【完結】前世の推しのために悪女を演じます、聖女として転生しましたが

チャビューヘ

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第14話「暗闇の真実」

 深夜。

 マーカス伯爵の屋敷は、静まり返っていた。

 高い塀。

 鉄の門。

 巡回する衛兵。

 厳重な警備。

 私とアルセインは、裏手の塀の外に潜んでいた。

 黒い服。

 フードを深く被る。

 息を殺す。

 衛兵が、通り過ぎる。

 足音が、遠ざかる。

「今です」

 アルセインが、小さく言う。

 二人、塀を登る。

 素早く。

 音を立てずに。

 庭に降り立つ。

 月明かりが、美しい。

 だが、危険だ。

 影に紛れる。

 木の陰。

 茂みの中。

 一歩ずつ、慎重に。

 屋敷の裏口に到着する。

 アルセインが、鍵を調べる。

「開けられますか?」

 私が、小声で聞く。

「少し時間が」

 彼が、細い針金を取り出す。

 鍵穴に差し込む。

 カチカチと、音がする。

 緊張する。

 心臓が、速く打つ。

 推しと、潜入作戦。

 危険だけど。

 でも、一緒なら。

 カチリ。

 鍵が、開いた。

「開きました」

 アルセインが、扉を押す。

 静かに。

 中は、暗い。

 廊下が続いている。

 二人、入る。

 扉を閉める。

 音を立てないように。

 廊下を進む。

 絨毯が敷いてある。

 足音が、消える。

 壁には、絵画。

 豪華な装飾。

 マーカスの富を、誇示している。

 角を曲がる。

 階段がある。

 書斎は、二階。

 アルセインの情報だ。

 階段を登る。

 一段。

 一段。

 慎重に。

 軋む音がしないように。

 二階に到着する。

 廊下が、さらに続く。

 奥に、扉が見える。

 そこだ。

 書斎。

 アルセインが、先に進む。

 私も、後に続く。

 扉の前で、止まる。

 鍵は、かかっていない。

 不用心だ。

 いや──

 罠かもしれない。

 アルセインと、目を合わせる。

 彼も、警戒している。

 でも、進むしかない。

 扉を、開ける。

 静かに。

 中は、暗い。

 月明かりだけが、窓から差し込んでいる。

 大きな机。

 本棚。

 金庫。

 全てが、見える。

 二人、中に入る。

 扉を閉める。

 アルセインが、机に向かう。

 引き出しを開ける。

 書類が、たくさん入っている。

 一つずつ、確認する。

 私は、本棚を調べる。

 古い本。

 記録。

 帳簿。

 その中に──

 黒い表紙の本。

 目立たないように、隠されている。

 取り出す。

 開く。

 そこには──

「反乱計画書」

 大きな文字で、書かれている。

 心臓が、跳ねる。

 これだ。

 次のページ。

「リリアナへの資金提供記録」

 日付。

 金額。

 目的。

 全てが、明記されている。

 黒魔術の研究。

 暗殺者の雇用。

 証拠の捏造。

 さらに次のページ。

「聖女暗殺計画」

 私の名前が、書かれている。

 詳細な手順。

 日時。

 場所。

 方法。

 全てが、計画されている。

 背筋が、凍る。

 私を、殺すつもりだった。

「聖女殿」

 アルセインの声。

 振り返ると、彼も書類を手にしていた。

「これを」

 見せてくれる。

 そこには──

「第二王子派閥完全粛清計画」

 詳細が、書かれている。

 アルセインの処刑。

 ヴィクターの追放。

 配下の貴族の処分。

 全てが、書かれている。

 私たちは、顔を見合わせた。

 これで、証拠は揃った。

 マーカスの陰謀。

 リリアナとの共謀。

 全てが、明らかになった。

「持って行きましょう」

 アルセインが言う。

 私も、頷く。

 その時──

 扉が、開いた。

 心臓が、止まる。

 暗闇から、人影が現れる。

 一人。

 二人。

 三人。

 四人。

 五人。

 全員、黒装束。

 顔を覆っている。

 暗殺者だ。

 先頭の男が、低い声で言う。

「よく来たな」

「待っていたぞ」

 罠だった。

 マーカスは、知っていた。

 私たちが来ることを。

 アルセインが、剣を抜く。

 私も、構える。

 聖女の力を、準備する。

「逃がさん」

 男が、剣を抜く。

 他の四人も、武器を構える。

 剣。

 短剣。

 鎖。

 様々な武器。

