職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第20章】冬の終わり

エピソード.94

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 森の中を、四人の影が進んでいた。

 橋本、そして定住派の仲間三人。

 脱出してから、既に二週間が経過していた。

 橋本の足が、雪の中で滑る。

「きゃっ」

 倒れそうになるのを、仲間の一人が支える。

「大丈夫?」

「うん……ありがとう」

 橋本が立ち上がる。

 足が痛い。靴はボロボロで、雪が染み込んでくる。凍えるような寒さだ。

 四人とも、疲労困憊していた。

 荷物は最小限しか持ってこなかった。食料も、もう残り少ない。

 仲間の一人が、木の根元に座り込む。

「ちょっと……休ませて」

 他の二人も、その場に座る。

 橋本も、大きな木に背中を預けた。

 息が白く凍る。

「あとどれくらい……かな」

 橋本が震える声で尋ねる。

 地図係の仲間が、ボロボロになった地図を広げた。

「たぶん……あと三日」

「三日……」

 橋本が空を見上げる。

 木々の隙間から、灰色の空が見える。また雪が降りそうだ。

 三日。

 でも、食料はあと一日分しかない。

-----

 その夜、四人は洞窟で火を起こした。

 小さな炎が、わずかな暖かさを提供する。

 橋本が、最後のパンを四等分する。

「これで……最後だね」

 一人ひとりに配る。

 小さなパン片を、みんなゆっくり噛む。

 味わうように。

 これが最後かもしれないから。

 仲間の一人が、涙を流していた。

「ごめん……私のせいで、みんなを巻き込んで」

 橋本が首を振る。

「違うよ。私たち、自分で決めたんだから」

 他の二人も頷く。

「そうだよ。誰のせいでもない」

「一緒に帰ろう。絶対に」

 四人は手を重ねる。

 冷たい手。でも、温かい絆。

 橋本が呟く。

「蒼井くん……私たち、頑張ってるよ」

 炎が、小さく揺れた。

-----

 翌朝、四人は再び歩き始めた。

 雪は止んでいたが、寒さは変わらない。

 一人が足を引きずっている。

「足が……痛い」

 橋本が肩を貸す。

「大丈夫。もう少しだから」

 ゆっくりと進む。

 木々の間を縫うように。

 その時、背後から物音がした。

 四人が一斉に振り返る。

 何かが動いている。

 魔王軍の追跡部隊だろうか。

 橋本が小声で言う。

「隠れて」

 四人は茂みに身を隠す。

 息を殺す。

 足音が近づいてくる。

 橋本の心臓が激しく鳴る。

 見つかったら、終わりだ。

 足音が、すぐ横を通り過ぎる。

 魔王軍の兵士が二人、パトロールをしていた。

「この辺りに、逃亡者がいるらしいな」

「ああ。見つけたら、すぐに本部に報告だ」

 兵士たちが遠ざかっていく。

 四人は、しばらく動けなかった。

 ようやく足音が聞こえなくなり、橋本が小さく息を吐く。

「危なかった……」

 仲間が震えている。

「もう……無理かも」

 橋本がその手を握る。

「大丈夫。あと少し。絶対に帰れる」

 でも、橋本自身も不安だった。

 本当に、帰れるのだろうか。

-----

 それから三日後。

 四人は、森の端にたどり着いた。

 開けた場所に、建物が見える。

 人間国家の前哨基地だ。

 橋本が仲間を見る。

 全員、ボロボロだった。

 服は破れ、顔は泥だらけ。傷だらけの手足。

 でも、目には希望の光があった。

「着いた……着いたよ!」

 一人が泣き出す。

 他の二人も、涙を流す。

 橋本も、涙が止まらなかった。

「帰れる……私たち、帰れるんだ」

 四人は、最後の力を振り絞って歩き出した。

 基地に向かって。

 希望に向かって。

-----

 前哨基地の見張り塔で、兵士が双眼鏡を覗いていた。

「隊長!森から何か来ます!」

 隊長が駆け寄る。

「何だ?」

「人間です。四人……女性のようです」

 隊長が双眼鏡を受け取る。

 確かに、四人の女性が基地に向かって歩いている。

 しかし、その様子は異常だった。

 ボロボロの服、よろめく足取り。

 隊長が命令する。

「全員、警戒態勢!だが攻撃するな!彼女たちを保護する準備だ!」

 兵士たちが動く。

 基地のゲートが開く。

 四人が、ゲートの前で立ち止まった。

 兵士たちが駆け寄る。

「君たち、大丈夫か!」

 橋本が、かすれた声で答える。

「私たちは……転移者です」

 そう言って、その場に崩れ落ちた。

 他の三人も、次々と倒れる。

 兵士たちが慌てて駆け寄り、四人を抱き起こす。

「医療班!すぐに医療班を!」

 隊長が叫ぶ。

 橋本は、意識が遠のいていくのを感じた。

 でも、心は安らかだった。

 着いた。

 ついに、人間国家にたどり着いた。

 橋本の唇が、小さく動く。

「蒼井くん……ごめんね」

 そして、意識が闇に沈んだ。

-----

 医療室で、橋本が目を覚ました。

 白い天井。清潔なシーツ。暖かいベッド。

 夢じゃない。

 本当に、助かったんだ。

 横のベッドには、仲間たちが眠っている。

 全員、無事だ。

 橋本の目から、涙が溢れた。

「良かった……みんな、無事だ」

 扉が開き、軍医が入ってきた。

「目が覚めましたか。良かった」

 軍医が優しく微笑む。

「ゆっくり休んでください。後で、少し話を聞かせてもらいますが」

 橋本が頷く。

「はい……」

 そして、再び目を閉じた。

 疲れた体が、ようやく休息を得る。

 長い、苦しい旅が終わった。

 でも、新しい試練が始まろうとしていた。
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