職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

文字の大きさ
44 / 96
【第10章】再会、そして変化

エピソード.44

しおりを挟む
 三日後、拓海と美咲は第三のダンジョン「嵐の塔」に到着した。

 その名の通り、高くそびえ立つ塔のようなダンジョンだ。

 常に強風が吹き荒れ、雷鳴が轟いている。

「すごい……」

 美咲が風に髪を乱されながら呟いた。

「こんな場所、初めて」

「気をつけろ」

 拓海が彼女の手を握った。

「風が強い。飛ばされないように」

 塔の入り口には、若い女性のダンジョン主が待っていた。

 銀色の髪が風になびき、青い瞳が二人を見つめている。

「ようこそ」

 彼女が声をかけた。

「私は、このダンジョンの主、テンペスト」

「蒼井拓海です」

「白石美咲です」

 二人が頭を下げた。

「バルトス様から話は聞いてる」

 テンペストが微笑んだ。

「若い専門家だって」

「正直、最初は信じられなかった」

「でも、黒鉄の要塞と深淵の穴での成果を見て、信用したわ」

「ありがとうございます」

「さあ、中へ」

-----

 嵐の塔の内部は、想像以上に過酷だった。

 風が常に吹き荒れ、階段を上るだけで体力を消耗する。

 雷の魔力が満ちていて、不用意に触れれば感電する。

「これは……」

 拓海が分析しながら呟いた。

「環境が、極端すぎる」

「そうなの」

 テンペストが認めた。

「このダンジョン、自然の力をそのまま利用してる」

「だから制御が難しい」

「生産効率も、70%で頭打ち」

 拓海は各階層を回りながら、問題点を洗い出していった。

 第五階層まで到達したところで、主要な課題が見えてきた。

「テンペストさん」

 拓海が呼びかけた。

「問題は、三つあります」

「聞かせて」

「第一に、風の流れが不規則です」

 拓海が説明を始めた。

「自然の風をそのまま使っているため、方向も強さも一定しない」

「これが、魔力循環を不安定にしています」

「第二に、雷の魔力が過剰です」

 拓海が続けた。

「雷属性の魔力が強すぎて、他の属性を圧迫している」

「バランスが悪い」

「第三に、構造的な問題」

 拓海が塔全体を見上げた。

「高層構造のため、上層と下層で環境が違いすぎる」

「統一性がない」

 テンペストは真剣に聞いていた。

「では、どうすれば?」

「風の制御魔法陣を設置します」

 拓海が答えた。

「自然の風を、一定方向に整える」

「そうすれば、魔力循環が安定します」

「雷の魔力は、分散させます」

 拓海が続けた。

「各階層に雷の魔石を配置して、過剰な魔力を吸収させる」

「そして、構造の統一化」

 拓海が最後の提案をした。

「各階層に同じ基準を設けて、環境を均一化する」

 テンペストは数秒考えた。

「……やりましょう」

 彼女が決断した。

「あなたの提案を、信じるわ」

-----

 美咲は、各階層の清掃を始めた。

 しかし、問題があった。

「拓海くん……」

 美咲が疲れた顔で戻ってきた。

「風が強すぎて、浄化の光が飛ばされちゃう」

「そうか……」

 拓海は考えた。

「なら、風を遮る結界を張ろう」

「結界……?」

「テンペストさん、お願いできますか?」

 拓海が尋ねた。

「美咲の周りに、風を遮る結界を」

「できるわ」

 テンペストが魔法を唱えた。

 美咲の周囲に、透明な壁が現れた。

「これなら……」

 美咲が再びスキルを発動する。

 今度は、光が風に飛ばされることなく、対象を包んだ。

「できた!」

 美咲が嬉しそうに言った。

「ありがとうございます、テンペストさん」

「いいのよ」

 テンペストが微笑んだ。

「あなたの仕事が、このダンジョンを救うんだから」

-----

 二週間の作業期間。

 拓海の設計に基づき、風の制御魔法陣が各階層に設置された。

 雷の魔石も配置され、過剰な魔力を吸収している。

 美咲の清掃も完了し、ダンジョン全体が浄化された。

 そして、測定の日。

「どう……?」

