職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第9章】他ダンジョンとの交流

エピソード.40

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 二週間後。

 拓海と美咲は、セレスティアのダンジョン「氷晶の城塞」を訪れていた。

 巨大な氷の城が、雪山の中腹にそびえ立っている。

 美しいが、威圧的だ。

「すごい……」

 美咲が息を呑んだ。

「こんな大規模なダンジョン、初めて見た」

「ああ」

 拓海も圧倒されていた。

 これまで見てきたダンジョンとは、規模が違う。

 入り口には、セレスティア自身が待っていた。

 白い毛皮のコートを纏い、冷たい美貌が雪景色に映える。

「よく来たわね」

 彼女が微笑んだ。

「ようこそ、氷晶の城塞へ」

「お招きいただき、ありがとうございます」

 拓海が頭を下げた。

「さあ、中へ」

 セレスティアが城内に案内した。

-----

 城内は、外観以上に壮麗だった。

 氷の壁が青白く光り、天井には氷の結晶が吊り下がっている。

 通路は広く、装飾も豪華だ。

「美しいダンジョンですね」

 美咲が感嘆した。

「ありがとう」

 セレスティアが答えた。

「でも、美しいだけじゃダメなの」

「効率も求められる」

 彼女が執務室に案内した。

 暖炉が燃え、部屋は温かい。

 テーブルには、資料が山積みになっていた。

「これが、現在の生産データ」

 セレスティアが資料を広げた。

「月間目標は5000単位」

「現在の達成率は、85%」

 拓海は数字を見た。

 5000単位。リリアのダンジョンの五倍だ。

「85%……十分高いですね」

「でも、目標には届いてない」

 セレスティアが厳しい顔をした。

「このダンジョンは、魔王軍の主要拠点の一つ」

「常に100%以上の達成率を求められる」

「なるほど」

 拓海が頷いた。

「では、まず現場を見せていただけますか?」

「ええ」

-----

 セレスティアの案内で、ダンジョン内を巡った。

 第一層から第五層まで、全てを見て回る。

 拓海はスキル「情報収集」をフル稼働させ、全ての情報を記憶していく。

 通路の構造、モンスターの配置、罠の位置、魔力の流れ。

 膨大な情報が、頭の中に蓄積されていく。

「どう?」

 第三層を見終わったところで、セレスティアが尋ねた。

「何か気づいたことは?」

「はい」

 拓海が答えた。

「いくつか問題点が見えてきました」

「聞かせて」

「まず、温度管理です」

 拓海が説明を始めた。

「氷のダンジョンですが、場所によって温度差が激しい」

「暖かい場所と冷たい場所が混在している」

「それが?」

「魔力の流れに影響してます」

 拓海が続けた。

「温度差が、魔力の密度差を生む」

「それが乱流を起こして、効率を落としている」

 セレスティアは驚いた表情をした。

「温度が、魔力に影響するの?」

「はい」

 拓海が頷いた。

「特に、氷属性のダンジョンでは顕著です」

「温度を均一化すれば、魔力循環が改善されるはずです」

「なるほど……」

 セレスティアが考え込んだ。

「でも、どうやって温度を均一化するの?」

「魔法陣を調整します」

 拓海が答えた。

「温度制御の魔法陣を、各層に追加する」

「それで、全体の温度を一定に保てます」

「それは……大工事になるわね」

「はい」

 拓海が認めた。

「でも、効果は大きいはずです」

「分かったわ」

 セレスティアが決断した。

「やりましょう」

-----

 第五層まで見終わった後、執務室に戻った。

 拓海は詳細な報告書を作成していた。

 美咲は、ダンジョン内の清掃状況を確認していた。

「清掃は、行き届いてますね」

 美咲が報告した。

「でも、一部の通路に汚れが溜まってます」

「どこ?」

 セレスティアが尋ねた。

「第四層の東側通路です」

 美咲が地図を指差した。

「あそこは、あまり使われない場所だから」

 セレスティアが答えた。

「清掃の優先度が低かった」

「でも、そこが問題です」

 美咲が説明した。

「使われない場所でも、魔力は流れてます」

「汚れがあると、そこで魔力が滞留する」

「結果として、全体の循環が悪化します」

「……そうなの」

 セレスティアが驚いた。

「そんな細かいところまで影響するなんて」

「はい」

 美咲が頷いた。

「ダンジョンは、全体が繋がってますから」

「一箇所の問題が、全体に波及します」

「じゃあ、浄化してもらえる?」

「もちろんです」

 美咲が立ち上がった。

「今から行きます」

-----

 美咲が浄化作業をしている間、拓海は報告書をまとめていた。

 セレスティアが、静かに見守っている。

「あなたたち……本当にすごいわね」

 彼女が呟いた。

