【完結】前世の推しのために悪女を演じます、聖女として転生しましたが

第20話「聖女と公爵の結婚」

　鐘が、鳴り響いた。

　大聖堂の鐘。

　澄んだ音色が、王都中に響く。

　今日は、私の結婚式。

　窓の外を見る。

　青い空。

　白い雲。

　完璧な天気。

「お嬢様」

　侍女が、微笑む。

「準備ができました」

　鏡を見る。

　純白のウェディングドレス。

　繊細なレース。

　長いヴェール。

　銀色の髪を、優雅に結い上げている。

　首元には、小さな真珠のネックレス。

　美しい。

　これを着て、推しと結婚する。

　心臓が、ドキドキする。

　緊張する。

　でも、幸せ。

「行きましょう」

　私は、立ち上がった。

　－－－

　大聖堂は、満員だった。

　高い天井。

　美しいステンドグラス。

　祭壇には、白い花々。

　両側の席に、多くの人々。

　貴族たち。

　騎士たち。

　聖職者たち。

　孤児院の子供たち。

　貧民街の人々。

　みんなが、笑顔で待っている。

　オルガンが、優雅な音楽を奏でる。

　扉が、開く。

　私が、姿を現す。

　観衆が、息を呑む。

　みんなが、立ち上がる。

　バージンロードが、眼前に広がる。

　長い道。

　その先に──

　アルセインが立っていた。

　黒い礼服。

　銀色の瞳。

　私を見つめている。

　その目には、愛が宿っている。

　心臓が、跳ねる。

　推しが、待っている。

　私のために。

　一歩、踏み出す。

　ゆっくりと。

　音楽に合わせて。

　両側の人々が、微笑んでいる。

「綺麗だ」

「幸せそう」

　囁き声が、聞こえる。

　でも、私の目は、アルセインだけを見ている。

　彼も、私を見つめている。

　その目が、優しい。

　もう、冷たくない。

　温かい。

　愛に満ちている。

　一歩、また一歩。

　距離が、縮まる。

　ついに、祭壇に到着する。

　アルセインが、手を差し伸べる。

　私は、その手を取った。

　温かい。

　安心する。

　二人、並んで祭壇の前に立つ。

　神父が、厳かに言う。

「本日、ここに」

「ノエリア・リュミナリアと」

「アルセイン・セイヴランの」

「結婚の儀を執り行います」

　観衆が、静まる。

　神父が、アルセインに問う。

「アルセイン・セイヴラン」

「この女性を妻とし」

「生涯愛し続けることを誓いますか」

　アルセインが、私を見る。

　銀色の瞳が、深く私を見つめる。

　そして──

「誓います」

　力強い声。

　迷いのない声。

　胸が、熱くなる。

　神父が、私に問う。

「ノエリア・リュミナリア」

「この男性を夫とし」

「生涯愛し続けることを誓いますか」

　私も、アルセインを見つめる。

　推しの顔。

　愛する人の顔。

「誓います」

　涙が、浮かぶ。

　でも、声は震えない。

　神父が、頷く。

「では、指輪の交換を」

　アルセインが、指輪を取り出す。

　銀の指輪。

　私の指に、はめてくれる。

　優しく。

　丁寧に。

　私も、彼の指に指輪をはめる。

　同じデザイン。

　お揃いの指輪。

　永遠の絆。

「では」

　神父が、宣言する。

「神の御名において」

「二人を夫婦と認めます」

　観衆が、拍手する。

　大きな拍手。

　歓声が上がる。

「誓いのキスを」

　神父が、微笑む。

　アルセインが、私のヴェールを上げる。

　顔が、露わになる。

　二人、見つめ合う。

　彼の顔が、近づく。

　そして──

　唇が、触れた。

　優しいキス。

　愛に満ちたキス。

　永遠を誓うキス。

　拍手が、さらに大きくなる。

　歓声が、響く。

「おめでとうございます！」

「お幸せに！」

　祝福の声が、聖堂を満たす。

　唇が、離れる。

　アルセインが、微笑む。

　優しい笑顔。

　私も、微笑み返す。

　涙が、頬を伝う。

　嬉しくて。

　幸せで。

　ついに、推しと結婚した。

　夢が、叶った。

　－－－

　披露宴は、王宮の大広間で行われた。

　豪華な装飾。

　美しい花々。

　テーブルには、ご馳走が並ぶ。

　音楽が、優雅に流れる。

　私とアルセインは、上座に座る。

　手を繋いで。

　みんなが、祝福してくれる。

　第一王子エドウィンが、立ち上がる。

「スピーチを」

　彼が、グラスを掲げる。

「本日は、誠におめでとうございます」

「お二人の愛が、王国の希望です」

「これからも、末永くお幸せに」

　拍手が響く。

　第二王子ヴィクターも、続ける。

「公爵」

　彼が、笑顔で言う。

「良い妻を得たな」

「大切にしてやれよ」

　アルセインが、頷く。

「もちろんです」

　彼が、私の手を握る。

「彼女は、私の全てです」

　顔が、熱くなる。

　照れくさい。

　でも、嬉しい。

　国王も、祝福の言葉をくれる。

「聖女殿、公爵」

「王国のために、尽くしてくれた」

「感謝している」

「これからも、力を貸してほしい」

「もちろんです」

　私たちは、声を揃えて答える。