 美咲が緊張した顔で尋ねた。

 テンペストが魔力生産量を測定している。

 数分後、彼女の顔が輝いた。

「92%……」

 テンペストが信じられないという声で言った。

「70%から、92%に……」

「22%も上がった……」

「成功です」

 拓海が安堵の息を吐いた。

「嵐の塔、目標を大幅に超えました」

「信じられない……」

 テンペストが涙ぐんだ。

「何年も悩んでいたのに」

「あなたたちは、たった二週間で解決した」

 彼女は二人を抱きしめた。

「ありがとう……本当に、ありがとう」

-----

 嵐の塔を後にする日。

 テンペストが見送ってくれた。

「また、来てね」

 彼女が言った。

「定期点検、お願いするわ」

「もちろんです」

 拓海が答えた。

「それと」

 テンペストが小さな箱を取り出した。

「これは、私からの感謝の印」

 箱を開けると、二つの護符が入っていた。

 雷の力を帯びた、美しい護符。

「雷撃から身を守る護符よ」

 テンペストが説明した。

「あなたたちは戦わないけど、危険は付きまとう」

「だから、これを持っていて」

「ありがとうございます」

 二人が深く頭を下げた。

-----

 帰りの馬車の中。

 美咲が疲れた様子で、拓海の肩に寄りかかっていた。

「三つ、終わったね……」

 彼女が小さく呟いた。

「ああ」

 拓海が答えた。

「あと二つ」

「頑張ろうね……」

 美咲の声が、徐々に小さくなっていく。

 見ると、彼女は眠っていた。

 拓海は静かに微笑み、彼女の頭を優しく撫でた。

 疲れているはずだ。

 毎日、全力で清掃を続けている。

 でも、彼女は一度も弱音を吐かなかった。

「頑張ってるな、美咲」

 拓海が小さく呟いた。

 窓の外を見ると、夕日が沈みかけていた。

 オレンジ色の光が、二人を照らしている。

 三つのダンジョンを成功させた。

 あと二つ。

 半年の期限まで、まだ三ヶ月ある。

 順調だ。

 このままいけば、必ず成功する。

 そして、幹部になれる。

 未来は、明るい。

-----

 その頃、高瀬のパーティは絶望の淵にいた。

 中級ダンジョンに再び挑戦したが、またも失敗。

 メンバーの一人、木村が重傷を負った。

「くそっ……!」

 高瀬が地面を叩いた。

「なんで……なんで攻略できないんだ!」

「高瀬……」

 田中が心配そうに声をかけた。

「もう、限界じゃないか?」

「何が限界だ!」

 高瀬が怒鳴った。

「俺は勇者だ!諦めるわけにはいかない!」

「でも、木村が……」

「木村は大丈夫だ!」

 高瀬が強引に言い切った。

「治療すれば、すぐに復帰できる」

 相沢が疲れ切った顔で座り込んでいた。

「もう……嫌だ」

 彼女が呟いた。

「こんな生活、もう無理」

「何を言ってる!」

 高瀬が相沢を睨んだ。

「お前も諦めるのか!?」

「諦めるって言うか……」

 相沢が顔を上げた。

 その目には、涙が浮かんでいた。

「生き延びたいだけ」

「もう、死にたくない」

 高瀬は何も言えなかった。

 メンバー全員が、限界に達している。

 それは、彼にも分かっていた。

「……分かった」

 高瀬が小さく言った。

「一旦、休もう」

「態勢を立て直してから、また挑戦する」

 しかし、その言葉には以前のような力強さがなかった。

 焦りと絶望が、彼を蝕んでいた。

-----

 田中は一人、夜空を見上げていた。

 星が、綺麗に輝いている。

「拓海……」

 彼が呟いた。

「お前は、正しかったのかもな」

 戦わない道を選ぶ。

 この世界で、別の生き方を探す。

 それが、本当の正解だったのかもしれない。

 でも、今さら引き返せない。

 ここまで戦ってきた。

 仲間も、死んだ。

 今さら、別の道など……。

「俺たちは……どうすればいいんだ」

 田中の問いかけは、誰にも届かなかった。

 ただ、夜空に消えていくだけだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

処理中です...