職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第9章】他ダンジョンとの交流

エピソード.39

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 会議が再開された。

 後半は、各ダンジョンの課題について議論する時間だ。

「では、質疑応答に移る」

 ゼノスが告げた。

「改善したい点がある者は、発言を」

 一人のダンジョン主が手を上げた。

 年配の男性で、疲れた表情をしている。

「私のダンジョン『地底湖』なのですが……」

 彼が説明を始めた。

「湿気が多くて、モンスターの管理が難しい」

「カビや苔も発生して、魔力循環が悪化してる」

「何か、良い対策はないでしょうか」

 拓海はスキル「情報収集」で記憶している知識を検索した。

 湿気、カビ、苔……。

「美咲」

 拓海が小声で呼んだ。

「あなたのスキル、カビや苔にも効く?」

「試したことないけど……多分」

 美咲が答えた。

「浄化対象に含まれてると思う」

 拓海は手を上げた。

「発言を許可します」

 ゼノスが頷いた。

 拓海が立ち上がった。

「美咲の浄化スキルが、有効だと思います」

「カビや苔も、汚染の一種です」

「浄化することで、除去できるはずです」

 年配のダンジョン主が驚いた顔をした。

「本当ですか?」

「実際に試してみないと確実なことは言えません」

 拓海が正直に答えた。

「でも、高い確率で効果があると思います」

「ぜひ、お願いしたい」

 ダンジョン主が頭を下げた。

「報酬は払います」

「では、スケジュールを後で調整しましょう」

 拓海が答えた。

 次々と、他のダンジョン主たちも手を上げ始めた。

「私のダンジョンも、見てほしい」

「うちは、モンスターの配置に問題があって……」

「魔力の流れが滞留してる箇所があるんだ」

 瞬く間に、五つの依頼が集まった。

 ゼノスが手を上げて、制止した。

「待て」

 彼が言った。

「彼らには、すでに多くの依頼が来ている」

「全てを引き受けるのは不可能だ」

「優先順位をつけろ」

 室内が静まった。

 拓海は考えた。

 全てを引き受けることはできない。

 しかし、断ることで機会を失う可能性もある。

「ゼノス様」

 拓海が口を開いた。

「提案があります」

「言ってみろ」

「簡易診断という形で、各ダンジョンを回ります」

 拓海が説明した。

「一箇所につき半日程度で、主要な問題点を洗い出す」

「そして、優先順位の高いダンジョンから本格的な改善に入る」

「これなら、多くのダンジョンに対応できます」

 ゼノスは数秒考えた。

「効率的だな」

 彼が頷いた。

「では、その方針で進めろ」

「報酬は、簡易診断と本格改善で分けること」

「承知しました」

-----

 会議が終わり、拓海たちは廊下に出た。

 複数のダンジョン主たちが、二人を待っていた。

「すみません、少しよろしいですか?」

 最初に声をかけたのは、地底湖のダンジョン主だった。

「はい」

 拓海が答えた。

「私のダンジョン、本当に困ってるんです」

 彼が懇願するように言った。

「湿気のせいで、モンスターも弱ってる」

「このままでは、生産量が落ちる一方です」

「分かりました」

 拓海が頷いた。

「明日、伺います」

「本当ですか!?」

「はい。簡易診断を行って、対策を提案します」

「ありがとうございます……」

 ダンジョン主が深々と頭を下げた。

 次に、別のダンジョン主が近づいてきた。

 若い女性で、不安そうな表情をしている。

「あの……私のダンジョンも……」

「はい」

 美咲が優しく答えた。

「どんな問題がありますか?」

「モンスターが、よく迷子になるんです」

 彼女が説明した。

「ダンジョンの構造が複雑すぎて……」

「自分でも把握しきれてなくて」

 拓海はスキルで分析した。

「おそらく、通路構造に問題があります」

「一度、全体の地図を作り直す必要がありますね」

「そんなこと、できるんですか?」

「できます」

 拓海が自信を持って答えた。

「僕のスキルで、正確な地図を作成できます」

「それを元に、構造を整理しましょう」

「お願いします……」

 女性ダンジョン主も頭を下げた。

 こうして、次々と依頼が入っていく。

 リリアが心配そうに二人を見た。

「大丈夫?無理してない?」

「大丈夫です」

 拓海が答えた。

「簡易診断なら、一日に二、三箇所回れます」

「でも……」

「俺たちに任せてください」

 美咲が笑顔で言った。

「これが、私たちの仕事ですから」

-----

 その夜、リリアのダンジョンに戻った。

 執務室で、拓海はスケジュールを組んでいた。

「明日は地底湖と、迷宮の森」

「明後日は、炎の山と水晶の洞窟」

「その次は……」

 紙一面に、予定が書き込まれている。

「拓海くん、本当に大丈夫?」

 美咲が心配そうに尋ねた。

「こんなに詰め込んで、倒れない?」

「大丈夫だ」

