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【第7章】クラスメイトの現状
エピソード.32
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高瀬たちが宿舎に戻ったのは、夕方だった。
魔王軍本部での用事——新しいダンジョンの情報提供——を終え、重い足取りで食堂に入る。
すでに他のクラスメイトたちが集まっていた。
「高瀬、どうだった?」
中村が尋ねた。
「会ったのか?拓海たちに」
「……ああ」
高瀬が椅子に座り込んだ。
「廊下で、ばったり」
「それで?」
「話したけど……無駄だった」
高瀬が拳をテーブルに置いた。
「あいつら、完全に向こう側の人間になってた」
田中も隣に座った。
「拓海は、もう元の世界に帰ることも考えてないって言ってた」
「何だって?」
橋本が驚きの声を上げた。
「帰らないって……じゃあ、ずっとこっちにいるつもり?」
「ああ」
佐藤が静かに答えた。
「美咲ちゃんも、同じこと言ってた」
「ここが自分たちの居場所だって」
食堂が、重い沈黙に包まれた。
誰もが、複雑な表情をしている。
「……俺たちは、どうなんだ」
誰かが小さく呟いた。
「本当に、帰れるのか?」
その問いかけに、誰も答えられなかった。
三ヶ月。
ダンジョン攻略を続けて三ヶ月。
しかし、誰一人として成功していない。
死者は五名。
負傷者は数知れず。
精神的に限界に達している者も多い。
「俺……もう無理かもしれない」
ある生徒が震える声で言った。
「毎日、死ぬかもしれないって思いながら戦うの」
「怖くて、眠れない」
「弱音を吐くな」
高瀬が低い声で言った。
「俺たちは、必ず帰る」
「絶対に、諦めない」
しかし、その言葉には以前のような説得力がなかった。
疲労と絶望が、全員を蝕んでいる。
「高瀬」
中村が口を開いた。
「もしかしたら……俺たち、考え方を変えるべきなのかもしれない」
「何だと?」
「拓海たちみたいに、別の生き方を探すとか」
その言葉に、高瀬の顔が歪んだ。
「ふざけるな」
彼が立ち上がった。
「俺は勇者だ」
「戦って、攻略して、帰る」
「それ以外の道なんて、認めない」
「でも……」
「でもじゃない」
高瀬が怒鳴った。
「お前ら、拓海たちに影響されてるのか?」
「あいつらは、戦う力がなかったから逃げただけだ」
「俺たちには、力がある」
「だから、戦い続けるんだ」
誰も反論しなかった。
しかし、心の中では疑問が渦巻いている。
本当に、これでいいのか。
戦い続けて、何人死ねば気が済むのか。
-----
その夜、田中は一人で屋上にいた。
星空を見上げながら、考え込んでいる。
足音が聞こえた。
振り返ると、佐藤が立っていた。
「田中くん……眠れないの?」
「ああ」
田中が頷いた。
「お前も?」
「うん」
佐藤が隣に座った。
二人は黙って、星空を見上げた。
「ねえ、田中くん」
佐藤が小さく呟いた。
「私たち……間違ってたのかな」
「何が?」
「全部」
佐藤が答えた。
「拓海くんたちを見捨てたこと」
「戦うことだけを考えてきたこと」
「帰ることに固執してきたこと」
田中は何も言えなかった。
自分も、同じことを考えていたから。
「拓海くん、幸せそうだった」
佐藤が続けた。
「美咲ちゃんも」
「三ヶ月前は、あんなに怯えてたのに」
「今は、自信に満ちてた」
「……ああ」
田中が頷いた。
「俺たちより、ずっと」
「私……思うの」
佐藤が顔を上げた。
「もしかしたら、あの二人の方が正しかったのかもしれないって」
「戦わない道を選んで」
「ここで生きていくことを決めて」
「その方が、幸せなのかもしれない」
田中の胸が痛んだ。
それは、自分が最も恐れていた結論だった。
「でも……」
田中が呟いた。
「俺たちは、もう引き返せない」
「ここまで戦ってきた」
「仲間も、死んだ」
「今さら、別の道なんて……」
「そうだね」
佐藤が寂しそうに笑った。
「私たちは、もう引き返せない」
二人は再び沈黙した。
冷たい夜風が、屋上を吹き抜けていく。
-----
翌日。
高瀬のパーティは、再び別のダンジョンに挑んだ。
中級ダンジョン「水晶の洞窟」。
魔王軍が推奨する、比較的攻略しやすいダンジョンだ。
「今度こそ、攻略する」
高瀬が意気込んだ。
しかし、ダンジョンに入った瞬間、違和感を覚えた。
「……綺麗だ」
相沢が呟いた。
床も壁も、磨かれたように輝いている。
空気も澄んでいて、魔力の流れが良い。
「まさか……」
山田が嫌な予感を覚えた。
