職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

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第1章 残酷な召喚

エピソード.4

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 その夜、拓海は眠れなかった。

 硬いベッドに横たわり、天井を見つめる。石造りの部屋は冷たく、外から聞こえる風の音が妙に大きい。

 脳裏に、今日の出来事が繰り返し浮かんでは消える。

 突然の転移。魔王軍。職業ガチャ。

 そして、自分に与えられた「情報分析官」という職業。

 拓海は上半身を起こし、手のひらを見つめた。そこに刻まれた本のマークが、月明かりを受けて淡く光っている。

「ステータス」

 試しに呟いてみた。ゼノスが言っていた言葉だ。

 すると、目の前に半透明の画面が浮かび上がった。

-----

蒼井拓海
職業:情報分析官  
レベル:1

HP:80  
MP:120  
攻撃力:5  
防御力:8  
魔力:25  
素早さ:15

スキル
・情報収集(Lv.1):対象の基本情報を取得する  
・傾向分析(Lv.1):収集した情報から傾向とパターンを導き出す  
・戦略立案(Lv.1):分析結果に基づいて最適な戦略を立案する

-----

 拓海は画面を凝視した。

 攻撃力5。

 他のクラスメイトが水晶に触れたとき、ちらりと見えたステータスを思い出す。高瀬の攻撃力は50を超えていた。田中も40近くあった。

 自分の攻撃力は、その十分の一。

「戦えない……」

 呟いた言葉が、静かな部屋に響いた。

 スキルを見ても、全て非戦闘系だ。情報を集め、分析し、戦略を立てる。それだけ。

 ダンジョンで役に立つのか?

 モンスターと戦えないのに、どうやって攻略する?

 頭の中で、様々な疑問が渦巻く。

 拓海は深く息を吐いた。

「考えても仕方ない。まずは情報を集めるしかない」

 自分に言い聞かせるように呟き、再びベッドに横になった。

 しかし眠気は訪れず、朝まで天井を見つめ続けることになった。

-----

 翌朝。

 拓海は食堂に向かった。長い廊下を歩き、階段を下りる。食堂は一階にあるらしい。

 扉を開けると、すでに何人かのクラスメイトが朝食を取っていた。

 長テーブルが並ぶ広い空間。窓からは朝日が差し込み、思ったよりも明るい。

 しかし空気は重かった。

 皆、無言で食事をしている。誰も笑っていない。昨日まで当たり前だった、朝の談笑はどこにもない。

 拓海は料理が並ぶカウンターで、パンとスープを受け取った。見た目は普通の食事だが、食欲は湧かなかった。

 空いているテーブルを探す。

 隅のテーブルに、美咲が一人で座っているのが見えた。

 拓海は迷わず、そちらに向かった。

「おはよう」

「……おはよう」

 美咲は小さく答えた。彼女の目は赤く腫れている。昨晩、泣いていたのだろう。

 拓海は向かいの席に座り、トレイを置いた。

「食べてるか?」

「……あんまり」

 美咲のトレイには、手をつけていないパンが一つ残っている。

「食べないと、体力持たないぞ」

「……うん」

 美咲は力なく頷いたが、パンには手を伸ばさなかった。

 拓海は自分のスープを一口飲んだ。少し塩辛いが、悪くはない。

 周囲を見回すと、クラスメイトたちがちらちらとこちらを見ていた。しかしすぐに視線を逸らす。

 誰も近づいてこない。

「……ねえ、拓海くん」

 美咲が小さく呟いた。

「私たち、どうなるのかな」

「分からない」

 拓海は正直に答えた。

「でも、生き延びる方法は必ずある」

「本当に……?」

 美咲が顔を上げた。その目には、かすかな希望と、圧倒的な不安が混ざっている。

「ああ」

 拓海は頷いた。

「俺の職業は情報分析官だ。つまり、情報を集めて分析するのが仕事だ」

 彼は周囲を見回した。

「この世界のこと、ダンジョンのこと、モンスターのこと。全部調べる。そうすれば、戦わずに攻略する方法が見つかるかもしれない」

「戦わずに……」

 美咲が目を見開いた。

「そんなこと、できるの?」

「分からない。でも試す価値はある」

 拓海は自分のパンをちぎり、口に運んだ。

「美咲の掃除係だって、何か役立つ使い道があるかもしれない」

「私の……掃除……」

 美咲は自分の手のひらを見つめた。そこには、箒のマークが刻まれている。

「昨日、ステータス見たか?」

「……少しだけ」

「どんなスキルがあった?」

「えっと……」

 美咲は目を閉じて思い出そうとする。

「クレンジング、っていうのと……ピュリファイ、だったかな」

「浄化系か」

 拓海は考え込んだ。

「もしかしたら、ダンジョン内の何かを浄化できるかもしれない」

「でも……掃除で、モンスターは倒せないよ」

「倒す必要はない。避ければいい」

 拓海は断言した。

「戦うことだけが攻略じゃない」

 美咲は黙っていたが、その表情が少しだけ明るくなった気がした。

-----

 その時、食堂の入り口から高瀬が入ってきた。

 彼の後ろには、山田、相沢、木村、佐藤が続いている。すでにパーティの中核ができているようだ。

 高瀬は食堂を見回し、拓海たちに気づいた。

 彼の顔に、わずかに嫌悪の表情が浮かんだ。

 しかしすぐに視線を逸らし、別のテーブルに向かった。

「……見られた」

 美咲が小さく呟いた。

「気にするな」

 拓海は平静を装った。しかし胸の奥に、冷たいものが広がっていくのを感じた。

 高瀬たちは大きなテーブルに座り、食事を始めた。彼らの周りには、自然と人が集まり始める。

「高瀬、パーティどうするんだ?」

「もう決まってる。俺、山田、相沢、木村、佐藤だ」

「マジか。最強パーティじゃん」

「当然だろ。俺たちが一番最初にダンジョンを攻略してやる」

 高瀬の自信に満ちた声が、食堂に響く。

 周囲のクラスメイトたちも、次々とパーティの話を始めた。

「俺たちも組もうぜ」

「誰が余ってる?」

「戦闘職が欲しいな」

 活気が戻ってくる。恐怖を紛らわせるための、必死の活気だ。

 拓海と美咲だけが、その輪から外れていた。

 誰も声をかけてこない。

 まるで、最初から存在していないかのように。

 美咲の肩が、また震え始めた。

 拓海は自分のスープを飲み干し、立ち上がった。

「行こう、美咲」

「どこへ……?」

「図書館だ。ゼノスが訓練場が使えるって言ってた。なら図書館もあるはずだ」

 拓海は美咲の手を引いて、食堂を出た。

 背後から、クラスメイトたちの談笑が聞こえる。

 その声が、徐々に遠ざかっていった。
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