職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第7章】クラスメイトの現状

エピソード.31

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 拓海と美咲の噂は、瞬く間に転移者全体に広がった。

 三日後、街の酒場で転移者たちが集まる非公式の会合が開かれた。

 六つのパーティから、代表者が集まっている。

 高瀬のパーティ、田中のパーティ、そして他の四つ。

 合計三十名のうち、死者五名を除いた二十五名。

 拓海と美咲を除けば、残り二十三名だ。

「で、本当なのか?」

 田中のパーティリーダーである中村が尋ねた。

「拓海と美咲が、魔王軍についたって」

「本当だ」

 高瀬が苦々しく答えた。

「この目で見た」

「あいつら、ダンジョン主の隣に立ってた」

「信じられない……」

 女子パーティのリーダー、橋本彩が呟いた。

「あの二人、そんなことするなんて」

「戦えないから、仕方なかったのかもしれないけど……」

「仕方ない?」

 高瀬が鋭く反応した。

「敵についたことが、仕方ない?」

「でも……」

 橋本が言葉に詰まった。

「私たち、あの二人を見捨てたのも事実だよ」

「パーティに入れてあげなかった」

 その言葉に、何人かが視線を逸らした。

 罪悪感。

 誰もが心のどこかで感じている。

「見捨てたんじゃない」

 高瀬が強い口調で言った。

「戦力にならない奴を、連れて行けなかっただけだ」

「それは、合理的な判断だ」

「合理的……」

 田中が小さく呟いた。

「それで良かったのか?」

「何だと?」

 高瀬が睨みつけた。

「お前、拓海の肩を持つのか?」

「そうじゃない」

 田中が首を振った。

「ただ……俺たちの判断が、あいつらを敵に回したのかもしれない」

「そう思っただけだ」

 沈黙が落ちた。

 誰も、その言葉に反論できない。

「とにかく」

 中村が話題を変えた。

「これからどうするかだ」

「拓海たちがいるダンジョンは、攻略できないってことだろ?」

「ああ」

 高瀬が頷いた。

「最適化されてる」

「モンスター配置、罠、全てが効率的になってた」

「俺たちのレベルじゃ、無理だ」

「じゃあ、別のダンジョンを探すしかないな」

「でも……」

 橋本が不安そうに言った。

「他のダンジョンも、同じように最適化されてたら?」

 その言葉に、全員の顔が曇った。

「まさか……」

「いや、可能性はある」

 田中が言った。

「拓海の職業、情報分析官だったよな」

「あいつが本気で分析すれば、ダンジョンの効率化なんて簡単だろう」

「それに、美咲の掃除係も」

 佐藤が付け加えた。

「あの子、浄化スキルを持ってた」

「ダンジョンの清掃に使えば、魔力循環が改善される」

「つまり……」

 中村が青ざめた。

「あいつら、複数のダンジョンを改善してる可能性があるのか?」

「ああ」

 田中が重く頷いた。

「そうなると、俺たちの攻略は……」

「さらに難しくなる」

 絶望的な空気が、テーブルを支配した。

-----

 その頃、魔王軍本部では。

 拓海と美咲は、ゼノスの執務室に呼ばれていた。

「報告を聞いた」

 ゼノスが書類を置いた。

「ゴブリンの巣窟で、転移者の一団と遭遇したそうだな」

「はい」

 拓海が答えた。

「元クラスメイトです」

「問題はあったか?」

「いえ」

 拓海は首を振った。

「ダンジョン主のリリアが対処しました」

「そうか」

 ゼノスは少し考えてから、口を開いた。

「お前たちのこと、転移者全体に知られただろう」

「おそらく」

「気にするな」

 ゼノスが断言した。

「お前たちは、魔王軍の正式な一員だ」

「誰も手出しはできない」

「ありがとうございます」

「それより」

 ゼノスが別の書類を取り出した。

