職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第2章】絶望の烙印

エピソード.6

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 翌朝の食堂は、前日よりも活気があった。

 クラスメイトたちは、あちこちのテーブルで談笑している。話題は決まってパーティ編成のことだ。

「お前、魔法使いだろ?うちのパーティに入らないか?」

「いいけど、前衛は誰がやるんだ?」

「俺と木下で固める。回復は鈴木に頼む」

 交渉の声が、食堂中に響いている。

 拓海と美咲は、昨日と同じ隅のテーブルに座った。

 周囲からは、相変わらず距離を取られている。

「……みんな、パーティ決まってきたね」

 美咲が小さく呟いた。

「ああ」

 拓海はパンをちぎりながら、周囲を観察していた。

 すでに三つのパーティが確定しているようだ。高瀬のパーティ、田中のパーティ、そして女子を中心としたパーティ。

 残りの生徒たちも、急速にグループを形成しつつある。

「戦力になる奴を確保しないと」

「僧侶が足りない」

「盗賊も必要だ」

 必死の声が飛び交う。

 まるで、椅子取りゲームのように。

 拓海は自分のスープを一口飲んだ。

「私たち……誰も誘ってくれないね」

 美咲の声が震えた。

「当然だ。戦えない職業だから」

 拓海は冷静に答えた。しかしその言葉が、美咲の心をさらに傷つけたかもしれない。

「ごめん……」

「いや、事実だから」

 拓海は首を振った。

「感傷的になっても仕方ない。俺たちは俺たちで、生き延びる方法を考えるだけだ」

「……うん」

 美咲は力なく頷いた。

-----

 その時、食堂の入り口が大きく開いた。

 高瀬が入ってくる。彼の後ろには、昨日と同じメンバーが続いている。

 山田、相沢、木村、佐藤。

 五人全員が、どこか自信に満ちた表情をしていた。

 高瀬は食堂の中央に立ち、全員を見回した。

「おい、聞けよ」

 彼の声が響くと、食堂が静まり返った。

 全員の視線が高瀬に集中する。

「俺たちのパーティは決まった」

 高瀬は胸を張って宣言した。

「勇者の俺、山田、魔法使いの相沢、戦士の木村、僧侶の佐藤だ」

 その言葉に、何人かが小さく息を呑んだ。

「最強の編成じゃねえか」

「マジかよ……」

 ざわめきが広がる。

「俺たちは、一番難しいダンジョンに挑戦する」

 高瀬は不敵に笑った。

「そして、必ず攻略する。お前らより先にな」

 彼の言葉に、クラスメイトたちの表情が強張った。

 帰還できるのは五名だけ。つまり、一つのパーティだけ。

 高瀬は暗に宣言している。

 俺たちが帰る。お前らは置いていく、と。

「……ふざけんなよ」

 誰かが小さく呟いた。

「でも、確かに高瀬のパーティは強い」

「勝てるかもしれない」

 複雑な感情が、食堂を満たしていく。

 拓海は黙って、その様子を観察していた。

「ああ、それと」

 高瀬が再び口を開いた。

「パーティに入りたい奴は、ちゃんと考えて選べよ」

 彼の視線が、食堂を見回す。

 そして、拓海と美咲の方を向いた。

「戦力にならない奴を入れたら、全員が死ぬぞ」

 その言葉に、拓海は顔を上げた。

 高瀬と目が合う。

 彼の目には、明確な侮蔑があった。

「足手まといはいらない。それだけだ」

 高瀬はそう言い残して、自分のパーティメンバーと共にテーブルに座った。

 食堂が再び騒がしくなる。

 しかし今度は、警戒と焦りが混ざった空気だ。

「戦力になる奴と組まないと」

「足手まといは避けないと」

 高瀬の言葉が、クラス全体に影響を与えていた。

 拓海は美咲を見た。

 彼女は俯いて、スープを見つめている。震える手で、スプーンを握りしめていた。

「美咲」

「……大丈夫」

 彼女は小さく答えた。

「大丈夫じゃない」

「でも……高瀬くんの言う通りだもん」

 美咲は顔を上げた。目に涙が浮かんでいる。

「私、戦えない。掃除しかできない」

「それでも……」

「足手まといなんだよ、私……」

 美咲の声が震えた。

 拓海は何も言えなかった。

 慰めの言葉が、喉の奥で引っかかって出てこない。

-----

 食事を終えて食堂を出ると、廊下で田中に呼び止められた。

「拓海」

 振り返ると、田中が一人で立っていた。

 親友だった男。同じクラスで、同じ部活で、いつも一緒にいた相手。

「……何だ」

 拓海は冷たく答えた。

「その……」

 田中は言葉に詰まった。

「お前ら、パーティ決まったか?」

「まだだ」

「そうか……」

 田中は視線を逸らした。

 沈黙が流れる。

「……なあ、拓海」

 田中が口を開いた。

「俺も、お前を誘いたかったんだ」

「嘘つくな」

 拓海は即座に否定した。

「お前は決めてた。最初から」

「それは……」

「いいよ、分かってる」

 拓海は首を振った。

「お前は生き延びたい。当然だ。俺だって同じだ」

「拓海……」

「だから、気にするな」

 拓海は田中の横を通り過ぎようとした。

「待てよ!」

 田中が拓海の腕を掴んだ。

「俺は……俺だって悩んだんだ」

「でも結局、見捨てた」

 拓海は田中の手を振り払った。

「もういい。お前はお前の道を行け」

「拓海……」

 田中の声が、背中に届く。

 しかし拓海は振り返らなかった。

 美咲が心配そうに、拓海の袖を引いた。

「行こう」

 拓海は美咲と共に、廊下を歩き去った。

 田中の呼ぶ声は、もう聞こえなかった。
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