職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

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【第16章】戦闘訓練プログラム

エピソード.73

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 訓練が始まって一週間が経った。

 転移者たちの動きは、明らかに変わっていた。

 最初は剣をぎこちなく振っていた橋本が、今では基本的な構えをこなせるようになっている。魔法も、初日は的を外していたのに、今では狙った場所に火球を飛ばせる。

 訓練は、実戦形式に移行していた。

 訓練場で、二つのチームが向かい合う。橋本チームと田中チーム。模擬戦闘だ。

「始め!」

 グレイスの合図で、両チームが動き出す。

 橋本が魔法を構える。火球が放たれ、田中チームの前衛に向かう。田中が盾で受け、火花が散る。

 中村が横から剣で攻撃。橋本チームの仲間が受ける。金属音が響く。

 後衛の魔法使いが支援魔法を唱え、前衛の動きが速くなる。陣形を組み、連携する。

 それは、もう遊びではなかった。

 実戦を想定した、本格的な戦闘訓練だった。

 観客席には魔王軍の兵士たちが座り、転移者たちの動きを評価している。

「なかなかやるな」

「ああ。この調子なら、実戦でも使えそうだ」

 兵士たちの会話が、拓海の耳に届く。

 拓海は訓練場の端に立ち、腕を組んでいた。転移者たちの動きを見ているが、その目には複雑な感情が浮かんでいる。

 模擬戦が終わった。

 橋本チームの勝利だ。みんなが息を切らせながら、笑顔で握手を交わす。

「やったね!」

「うん、連携がうまくいったよ」

 でもその笑顔を見て、拓海は胸が締め付けられる思いだった。

 休憩時間。

 田中が中村と二人で水を飲んでいた。

「なあ、中村」

「ん?」

「俺たち、結構強くなってきたな」

 田中が自分の手を見つめる。一週間前まで、剣なんてまともに握ったこともなかった。それが今では、陣形を組んで戦える。

「ああ。訓練の成果だろうな」

 中村が頷く。でもその表情は晴れない。

「でもさ、これって本当に自衛のためだけなのか?」

 田中が声を潜める。

「何が言いたいんだ?」

「だって、こんなに本格的だぜ。陣形とか、魔法支援とか……まるで軍隊の訓練みたいじゃないか」

 中村も同じことを感じていた。

「確かに。ダンジョン攻略なら、もっと違う訓練でいい気がする」

「だろ? なんか、おかしいんだよ」

 二人は黙り込む。でも、その疑問を誰にぶつけていいのか分からなかった。

 午後、訓練場に一人の男が現れた。

 バルトス。炎の将軍。魔王軍四天王の一人だ。

 赤い髪、鋭い目。鍛え上げられた肉体に、重厚な鎧を纏っている。彼が訓練場に入ると、空気が張り詰めた。

「訓練中、失礼する」

 バルトスの声が響く。魔王軍の兵士たちが敬礼する。

 バルトスは訓練場を見渡し、転移者たちの動きを観察した。

 陣形訓練。前衛、中衛、後衛が連携して動く。魔法使いが支援魔法を唱え、戦士が盾で受ける。スムーズな連携だ。

 バルトスが満足げに頷く。

「良い動きだ」

 彼が拓海に歩み寄る。

「蒼井、君の指導は素晴らしい。転移者たちがここまで成長するとは」

 拓海が頭を下げる。

「ありがとうございます」

 でも声に力がない。バルトスはそれに気づかなかった。

「この調子なら、春の作戦に十分間に合う」

 拓海の顔が曇る。

「春の……作戦?」

 バルトスが当然のように答える。

「ああ。君も幹部なのだから、知っているだろう?」

 拓海の胸に、嫌な予感が走る。

「春の作戦とは……具体的には、何でしょうか」

 バルトスが眉をひそめる。

「聞いていないのか? 人間国家への侵攻作戦だ」

 拓海の心臓が止まりそうになる。

「君たち転移者には、戦略立案と魔法支援を頼むことになる。蒼井、君は戦略総司令の候補にも挙がっている」

 バルトスが拓海の肩を叩く。

「期待しているぞ」

 そう言って、バルトスは訓練場を去っていった。

 拓海はその場に立ち尽くしていた。

 やっぱり……本当だったのか。

 機密書庫で読んだ資料。侵略計画。それは、本当に実行されるんだ。

 しかも、転移から三年後ではなく、春。もう数ヶ月後じゃないか。

 拓海の膝が震える。

 美咲が駆け寄ってきた。

「拓海くん! 大丈夫?」

 拓海が美咲を見る。その目には、絶望が浮かんでいた。

「美咲……聞いたか?」

「うん……侵攻作戦って……」

 美咲の声も震えている。

 拓海が拳を握る。

「もう時間がない。今夜、みんなに伝える」

「でも……」

「このまま黙ってたら、みんなが侵略に加担することになる。それだけは、避けなきゃいけない」

 拓海が訓練場を見渡す。

 橋本が笑顔で剣を振っている。田中と中村が陣形の確認をしている。みんな、何も知らない。

 拓海は決意を固めた。

 今夜、食堂に全員を集める。

 そして、真実を告げる。

 たとえその結果、何が起きようとも。
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