【完結】皇帝との密会映像が、手違いで全世界に流出しました ~「拷問されている」と元婚約者が騒いでいますが、これただの溺愛です~

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狩りの時間

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【速報】両陛下、古代遺跡に突入か

1:名無しの帝国民
 両陛下が動いたぞ

2:名無しの帝国民
 >>1
 どこに向かってる

3:名無しの帝国民
 闇国の最深部らしい

4:名無しの帝国民
 古代遺跡があるって噂

5:名無しの帝国民
 >>4
 「影の評議会」の本拠地か

6:名無しの帝国民
 元宰相が潜んでるとこだろ

7:名無しの帝国民
 いよいよ決戦か

8:名無しの帝国民
 皇后様が動いたら敵は終わる

9:名無しの帝国民
 フローレンスが証明してる

10:名無しの帝国民
 また証明されそう

11:名無しの帝国民
 元宰相、逃げた方がいいのでは

12:名無しの帝国民
 >>11
 もう遅い

13:名無しの帝国民
 狩りの時間だ

14:名無しの帝国民
 両陛下の無事を祈る

15:名無しの帝国民
 いや、敵の冥福を祈った方がいい

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 帝国歴四〇三年 冬 第二の月 17日 午前9:00】

-----

 朝から、状況が動いた。

 ルシア殿が「影の評議会」の本拠地を突き止めたのだ。

 闇国の最深部。

 古代遺跡の奥深くに、ギルバートは潜んでいるという。

「皇后殿下のおかげでございます」

 ルシア殿は、そう言って頭を下げた。

 殿下は、穏やかに微笑んでいた。

「あら。私は何もしておりませんわ」

 嘘だ。

 殿下が何もしないはずがない。

 きっと、裏で何かを動かしたのだろう。

 私は、詳しく聞かないことにした。

 胃が、もたないからだ。

-----

【映像ログ021-A 闇国最深部 古代遺跡入口 同日 午後2:00】

-----

送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:低下(周囲の闇が濃いため)
配信範囲:帝国内限定(要機密扱い)

-----

    (映像開始)

 古代遺跡。

 太陽の光など、ここには届かない。

 闇そのものが、生き物のように蠢いていた。

 遺跡の入口には、黒い鎧の兵士たちが並んでいる。

「影の評議会」の護衛兵。

 しかし、彼らの隊列は乱れていた。

 あちこちで怒号が飛び交っている。

「裏切り者がいるぞ」

「誰だ、門を開けた奴は」

「見つけ次第、殺せ」

 ティアラは、その様子を見つめていた。

 口元に、かすかな笑みが浮かんでいる。

「道案内は不要ですわね」

「ああ」

 ジークハルトが、頷いた。

「奴らが、勝手に道を開けてくれている」

「ルシアの手筈通りですわ」

 ティアラは、ジークハルトの手を取った。

「参りましょう、陛下。獲物が待っておりますわ」

「行くぞ」

 二人は、混乱する兵士たちの間を悠々と歩いていった。

 誰も、彼らを止められなかった。

 止めようとした者は、足元から凍りついていった。

    (映像終了)

