職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第3章】初ダンジョン、絶望の洗礼

エピソード.12

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 どれくらい時間が経ったのだろう。

 拓海は壁に寄りかかったまま、天井を見つめていた。

 体の痛みは、少しずつ引いていく。

 しかし心の痛みは、消えない。

 囮にされた。

 クラスメイトに、使い捨ての道具のように扱われた。

「……拓海くん」

 美咲が震える声で呼んだ。

「私たち、もう帰ろうよ」

「え……?」

「こんなの、無理だよ」

 美咲の目には、涙が浮かんでいた。

「ゴブリンに襲われて、高瀬たちに囮にされて……」

「もう、嫌だよ」

 拓海は美咲を見た。

 彼女の顔は、恐怖と絶望に染まっている。

「……そうだな」

 拓海は静かに答えた。

「一旦、戻るか」

「うん……」

 美咲が安堵の表情を浮かべた。

 拓海は立ち上がった。体中が軋む。

「出口は……」

 周囲を見回した瞬間、拓海は気づいた。

 来た道が分からない。

 高瀬たちに囲まれ、混乱の中で位置感覚を失っていた。

「……まずい」

「どうしたの?」

「道が、分からない」

 拓海の言葉に、美咲の顔が青ざめた。

「嘘……」

「いや、落ち着けば思い出せる」

 拓海はスキル「傾向分析」を使い、周囲の情報を集めた。

 壁の汚れ具合、空気の流れ、足跡の方向。

 しかし、混乱していた状況では情報が不十分だ。

「……こっちだと思う」

 拓海は右の通路を指差した。

「本当に……?」

「分からない。でも、進むしかない」

 二人は松明を頼りに、通路を進み始めた。

-----

 十分ほど歩いたが、見覚えのある場所に出ない。

 それどころか、通路はますます複雑になっていく。

「拓海くん……」

 美咲の声が不安で震えていた。

「これ、本当に出口に向かってる……?」

「……分からない」

 拓海は正直に答えた。

 さらに進むと、通路が突然広くなった。

 天井が高く、壁には奇妙な装飾が施されている。

「……ここ、さっきと雰囲気が違う」

 美咲が呟いた。

「ああ」

 拓海も違和感を覚えた。

 ここは、ゴブリンの巣窟の通常エリアではない。

 もっと深い場所。

 未知のエリア。

「まずい、迷った……」

 拓海が呟いた瞬間、足元の床が音を立てた。

 ミシリ。

「え……?」

 美咲が不安そうに足元を見た。

 次の瞬間、床が崩れた。

「うわあああ!」

 二人は奈落へと落ちていった。

-----

 落下の感覚。

 暗闇。

 体が何度も壁に当たり、激痛が走る。

 拓海は必死で美咲を抱きしめた。

 少しでも衝撃を和らげようと。

 そして、地面に叩きつけられた。

 ドサッ。

「ぐっ……!」

 拓海は呻き声を上げた。

 全身が痛い。

 しかし、骨は折れていないようだ。

「美咲……大丈夫か?」

「……うん」

 美咲が小さく答えた。

 彼女も無事だ。拓海がクッションになったおかげで、大きな怪我はない。

 拓海はゆっくりと体を起こした。

 周囲は暗い。

 松明は落下の途中で失った。

 しかし、完全な闇ではない。

 どこからか、淡い光が漏れている。

「……ここは?」

 拓海は目を凝らした。

 広い空間。

 天井は遥か上で、落ちてきた穴が小さく見える。

 壁には、美しい魔法陣が描かれている。

 そして、部屋の中央には……玉座。

 豪華な装飾が施された、石造りの玉座。

 そこに、誰かが座っている。

 小さな影。

 銀色の髪が、淡い光を反射している。

「……人間?」

 静かな声が響いた。

 少女の声だ。

 玉座に座っていた影が、ゆっくりと立ち上がった。

 拓海は息を呑んだ。

 銀髪、紫の瞳。

 見た目は十五歳くらいの少女。

 しかし、その目には年齢に似合わない威厳があった。

 そして、彼女の周囲には強大な魔力が渦巻いている。

「どうして、ここに?」

 少女が首を傾げた。

「ここは、立ち入り禁止区域のはずだけど」

 拓海は言葉が出なかった。

 この少女は、何者なのか。

 スキル「情報収集」が自動で発動した。

 しかし、ほとんど情報が得られない。

 強すぎる存在は、低レベルのスキルでは分析できないのか。

 ただ一つだけ、情報が浮かび上がった。

-----

リリア  
種族:???  
職業:ダンジョン主  
レベル:???

-----

「ダンジョン主……?」

 拓海が呟いた。

「そうよ」

 リリアと呼ばれた少女が頷いた。

「私は、このゴブリンの巣窟の主」

 彼女は拓海たちを観察するように見つめた。

「侵入者は通常、殺すのだけれど……」

 その言葉に、美咲が震えた。

 拓海は美咲を庇うように、前に立った。

「待ってくれ」

「ん?」

「俺たちは、戦うつもりはない」

 拓海は必死で言葉を紡いだ。

「ここに来たのは、事故だ。床が崩れて、落ちてきただけで」

「事故……」

 リリアは興味深そうに拓海を見た。

「でも、侵入者は侵入者よ」

 彼女の手が、ゆっくりと上がる。

 魔力が集まり始める。

 拓海は覚悟を決めた。

 ここで、死ぬのか。

 しかしその時、リリアの動きが止まった。

「……待って」

 彼女が何かに気づいたように目を見開いた。

「あなたたち……職業は何?」

「え……?」

「職業よ。教えて」

 リリアの声には、期待のようなものが混じっていた。

「……情報分析官と、掃除係です」

 拓海が答えた。

 リリアの目が、さらに大きく見開かれた。

「掃除係……?」

 彼女は美咲をじっと見つめた。

「本当に、掃除係?」

「は、はい……」

 美咲が震えながら答えた。

 リリアは数秒、沈黙した。

 そして、突然笑顔になった。

「面白い」

 彼女の魔力が消える。

「とても、面白いわ」

 リリアは玉座に座り直した。

「殺すのはやめにする」

「え……?」

「代わりに、話を聞かせて」

 彼女は興味津々といった表情で、拓海たちを見た。

「あなたたち、どうしてここに来たの?そして、掃除係って何ができるの?」

 拓海と美咲は顔を見合わせた。

 何が起こっているのか、理解できない。

 しかし、殺されないのは確かだ。

「……話します」

 拓海は覚悟を決めた。

「全部、話します」

 リリアは満足そうに頷いた。

「聞かせて。あなたたちの話を」
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