「ここも、最適化されてる?」
「そんな……」
高瀬の顔が青ざめた。
進むにつれて、予感は確信に変わった。
モンスターの配置が計算されている。
罠が効率的に配置されている。
全てが、最適化されていた。
「くそっ!」
高瀬が叫んだ。
「拓海め……ここまで手を回してたのか!」
「撤退しよう」
山田が提案した。
「このままじゃ、全滅する」
「待て」
高瀬が拒否した。
「まだ諦めない」
「でも……」
「俺は勇者だ!」
高瀬が剣を構えた。
「必ず、攻略して見せる!」
彼は前に突進した。
しかし、それは無謀だった。
最適化されたダンジョンは、彼らのレベルでは手に負えない。
罠に嵌り、モンスターに囲まれ、消耗していく。
「高瀬、もう限界だ!」
木村が叫んだ。
「撤退しないと、死ぬぞ!」
「くそっ……!」
高瀬も、ついに認めざるを得なかった。
転移魔法の巻物を使い、五人は入り口に戻った。
-----
ダンジョンの外に出ると、全員が地面に倒れ込んだ。
傷だらけ。疲労困憊。
「ダメだ……」
高瀬が呟いた。
「ここも、攻略できない」
相沢が泣き出した。
「もう嫌……」
彼女の声が震えている。
「こんなの、無理だよ……」
「相沢……」
佐藤が彼女を抱きしめた。
山田は黙って、空を見上げた。
青い空。
元の世界と同じ空。
しかし、もう帰れない気がした。
「俺たちは……」
山田が小さく呟いた。
「どうすればいいんだ……」
誰も答えなかった。
ただ、絶望だけが残った。
-----
その頃、リリアのダンジョンでは。
拓海と美咲は、未開拓ダンジョン調査の準備をしていた。
「荷物は、これで全部?」
美咲が確認した。
「ああ」
拓海が頷いた。
「後は、護衛の到着を待つだけだ」
「緊張するね」
「大丈夫だ」
拓海が微笑んだ。
「俺たちには、経験がある」
「リリアさんも、ゴブリンさんたちも応援してくれてる」
「うん」
美咲も笑顔になった。
その時、リリアが部屋に入ってきた。
「準備できた?」
「はい」
「じゃあ、行きましょう」
リリアが二人を見た。
「新しい冒険の始まりよ」
三人は笑顔を交わした。
未来は、明るく見えた。
一方、高瀬たちの未来は——
どこまでも暗かった。
二つのグループの運命は、完全に分かれていた。
魔王軍本部での用事——新しいダンジョンの情報提供——を終え、重い足取りで食堂に入る。
すでに他のクラスメイトたちが集まっていた。
「高瀬、どうだった?」
中村が尋ねた。
「会ったのか?拓海たちに」
「……ああ」
高瀬が椅子に座り込んだ。
「廊下で、ばったり」
「それで?」
「話したけど……無駄だった」
高瀬が拳をテーブルに置いた。
「あいつら、完全に向こう側の人間になってた」
田中も隣に座った。
「拓海は、もう元の世界に帰ることも考えてないって言ってた」
「何だって?」
橋本が驚きの声を上げた。
「帰らないって……じゃあ、ずっとこっちにいるつもり?」
「ああ」
佐藤が静かに答えた。
「美咲ちゃんも、同じこと言ってた」
「ここが自分たちの居場所だって」
食堂が、重い沈黙に包まれた。
誰もが、複雑な表情をしている。
「……俺たちは、どうなんだ」
誰かが小さく呟いた。
「本当に、帰れるのか?」
その問いかけに、誰も答えられなかった。
三ヶ月。
ダンジョン攻略を続けて三ヶ月。
しかし、誰一人として成功していない。
死者は五名。
負傷者は数知れず。
精神的に限界に達している者も多い。
「俺……もう無理かもしれない」
ある生徒が震える声で言った。
「毎日、死ぬかもしれないって思いながら戦うの」
「怖くて、眠れない」
「弱音を吐くな」
高瀬が低い声で言った。
「俺たちは、必ず帰る」
「絶対に、諦めない」
しかし、その言葉には以前のような説得力がなかった。
疲労と絶望が、全員を蝕んでいる。
「高瀬」
中村が口を開いた。
「もしかしたら……俺たち、考え方を変えるべきなのかもしれない」
「何だと?」
「拓海たちみたいに、別の生き方を探すとか」
その言葉に、高瀬の顔が歪んだ。
「ふざけるな」
彼が立ち上がった。
「俺は勇者だ」
「戦って、攻略して、帰る」
「それ以外の道なんて、認めない」
「でも……」
「でもじゃない」
高瀬が怒鳴った。
「お前ら、拓海たちに影響されてるのか?」
「あいつらは、戦う力がなかったから逃げただけだ」
「俺たちには、力がある」
「だから、戦い続けるんだ」
誰も反論しなかった。
しかし、心の中では疑問が渦巻いている。
本当に、これでいいのか。
戦い続けて、何人死ねば気が済むのか。