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午後2:30】

-----

 遺跡内部の混乱について、後で聞いた話がある。

 ルシア殿が、事前に「影の評議会」の幹部数名に接触していたらしい。

「ギルバートは闇国を滅ぼすつもりだ」

 そう囁いたのだという。

 嘘ではない。

 永久氷晶でフローレンスを氷漬けにする計画は、闇国にとっても脅威だ。

 自国が氷の墓場になる未来を、誰が望むだろうか。

 幹部たちは、ギルバートに反旗を翻した。

 内部から崩壊させる。

 殿下の指示だったのだろう。

 私は、何も聞かなかったことにした。

 聞けば、胃に穴が開く。

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【悲報】影の評議会、内部崩壊中

16:名無しの帝国民
 敵の陣地が混乱してる

17:名無しの帝国民
 裏切り者がいるらしい

18:名無しの帝国民
 >>17
 誰だろうな

19:名無しの帝国民
 皇后様の「お友達」だろ

20:名無しの帝国民
 >>19
 ルシアか

21:名無しの帝国民
 あの人、完全に皇后様の手駒だよな

22:名無しの帝国民
 壊されたからな

23:名無しの帝国民
 内部から崩壊させるとか、えげつない

24:名無しの帝国民
 >>23
 それが皇后様クオリティ

25:名無しの帝国民
 皇后様「道案内は不要ですわね」

26:名無しの帝国民
 >>25
 余裕すぎる

27:名無しの帝国民
 陛下も普通に歩いてて草

28:名無しの帝国民
 止めようとした兵士が凍ってた

29:名無しの帝国民
 通常運転

30:名無しの帝国民
 氷の皇帝、今日も絶好調

31:名無しの帝国民
 元宰相、終わったな

32:名無しの帝国民
 三回目

-----

【映像ログ021-B 古代遺跡最深部 同日 午後3:00】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:極めて低下(光源がほぼない)
配信範囲:帝国内限定(最重要機密)

-----

    (映像開始)

 遺跡の最深部。

 巨大な祭壇が、闇の中に浮かび上がっていた。

 魔導灯の光が、辛うじて周囲を照らしている。

 しかし、その光さえも闇に飲み込まれそうだった。

 祭壇の前に、一人の男が立っていた。

 白磁の仮面。

 焼け爛れた顔。

 ギルバートだ。

「ようこそ、ティアラ」

 男の声が、闇に響いた。

「よく、ここまで来たね」

「お招きいただきましたもの」

 ティアラは、微笑んだ。

「ご丁寧に、暗殺者まで寄越していただいて」

「あれは、挨拶代わりだよ」

 ギルバートの口元が、歪んだ。

「本当の力は、これからお見せする」

 彼の体が、揺らいだ。

 輪郭が崩れていく。

 人の形が、影に溶けていった。

 そして。

 巨大な何かが、祭壇の後ろに現れた。

 影の怪物。

 人の形を模しているが、その大きさは祭壇の三倍はある。

 無数の腕が、闇の中から伸びていた。

「ここは、影の力が最も強い場所だ」

 怪物の口から、ギルバートの声が響いた。

「私の体は、もはや影そのもの。物理攻撃は効かない」

 ジークハルトが、一歩前に出た。

「試してみるか」

 彼の手から、氷の剣が生まれた。

 それを、影の怪物に向かって振り下ろす。

 しかし、刃は影をすり抜けた。

 手応えがない。

「無駄だよ、氷の皇帝」

 ギルバートが、笑った。

「影には、実体がない。君の氷も、ただ空を切るだけだ」

「ならば、これはどうだ」

 ジークハルトが、両手を広げた。

 ダイヤモンドダスト。

 昨夜、暗殺者を倒した技だ。

 しかし、今度は違った。

 氷の粒子が、闇に飲み込まれていく。

 光が届かない。

「無駄だと言っただろう」

 ギルバートの声が、嘲笑を含んでいた。

「この遺跡の闇は、光を吸収する。君のダイヤモンドダストも、ここでは無力だ」

 影の腕が、ジークハルトに向かって伸びた。

「さあ、死んでくれ。そして、永久氷晶の力を私に」

    (映像終了)

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【悲報】陛下の攻撃、通じない

33:名無しの帝国民
 陛下の氷が効いてない

34:名無しの帝国民
 >>33
 マジか

35:名無しの帝国民
 影には実体がないから物理攻撃が無効らしい

36:名無しの帝国民
 ダイヤモンドダストも効かないのか

37:名無しの帝国民
 遺跡の闇が光を吸収するって

38:名無しの帝国民
 >>37
 チートすぎる

39:名無しの帝国民
 これ、勝てるのか

40:名無しの帝国民
 皇后様が何か考えてるはず

41:名無しの帝国民
 >>40
 それを信じるしかない

42:名無しの帝国民
 でも皇后様、動いてないぞ

43:名無しの帝国民
 まだ何か待ってるのか

44:名無しの帝国民
 策があるんだろ

45:名無しの帝国民
 頼む、皇后様

46:名無しの帝国民
 両陛下の無事を祈る

47:名無しの帝国民
 胃が痛い

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【映像ログ021-C 古代遺跡最深部 同日 午後3:10】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:極めて低下
配信範囲:帝国内限定(最重要機密)

-----

    (映像開始)