　宴が、続く。

　ダンスが始まる。

　私とアルセインが、最初に踊る。

　優雅なワルツ。

　完璧なリード。

　幸せな時間。

　孤児院の子供たちが、駆け寄ってくる。

「お姉さん！」

「おめでとう！」

　笑顔で、祝福してくれる。

　私が、夜にこっそり助けた子供たち。

　今は、みんな元気。

　幸せそう。

「ありがとう」

　私は、子供たちを抱きしめる。

　温かい。

　優しい。

　貧民街の人々も、来てくれた。

　かつて、私が治療した人々。

「聖女様」

　老人が、涙を流す。

「あの時は、ありがとうございました」

「あなたのおかげで、生きています」

　胸が、熱くなる。

　あの夜。

　一人で、こっそりと治療した夜。

　みんな、覚えていてくれた。

「お元気で何よりです」

　私は、微笑む。

　夜が、更けていく。

　その時──

　空が、光った。

　花火だ。

　美しい花火が、夜空を彩る。

　赤。

　青。

　金色。

　様々な色が、広がる。

　観衆が、歓声を上げる。

　私とアルセインは、テラスに出た。

　二人で、花火を見上げる。

　手を繋いで。

　美しい。

　幸せな夜。

「ノエリア」

　アルセインが、私を見る。

「はい」

「幸せですか」

　彼が、優しく聞く。

「とても」

　私は、微笑む。

「あなたと一緒なら」

「これ以上の幸せはありません」

　アルセインが、私を抱きしめる。

　優しく。

　強く。

「私も」

　彼が、囁く。

「あなたが全てです」

　二人で、花火を見上げる。

　美しい夜空。

　幸せな時間。

　永遠に、続けばいい。

　－－－

　宴が終わる。

　みんなが、帰っていく。

　祝福の言葉を残して。

　アルセインが、私をお姫様抱っこした。

「きゃっ」

　驚く私。

　彼が、微笑む。

「新居へ」

　馬車が、待っている。

　二人で乗り込む。

　馬車が、走り出す。

　新居は、王都の郊外。

　美しい屋敷。

　到着する。

　アルセインが、私を降ろす。

　扉を開ける。

　広い玄関。

　優雅な内装。

　私たちの家。

「ようこそ」

　アルセインが、私の手を取る。

「我が家へ」

　二人で、中に入る。

　リビングルームには、暖炉。

　温かい光が、部屋を照らす。

　アルセインが、私を抱きしめる。

　深く。

　優しく。

「これから、ずっと一緒ですね」

　私は、彼を見上げる。

「ええ」

　アルセインが、頷く。

「永遠に」

　二人で、キスをする。

　長く。

　深く。

　愛を確かめ合うキス。

　幸せ。

　こんなに幸せでいいのだろうか。

　でも、これは現実。

　推しと結婚した。

　推しと、永遠を誓った。

　夢が、叶った。

　－－－

　数年後。

　庭園に、笑い声が響いていた。

　小さな女の子が、走り回っている。

　銀色の髪。

　蒼い瞳。

　三歳のエレナ。

　私たちの娘。

「パパ、ママ、見て！」

　エレナが、花を摘んでいる。

　アルセインが、微笑む。

「綺麗だね、エレナ」

　彼が、娘を抱き上げる。

　エレナが、笑う。

　幸せそうな笑顔。

　私は、二人を見つめる。

　温かい光景。

　愛する家族。

　異世界に転生して。

　推しキャラを救うために。

　悪女を演じた。

　孤立した。

　罵倒された。

　それでも、貫いた。

　全ては、彼の破滅フラグを回避するため。

　でも、本当に大切だったのは──

　愛する人と共に歩むこと。

　推しを救うために始まった物語は。

　真実の愛で、終わった。

　アルセインが、私を見る。

「何を考えているんですか？」

　優しい声。

　私は、微笑む。

「あなたと出会えて」

「本当に良かったと」

　アルセインが、片手で私を抱き寄せる。

　もう片手では、エレナを抱いている。

「私もです」

　彼が、優しく言う。

「あなたがいなければ、私は……」

　私は、指を彼の唇に当てる。

「もう、過去のことです」

「今は、未来だけを見ましょう」

　エレナが、笑う。

「パパ、ママ、遊ぼう！」

　私たちも、笑顔になる。

「そうだね」

　三人で、手を繋ぐ。

　温かい。

　幸せ。

　これが、私の望んだ未来。

　推しを救って。

　愛し合って。

　家族を作って。

　平和に暮らす。

　青い空の下。

　三人で歩く。

　花が咲き誇る庭園を。

　笑い声が、響く。

　幸せな笑い声。

　これからも、ずっと。

　愛する人たちと。

　一緒に。

　ハッピーエンド。

　〔完〕


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【あとがき】

この作品を完結までお読みいただき、ありがとうございました！

感想やご意見などございましたら、お気軽にお寄せください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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