国民が熱狂する英雄譚は、全て虚構。最高視聴率番組の裏側でゴブリンADが王国の闇を記録し始めた。王国広報局番組『ブレイブ・ハート』ON AIR
王国広報局が威信をかけて制作するプロパガンダ番組『ブレイブ・ハート』は、視聴率が29%を超える国民的英雄譚である。
主人公は、聖剣を構える金髪の勇者レオ。ナレーションでは「闘の魔王を討つため王都を発った」と謳われるが、その実態は、戦闘中に足元の石に躓いて倒れ、「顔はやめろ!事務所NGだ!」と絶叫する極度のナルシストだ。彼は常に髪型や顔の角度(左45度)を気にかけ、失敗の原因は「洞窟の地形」や「俺のこと嫌いすぎなドラゴン」に転嫁する。彼を支える聖女マリアもまた、神々しい光の裏側で禁煙と戦い、「ソロの方がマシ」と毒舌を吐く元ヤン気質の持ち主だ。
この輝かしい「虚構」を支えているのは、第4制作班のADを務めるゴブリンのトビーである。彼はゴブリン用の椅子すらない劣悪な環境で、睡眠時間30分の徹夜編集を続け、胃薬を箱買いしながら、レオの情けないNGテイクを「死闘の末の勝利」へと緻密に作り変えている。彼の日誌は、「俺は何を作っているんだろう」という自己嫌悪と、「給料日は明後日」「ゴブリンにも生活がある」という現実的な葛藤に満ちている。
しかし、過酷なロケを続ける中で、トビーは次々と不穏な真実に直面する。撮影で訪れる場所(暗黒迷宮、廃墟の塔、山岳地帯)の全てに、15年以上前の王国広報局の「テスト地点」の痕跡が残されていたのだ。
さらに、新たに仲間に加わった魔法使いノアが古代文字を読解したことで、一行は、「試練の場所」が撮影地と一致するだけでなく、ノア自身が「選ばれし器」と呼ばれる実験計画の一部であり、首筋に「012」という被験者番号の痣を持つことが判明する。
英雄譚の裏側には、エリクシール社が17年前から資金提供する、非人道的な巨大実験「PROJECT VESSEL」が隠されていた。勇者レオも、聖女マリアも、そしてノアも、すべてこの巨大な陰謀の手の中で踊らされていたのだ。
ついにエリクシール社の宣伝部長カルロスが私設の「回収班」を率いてノアを「商品」として奪いに来た時、トビーは傍観者としての立場を捨てる。彼は、カメラを凶器としてカルロスの顔面に叩きつけ、仲間たちと共に、虚構の王国から魔王軍基地へと逃亡する。
「裏切り者」の烙印を押された勇者一行は、ゴブリンADの仲間ザックの協力を得て、カメラと編集技術を武器に、真実を世界に伝える「海賊放送」を決意する。
これは、ナルシストな勇者と、胃薬ゴブリンが仕掛ける、王国史上最大の情報戦争の始まりである。彼らは、真実のカメラを止めることなく、非人道的な陰謀の全貌を暴き出し、英雄の顔を取り戻すことができるのか。
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