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【第10章】再会、そして変化
エピソード.44
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三日後、拓海と美咲は第三のダンジョン「嵐の塔」に到着した。
その名の通り、高くそびえ立つ塔のようなダンジョンだ。
常に強風が吹き荒れ、雷鳴が轟いている。
「すごい……」
美咲が風に髪を乱されながら呟いた。
「こんな場所、初めて」
「気をつけろ」
拓海が彼女の手を握った。
「風が強い。飛ばされないように」
塔の入り口には、若い女性のダンジョン主が待っていた。
銀色の髪が風になびき、青い瞳が二人を見つめている。
「ようこそ」
彼女が声をかけた。
「私は、このダンジョンの主、テンペスト」
「蒼井拓海です」
「白石美咲です」
二人が頭を下げた。
「バルトス様から話は聞いてる」
テンペストが微笑んだ。
「若い専門家だって」
「正直、最初は信じられなかった」
「でも、黒鉄の要塞と深淵の穴での成果を見て、信用したわ」
「ありがとうございます」
「さあ、中へ」
-----
嵐の塔の内部は、想像以上に過酷だった。
風が常に吹き荒れ、階段を上るだけで体力を消耗する。
雷の魔力が満ちていて、不用意に触れれば感電する。
「これは……」
拓海が分析しながら呟いた。
「環境が、極端すぎる」
「そうなの」
テンペストが認めた。
「このダンジョン、自然の力をそのまま利用してる」
「だから制御が難しい」
「生産効率も、70%で頭打ち」
拓海は各階層を回りながら、問題点を洗い出していった。
第五階層まで到達したところで、主要な課題が見えてきた。
「テンペストさん」
拓海が呼びかけた。
「問題は、三つあります」
「聞かせて」
「第一に、風の流れが不規則です」
拓海が説明を始めた。
「自然の風をそのまま使っているため、方向も強さも一定しない」
「これが、魔力循環を不安定にしています」
「第二に、雷の魔力が過剰です」
拓海が続けた。
「雷属性の魔力が強すぎて、他の属性を圧迫している」
「バランスが悪い」
「第三に、構造的な問題」
拓海が塔全体を見上げた。
「高層構造のため、上層と下層で環境が違いすぎる」
「統一性がない」
テンペストは真剣に聞いていた。
「では、どうすれば?」
「風の制御魔法陣を設置します」
拓海が答えた。
「自然の風を、一定方向に整える」
「そうすれば、魔力循環が安定します」
「雷の魔力は、分散させます」
拓海が続けた。
「各階層に雷の魔石を配置して、過剰な魔力を吸収させる」
「そして、構造の統一化」
拓海が最後の提案をした。
「各階層に同じ基準を設けて、環境を均一化する」
テンペストは数秒考えた。
「……やりましょう」
彼女が決断した。
「あなたの提案を、信じるわ」
-----
美咲は、各階層の清掃を始めた。
しかし、問題があった。
「拓海くん……」
美咲が疲れた顔で戻ってきた。
「風が強すぎて、浄化の光が飛ばされちゃう」
「そうか……」
拓海は考えた。
「なら、風を遮る結界を張ろう」
「結界……?」
「テンペストさん、お願いできますか?」
拓海が尋ねた。
「美咲の周りに、風を遮る結界を」
「できるわ」
テンペストが魔法を唱えた。
美咲の周囲に、透明な壁が現れた。
「これなら……」
美咲が再びスキルを発動する。
今度は、光が風に飛ばされることなく、対象を包んだ。
「できた!」
美咲が嬉しそうに言った。
「ありがとうございます、テンペストさん」
「いいのよ」
テンペストが微笑んだ。
「あなたの仕事が、このダンジョンを救うんだから」
-----
二週間の作業期間。
拓海の設計に基づき、風の制御魔法陣が各階層に設置された。
雷の魔石も配置され、過剰な魔力を吸収している。
美咲の清掃も完了し、ダンジョン全体が浄化された。
そして、測定の日。
「どう……?」
美咲が緊張した顔で尋ねた。
