職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第20章】冬の終わり

エピソード.93

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 人間国家の首都、公邸。

 重厚な扉の向こうで、緊急会議が開かれていた。

 長いテーブルを囲むのは、総理大臣、国防大臣、そして陸海空軍の将軍たち。全員が厳しい表情を浮かべている。

 総理大臣が口を開いた。

「諸君、魔王軍の動きが活発化している。偵察部隊の報告では、彼らは春に侵攻を開始する可能性が高い」

 国防大臣が資料を広げる。

「魔王軍の兵力増強、訓練の強化、物資の集積。全てが戦争準備を示しています」

 陸軍の将軍が腕を組む。

「迎撃準備は整っております。彼らが来るなら、返り討ちにするまでです」

 しかし海軍の将軍が首を振った。

「問題は、魔王軍が転移者を利用していることだ。我々の同胞が、敵として立ちはだかる」

 室内に重い沈黙が落ちる。

 転移者。

 召喚されたクラスメイトたち。

 彼らが魔王軍の一員として戦うなら、これは同胞との戦いになる。

 総理大臣が尋ねた。

「転移者の詳細な情報は、まだか?」

 国防大臣が答える。

「はい。実は、転移者の一人が帰還しております。現在、別室で待機中です」

 総理大臣の目が鋭くなる。

「すぐに呼べ」

-----

 別室で、高瀬は緊張した面持ちで待っていた。

 軍から支給された簡素な服を着ている。帰還してから1週間。手続きや事情聴取で忙しい日々だった。

 扉が開き、軍の副官が顔を出す。

「高瀬殿、お呼びです」

 高瀬が立ち上がり、深呼吸する。

 そして会議室へ向かった。

-----

 会議室に入ると、全員の視線が集中する。

 高瀬が敬礼した。

「帰還者、高瀬剛です」

 総理大臣が頷く。

「楽にしたまえ。君から話を聞きたい」

 高瀬が姿勢を正す。

 そして、魔王軍での出来事を語り始めた。

「魔王軍は、転移者約20名を訓練しています。主に魔法支援と戦略立案に使う予定です」

 将軍の一人が身を乗り出す。

「戦闘要員としてか?」

「はい。基礎戦闘訓練を受けさせられました。剣術、魔法、陣形……全て実戦を想定したものです」

 国防大臣が尋ねる。

「転移者たちの士気は?」

 高瀬が一瞬、言葉に詰まる。

 橋本の涙。田中の葛藤。転移者たちの苦悩。

 でも、それを言えば彼らを裏切ることになる。

「……低いです。多くの者は、故郷と戦うことに抵抗を感じています」

 総理大臣が頷いた。

「そうか。では、寝返る可能性もあるな」

 高瀬が首を振る。

「難しいと思います。魔王軍の監視は厳重です。それに……」

 言葉を切る。

 総理大臣が促す。

「それに?」

「……転移者の中心人物、蒼井拓海は、魔王軍の幹部に昇格しています」

 室内がざわめいた。

 陸軍の将軍が声を上げる。

「幹部だと!?」

「はい。彼は情報分析官として、魔王軍に多大な貢献をしました。ダンジョンの効率化、戦略立案……全て彼の手によるものです」

 海軍の将軍が苦い表情を浮かべる。

「では、今回の侵攻作戦も……」

「おそらく、蒼井拓海が立案します」

 沈黙。

 かつての同級生が、今や敵の中枢にいる。

 そしてこの国を攻める作戦を立てている。

 総理大臣が静かに言った。

「高瀬剛。君は、その蒼井拓海と戦えるか?」

 高瀬の拳が握られる。

 拓海の顔が浮かぶ。

 かつての友人。今は敵。

 でも、選択の余地はない。

「……戦えます」

 高瀬が顔を上げる。

「故郷を守るためなら、誰とでも戦います」

 総理大臣が満足げに頷いた。

「よろしい。君の決意、確かに受け取った」

 そして国防大臣に目配せをする。

 国防大臣が立ち上がり、高瀬の前に立った。

「高瀬剛。君の情報は極めて貴重だ。君を少佐に任命する」

 高瀬の目が見開かれる。

「少佐……ですか?」

「ああ。そして、君には特別任務を与える」

 国防大臣が資料を手渡す。

「転移者対策部隊の指揮だ。お前の知識を活かし、魔王軍の転移者を無力化してくれ」

 高瀬が資料を開く。

 そこには、転移者対策部隊の編成表、装備リスト、作戦概要が記されていた。

 そして最後のページに、一つの名前。

 「最重要標的:蒼井拓海」

 高瀬の目が鋭く光る。

「拓海を……止めればいいんですね」

 国防大臣が頷く。

「その通りだ。彼は魔王軍の頭脳だ。それを潰せば、侵攻計画は大きく狂う」

 高瀬が資料を閉じる。

 そして敬礼した。

「了解しました。必ずや、任務を遂行します」

 総理大臣が立ち上がる。

「諸君、春までに準備を整えよ。魔王軍が来るなら、我々は迎え撃つ。転移者たちを救い、この国を守るために」

 全員が敬礼する。

「はっ!」

 会議が終わり、高瀬は一人廊下を歩いていた。

 手には、少佐の階級章が握られている。

 窓の外には、雪が降っている。

 高瀬が呟く。

「拓海……お前を止める。それが、俺の使命だ」

 そして歩き出す。

 春が来る。

 戦争が始まる。

 そして、かつての友と、再び戦うことになる。
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