職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第4章】ダンジョン主との出会い

エピソード.15

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 食事を終えた後、リリアが立ち上がった。

「今日はもう遅いから、ゆっくり休んで」

 彼女は窓の外を見た。魔法で映し出された空は、すでに真っ暗だ。

「明日の朝、また会いましょう」

「あの……」

 美咲が遠慮がちに手を上げた。

「お風呂とか、ありますか……?」

「ああ、そうね」

 リリアが手を叩いた。

「浴室は廊下の突き当たり」

「温泉が湧いてるから、好きな時に使っていいわ」

「温泉……?」

 拓海が驚いて聞き返した。

「ええ。ダンジョンの地下深くには、地熱があるの」

 リリアは当たり前のように答えた。

「それを利用した温泉よ。魔力回復にもいいわ」

「すごい……」

 美咲が目を輝かせた。

「ダンジョンって、こんなに快適なんですね」

「全部が全部、そうじゃないわよ」

 リリアは苦笑した。

「私が個人的に整えただけ」

「他のダンジョン主は、もっと質素な生活をしてるはず」

-----

 拓海は自分の部屋に戻った。

 ベッドに腰を下ろし、深くため息をついた。

 今日一日の出来事が、頭の中を巡る。

 ダンジョンへの挑戦。

 高瀬たちに囮にされたこと。

 迷い込んで、リリアと出会ったこと。

 そして、ダンジョンで働くことになったこと。

「……まさか、こんな展開になるとは」

 拓海は呟いた。

 当初の計画は、ダンジョンを攻略して元の世界に帰ること。

 しかし今は、ダンジョンの運営側になっている。

 これでいいのか?

 クラスメイトたちを裏切ることになるのでは?

 しかし、冷静に考えれば分かる。

 クラスメイトたちは、自分たちを見捨てた。

 囮にした。

 もう、仲間ではない。

「……仕方ない」

 拓海は自分に言い聞かせた。

「生き延びるためだ」

 彼は机の上の紙とペンを手に取った。

 今日得た情報を、整理して書き出す。

 ダンジョンの構造。魔力生産の仕組み。リリアの状況。

 全てを記録していく。

 スキル「情報収集」のおかげで、記憶は鮮明だ。

 書き出すことで、頭の中がさらに整理されていく。

「明日から、本格的に分析を始めないと」

 拓海はノートを閉じた。

 そして、ベッドに横になった。

 柔らかいマットレスが、疲れた体を包み込む。

 宿舎のベッドよりも、遥かに快適だ。

「ここなら……生きていける」

 その思いとともに、拓海は深い眠りに落ちた。

-----

 翌朝。

 拓海が目を覚ますと、部屋は明るかった。

 窓から朝日が差し込んでいる。

 もちろん、魔法で映し出された光景だが、それでも気持ちがいい。

 拓海は体を起こした。

 全身の痛みは、かなり引いている。

 昨夜の温泉と、快適な睡眠のおかげだろう。

 着替えを済ませ、部屋を出た。

 廊下には、すでに美咲が立っていた。

「おはよう、拓海くん」

「おはよう」

 美咲の表情は、昨日よりも明るい。

 不安と恐怖が消え、希望が戻ってきている。

「昨日、温泉入った?」

「うん。すごく気持ちよかった」

 美咲が嬉しそうに笑った。

「体の痛みも、だいぶ楽になったよ」

「良かった」

 二人はリリアの部屋に向かった。

 ノックをすると、すぐに返事が返ってきた。

「入って」

 部屋に入ると、テーブルには朝食が並んでいた。

 パン、卵料理、サラダ、温かいスープ。

 リリアはすでに席についていた。

「おはよう。よく眠れた?」

「はい」

 拓海と美咲は席に座った。

「それは良かった」

 リリアが微笑んだ。

「さて、食事をしながら今日の予定を話しましょう」

-----

 朝食を取りながら、リリアが説明を始めた。

「今日は、まずダンジョン全体を案内するわ」

「構造を把握してもらわないと、仕事も始められないからね」

「分かりました」

 拓海が頷いた。

「それと、モンスターたちにも紹介しないと」

「モンスター……?」

 美咲が不安そうに尋ねた。

「大丈夫よ」

 リリアは安心させるように言った。

「私の命令があれば、彼らはあなたたちを襲わない」

「むしろ、協力してくれるはず」

「モンスターって、そんなに賢いんですか?」

 拓海が尋ねた。

「ピンキリよ」

 リリアが答えた。

「ゴブリンは比較的知能が高い。簡単な会話もできるわ」

「でも、スライムとかは本能だけで動いてる」

「なるほど……」

 拓海は情報を記憶した。

「じゃあ、食事が終わったら出発しましょう」

-----

 食事を終え、三人は廊下に出た。

 リリアが先頭を歩き、拓海と美咲が続く。

 廊下の突き当たりに、大きな扉があった。

 リリアがそれを開けると、向こうは洞窟の通路だった。

「ここから先が、ダンジョンの本体よ」

 リリアが説明した。

「私の居住区は、メインダンジョンから独立してるの」

「だから、侵入者がここに来ることはない」

「安全なんですね」

「ええ」

 三人は通路を進んだ。

 しばらく歩くと、広い空間に出た。

 そこには、十体ほどのゴブリンが集まっていた。

 彼らは拓海たちを見て、ざわめいた。

「人間……?」

「なぜここに……?」

 片言の言葉が聞こえる。

「静まりなさい」

 リリアの声が響いた。

 ゴブリンたちは即座に黙り、リリアの前に整列した。

「紹介するわ」

 リリアが拓海たちを示した。

「蒼井拓海と白石美咲。今日から、私の下で働く人間よ」

 ゴブリンたちが、再びざわめいた。

「人間が……働く……?」

「敵じゃない……?」

 その中から、一体の大きなゴブリンが前に出た。

 他のゴブリンよりも体格が良く、粗末な鎧を着ている。

「リリア様」

 そのゴブリンが低い声で話した。

「人間を信用するのは、危険では?」

「心配ないわ、ゴルグ」

 リリアは穏やかに答えた。

「彼らは戦闘能力がない。脅威にはならないわ」

「それに、私たちを助けてくれる」

 ゴルグと呼ばれたゴブリンが、拓海たちを見た。

 鋭い目だ。

「……分かった」

 彼は一歩下がった。

「リリア様が言うなら、信じる」

「ありがとう」

 リリアは満足そうに頷いた。

 そして、拓海たちに向き直った。

「彼がゴルグ。ゴブリンたちのリーダーよ」

「よろしく」

 拓海が頭を下げた。

 美咲も慌てて頭を下げる。

 ゴルグは黙って頷いた。

「人間……敵じゃないなら……いい」

 彼は短く言って、仲間たちの元に戻っていった。

「さて、案内を続けましょう」

 リリアが歩き出した。

 拓海と美咲は、少し緊張しながらその後に続いた。

 モンスターと共に働く。

 それが、これからの日常になる。

 奇妙だが、不思議と悪い気はしなかった。
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