テンペストが魔力生産量を測定している。
数分後、彼女の顔が輝いた。
「92%……」
テンペストが信じられないという声で言った。
「70%から、92%に……」
「22%も上がった……」
「成功です」
拓海が安堵の息を吐いた。
「嵐の塔、目標を大幅に超えました」
「信じられない……」
テンペストが涙ぐんだ。
「何年も悩んでいたのに」
「あなたたちは、たった二週間で解決した」
彼女は二人を抱きしめた。
「ありがとう……本当に、ありがとう」
-----
嵐の塔を後にする日。
テンペストが見送ってくれた。
「また、来てね」
彼女が言った。
「定期点検、お願いするわ」
「もちろんです」
拓海が答えた。
「それと」
テンペストが小さな箱を取り出した。
「これは、私からの感謝の印」
箱を開けると、二つの護符が入っていた。
雷の力を帯びた、美しい護符。
「雷撃から身を守る護符よ」
テンペストが説明した。
「あなたたちは戦わないけど、危険は付きまとう」
「だから、これを持っていて」
「ありがとうございます」
二人が深く頭を下げた。
-----
帰りの馬車の中。
美咲が疲れた様子で、拓海の肩に寄りかかっていた。
「三つ、終わったね……」
彼女が小さく呟いた。
「ああ」
拓海が答えた。
「あと二つ」
「頑張ろうね……」
美咲の声が、徐々に小さくなっていく。
見ると、彼女は眠っていた。
拓海は静かに微笑み、彼女の頭を優しく撫でた。
疲れているはずだ。
毎日、全力で清掃を続けている。
でも、彼女は一度も弱音を吐かなかった。
「頑張ってるな、美咲」
拓海が小さく呟いた。
窓の外を見ると、夕日が沈みかけていた。
オレンジ色の光が、二人を照らしている。
三つのダンジョンを成功させた。
あと二つ。
半年の期限まで、まだ三ヶ月ある。
順調だ。
このままいけば、必ず成功する。
そして、幹部になれる。
未来は、明るい。
-----
その頃、高瀬のパーティは絶望の淵にいた。
中級ダンジョンに再び挑戦したが、またも失敗。
メンバーの一人、木村が重傷を負った。
「くそっ……!」
高瀬が地面を叩いた。
「なんで……なんで攻略できないんだ!」
「高瀬……」
田中が心配そうに声をかけた。
「もう、限界じゃないか?」
「何が限界だ!」
高瀬が怒鳴った。
「俺は勇者だ!諦めるわけにはいかない!」
「でも、木村が……」
「木村は大丈夫だ!」
高瀬が強引に言い切った。
「治療すれば、すぐに復帰できる」
相沢が疲れ切った顔で座り込んでいた。
「もう……嫌だ」
彼女が呟いた。
「こんな生活、もう無理」
「何を言ってる!」
高瀬が相沢を睨んだ。
「お前も諦めるのか!?」
「諦めるって言うか……」
相沢が顔を上げた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「生き延びたいだけ」
「もう、死にたくない」
高瀬は何も言えなかった。
メンバー全員が、限界に達している。
それは、彼にも分かっていた。
「……分かった」
高瀬が小さく言った。
「一旦、休もう」
「態勢を立て直してから、また挑戦する」
しかし、その言葉には以前のような力強さがなかった。
焦りと絶望が、彼を蝕んでいた。
-----
田中は一人、夜空を見上げていた。
星が、綺麗に輝いている。
「拓海……」
彼が呟いた。
「お前は、正しかったのかもな」
戦わない道を選ぶ。
この世界で、別の生き方を探す。
それが、本当の正解だったのかもしれない。
でも、今さら引き返せない。
ここまで戦ってきた。
仲間も、死んだ。
今さら、別の道など……。
「俺たちは……どうすればいいんだ」
田中の問いかけは、誰にも届かなかった。
ただ、夜空に消えていくだけだった。
その名の通り、高くそびえ立つ塔のようなダンジョンだ。
常に強風が吹き荒れ、雷鳴が轟いている。
「すごい……」
美咲が風に髪を乱されながら呟いた。
「こんな場所、初めて」
「気をつけろ」
拓海が彼女の手を握った。