「新しい依頼だ」

「また、ダンジョンの改善ですか?」

 美咲が尋ねた。

「いや」

 ゼノスは首を振った。

「今回は、調査だ」

 彼が地図を広げる。

「この地域に、未開拓のダンジョンがある」

「魔力反応は強いが、詳細が不明だ」

「お前たちに、偵察してほしい」

 拓海は地図を見た。

 街から三日ほどの距離にある、山岳地帯。

「危険ではないですか?」

「護衛をつける」

 ゼノスが答えた。

「魔王軍の精鋭部隊が同行する」

「お前たちの仕事は、ダンジョンの構造を分析すること」

「戦闘は、護衛に任せればいい」

 拓海は美咲を見た。

 彼女が小さく頷く。

「分かりました」

 拓海が答えた。

「引き受けます」

「出発は、三日後だ」

 ゼノスが立ち上がった。

「準備しておけ」

-----

 執務室を出た後、二人は廊下を歩いていた。

「未開拓のダンジョン……」

 美咲が不安そうに呟いた。

「大丈夫かな」

「護衛がいる」

 拓海が答えた。

「それに、偵察だけだ」

「深入りはしない」

「そうだね」

 美咲が少し安心した様子で頷いた。

 その時、廊下の向こうから複数の足音が聞こえた。

 拓海は立ち止まり、警戒した。

 角を曲がってきたのは——

 高瀬たちだった。

 五人全員が、魔王軍本部にいる。

 おそらく、何かの用事で呼ばれたのだろう。

 両者は、廊下で向かい合った。

 沈黙。

 高瀬の顔が、怒りで歪む。

「拓海……」

 彼が低い声で呟いた。

「高瀬」

 拓海は冷静に答えた。

「何の用だ?」

「お前……よくも……」

 高瀬の拳が震えていた。

「よくも、俺たちを裏切れたな」

「裏切った?」

 拓海が首を傾げた。

「裏切るも何も、お前たちは最初から俺たちを仲間扱いしてなかっただろ」

「それは……」

「囮にしたよな」

 拓海の声が、わずかに鋭くなった。

「ゴブリンの群れに、俺たちを押し出した」

「死んでも構わないって顔をしてた」

 高瀬は何も言えなかった。

 田中が一歩前に出た。

「拓海……すまなかった」

 彼が頭を下げた。

 拓海は田中を見た。

 かつての親友。

 しかし今は、もう遠い存在だ。

「謝らなくていい」

 拓海が静かに言った。

「お前は、自分の判断で動いただけだ」

「それを責める気はない」

「でも……」

「でも、もう俺たちは戻れない」

 拓海が断言した。

「お前たちは攻略者」

「俺たちは運営側」

「立場が違う」

 美咲が拓海の隣に並んだ。

「私たちは、ここで居場所を見つけました」

 彼女が真剣に言った。

「リリアさんや、ゴブリンさんたちが、私たちを必要としてくれてる」

「だから、私たちはここにいる」

「それだけです」

 相沢が悔しそうに唇を噛んだ。

「あんたたち……本当に変わったわね」

「ええ」

 美咲が頷いた。

「変わりました」

「三ヶ月前の私たちとは、違います」

 高瀬が拳を握りしめた。

「いつか……いつか必ず……」

 彼の言葉は、途中で途切れた。

「俺たちは、絶対に攻略する」

「そして、元の世界に帰る」

「頑張れ」

 拓海が素っ気なく答えた。

「俺たちは、もう帰ることは考えてない」

「ここが、俺たちの居場所だから」

 その言葉が、高瀬たちの胸に突き刺さった。

 拓海と美咲は、そのまま歩き去った。

 高瀬たちは、黙ってその背中を見送った。

-----

 廊下を曲がったところで、美咲が小さく息を吐いた。

「緊張した……」

「ああ」

 拓海も同じだった。

「でも、言うべきことは言えた」

「うん」

 美咲が頷いた。

「これで、もう後悔しない」

 二人は並んで歩いた。

 もう、振り返らない。

 前だけを見て、進んでいく。

 それが、二人が選んだ道だった。
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