職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第9章】他ダンジョンとの交流

エピソード.41

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 氷晶の城塞での成功から一週間後。

 拓海と美咲は、魔王軍本部に再び呼ばれていた。

 しかし今回は、ゼノスではなくバルトスの執務室だった。

「入れ」

 低い声が響いた。

 扉を開けると、筋骨隆々としたバルトスが立っていた。

 彼の横には、数名の部下が控えている。

「来たか」

 バルトスが二人を見た。

「セレスティアから、報告を受けた」

「氷晶の城塞、12%の生産効率向上だそうだな」

「はい」

 拓海が答えた。

「温度制御の最適化が、功を奏しました」

「素晴らしい」

 バルトスが満足そうに頷いた。

「実は、お前たちに新しい依頼がある」

「新しい依頼……?」

「ああ」

 バルトスが地図を広げた。

「これを見ろ」

 地図には、魔王軍の領土が描かれている。

 そこに、赤い印が十数箇所つけられていた。

「これが、現在問題を抱えているダンジョンだ」

 バルトスが説明した。

「生産効率が低い、管理が不十分、構造に問題がある」

「様々な理由で、基準を満たしていない」

「これら全てを……?」

 美咲が驚いた。

「いや」

 バルトスは首を振った。

「全てではない」

「まずは、最も重要な五箇所だ」

 彼が五つの印を指差した。

「これらは、魔王軍の主要な魔力供給源だ」

「ここが改善されれば、軍全体の戦力が上がる」

「分かりました」

 拓海が頷いた。

「ただし……」

 彼が条件を出した。

「時間をください」

「現在も、複数の依頼を抱えています」

「全てを同時進行は不可能です」

「もちろんだ」

 バルトスが同意した。

「優先順位をつけて、順番に進めてくれればいい」

「期限は、半年だ」

「半年……」

 拓海は計算した。

 五箇所のダンジョン。

 一箇所につき、約一ヶ月。

 ギリギリだが、可能だ。

「引き受けます」

 拓海が答えた。

「よし」

 バルトスが立ち上がった。

「報酬は、通常の三倍だ」

「それと……」

 彼が二人を見た。

「この任務が成功すれば、お前たちを正式な幹部に推薦する」

「幹部……!?」

 美咲が驚いた。

「ああ」

 バルトスが頷いた。

「幹部候補ではなく、正式な幹部だ」

「魔王軍の中枢に、席を持つことになる」

 拓海と美咲は顔を見合わせた。

 幹部。

 それは、この世界での完全な地位確立を意味する。

「……頑張ります」

 拓海が答えた。

「必ず、成功させます」

「期待してるぞ」

 バルトスが力強く握手を求めた。

 拓海は、その大きな手を握り返した。

-----

 執務室を出た後、廊下で美咲が興奮気味に言った。

「すごいね!幹部だって!」

「ああ」

 拓海も信じられない気持ちだった。

 三ヶ月前は、クラスで最も無能だと言われていた。

 しかし今は、魔王軍の幹部になろうとしている。

「でも……」

 美咲が不安そうに言った。

「半年で五箇所……できるかな」

「やるしかない」

 拓海が答えた。

「これは、俺たちにとって最大のチャンスだ」

「成功すれば、完全に地位が確立される」

「失敗は許されない」

「……そうだね」

 美咲が頷いた。

「一緒に、頑張ろう」

-----

 リリアのダンジョンに戻り、二人は報告した。

「幹部……」

 リリアが驚いた。

「すごいわ。本当にすごい」

「でも、大変そうね」

「はい」

 拓海が答えた。

「かなりハードなスケジュールになります」

「ここには、あまり来れなくなるかもしれません」

「大丈夫よ」

 リリアが微笑んだ。

「ここは、もう安定してる」

「ゴルグたちが、ちゃんと管理してくれてるから」

「あなたたちは、自分の仕事に集中して」

「ありがとうございます」

 美咲が頭を下げた。

「でも、必ず戻ってきます」

「ここが、私たちの帰る場所ですから」

「嬉しいこと言うわね」

 リリアが二人を抱きしめた。

「いつでも、待ってるわ」