 拓海が答えた。

「簡易診断は、そこまで時間がかからない」

「それに……」

 彼は美咲を見た。

「お前が疲れたら、すぐに休むから」

「お前の体調が、最優先だ」

「……ありがとう」

 美咲が微笑んだ。

 リリアがお茶を持ってきた。

「二人とも、少し休んで」

「はい」

 拓海はお茶を受け取った。

 温かい液体が、喉を通っていく。

「ねえ、リリアさん」

 美咲が尋ねた。

「私たち、すごく忙しくなっちゃったけど……」

「ここのダンジョン、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ」

 リリアが微笑んだ。

「もう、マニュアルもあるし」

「ゴルグたちが、ちゃんと運営してくれてる」

「あなたたちが週に一、二回来てくれれば、十分」

「良かった……」

 美咲が安堵した。

「私たち、ここが一番大切だから」

「分かってるわ」

 リリアが二人の手を握った。

「でも、外で活躍することも大事」

「あなたたちの評判が上がれば、私も鼻が高いもの」

「それに……」

 彼女が続けた。

「あなたたちが他のダンジョンを助けることで」

「魔王軍全体の効率が上がる」

「それは、この世界全体のためになる」

 拓海は頷いた。

「そうですね」

「俺たちの仕事は、個人のためだけじゃない」

「全体のため」

「偉いわね」

 リリアが笑った。

「でも、無理だけはしないで」

「倒れたら、意味がないから」

「分かってます」

-----

 翌日から、拓海と美咲は各ダンジョンを回り始めた。

 地底湖では、美咲の浄化スキルが見事に効果を発揮した。

 カビと苔が除去され、ダンジョン内の空気が一変した。

「素晴らしい……」

 ダンジョン主が感動した。

「こんなに綺麗になるなんて」

「定期的に浄化すれば、この状態を維持できます」

 美咲が説明した。

「月に一度、私が来て浄化します」

「それで、湿気による問題は解決できるはずです」

「本当にありがとう……」

 ダンジョン主が涙ぐんだ。

 迷宮の森では、拓海が詳細な地図を作成した。

 複雑な通路構造を、わずか三時間で完全に把握した。

「こんなに正確な地図……」

 若い女性ダンジョン主が驚いた。

「どうやって?」

「スキルです」

 拓海が答えた。

「一度見た場所は、全て記憶できます」

「それを地図に落とし込むだけです」

「すごい……」

 彼女は地図を見つめた。

「これで、モンスターの配置も最適化できる」

「はい」

 拓海が頷いた。

「後日、配置案を提案します」

 こうして、一週間で十箇所のダンジョンを回った。

 全てで問題点を洗い出し、改善案を提示した。

 どのダンジョン主も、二人の働きに感謝した。

-----

 一週間後、再び魔王軍本部に呼ばれた。

 ゼノスの執務室で、報告会が開かれる。

「お疲れ様」

 ゼノスが労った。

「一週間で、十箇所を回ったそうだな」

「はい」

 拓海が答えた。

「全てのダンジョンで、改善案を提示しました」

「報告書は、ここに」

 拓海が分厚い資料を差し出した。

 各ダンジョンの問題点、改善案、優先順位。

 全てが詳細に記録されている。

 ゼノスは資料をめくりながら、感心したように頷いた。

「素晴らしい仕事だ」

 彼が言った。

「これだけの情報を、一週間でまとめるとは」

「ありがとうございます」

「お前たちの評価は、さらに上がった」

 ゼノスが資料を置いた。

「各ダンジョン主から、絶賛の声が届いている」

「特に、地底湖と迷宮の森は」

「すぐにでも本格的な改善に入りたいと言っている」

「承知しました」

 拓海が答えた。

「スケジュールを調整します」

「ああ」

 ゼノスが頷いた。

「それと……」

 彼が別の書類を取り出した。

「お前たちの報酬を、再度増額する」

「これまでの功績を考慮してな」

「今後、月額700魔石だ」

 美咲が驚いて目を丸くした。

「700……!?」

「それだけの価値がある」

 ゼノスが断言した。

「お前たちは、魔王軍になくてはならない存在だ」

 拓海と美咲は顔を見合わせた。

 そして、深く頭を下げた。

「ありがとうございます」

「礼はいらん」

 ゼノスが立ち上がった。

「これからも、頼む」

 二人は執務室を出た。

 廊下で、美咲が興奮気味に拓海に話しかけた。

「すごいね!月額700魔石だって!」

「ああ」

 拓海も信じられない気持ちだった。

 三ヶ月前は、一銭も稼げなかった。

 しかし今は、高額の報酬を得ている。

「私たち……本当に成功したんだね」

 美咲が呟いた。

「ああ」

 拓海が頷いた。

「でも、これからが本番だ」

「もっと多くのダンジョンを助ける」

「そして、俺たちの価値を証明し続ける」

「うん」

 美咲が笑顔で頷いた。

「一緒に、頑張ろうね」

 二人は並んで歩いた。

 未来は、明るく見えた。
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