリアナが、床に倒れる。

 動かなくなる。

 ただの少女に戻った。

 力を失った。

 私も、膝をつく。

 もう、立っていられない。

 全ての力を、使い果たした。

 視界が、暗くなる。

 床に、倒れ込む。

「ノエリア!」

 アルセインの声が、聞こえる。

 彼が、駆け寄る。

 私を、抱きしめる。

「目を覚まして!」

 必死の声。

 優しい。

 温かい。

 でも、意識が遠のく。

 その前に──

 エドウィンの声が聞こえた。

「私は……」

 彼が、呟く。

「操られていたのか」

 涙を流している。

 リリアナへの感情。

 全てが、幻だったと。

 ようやく、気づいたのだ。

 国王が、立ち上がる。

「聖女殿が、王国を救った」

 重い声。

 貴族たちが、私を見る。

 称賛の目。

 感謝の目。

 でも、私の意識は──

 もう、限界だった。

 アルセインの腕の中で。

 優しい温もりの中で。

 私は、意識を失った。

 ---

 数日後。

 マーカス伯爵の書斎で、もう一つの書類が見つかった。

 最終計画書。

「今週中にアルセイン・セイヴラン処刑の勅令を国王に上奏」

 詳細な手順。

 捏造された証拠。

 買収された証人。

 全てが、記されていた。

 処刑予定日。

 来週。

 もう、目前だった。

 国王が、青ざめる。

「危うく……」

「忠臣を失うところだった」

 第二王子ヴィクターも、震えている。

「間に合った」

「聖女殿のおかげで」

 アルセインは、書類を見つめていた。

 自分が、処刑される寸前だったと。

 初めて知った。

 その手が、震えている。

 そして──

 彼は、ノエリアの病室へ向かった。

 ベッドに横たわる、彼女。

 静かに眠っている。

 アルセインは、椅子に座る。

 彼女の手を、握る。

「ノエリア」

 小さく呼ぶ。

「あなたが、私を救ってくれた」

「命を賭けて」

 涙が、溢れる。

 初めて流す、涙。

「ありがとう」

 握った手に、力を込める。

「目を覚ましてください」

「お願いです」

 静かな部屋。

 窓から差し込む、午後の光。

 アルセインは、ずっとそこにいた。

 彼女が目覚めるまで。

 ずっと。


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【作者コメント】

この作品をお読みいただき、ありがとうございます。

感想やご意見などございましたら、お気軽にお寄せください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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