職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第8章】初めての「勝利」

エピソード.33

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 未開拓ダンジョン調査の出発日。

 拓海と美咲は、魔王軍本部の集合場所に立っていた。

 朝日が昇り始めた空の下、黒い鎧を纏った兵士たちが整列している。

「特別顧問の蒼井拓海、白石美咲」

 隊長格の男が前に出た。

「私は、第三師団第五部隊長のグレイス」

 筋骨隆々とした体格。顔には無数の傷跡。歴戦の戦士だ。

「今回の任務、我々が護衛を担当する」

「よろしくお願いします」

 拓海が頭を下げた。

 グレイスは二人を値踏みするように見た。

「……若いな」

 彼が呟いた。

「本当に、お前たちがダンジョン改善の専門家なのか?」

「はい」

 拓海が答えた。

「疑うのは当然です」

「でも、結果で証明します」

「ほう」

 グレイスが興味深そうに笑った。

「自信があるんだな」

「経験があります」

「いい返事だ」

 グレイスが部下たちに向き直った。

「出発する!目的地まで三日の行程だ!」

 総勢十二名の部隊が動き出した。

 拓海と美咲は、その中央で守られるように歩いた。

-----

 街を出て、舗装された道を進む。

 周囲は平原が広がり、遠くに山脈が見える。

「あの山脈の奥に、未開拓ダンジョンがある」

 グレイスが説明した。

「魔力反応は強いが、詳細は不明だ」

「何か情報はありますか?」

 拓海が尋ねた。

「ない」

 グレイスは首を振った。

「だから、調査が必要なんだ」

「分かりました」

 拓海はスキル「情報収集」を常時発動させながら、周囲を観察していた。

 平原に生息するモンスターの気配。

 風の流れ。

 魔力の濃度。

 全てを記憶していく。

「お前、さっきから何をしてる?」

 グレイスが気づいた。

「情報を集めてます」

 拓海が答えた。

「周囲の環境、モンスターの分布、魔力の流れ」

「全部、記憶しています」

「……記憶?」

「はい。僕の職業スキルです」

 グレイスは驚いた表情を浮かべた。

「一度見ただけで、記憶できるのか?」

「正確には、重要な情報だけを選別して記憶します」

「すごいな」

 グレイスが感心した。

「そのスキルがあれば、地図なんていらない」

「地図も作れます」

 拓海が答えた。

「後で、今日のルートを図にまとめます」

「……使えるな、お前」

 グレイスが満足そうに頷いた。

-----

 初日の野営地に到着したのは、夕方だった。

 兵士たちが手際よくテントを設営する。

 拓海と美咲用のテントも、すぐに完成した。

「食事の準備ができた」

 一人の兵士が声をかけた。

 焚き火の周りに集まり、簡単な食事を取る。

 干し肉、パン、温かいスープ。

「美咲」

 グレイスが話しかけた。

「お前の職業は、掃除係だと聞いたが」

「は、はい……」

 美咲が緊張しながら答えた。

「それが、どうダンジョン調査に役立つ?」

「えっと……」

 美咲が言葉に詰まった。

「彼女の浄化スキルは、魔力の汚染を取り除けます」

 拓海が説明した。

「ダンジョン内の瘴気や呪いも、浄化できる」

「それだけじゃなく、清掃することで魔力循環が改善される」

「つまり、ダンジョンの本来の力を引き出せるんです」

 グレイスは黙って聞いていた。

「……なるほど」

 彼が頷いた。

「掃除係という名前に騙されてたが」

「実際は、浄化の専門家ってわけか」

「そうです」

「面白い」

 グレイスが笑った。

「職業の名前だけで判断してはいけない、か」

「勉強になる」

 美咲は少し驚いていた。

 馬鹿にされると思っていたのに、グレイスは真剣に聞いてくれた。

「お前たちのこと、ゼノス様から聞いてる」

 グレイスが続けた。

「複数のダンジョンを改善し、生産効率を大幅に上げたと」