「何が?」

 拓海が顔を上げた。

「全て」

 セレスティアが答えた。

「分析の正確さ、説明の分かりやすさ、そして謙虚さ」

「普通、これだけの実力があれば傲慢になるものよ」

「でも、あなたたちは違う」

「……過去があるからです」

 拓海が静かに言った。

「俺たちは、かつて無能だと言われてました」

「見捨てられて、馬鹿にされて」

「その経験が、俺たちを謙虚にさせてます」

 セレスティアは黙って聞いていた。

「それに」

 拓海が続けた。

「俺たちの成功は、一人の力じゃない」

「リリアさんが拾ってくれて、ゴブリンたちが協力してくれた」

「多くの人の支えがあっての、今です」

「だから、傲慢にはなれません」

 セレスティアは深く頷いた。

「その姿勢が、あなたたちを信頼できる理由ね」

 彼女は窓の外を見た。

 雪が、静かに降っている。

「実は……私も、昔は違ったの」

 セレスティアが語り始めた。

「傲慢で、他人を見下してた」

「自分が一番だと思ってた」

「でも、失敗して学んだ」

「一人では、何もできないって」

 彼女が拓海を見た。

「あなたたちを見てると、昔の自分を反省するわ」

「そんな……」

「いいえ」

 セレスティアが微笑んだ。

「素直に認めるわ」

「あなたたちから、学ぶことがある」

-----

 美咲が戻ってきた。

「浄化、完了しました」

 彼女が報告した。

「第四層の東側通路、綺麗になってます」

「ありがとう」

 セレスティアが微笑んだ。

「早速、効果を測定してみるわ」

 彼女が魔法で魔力の流れを可視化した。

 すると、確かに流れが改善されているのが分かる。

「本当だ……」

 セレスティアが驚いた。

「こんなに違うなんて」

「細部の積み重ねが、全体を変えます」

 美咲が説明した。

「小さなことでも、疎かにしてはいけません」

「肝に銘じるわ」

-----

 一週間後、温度制御の魔法陣が完成した。

 拓海の設計に基づき、セレスティアが魔法で実装した。

 そして、効果測定の日。

「どう?」

 拓海が尋ねた。

 セレスティアが資料を見ている。

 その目が、徐々に見開かれていく。

「信じられない……」

 彼女が呟いた。

「魔力生産量が、12%上がってる」

「本当ですか!?」

 美咲が驚いた。

「ええ」

 セレスティアが資料を見せた。

 確かに、生産量が大幅に向上している。

「これなら、目標達成できる」

 彼女が感動した声で言った。

「いえ、目標を超えられる」

「良かった……」

 拓海が安堵の息を吐いた。

「あなたたちのおかげよ」

 セレスティアが二人を見た。

「本当に、ありがとう」

 彼女は報酬の袋を差し出した。

 中には、魔石が500個入っている。

「約束の報酬」

「それと……」

 セレスティアが別の箱を取り出した。

「これは、私からの個人的な感謝」

 箱を開けると、二つの指輪が入っていた。

 氷の結晶でできた、美しい指輪。

「氷晶の指輪よ」

 セレスティアが説明した。

「魔力を増幅させる効果がある」

「あなたたちに、ぜひ持っていてほしい」

「こんな高価なもの……」

 美咲が戸惑った。

「受け取って」

 セレスティアが微笑んだ。

「あなたたちは、私に大切なことを教えてくれた」

「細部への注意、謙虚さ、そして誠実さ」

「その対価よ」

 拓海と美咲は、深く頭を下げた。

「ありがとうございます」

-----

 氷晶の城塞を後にする時、セレスティアが見送ってくれた。

「また、来てね」

 彼女が言った。

「定期的な点検も、お願いしたいから」

「もちろんです」

 拓海が答えた。

「いつでも呼んでください」

「それと」

 セレスティアが付け加えた。

「あなたたちのこと、他の師団長たちにも話しておくわ」

「きっと、依頼が増えると思う」

「覚悟しておいてね」

 拓海と美咲は顔を見合わせた。

 そして、笑顔で頷いた。

「任せてください」

 二人は雪道を歩き始めた。

 振り返ると、セレスティアが手を振っている。

 拓海たちも手を振り返した。

「また一人、味方ができたね」

 美咲が嬉しそうに言った。

「ああ」

 拓海も笑った。

「これで、魔王軍内での立場がさらに強くなった」

「もう、誰も俺たちを馬鹿にしない」

「うん」

 美咲が指輪を見つめた。

 氷の結晶が、日の光を受けて輝いている。

「私たち、本当に遠くまで来たね」

「ああ」

 拓海が頷いた。

「でも、まだ終わりじゃない」

「これからも、証明し続ける」

「俺たちの価値を」

 二人は並んで、雪道を歩いていった。

 その背中には、自信と誇りがあった。

 かつての無能は、もういない。

 今ここにいるのは、実力を認められた専門家だ。
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