 影の腕が、ジークハルトに迫る。

 彼は、氷の壁を作って防いだ。

 しかし、影は壁をすり抜けてくる。

 実体がないのだから、当然だ。

「くっ」

 ジークハルトが、後退した。

 影の爪が、彼の腕をかすめる。

 冷たい。

 氷よりも、冷たい。

「諦めろ、氷の皇帝」

 ギルバートの声が、勝ち誇っていた。

「光がなければ、影は消えない。君たちの敗北だね」

 その時だった。

「そうですわね」

 ティアラの声が、闇に響いた。

 彼女は、ジークハルトの傍に立っていた。

 その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいる。

「光がなければ、影は消えない。それは常識ですわ」

「分かっているなら、諦めたまえ」

「でも」

 ティアラが、ギルバートを見上げた。

 その瞳が、静かに燃えていた。

「もう一つ、影を消す方法がありますの」

「何だと」

「光があるから、影は生まれる」

 ティアラの声が、冷たくなった。

「ならば、光を完全に消せばいい」

「何を」

「闇そのものにしてしまえば、影は存在できませんわ」

 ギルバートの動きが、止まった。

「馬鹿な。そんなことが」

「できますわ」

 ティアラが、ジークハルトを見た。

「陛下。お願いいたしますわ」

 ジークハルトは、頷いた。

「任せろ」

 彼が、両手を広げた。

 そして、深く息を吸った。

「凍れ」

 空気が、震えた。

「光も、闇も、時間さえも」

 ジークハルトの体から、凄まじい冷気が放たれた。

 それは、今までの氷とは違った。

 温度という概念そのものが、消えていく。

 絶対零度。

 全ての分子運動が停止する、究極の冷気。

 光の粒子さえも、凍りついた。

 祭壇が、凍った。

 床が、凍った。

 天井が、凍った。

 空間そのものが、氷に閉ざされていく。

「な、何だこれは」

 ギルバートの声が、震えた。

 彼の影の体が、動かなくなっていく。

「影が、凍る。馬鹿な、影が凍るわけが」

「凍りますわ」

 ティアラが、微笑んだ。

「光の粒子が停止すれば、光は存在しなくなる」

「だから、何だ」

「光がなければ、影も存在しませんわ」

 ティアラの声が、静かに響いた。

「闇の中には、影は存在しない。それが真実ですの」

 ギルバートの体が、凍りついていく。

 影が、氷に変わっていく。

「嘘だ。私は不死だ。影は死なない。死ぬはずが」

 彼の声が、途切れた。

 しかし。

 凍った影が、一瞬だけ揺らいだ。

 ひび割れた氷の隙間から、黒い靄が漏れ出す。

 復活しようとしている。

「陛下」

「分かっている」

 ジークハルトが、さらに冷気を放った。

 二度目の絶対零度。

 容赦のない、究極の冷気。

「馬鹿、な。私は、不死の」

 ギルバートの声が、完全に途絶えた。

 今度こそ、影は完全に凍りついた。

「さようなら、ギルバート様」

 ティアラは、彼を見下ろした。

「永遠に、氷の中でお眠りなさいませ」

 凍りついた影が、砕けていく。

 粉々に。

 塵に。

 何も残らなかった。

    (映像終了)