 五対二。

 不利だ。

 でも──

 逃げるわけにはいかない。

 証拠を、持って帰らないと。

 最初の男が、襲いかかる。

 剣が、閃く。

 アルセインが、防ぐ。

 火花が散る。

 刃が、交差する。

 私は、手を掲げる。

 光が、溢れ出す。

 もう一人の暗殺者に向けて。

 光の槍。

 直撃する。

 男が、吹き飛ばされる。

 壁に激突する。

 動かなくなる。

 残り四人。

 同時に、襲いかかる。

 四方から。

 アルセインが、二人を相手にする。

 剣技が、鮮やか。

 防御。

 カウンター。

 一人の腕を、斬る。

 悲鳴。

 だが、もう一人が背後に回る。

 剣が、振り下ろされる。

 アルセインの背中に。

「公爵!」

 私は、叫ぶ。

 光の壁を、展開する。

 間に合った。

 剣が、光に阻まれる。

 だが、その隙に──

 別の暗殺者が、私に迫る。

 短剣が、喉元に。

 避けられない。

 アルセインが、飛び込んでくる。

 私を、突き飛ばす。

 短剣が、彼の肩に突き刺さる。

「アルセイン!」

 彼が、膝をつく。

 血が、溢れ出す。

 肩から。

 大量に。

 心臓が、凍りつく。

 推しが、傷ついた。

 私を庇って。

 怒りが、込み上げる。

 全身が、熱くなる。

 聖女の力が、溢れ出す。

 今まで以上に。

 強く。

 眩く。

「やめて!」

 私は、叫ぶ。

 光が、爆発する。

 部屋中を、満たす。

 暗殺者たちが、吹き飛ばされる。

 壁に。

 天井に。

 床に。

 次々と、倒れていく。

 全員。

 動かなくなる。

 光が、収まる。

 私は、アルセインに駆け寄る。

「公爵!」

 膝をつく。

 彼を、支える。

 血が、止まらない。

 顔が、蒼白だ。

「大丈夫ですか」

 涙が、溢れる。

 アルセインが、小さく微笑む。

「大丈夫……です」

 弱々しい声。

 嘘だ。

 全然、大丈夫じゃない。

「動かないで」

 私は、手を当てる。

 肩の傷に。

 治癒の光。

 全力で。

 傷が、塞がっていく。

 血が、止まる。

 でも──

 完全には治らない。

 深すぎる。

 力が、足りない。

「逃げましょう」

 私は、彼を抱える。

 立ち上がる。

 証拠を、掴む。

 本と、書類。

 全て、持つ。

 アルセインを、支えながら。

 部屋を出る。

 廊下を走る。

 階段を降りる。

 足音が、響く。

 もう、隠密は諦めた。

 逃げるだけ。

 裏口から、外へ。

 庭を横切る。

 衛兵の声が、聞こえる。

「侵入者だ!」

「捕らえろ!」

 追ってくる。

 でも、止まらない。

 塀を登る。

 アルセインを、押し上げる。

 彼が、先に越える。

 私も、続く。

 反対側に、飛び降りる。

 着地。

 アルセインが、倒れそうになる。

 支える。

 走る。

 裏通りへ。

 暗い路地。

 人目のない場所。

 どれだけ走っただろう。

 ようやく、追手の気配が消えた。

 廃屋を見つける。

 中に入る。

 扉を閉める。

 暗闇。

 静寂。

 アルセインを、床に寝かせる。

 月明かりが、窓から差し込む。

 彼の顔が、見える。

 汗をかいている。

 苦しそうだ。

「公爵」

 私は、手を握る。

 冷たい。

 体温が、下がっている。

 危険だ。

 もう一度、治癒を。

 手を当てる。

 光が、溢れる。

 全ての力を込める。

 傷が、さらに治っていく。

 でも、まだ完全じゃない。

 私の力が、足りない。

 疲労が、襲ってくる。

 身体が、重い。

 でも、止められない。

 推しを、救わないと。

 もっと。

 もっと力を。

 光が、強くなる。

 傷が、完全に塞がる。

 アルセインの顔に、血色が戻る。

 呼吸が、安定する。

 良かった。

 私は、力尽きた。

 床に、倒れ込む。

 視界が、暗くなる。

 意識が、遠のく。

 その前に──

 アルセインの声が聞こえた。

「ノエリア……」

 初めて、名前を呼ばれた。

 優しい声。

「なぜ、そこまで……」

 答えたい。

 でも、声が出ない。

 意識が、落ちていく。

 でも、心は温かい。

 推しを、救えた。

 それだけで、十分。

 闇が、私を包んだ。

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