職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

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【第3章】初ダンジョン、絶望の洗礼

エピソード.11

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 拓海は咄嗟に美咲を岩陰に引き寄せた。

 松明を消し、息を殺す。

 前方から、複数の人影が近づいてくる。

 松明の光が揺れ、足音が響く。

 高瀬のパーティだ。

 五人全員、装備を整えている。しかし、その表情は険しい。

「くそ……思ったより厄介だ」

 高瀬が苛立った声で呟いた。

「影の迷宮の前のウォーミングアップだと思ったのに、レベル高すぎだろ」

「相沢、MP残ってるか?」

「半分くらい……」

 相沢が疲れた声で答えた。

「このペースじゃ、最深部まで持たない」

「一旦撤退するか?」

 木村が提案した。

「ふざけんな!」

 高瀬が怒鳴った。

「ここで諦めたら、他のパーティに先を越される!」

 彼の声が洞窟に響く。

 拓海は息を殺したまま、様子を窺った。

 高瀬たちは立ち止まり、短い会議をしている。


 五人は方向転換し、拓海たちがいる方へ歩いてきた。

 まずい。

 このままでは見つかる。

 拓海は美咲の手を引き、さらに影の奥へ身を潜めた。

 高瀬たちが通り過ぎていく。

 その背中が見えなくなるまで、拓海は動かなかった。

-----

「……行っちゃった」

 美咲が小さく呟いた。

「ああ」

 拓海は複雑な表情で頷いた。

「高瀬たちも、ここに来る」

「どうしよう……」

 美咲が不安そうに拓海を見た。

「鉢合わせしたら……」

「大丈夫だ」

 拓海は冷静に考えた。

「ダンジョンは広い。同じ場所にいる確率は低い」

「それに、高瀬たちは攻略を急いでる。俺たちより速く進むだろう」

「……そうだね」

 美咲は納得したように頷いた。

 二人は再び松明に火をつけ、探索を再開した。

-----

 さらに三十分ほど進むと、通路が広くなった。

 天井も高くなり、部屋のような空間に出る。

 壁には松明が設置されていて、明るい。

 そして、部屋の中央に複数のゴブリンがいた。

 五体。

 全員がこちらを向いている。

「ギギギ!」

 甲高い叫び声。

 拓海は即座に判断した。

「逃げるぞ!」

 二人は来た道を引き返した。

 ゴブリンたちが追いかけてくる。

 足音が近づく。

 拓海は必死で走った。

 美咲の手を引き、角を曲がり、通路を駆け抜ける。

 しかし前方から、別の声が聞こえてきた。

「何だ、この音は?」

 高瀬の声だった。

 拓海は立ち止まった。

 背後からゴブリン。

 前方に高瀬たち。

 挟まれた。

「まずい……!」

 その時、角を曲がって高瀬のパーティが現れた。

 五人全員、武器を構えている。

 そして、拓海たちの背後に迫るゴブリンの群れを見た。

「ゴブリンか」

 高瀬が不敵に笑った。

「ちょうどいい。ウォーミングアップだ」

 彼は剣を構えた。

「おい、お前ら」

 高瀬が拓海たちを見た。

「そこに立ってろ」

「え……?」

 拓海が聞き返した瞬間、山田が理解した。

「高瀬、まさか……」

「囮だよ、囮」

 高瀬が冷たく笑った。

「お前らそこに立ってろ。ゴブリンをおびき寄せてくれ」

「待て、それは……!」

 拓海が抗議しようとした。

 しかし高瀬のパーティは、すでに拓海たちの背後に回り込んでいた。

 拓海と美咲を前に押し出す形。

 ゴブリンたちが、二人に向かって突進してくる。

「ギャアアア!」

「拓海くん!」

 美咲が悲鳴を上げた。

 その瞬間、高瀬のパーティが一斉に攻撃を開始した。

 相沢が火球を放つ。

 木村が剣を振るう。

 佐藤が回復魔法の準備をする。

 攻撃が、拓海たちのすぐ横を通り過ぎた。

 炎の熱気が顔を焼く。

 剣風が髪を揺らす。

「うわああ!」

 拓海は美咲を抱えて、地面に伏せた。

 頭上で、ゴブリンたちの悲鳴が響く。

 高瀬たちの攻撃が、次々とゴブリンを倒していく。

 数秒後。

 静寂が訪れた。

 拓海は恐る恐る顔を上げた。

 ゴブリンたちは全員、倒れていた。

 高瀬のパーティは、無傷だ。

「よし、全滅だ」

 高瀬が満足そうに剣を収めた。

 そして、拓海たちを見下ろした。

「お前らのおかげで助かったよ」

 その言葉に、拓海は拳を握りしめた。

「助かった……?」

「ああ。囮として、な」

 高瀬が嘲笑った。

「お前ら、戦えないんだろ?だったら囮くらいしか使い道ねえよ」

「高瀬……!」

 拓海が立ち上がろうとした。

 しかし体が動かない。

 攻撃の余波で、壁に叩きつけられていた。

 体中が痛い。

「ぷっ」

 相沢が笑い声を漏らした。

「ねえ、役に立つこともあるんだね」

「掃除係と情報分析官でも」

 木村も笑った。

「まあ、それくらいしか使い道ないけどな」

 拓海は悔しさで歯を食いしばった。

 美咲は拓海にしがみついたまま、震えていた。

「じゃあな、足手まといども」

 高瀬が笑いながら、仲間たちと共に奥へ進んでいった。

 彼らの笑い声が、洞窟に響いて消えていった。

-----

 拓海と美咲は、しばらく動けなかった。

 壁に寄りかかったまま、呼吸を整える。

 体中が痛い。

 しかし、それ以上に心が痛かった。

「……ひどい」

 美咲が小さく呟いた。

「私たちを……囮にするなんて」

「ああ」

 拓海は力なく答えた。

「でも、止められなかった」

「……悔しい」

 美咲の声が震えた。

「すごく、悔しい」

 拓海は何も言えなかった。

 ただ黙って、美咲の肩を抱いた。

 二人は暗い洞窟の中で、小さく身を寄せ合った。
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