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【神回】影も凍る、比喩じゃなかった

48:名無しの帝国民
 終わった

49:名無しの帝国民
 元宰相が消えた

50:名無しの帝国民
 >>49
 どうやって

51:名無しの帝国民
 陛下が絶対零度を出した

52:名無しの帝国民
 >>51
 絶対零度

53:名無しの帝国民
 光の粒子まで凍らせたらしい

54:名無しの帝国民
 魔術の理論を超えてる

55:名無しの帝国民
 >>54
 氷の皇帝だぞ

56:名無しの帝国民
 皇后様「闇の中には影は存在しない」

57:名無しの帝国民
 >>56
 頭いい

58:名無しの帝国民
 光がなければ影は消えないって言ってたのに

59:名無しの帝国民
 光自体を消すという発想

60:名無しの帝国民
 逆転の発想ってやつか

61:名無しの帝国民
 元宰相、一回復活しかけたらしい

62:名無しの帝国民
 >>61
 マジか

63:名無しの帝国民
 「私は不死だ」って足掻いてた

64:名無しの帝国民
 陛下、二度目の絶対零度で止め刺した

65:名無しの帝国民
 >>64
 容赦ない

66:名無しの帝国民
 当然だろ、妻を狙った奴だぞ

67:名無しの帝国民
 皇后様「さようなら、永遠に氷の中でお眠りなさいませ」

68:名無しの帝国民
 >>67
 笑顔で言ってそう

69:名無しの帝国民
 絶対笑顔

70:名無しの帝国民
 元宰相、粉々になって消えた

71:名無しの帝国民
 ご冥福をお祈りします(本当に)

72:名無しの帝国民
 過去の亡霊は、過去に帰った

73:名無しの帝国民
 皇后様が昨日言った通り

74:名無しの帝国民
 有言実行

75:名無しの帝国民
 両陛下、最強すぎる

76:名無しの帝国民
 夫婦の連携が完璧

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午後4:00】

-----

 全てが、終わった。

 ギルバートは、氷の塵となって消えた。

 私は、その光景を見ていた。

 陛下の絶対零度は、この世のものとは思えなかった。

 空間そのものが凍りつく。

 光の粒子さえも、停止する。

 あれが、「氷の皇帝」の本当の力なのだろう。

 一度は復活しかけた影を、二度目の絶対零度で完全に消し去った。

 容赦がなかった。

 当然だ。

 殿下を傷つけようとした者に、慈悲などあるはずがない。

 そして、殿下。

 殿下は、最後まで微笑んでいた。

 過去の仇を討った瞬間も、穏やかに笑っていた。

 その姿は、美しく、そして恐ろしかった。

 私は、改めて思った。

 この二人を敵に回してはいけない、と。

 胃薬を、飲んだ。

-----

【映像ログ021-D 古代遺跡外部 同日 午後5:00】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 遺跡の外。

 二人は、瓦礫の上に立っていた。

 遺跡全体が、巨大な氷塊に変わっている。

 まるで、氷山のようだ。

「終わりましたわね」

 ティアラが、深く息を吐いた。

「ああ」

 ジークハルトが、頷いた。

「これで、過去は全て清算された」

「ええ」

 ティアラは、空を見上げた。

 闇国には、太陽がない。

 しかし、今。

 空に、不思議な光が揺らめいていた。

「陛下、あれは」

「絶対零度を放った影響だ」

 ジークハルトが、答えた。

「余の魔力が大気中に残り、光を発している」

 それは、帯状に揺らめいていた。

 緑と紫と青が、混ざり合っている。

 まるで、天の川のような美しさだった。

「極光ですわね」

 ティアラは、微笑んだ。

「闇国で、極光を見られるなんて」

「偶然の産物だ」

「偶然でも、美しいものは美しいですわ」

 ティアラが、ジークハルトの腕に手を添えた。

「陛下、ありがとうございました」

「礼を言われることではない」

「いいえ。陛下がいなければ、私一人では」

「お前がいなければ、余もあの策は思いつかなかった」

 ジークハルトが、ティアラを見た。

「余たちは、二人で一つだ」

 ティアラの頬が、わずかに赤くなった。

「陛下、そのような」

「事実だ」

 ジークハルトが、ティアラの手を取った。

「お前と出会えて、余は幸せだ」

「私もですわ」

 二人は、極光の下で手を繋いでいた。

 闇の国に、光が灯った瞬間だった。

    (映像終了)

