職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第4章】ダンジョン主との出会い

エピソード.14

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 契約が成立した後、リリアは立ち上がった。

「じゃあ、まずはあなたたちの部屋を用意しないと」

 彼女は手を一振りした。

 すると、壁の一部が光り始め、扉が出現した。

「ついてきて」

 リリアが歩き出す。

 拓海と美咲は顔を見合わせてから、その後に続いた。

-----

 扉の向こうは、長い廊下だった。

 石造りだが、最深部の玉座の間と同じように、装飾が施されている。

 壁には等間隔で魔法の明かりが灯り、薄暗いが歩くには十分な明るさだ。

「ここは、私の居住区」

 リリアが説明した。

「ゴブリンたちとは別の空間よ」

「ゴブリンたちは……あなたの部下ですか?」

 拓海が尋ねた。

「そうね」

 リリアが頷いた。

「ダンジョンのモンスターは、私の管理下にある」

「でも、彼らは彼らで独自のコミュニティを持ってるから、あまり干渉しないの」

 廊下を進むと、いくつかの扉が並んでいた。

 リリアは二つの扉の前で立ち止まった。

「ここ」

 彼女が右の扉を開けた。

 中は、予想以上に快適そうな部屋だった。

 ベッド、机、椅子、本棚。

 窓もあり、外の景色が見える。

 しかし、ここは地下のはず。

「窓……?」

 美咲が不思議そうに近づいた。

「魔法よ」

 リリアが説明した。

「本当の窓じゃなくて、地上の景色を映す魔法」

「閉塞感があると、精神的に良くないからね」

 窓の外には、夕暮れの空が映っていた。

 まるで、本当に地上にいるかのような錯覚。

「こっちは、もう一つの部屋」

 リリアが左の扉も開けた。

 同じような造りの部屋が、もう一つある。

「男女別の部屋よ。どっちがいい?」

「じゃあ、私がこっち」

 美咲が右の部屋を選んだ。

「分かった。拓海は左ね」

 拓海は部屋の中に入った。

 ベッドに触れてみる。柔らかい。

 机の上には、紙とペンが置いてある。

「すごい……」

 拓海は呟いた。

「宿舎より、ずっといい」

「でしょう?」

 リリアが満足そうに笑った。

「私は快適な環境を大切にしてるの」

「疲れた体では、良い仕事はできないもの」

 美咲も自分の部屋を見回して、感動している様子だった。

「本当に……ここに住んでいいんですか?」

「ええ。試用期間の間は、ここがあなたたちの家よ」

 リリアは廊下に戻った。

「食事は私の部屋で一緒に取りましょう」

「今日はもう遅いから、簡単なものだけど」

「あ、ありがとうございます……」

 美咲が深々と頭を下げた。

「礼はいいわ」

 リリアは首を振った。

「あなたたちは、これから私のために働いてくれるんだから」

「対等な関係よ」

-----

 リリアの部屋は、二人の部屋よりも大きかった。

 中央には大きなテーブルがあり、そこに簡単な食事が並べられていた。

 パン、スープ、チーズ、果物。

 見た目は質素だが、温かい食事だ。

「座って」

 リリアが椅子を勧めた。

 拓海と美咲は、緊張しながら席についた。

 リリアも向かいの席に座り、スープを一口飲んだ。

「さて」

 彼女がテーブルに両肘をついた。

「明日から本格的に働いてもらうけど、まずは状況を説明しないとね」

「はい」

 拓海がパンを口に運びながら答えた。

「このダンジョンは、魔力生産施設だって言ったでしょ?」

「ええ」

「具体的には、こういう仕組みよ」

 リリアが説明を始めた。

「ダンジョン内には魔力が循環している」

「モンスターが活動し、冒険者が侵入し、戦闘が起きる」

「その過程で、魔力が精錬されていく」

「精錬された魔力は、魔力結晶として結晶化する」

 拓海はスキル「情報収集」で、全ての情報を記憶していく。

「その魔力結晶を、魔王軍に納めるのが私たちの仕事」

「月間ノルマがあって、それを達成しないと……」

 リリアの表情が曇った。

「評価が下がる」

「そして三ヶ月連続で未達成だと、解任される」

「解任されたら……どうなるんですか?」

 美咲が心配そうに尋ねた。

「分からないわ」

 リリアは正直に答えた。

「おそらく、別の仕事を与えられる」

「最悪の場合、ダンジョンが閉鎖されて、モンスターたちも……」

 彼女は言葉を切った。

「だから、何としてでもノルマを達成しないといけない」

 拓海は黙って聞いていた。

 リリアもまた、必死なのだ。

「で、現状の問題点なんだけど」

 リリアが資料を取り出した。

 羊皮紙に、グラフや数字が書かれている。

「魔力生産効率が、標準の70%しかない」

「原因は、いくつかある」

 彼女が指で項目を示していく。

「魔力循環の停滞」

「モンスター配置の非効率」

「ダンジョン構造の無駄」

「清掃不足による汚染」

 拓海の目が、最後の項目で止まった。

「清掃不足……」

「ええ」

 リリアが頷いた。

「ダンジョン内は、戦闘の痕跡や死骸で汚れてる」

「それが魔力循環を阻害してるの」

「でも、私一人では全部を清掃できない」

 彼女は美咲を見た。

「だから、あなたの力が必要なの」

 美咲は驚いたように目を見開いた。

「私が……本当に役に立てる……?」

「ええ」

 リリアは断言した。

「あなたの浄化スキルは、この問題を解決できる唯一の方法よ」

 美咲の目に、涙が浮かんだ。

 嬉しさの涙だ。

「私……頑張ります」

 彼女の声が震えていた。

「ずっと、役立たずだって言われてきて」

「でも、ここでなら……」

「もちろんよ」

 リリアが優しく微笑んだ。

「あなたは、ここでは必要不可欠な存在」

 拓海も、心の中で安堵していた。

 美咲が、ようやく自分の価値を認められた。

 それだけで、ここに来た意味があった。

「そして、拓海」

 リリアが拓海を見た。

「あなたには、ダンジョン全体の分析をお願いしたい」

「構造の無駄、モンスター配置の問題点、改善案の立案」

「全部、あなたの分析能力に頼るわ」

「分かりました」

 拓海は頷いた。

「明日から、本格的に調査を始めます」

「ありがとう」

 リリアは満足そうに微笑んだ。

 そして、グラスに水を注いだ。

「じゃあ、乾杯しましょう」

「新しい仲間との出会いに」

 三人はグラスを掲げた。

「乾杯」

 カチンという、小さな音が響いた。

 奇妙な同盟。

 しかし、確かな絆の始まり。

 拓海は窓の外の夕焼けを見た。

 魔法で映し出された景色だが、それでも美しい。

 ここで、新しい人生が始まる。

 そんな予感がした。
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