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その夜、田中は一人で屋上にいた。
星空を見上げながら、考え込んでいる。
足音が聞こえた。
振り返ると、佐藤が立っていた。
「田中くん……眠れないの?」
「ああ」
田中が頷いた。
「お前も?」
「うん」
佐藤が隣に座った。
二人は黙って、星空を見上げた。
「ねえ、田中くん」
佐藤が小さく呟いた。
「私たち……間違ってたのかな」
「何が?」
「全部」
佐藤が答えた。
「拓海くんたちを見捨てたこと」
「戦うことだけを考えてきたこと」
「帰ることに固執してきたこと」
田中は何も言えなかった。
自分も、同じことを考えていたから。
「拓海くん、幸せそうだった」
佐藤が続けた。
「美咲ちゃんも」
「三ヶ月前は、あんなに怯えてたのに」
「今は、自信に満ちてた」
「……ああ」
田中が頷いた。
「俺たちより、ずっと」
「私……思うの」
佐藤が顔を上げた。
「もしかしたら、あの二人の方が正しかったのかもしれないって」
「戦わない道を選んで」
「ここで生きていくことを決めて」
「その方が、幸せなのかもしれない」
田中の胸が痛んだ。
それは、自分が最も恐れていた結論だった。
「でも……」
田中が呟いた。
「俺たちは、もう引き返せない」
「ここまで戦ってきた」
「仲間も、死んだ」
「今さら、別の道なんて……」
「そうだね」
佐藤が寂しそうに笑った。
「私たちは、もう引き返せない」
二人は再び沈黙した。
冷たい夜風が、屋上を吹き抜けていく。
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翌日。
高瀬のパーティは、再び別のダンジョンに挑んだ。
中級ダンジョン「水晶の洞窟」。
魔王軍が推奨する、比較的攻略しやすいダンジョンだ。
「今度こそ、攻略する」
高瀬が意気込んだ。
しかし、ダンジョンに入った瞬間、違和感を覚えた。
「……綺麗だ」
相沢が呟いた。
床も壁も、磨かれたように輝いている。
空気も澄んでいて、魔力の流れが良い。
「まさか……」
山田が嫌な予感を覚えた。
「ここも、最適化されてる?」
「そんな……」
高瀬の顔が青ざめた。
進むにつれて、予感は確信に変わった。
モンスターの配置が計算されている。
罠が効率的に配置されている。
全てが、最適化されていた。
「くそっ!」
高瀬が叫んだ。
「拓海め……ここまで手を回してたのか!」
「撤退しよう」
山田が提案した。
「このままじゃ、全滅する」
「待て」
高瀬が拒否した。
「まだ諦めない」
「でも……」
「俺は勇者だ!」
高瀬が剣を構えた。
「必ず、攻略して見せる!」
彼は前に突進した。
しかし、それは無謀だった。
最適化されたダンジョンは、彼らのレベルでは手に負えない。
罠に嵌り、モンスターに囲まれ、消耗していく。
「高瀬、もう限界だ!」
木村が叫んだ。
「撤退しないと、死ぬぞ!」
「くそっ……!」
高瀬も、ついに認めざるを得なかった。
転移魔法の巻物を使い、五人は入り口に戻った。
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ダンジョンの外に出ると、全員が地面に倒れ込んだ。
傷だらけ。疲労困憊。
「ダメだ……」
高瀬が呟いた。
「ここも、攻略できない」
相沢が泣き出した。
「もう嫌……」
彼女の声が震えている。
「こんなの、無理だよ……」
「相沢……」
佐藤が彼女を抱きしめた。
山田は黙って、空を見上げた。
青い空。
元の世界と同じ空。
しかし、もう帰れない気がした。
「俺たちは……」
山田が小さく呟いた。
「どうすればいいんだ……」
誰も答えなかった。
ただ、絶望だけが残った。
-----
その頃、リリアのダンジョンでは。
拓海と美咲は、未開拓ダンジョン調査の準備をしていた。
「荷物は、これで全部?」
美咲が確認した。
「ああ」
拓海が頷いた。
「後は、護衛の到着を待つだけだ」
「緊張するね」
「大丈夫だ」
拓海が微笑んだ。
「俺たちには、経験がある」
「リリアさんも、ゴブリンさんたちも応援してくれてる」
「うん」
美咲も笑顔になった。
その時、リリアが部屋に入ってきた。
「準備できた?」
「はい」
「じゃあ、行きましょう」
リリアが二人を見た。
「新しい冒険の始まりよ」
三人は笑顔を交わした。
未来は、明るく見えた。
一方、高瀬たちの未来は——
どこまでも暗かった。
二つのグループの運命は、完全に分かれていた。
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