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【朗報】闇国に極光が出現

77:名無しの帝国民
 闇国で極光が見えるらしい

78:名無しの帝国民
 >>77
 闇国に光なんかあるのか

79:名無しの帝国民
 陛下の絶対零度の魔力が残って光ったらしい

80:名無しの帝国民
 すごいな

81:名無しの帝国民
 両陛下、極光の下でイチャイチャしてた

82:名無しの帝国民
 >>81
 戦闘後にそれかよ

83:名無しの帝国民
 通常運転

84:名無しの帝国民
 「二人で一つ」って言ってたらしい

85:名無しの帝国民
 >>84
 甘すぎる

86:名無しの帝国民
 殺伐とした戦いの後にこれ

87:名無しの帝国民
 ギャップが激しい

88:名無しの帝国民
 それが両陛下クオリティ

89:名無しの帝国民
 闇国にも新しい夜明けが来た感じ

90:名無しの帝国民
 >>89
 詩人か

91:名無しの帝国民
 でも実際そんな感じ

92:名無しの帝国民
 「影の評議会」が消えて、闇国も変わるかもな

93:名無しの帝国民
 帝国との関係も良くなりそう

94:名無しの帝国民
 全部皇后様のおかげ

95:名無しの帝国民
 陛下もな

96:名無しの帝国民
 最強の夫婦

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午後6:00】

-----

 遺跡の外で、極光を見た。

 闇国で、光を見るとは思わなかった。

 両陛下は、その光の下で手を繋いでいた。

 戦いの後とは思えない、穏やかな光景だった。

 私は、少し離れた場所から見守っていた。

 彼らの邪魔をしてはいけないと思った。

「ハインリヒ」

 殿下が、私を呼んだ。

「は、はい」

「お疲れ様でした」

 殿下は、微笑んでいた。

 その笑みには、戦いの時の冷たさはなかった。

「いえ、私は何も」

「記録してくださったでしょう」

「はい」

「それが、大切なのですわ」

 殿下は、空を見上げた。

「この戦いを、後世に伝えてくださいませ」

「かしこまりました」

「ただし」

 殿下の目が、私を見た。

「編集は、お任せしますわ」

 私は、頷いた。

 きっと、編集が必要な部分は山ほどあるだろう。

 殿下の策略の数々、陛下の溺愛の数々。

 全てを記録に残すわけにはいかない。

 胃が、また痛くなった。

-----

【極秘ログ──送信者不明】

-----

記録日時:帝国歴四〇三年 冬 第二の月 17日 深夜11:59
ファイル名:[解析不能]
送信元:[解析不能]
送信先:[解析不能]

-----

    (音声のみ)

