国民が熱狂する英雄譚は、全て虚構。最高視聴率番組の裏側でゴブリンADが王国の闇を記録し始めた。王国広報局番組『ブレイブ・ハート』ON AIR

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テイク12「海賊放送、開始」中編2

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【トビーの制作日誌】
補足メモ・その2

全員の同意が取れた。
海賊放送の準備を進める。

作業分担:
・トビー:映像編集、台本作成
・ザック:魔導通信機材の準備、電波ジャックのタイミング調整
・レオ:メインスピーカー(台本を覚える係)
・マリア:サブスピーカー(レオの暴走を止める係)
・ノア:被験者012としての証言
・カイル:被験者015としての証言、魔法によるサポート

問題点:
・レオが台本を覚えられるか不安
・マリアが途中でキレないか不安
・ノアが緊張で固まらないか不安
・カイルは……たぶん大丈夫

干し芋を齧る。
塩気は少し強い。
焦りが出ている証拠だ。

深呼吸。
落ち着け。

俺たちは、やれる。

-----

【映像ログ:未公開(魔王軍基地・リハーサル室・翌日午前10時)】

(魔王軍基地・仮設リハーサル室。カメラの前に全員が並んでいる)

トビー:
「では、リハーサルを始める」

レオ:
「待って」

トビー:
「何ですか」

レオ:
「照明の角度、これで合ってる? 俺の左45度が活かせてない気がする」

マリア:
「知るかよ」

レオ:
「いや、大事だろ。国民の目に映る俺の顔なんだぞ」

マリア:
「内容の方が大事だ」

レオ:
「内容も大事だけど、顔も大事だろ」

マリア:
「……」

トビー:
「……照明は後で調整します。まず台本を確認させてください」

レオ:
「おう」

トビー:
「では、レオさんから」

レオ:
「任せろ」

(レオが咳払いをする)

レオ:
「『国民の皆さん、俺は勇者レオだ。今から、真実を語る』」

トビー:
「……」

レオ:
「『エリクシール社は、俺たちを騙していた。被験者という名の、人体実験を』」

トビー:
「……いいですね」

レオ:
「だろ? 俺の声、いい感じだろ」

マリア:
「自画自賛すんな」

レオ:
「事実だろ」

トビー:
「続けてください」

レオ:
「『証拠を見てくれ。これが、エリクシール社の本当の姿だ』」

(レオが台本を見る)

レオ:
「……で、ここで映像が入るんだよな?」

トビー:
「はい。カルロスの発言映像が15秒」

レオ:
「15秒か。長いな」

トビー:
「インパクトを与えるには必要です」

レオ:
「俺の顔が映らない15秒か……」

マリア:
「そこかよ」

レオ:
「だって、俺の顔が映らないと視聴率下がるだろ」

マリア:
「下がらねえよ」

レオ:
「下がるって。俺の顔、視聴率3%くらい持ってるから」

マリア:
「根拠は」

レオ:
「俺の直感」

マリア:
「……」

トビー:
「……続けましょう」

-----

【映像ログ:未公開(リハーサル・ノアの証言)】

(リハーサル室。ノアがカメラの前に立っている)

トビー:
「ノア、準備はいいですか」

ノア:
「……はい」

(ノアが深呼吸する)

ノア:
「『僕は、被験者012です。首筋に、番号の形をした痣があります』」

(ノアが首筋を見せる)

トビー:
「……良いです。続けて」

ノア:
「『僕は、幼い頃から特別な訓練を受けてきました。それが何のためか、ずっと分かりませんでした』」

トビー:
「……」

ノア:
「『でも、今は分かります。僕たちは、実験の……』」

(ノアの声が詰まる)

ノア:
「……」

トビー:
「ノア?」

ノア:
「……ごめんなさい。ちょっと……」

(ノアが目を伏せる)

カイル:
「ノア」

(カイルがノアの隣に立つ)

カイル:
「俺も一緒に言うから。大丈夫だ」

ノア:
「カイルくん……」

カイル:
「俺たちは同じだ。一人じゃない」

ノア:
「……うん」

(ノアが顔を上げる)

ノア:
「『僕たちは、実験の……素材でした』」

カイル:
「『俺も同じだ。被験者015。俺たちは、エリクシール社の計画の一部だった』」

トビー:
「……良いです。その調子で」

-----

【個別インタビュー】
魔法使いノア/告白部屋(リハーサル室の隅)

(少し落ち着いた表情で)

ノア:
「緊張して……途中で止まっちゃいました」

トビー(画面外):
「大丈夫です。本番までに慣れれば」

ノア:
「……でも、カイルくんが助けてくれた」

トビー:
「……」

ノア:
「一人じゃないって、思えたら……少し、楽になりました」

トビー:
「……」

ノア:
「トビーさんも、いてくれるし」

トビー:
「俺はカメラを回してるだけです」

ノア:
「でも、ずっと記録してくれてた。僕たちのこと」

トビー:
「……」

ノア:
「あの時、助けてくれたのも、トビーさんです」

トビー:
「……」

ノア:
「だから、僕も頑張ります。トビーさんが記録してくれたものを、ちゃんと伝えられるように」

トビー:
「……ありがとう」

ノア:
「こっちこそ、です」

-----

【トビーの制作日誌】
補足メモ・その3

リハーサルは順調に進んでいる。

問題点の更新:
・レオの台本覚え → なんとか覚えた(照明へのこだわりがすごい)
・マリアのキレ問題 → 今のところ大丈夫(レオへのツッコミは日常)
・ノアの緊張 → カイルがサポート(いい連携)
・カイル → 予想通り問題なし

新しい問題:
・ザックが魔導通信機材の調整で徹夜している
・胃薬の在庫が心配

干し芋を齧る。
塩気は適正に戻った。

あと2日。
準備は整いつつある。

-----

【映像ログ:未公開(魔王軍基地・通信室・深夜)】

(魔王軍基地・通信室。ザックが機材の前で作業している)

トビー:
「まだ起きてたのか」

ザック:
「お前もな」

トビー:
「編集が終わらなくて」

ザック:
「こっちも調整が終わらなくて」

(二人が並んで座る)

トビー:
「……胃薬、いる?」

ザック:
「……くれ」

(トビーが胃薬を渡す)

ザック:
「サンキュ」

トビー:
「……」

ザック:
「……なあ、トビー」

トビー:
「なんだ」

ザック:
「これ、成功すると思うか?」

トビー:
「……」

ザック:
「正直に言えよ」

トビー:
「……五分五分だ」

ザック:
「……だよな」

トビー:
「技術的には問題ない。魔導通信機材も、編集素材も揃ってる」

ザック:
「じゃあ、何が問題だ」

トビー:
「……国民の反応」

ザック:
「……」

トビー:
「俺たちが真実を流しても、信じてもらえなければ意味がない」

ザック:
「『捏造だ』って言われる可能性か」

トビー:
「ああ。エリクシール社は巨大企業だ。政治力も、広報力もある」

ザック:
「……」

トビー:
「俺たちは逃亡者だ。信用がない」

ザック:
「……じゃあ、どうする」

トビー:
「……信じてもらえるように、全力を尽くす」

ザック:
「……」

トビー:
「それしかない」

ザック:
「……だな」

(二人が同時に胃薬を飲む)

ザック:
「……ゴブリン同士で何やってんだろうな、俺ら」

トビー:
「さあ。でも、悪くない」

ザック:
「……だな」
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