-----

 その夜、拓海は部屋で詳細な計画を立てていた。

 五つのダンジョンの情報を整理し、優先順位をつける。

 第一:「黒鉄の要塞」-防御特化のダンジョン。生産効率60%。

 第二:「深淵の穴」-深部探索型ダンジョン。生産効率65%。

 第三:「嵐の塔」-高層型ダンジョン。生産効率70%。

 第四:「毒沼の迷宮」-毒属性ダンジョン。生産効率68%。

 第五:「光と闇の神殿」-二属性混合ダンジョン。生産効率75%。

 どれも難易度が高い。

 しかし、だからこそやりがいがある。

 ノックの音が聞こえた。

「拓海くん、入っていい?」

 美咲の声だ。

「ああ」

 美咲が部屋に入ってきた。

 手には、お茶が入ったカップを持っている。

「はい、これ」

「ありがとう」

 拓海はカップを受け取った。

 美咲が隣に座り、計画書を覗き込む。

「すごい……もう全部まとめたの?」

「大まかにな」

 拓海が答えた。

「詳細は、実際に見てから決める」

「でも、おおよその方針は立てた」

 美咲は黙って計画書を読んでいた。

 そして、顔を上げた。

「拓海くん」

「ん?」

「私たち……本当にここまで来たんだね」

 美咲が呟いた。

「幹部になれるかもしれない」

「魔王軍の中枢に、席を持てる」

「ああ」

「でも……」

 美咲が少し寂しそうに笑った。

「元の世界には、もう帰れないんだよね」

 拓海は沈黙した。

 元の世界。

 日本。家族。学校。

 それらは、もう遠い記憶になっていた。

「……帰りたいか?」

 拓海が尋ねた。

「分からない」

 美咲が正直に答えた。

「帰りたい気持ちはある」

「でも……ここでの生活も、幸せだから」

「そうか」

 拓海も同じ気持ちだった。

 帰還の夢は、徐々に薄れていく。

 代わりに、この世界での目標が明確になっていく。

「俺たちは、この世界で生きていく」

 拓海が静かに言った。

「それを、選んだ」

「後悔はしてない」

「うん」

 美咲が頷いた。

「私も、後悔してない」

「ここで、価値を見つけたから」

 二人は窓の外を見た。

 星空が、静かに輝いている。

 異世界の星。

 しかし今では、見慣れた光景だ。

「明日から、また忙しくなるね」

 美咲が言った。

「ああ」

 拓海が頷いた。

「でも、やり遂げる」

「絶対に、成功させる」

「うん」

 美咲が笑顔で立ち上がった。

「じゃあ、おやすみ」

「明日も、頑張ろうね」

「おやすみ」

 美咲が部屋を出ていった。

 拓海は一人、計画書を見つめた。

 半年後。

 自分たちは、どこにいるのだろう。

 幹部として、魔王軍の中枢にいるのか。

 それとも……。

 未来は分からない。

 しかし、一つだけ確かなことがある。

 自分たちは、全力で前に進む。

 それだけだ。

-----

 一方、その頃。

 高瀬のパーティは、再び苦境に立たされていた。

 中級ダンジョンに挑戦するも、攻略できない。

 最適化されたダンジョンは、彼らのレベルでは手に負えなかった。

「くそっ……また失敗か」

 高瀬が地面に拳を叩きつけた。

「拓海め……」

 彼の声が、怒りで震えていた。

「あいつのせいで、どのダンジョンも攻略できない」

「高瀬……」

 田中が心配そうに声をかけた。

「もう、拓海に頼んだ方がいいんじゃないか?」

「ふざけるな!」

 高瀬が怒鳴った。

「あんな裏切り者に、頭を下げられるか!」

「でも……」

「俺は勇者だ!」

 高瀬が立ち上がった。

「自分の力で、攻略する!」

 しかし、その言葉には以前のような力強さがなかった。

 焦りと絶望が、彼を蝕んでいた。

 クラスメイトたちの間でも、不満が広がり始めていた。

「いつになったら、帰れるんだ……」

「もう、疲れた……」

「このままじゃ、死ぬ……」

 希望は、徐々に失われていく。

 一方、拓海と美咲は、着実に成功への階段を登っていた。

 二つのグループの運命は、完全に分かれていた。

 そして、その差は日に日に広がっていく。
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