職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第9章】他ダンジョンとの交流

エピソード.42

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 第一のダンジョン「黒鉄の要塞」への調査が始まった。

 このダンジョンは、国境近くの山岳地帯に位置している。

 外壁は黒い鉄で覆われ、まさに要塞のような佇まいだ。

「ここが……」

 美咲が巨大な門を見上げた。

「すごい迫力……」

「ああ」

 拓海も圧倒されていた。

 門の前には、ダンジョン主が待っていた。

 鎧を纏った、厳格そうな老人だ。

「私が、このダンジョンの主、ガルドだ」

 彼が名乗った。

「よろしくお願いします」

 拓海が頭を下げた。

「バルトス殿から、お前たちのことは聞いている」

 ガルドが二人を見た。

「若いな。本当に、お前たちに改善できるのか?」

「やってみます」

 拓海が真剣に答えた。

「結果で、証明します」

「……ふむ」

 ガルドが頷いた。

「では、案内しよう」

-----

 黒鉄の要塞は、防御に特化したダンジョンだった。

 厚い壁、複雑な通路、無数の罠。

 全てが、侵入者を阻むために設計されている。

「このダンジョンは、元々軍事要塞として建造された」

 ガルドが説明した。

「後に、ダンジョンとして転用された」

「だから、構造が特殊なのです」

 拓海はスキルで分析していく。

 確かに、一般的なダンジョンとは構造が違う。

 軍事施設の名残が、随所に見られる。

「問題は、魔力生産効率です」

 ガルドが続けた。

「防御力は高いが、魔力の流れが悪い」

「現在、目標の60%しか達成できていない」

「なるほど」

 拓海が頷いた。

 第三層まで見て回ったところで、拓海は主要な問題点を把握した。

「ガルドさん」

 拓海が呼びかけた。

「問題が分かりました」

「聞かせてくれ」

「このダンジョン、防御に特化しすぎています」

 拓海が説明を始めた。

「厚い壁、複雑な通路……これらは確かに防御力を高めます」

「しかし、魔力の流れを阻害している」

「魔力は、スムーズに流れることで精錬されます」

「でも、ここでは至る所で滞留している」

 ガルドは黙って聞いていた。

「つまり、どうすればいい?」

「二つの方針があります」

 拓海が指を立てた。

「第一に、魔力の流れを改善する」

「壁に通気孔のようなものを設置して、魔力が流れるようにします」

「第二に、滞留した魔力を活用する」

 拓海が続けた。

「滞留箇所に、魔力結晶生成の魔法陣を配置します」

「そうすれば、滞留した魔力を直接結晶化できます」

 ガルドの目が輝いた。

「なるほど……」

 彼が感心した。

「防御構造を変えずに、効率を上げる」

「その通りです」

「素晴らしい」

 ガルドが拓海の肩を叩いた。

「お前、本物だな」

-----

 美咲は、ダンジョン内の清掃状況を確認していた。

 しかし、問題があった。

「拓海くん……」

 美咲が困った顔で戻ってきた。

「何だ?」

「このダンジョン、すごく汚れてる」

「どれくらい?」

「今まで見た中で、最悪」

 美咲が答えた。

「多分、何年も清掃してない」

「魔物の死骸、血痕、瘴気……全部が蓄積してる」

 ガルドが気まずそうに咳払いした。

「……軍事ダンジョンだからな」

「清掃よりも、防御を優先してきた」

「でも、それが問題です」

 美咲が説明した。

「汚れは、魔力を汚染します」

「汚染された魔力では、良質な魔力結晶は作れません」

「だから、生産効率が落ちてるんです」

「なるほど……」

 ガルドが納得した。

「では、清掃を頼む」

「はい」

 美咲が頷いた。

「でも、時間がかかります」

「これだけの汚れだと、一週間はかかるかも」

「構わん」

 ガルドが断言した。

「お前たちの仕事を、最優先する」

-----