 地図を広げる音。
 指でなぞる気配。

「……陛下、お疲れではありませんか」

 女の声。
 穏やかな響き。

「いや。お前こそ」

 低い男の声。

「私は大丈夫ですわ」

「本当か」

「ええ。だって」

 女が、小さく笑う気配。

「終わりましたもの」

 沈黙。

「……ギルバートのことか」

「はい」

「奴は、お前を傷つけようとした」

「ええ。でも、もう」

 女の声が、穏やかになった。

「過去は、過去に帰りましたわ」

「そうだな」

「陛下のおかげですわ」

「余だけの力ではない」

 男の声が、柔らかくなった。

「お前の策がなければ、余は負けていたかもしれん」

「まさか。陛下が負けるはずがありませんわ」

「お前がいるからだ」

 沈黙。

 衣擦れの音。

「……陛下」

「何だ」

「私、泣いてもいいですか」

「いいに決まっている」

 女が、小さく息を吐く気配。

「戦いの間は、平気だったのですわ」

「ああ」

「でも、終わったら、急に」

 女の声が、震えた。

「ずっと、怖かったのですわ」

「何がだ」

「ギルバートが、また私の全てを奪うのではないかと」

 女の声が、さらに震えた。

「フローレンスにいた頃、彼に全てを奪われました。名誉も、居場所も、未来も」

「ティアラ」

「だから、怖かった。また同じことが起きるのではないかと」

 女が、息を吸う気配。

「でも、もう大丈夫ですわ」

「ああ」

「陛下がいてくださいますもの」

 男が、女を抱き寄せる気配。

「もう、何も奪わせない」

「陛下」

「お前の全ては、余が守る」

 女が、泣いている気配。

 静かに、穏やかに。

「……ありがとうございます」

「礼を言うな」

「でも」

「余こそ、お前に感謝している」

 男の声が、優しくなった。

「お前がいなければ、余は氷の中で孤独に生きていた」

「陛下」

「お前が、余を溶かしてくれた」

 女が、笑う気配。

「陛下、それは。私、氷を溶かすような力はありませんわ」

「そうではない。お前の存在が、余の心を溶かしたのだ」

「……ずるいですわ」

「何がだ」

「そんなことを言われたら、もっと泣いてしまいますわ」

「泣いていい。今夜は、泣いていい」

 沈黙。

 寄り添う気配。

「……おやすみなさいませ、私の陛下」

「ああ。おやすみ、余の妻」

 しばらくの沈黙。

 女が、ふと呟く気配。

「明日、帝国に帰りましょうね」

「ああ」

「そして、また穏やかな日々を過ごしましょう」

「そうだな」

「陛下の字の練習も、続けましょうね」

 男が、笑う気配。

「忘れていなかったか」

「忘れるはずがありませんわ」

「分かった。毎日、練習する」

「約束ですわよ」

「ああ。約束だ」

 女が、くすりと笑う気配。

「おやすみなさいませ、私の陛下」

「ああ。おやすみ、余の妻」

    (ログ終了)
    (このファイルは自動消去されました)

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

-----

【考察】氷の皇帝の絶対零度、本当に可能なのか

97:名無しの帝国民
 絶対零度について考察するスレ

98:名無しの帝国民
 光の粒子まで凍らせたらしいけど

99:名無しの帝国民
 魔術の理論的にありえるのか

100:名無しの帝国民
 >>99
 魔法だぞ

101:名無しの帝国民
 魔法なら何でもありか

102:名無しの帝国民
 陛下の魔力が桁違いなんだろ

103:名無しの帝国民
 永久氷晶の力もあるし

104:名無しの帝国民
 それを皇后様が引き出した

105:名無しの帝国民
 >>104
 どういう意味だ

106:名無しの帝国民
 陛下、皇后様といる時だけ本気出せるらしい

107:名無しの帝国民
 >>106
 ソースは

108:名無しの帝国民
 ない

109:名無しの帝国民
 でも納得できる

110:名無しの帝国民
 愛の力ってやつか

111:名無しの帝国民
 臭いセリフだけど、本当にそうかもな

112:名無しの帝国民
 両陛下なら許される

113:名無しの帝国民
 いつも通り

114:名無しの帝国民
 次は何が起きるんだろうな

115:名無しの帝国民
 とりあえず帰国だろ

116:名無しの帝国民
 穏やかな日々が戻ってくる

117:名無しの帝国民
 それを願う

118:名無しの帝国民
 両陛下に幸あれ

-----

【次回予告】

戦いは、終わった。
過去の亡霊は、永遠に氷の下に眠った。

「殿下、帝都からの通信です」
「あら。どなたからかしら」
「フェリックス元王太子からです」

帝国に戻る二人を待っていたのは、新たな知らせ。

「フローレンス王国の正式な継承権が、消滅いたしました」
「つまり?」
「フローレンスは、完全に帝国の保護領になります」

そして、もう一つ。

「ヴェルナー伯爵の救出にも、成功いたしました」
「まあ。よかったですわ」
「殿下のご指示通りに」

全てが、終わる。
そして、新しい日々が始まる。

「陛下、私たちの物語は、まだ続きますわね」
「ああ。永遠に」

最終話「氷と蜜の大団円」

お楽しみに。

-----

【おまけ:帝国への帰路 翌日】

-----

 馬車の中。

 ティアラは、交換日記を開いていた。

 昨夜、ジークハルトが書いたページを見つめる。

「陛下、これは何と書いてありますの」

「読めないか」

「はい」

 ジークハルトが、隣に座った。

「これは、『愛している』だ」

「まあ」

 ティアラの頬が、赤くなった。

「こちらは、『永遠に』だ」

「陛下」

「そして、こちらは」

 ジークハルトが、ページをめくった。

「『お前の笑顔が、余の全てだ』」

 ティアラは、言葉を失った。

「陛下、字は読めませんが」

「ああ」

「気持ちは、伝わりましたわ」

 ジークハルトの口元が、緩んだ。

「よかった」

「でも、もう少し練習してくださいませ」

「分かっている」

「毎日100回、私の名前を書いてくださいね」

「1000回でもいい」

「では、1000回で」

 二人は、顔を見合わせて笑った。

 馬車は、帝国へ向かって走っていた。

 窓の外には、闇国の風景が流れていく。

 しかし、その闇の中にも、わずかに光が差し込んでいた。

 昨日の極光の名残だろうか。

 闇国にも、新しい時代が来ようとしていた。
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