「風が強い。飛ばされないように」
塔の入り口には、若い女性のダンジョン主が待っていた。
銀色の髪が風になびき、青い瞳が二人を見つめている。
「ようこそ」
彼女が声をかけた。
「私は、このダンジョンの主、テンペスト」
「蒼井拓海です」
「白石美咲です」
二人が頭を下げた。
「バルトス様から話は聞いてる」
テンペストが微笑んだ。
「若い専門家だって」
「正直、最初は信じられなかった」
「でも、黒鉄の要塞と深淵の穴での成果を見て、信用したわ」
「ありがとうございます」
「さあ、中へ」
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嵐の塔の内部は、想像以上に過酷だった。
風が常に吹き荒れ、階段を上るだけで体力を消耗する。
雷の魔力が満ちていて、不用意に触れれば感電する。
「これは……」
拓海が分析しながら呟いた。
「環境が、極端すぎる」
「そうなの」
テンペストが認めた。
「このダンジョン、自然の力をそのまま利用してる」
「だから制御が難しい」
「生産効率も、70%で頭打ち」
拓海は各階層を回りながら、問題点を洗い出していった。
第五階層まで到達したところで、主要な課題が見えてきた。
「テンペストさん」
拓海が呼びかけた。
「問題は、三つあります」
「聞かせて」
「第一に、風の流れが不規則です」
拓海が説明を始めた。
「自然の風をそのまま使っているため、方向も強さも一定しない」
「これが、魔力循環を不安定にしています」
「第二に、雷の魔力が過剰です」
拓海が続けた。
「雷属性の魔力が強すぎて、他の属性を圧迫している」
「バランスが悪い」
「第三に、構造的な問題」
拓海が塔全体を見上げた。
「高層構造のため、上層と下層で環境が違いすぎる」
「統一性がない」
テンペストは真剣に聞いていた。
「では、どうすれば?」
「風の制御魔法陣を設置します」
拓海が答えた。
「自然の風を、一定方向に整える」
「そうすれば、魔力循環が安定します」
「雷の魔力は、分散させます」
拓海が続けた。
「各階層に雷の魔石を配置して、過剰な魔力を吸収させる」
「そして、構造の統一化」
拓海が最後の提案をした。
「各階層に同じ基準を設けて、環境を均一化する」
テンペストは数秒考えた。
「……やりましょう」
彼女が決断した。
「あなたの提案を、信じるわ」
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美咲は、各階層の清掃を始めた。
しかし、問題があった。
「拓海くん……」
美咲が疲れた顔で戻ってきた。
「風が強すぎて、浄化の光が飛ばされちゃう」
「そうか……」
拓海は考えた。
「なら、風を遮る結界を張ろう」
「結界……?」
「テンペストさん、お願いできますか?」
拓海が尋ねた。
「美咲の周りに、風を遮る結界を」
「できるわ」
テンペストが魔法を唱えた。
美咲の周囲に、透明な壁が現れた。
「これなら……」
美咲が再びスキルを発動する。
今度は、光が風に飛ばされることなく、対象を包んだ。
「できた!」
美咲が嬉しそうに言った。
「ありがとうございます、テンペストさん」
「いいのよ」
テンペストが微笑んだ。
「あなたの仕事が、このダンジョンを救うんだから」
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二週間の作業期間。
拓海の設計に基づき、風の制御魔法陣が各階層に設置された。
雷の魔石も配置され、過剰な魔力を吸収している。
美咲の清掃も完了し、ダンジョン全体が浄化された。
そして、測定の日。
「どう……?」
美咲が緊張した顔で尋ねた。
テンペストが魔力生産量を測定している。
数分後、彼女の顔が輝いた。
「92%……」
テンペストが信じられないという声で言った。
「70%から、92%に……」
「22%も上がった……」
「成功です」
拓海が安堵の息を吐いた。
「嵐の塔、目標を大幅に超えました」