 その日から、本格的な改善作業が始まった。

 拓海は、魔力の流れを改善するための設計を行う。

 壁に通気孔を設置する位置、魔法陣を配置する場所。

 全てを計算し、図面に落とし込んでいく。

 美咲は、ダンジョン全体の清掃を開始した。

 スキル「クレンジング」を使い、一箇所ずつ丁寧に浄化していく。

 最初の三日間は、第一層だけで終わった。

 それほど、汚れが酷かった。

「疲れた……」

 美咲が夜、部屋で倒れ込んだ。

「無理するな」

 拓海が心配そうに言った。

「休憩を増やそう」

「ううん」

 美咲が首を振った。

「早く終わらせたい」

「他のダンジョンも待ってるから」

「でも、お前が倒れたら意味がない」

「……うん」

 美咲が認めた。

「少しだけ、休憩増やす」

-----

 一週間後。

 美咲の清掃が完了した。

 ダンジョン全体が、見違えるように綺麗になっている。

「すごい……」

 ガルドが感動した。

「こんなに綺麗なダンジョン、初めて見た」

「空気も、澄んでる」

「これで、魔力の質が向上します」

 美咲が説明した。

 同時に、拓海の設計も完成していた。

 通気孔の設置工事と、魔法陣の配置。

 ガルドが配下の魔法使いたちを総動員して、実装する。

 さらに一週間。

 全ての工事が完了した。

「では、測定してみましょう」

 拓海が提案した。

 ガルドが魔力生産量を測定する。

 数分後、彼の目が見開かれた。

「85%……」

 ガルドが信じられないという顔をした。

「60%から、一気に85%に……」

「25%も上がった……」

「予想以上の成果です」

 拓海も驚いていた。

「清掃の効果が、想像以上に大きかった」

「ありがとう……」

 ガルドが深く頭を下げた。

「本当に、ありがとう」

「何十年も悩んでいた問題が、解決した」

 彼は涙ぐんでいた。

「お前たちは、このダンジョンの救世主だ」

-----

 黒鉄の要塞を後にする日。

 ガルドが見送ってくれた。

「また、定期点検に来てくれ」

 彼が言った。

「もちろんです」

 拓海が答えた。

「それと」

 ガルドが二人に剣を差し出した。

「これは、このダンジョンで作った魔剣だ」

「お前たちに、持っていてほしい」

「でも……」

「受け取ってくれ」

 ガルドが真剣な顔で言った。

「お前たちは戦わないと聞いた」

「だからこそ、護身用に持っていてほしい」

 拓海と美咲は、剣を受け取った。

 黒い刀身が、鈍く光っている。

「ありがとうございます」

 二人が頭を下げた。

-----

 次のダンジョンへ向かう道中。

 二人は馬車に揺られていた。

「一つ、終わったね」

 美咲が言った。

「ああ」

 拓海が頷いた。

「あと四つ」

「大変だけど……」

 美咲が笑った。

「やりがいがあるよね」

「ああ」

 拓海も笑った。

「俺たちの仕事が、誰かを助けてる」

「それが、一番嬉しい」

 馬車は、次の目的地へと進んでいく。

 空は青く、風は爽やかだ。

 拓海と美咲の旅は、まだ始まったばかりだった。

-----

 一方、転移者たちの間では。

 拓海と美咲の噂が、さらに広がっていた。

「魔王軍の幹部候補だって」

「主要ダンジョンの改善を任されてるらしい」

「すごいな……あの二人」

 田中のパーティは、その噂を聞いて複雑な心境だった。

「今では、俺たちより遥か上にいる」

「皮肉だな」

 田中は黙っていた。

 ただ、拓海の成功を複雑な思いで見守っていた。

 高瀬だけは、相変わらず怒りを燃やしていた。

「絶対に……」

 彼が拳を握りしめた。

「絶対に、俺が上に行く」

「拓海を、見返してやる」

 しかし、その言葉には焦りしかなかった。

 差は、開く一方だった。

 そして、高瀬はそれを認めたくなかった。

 運命の歯車は、静かに回り続けていた。
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