「それが本当なら、お前たちは魔王軍にとって貴重な人材だ」

 彼は二人をまっすぐ見た。

「だから、必ず守る」

「俺たちの任務は、お前たちを無事に連れ帰ることだ」

「ありがとうございます」

 拓海が頭を下げた。

-----

 夜。

 拓海は自分のテントで、今日の情報を整理していた。

 羊皮紙に、移動ルートの地図を描く。

 平原の地形、モンスターの出現位置、魔力の濃度。

 全てを正確に記録していく。

 テントの外から、美咲の声が聞こえた。

「拓海くん、入っていい?」

「ああ」

 美咲が入ってきた。

 彼女の手には、温かいお茶が入ったカップがある。

「はい、これ」

「ありがとう」

 拓海はカップを受け取った。

 美咲が隣に座り、地図を覗き込む。

「すごい……こんなに詳しく」

「スキルのおかげだ」

「でも、それをまとめるのは拓海くんの力だよ」

 美咲が微笑んだ。

「ねえ、拓海くん」

「ん?」

「グレイスさん、いい人だね」

「ああ」

 拓海も頷いた。

「最初は心配だったけど、信頼できそうだ」

「うん」

 美咲が安心した様子で言った。

「私たち、ちゃんと認められてる」

「職業で馬鹿にされることもなかった」

「魔王軍は、能力主義だからな」

 拓海が答えた。

「結果を出せば、認められる」

「それが、俺たちには合ってる」

「そうだね」

 美咲が頷いた。

 二人は黙って、お茶を飲んだ。

 テントの外からは、焚き火の音と兵士たちの話し声が聞こえる。

 穏やかな夜だった。

-----

 二日目。

 部隊は山岳地帯に入った。

 道は険しくなり、周囲の魔力濃度も上昇している。

「気をつけろ」

 グレイスが警戒を促した。

「この辺りから、強力なモンスターが出る」

 その言葉通り、昼過ぎに遭遇した。

 巨大な狼型のモンスター。

 体長三メートル、鋭い牙と爪。

「フェンリルの亜種か」

 グレイスが剣を抜いた。

「全員、戦闘態勢!」

 兵士たちが即座に陣形を組む。

 拓海と美咲は、中央で守られている。

 拓海はスキル「情報収集」を発動した。

-----

フェンリル亜種

HP:800  
攻撃力:120  
防御力:80  
弱点:火、腹部  
特徴:素早い動き、群れで行動

-----

「グレイスさん!」

 拓海が叫んだ。

「弱点は火と腹部です!」

「それと、仲間を呼ぶかもしれません!」

「了解!」

 グレイスが即座に指示を出した。

「魔法使い、火球の準備!」

「前衛、腹部を狙え!」

 兵士たちが連携して攻撃する。

 火球が狼に命中し、怯んだ隙に前衛が腹部を斬る。

 狼が悲鳴を上げて倒れた。

「やった!」

 しかし、拓海の予想通り、遠吠えが響いた。

「来るぞ!」

 グレイスが警告した。

 さらに三体の狼が現れた。

「囲まれた!」

 緊迫した状況。

 しかし、兵士たちは動じない。

 グレイスの指揮の下、冷静に対処する。

 拓海は各狼の動きを分析し、次の行動を予測する。

「左の狼が飛びかかります!」

「右の狼は魔法使いを狙ってます!」

 拓海の情報が、兵士たちの動きを助ける。

 的確な予測で、攻撃を避け、反撃する。

 十分ほどの戦闘の後、全ての狼が倒された。

「全員、無事か?」

 グレイスが確認した。

 軽傷者は数名いたが、重傷者はいない。

「拓海」

 グレイスが拓海に近づいた。

「お前の情報、役に立った」

「おかげで、被害を最小限に抑えられた」

「スキルを使っただけです」

「いや」

 グレイスは首を振った。

「スキルがあっても、それを使いこなせるかは別だ」

「お前は、的確に情報を伝えた」

「それが、戦闘を有利にした」

 彼は拓海の肩を叩いた。

「お前は、立派な戦力だ」

 その言葉に、拓海の胸が温かくなった。

 戦闘能力はゼロ。

 しかし、別の形で役に立てた。

 それが、嬉しかった。
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