「信じられない……」
テンペストが涙ぐんだ。
「何年も悩んでいたのに」
「あなたたちは、たった二週間で解決した」
彼女は二人を抱きしめた。
「ありがとう……本当に、ありがとう」
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嵐の塔を後にする日。
テンペストが見送ってくれた。
「また、来てね」
彼女が言った。
「定期点検、お願いするわ」
「もちろんです」
拓海が答えた。
「それと」
テンペストが小さな箱を取り出した。
「これは、私からの感謝の印」
箱を開けると、二つの護符が入っていた。
雷の力を帯びた、美しい護符。
「雷撃から身を守る護符よ」
テンペストが説明した。
「あなたたちは戦わないけど、危険は付きまとう」
「だから、これを持っていて」
「ありがとうございます」
二人が深く頭を下げた。
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帰りの馬車の中。
美咲が疲れた様子で、拓海の肩に寄りかかっていた。
「三つ、終わったね……」
彼女が小さく呟いた。
「ああ」
拓海が答えた。
「あと二つ」
「頑張ろうね……」
美咲の声が、徐々に小さくなっていく。
見ると、彼女は眠っていた。
拓海は静かに微笑み、彼女の頭を優しく撫でた。
疲れているはずだ。
毎日、全力で清掃を続けている。
でも、彼女は一度も弱音を吐かなかった。
「頑張ってるな、美咲」
拓海が小さく呟いた。
窓の外を見ると、夕日が沈みかけていた。
オレンジ色の光が、二人を照らしている。
三つのダンジョンを成功させた。
あと二つ。
半年の期限まで、まだ三ヶ月ある。
順調だ。
このままいけば、必ず成功する。
そして、幹部になれる。
未来は、明るい。
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その頃、高瀬のパーティは絶望の淵にいた。
中級ダンジョンに再び挑戦したが、またも失敗。
メンバーの一人、木村が重傷を負った。
「くそっ……!」
高瀬が地面を叩いた。
「なんで……なんで攻略できないんだ!」
「高瀬……」
田中が心配そうに声をかけた。
「もう、限界じゃないか?」
「何が限界だ!」
高瀬が怒鳴った。
「俺は勇者だ!諦めるわけにはいかない!」
「でも、木村が……」
「木村は大丈夫だ!」
高瀬が強引に言い切った。
「治療すれば、すぐに復帰できる」
相沢が疲れ切った顔で座り込んでいた。
「もう……嫌だ」
彼女が呟いた。
「こんな生活、もう無理」
「何を言ってる!」
高瀬が相沢を睨んだ。
「お前も諦めるのか!?」
「諦めるって言うか……」
相沢が顔を上げた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「生き延びたいだけ」
「もう、死にたくない」
高瀬は何も言えなかった。
メンバー全員が、限界に達している。
それは、彼にも分かっていた。
「……分かった」
高瀬が小さく言った。
「一旦、休もう」
「態勢を立て直してから、また挑戦する」
しかし、その言葉には以前のような力強さがなかった。
焦りと絶望が、彼を蝕んでいた。
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田中は一人、夜空を見上げていた。
星が、綺麗に輝いている。
「拓海……」
彼が呟いた。
「お前は、正しかったのかもな」
戦わない道を選ぶ。
この世界で、別の生き方を探す。
それが、本当の正解だったのかもしれない。
でも、今さら引き返せない。
ここまで戦ってきた。
仲間も、死んだ。
今さら、別の道など……。
「俺たちは……どうすればいいんだ」
田中の問いかけは、誰にも届かなかった。
ただ、夜空に消えていくだけだった。
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