【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

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第14章「住居条件の改善」

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 カイルが去った翌日。

 私は、村を歩いていた。

 住民たちが、笑顔で挨拶してくる。

「お嬢様、財務大臣様が来られたとか」

「ええ。視察に来られました」

「どうでしたか?」

 老婆が、不安そうに尋ねた。

「問題ありませんでした」

 私は微笑んだ。

「むしろ、とても良い評価をいただきました」

 住民たちが、歓声を上げた。

「本当ですか!」

「やった!」

「お嬢様のおかげです!」

 私は、彼らの喜ぶ姿を見た。

 だが、同時に気になることもあった。

 家々の状態が、まだ良くない。

 屋根が傷んでいる家。

 壁にひびが入っている家。

 窓が壊れたままの家。

 農業は改善した。

 雇用も増えた。

 でも、住居環境は……。

 執務室に戻った。

 オスカーが、資料を準備していた。

「お嬢様、現在の資金状況です」

 私は、それを受け取った。

 市場での売上、銀貨1,150枚。

 備蓄の銀貨150枚。

 合計、銀貨1,300枚。

「十分ありますね」

 私は、計算を始めた。

「次の投資は、住居改善です」

「住居……ですか?」

 オスカーが、尋ねた。

「ええ。人が増えるなら、受け入れる準備が必要です」

 私は、村の地図を広げた。

「現在の家々を修繕し、新しい家も建てます」

「予算は?」

「金貨5枚」

 私は、数字を書き込んだ。

「銀貨500枚相当です」

 オスカーの目が、見開かれた。

「それは……大きな額ですね」

「でも、必要な投資です」

 私は、地図を見つめた。

「人が来ても、住む場所がなければ意味がありません」

 グレンを呼んだ。

 彼と共に、計画を立てる。

「まず、既存の家屋を全て点検します」

 私は、チェックリストを作った。

「屋根、壁、床、窓」

「優先順位をつけて、修繕していきます」

 グレンが、頷いた。

「職人が必要ですね」

「王都から、呼びましょう」

 私は、手帳に書き込んだ。

「大工、石工、左官」

「それぞれ、5名ずつ」

「給与は?」

「銀貨40枚、一人当たり月額」

 グレンが、計算した。

「15人で、月銀貨600枚」

「工期を2ヶ月とすると、銀貨1,200枚」

「材料費が、銀貨300枚」

「合計で……」

「銀貨1,500枚」

 私が、答えた。

「予算を超えますね」

「ええ」

 私は、計画を見直した。

「では、段階的に進めましょう」

「第一期は、最も傷んでいる家から」

「予算内で、できる限りを」

 翌日、職人たちを募集した。

 王都への使者を出す。

 同時に、近隣の町にも声をかけた。

 一週間後。

 15名の職人が集まった。

 私は、彼らと面談した。

「フェルゼン領で、家屋の修繕をお願いします」

 年配の大工が、尋ねた。

「どのくらいの規模ですか?」

「まず、50軒」

 私は、資料を見せた。

「その後、新築も予定しています」

 職人たちが、顔を見合わせた。

「それは……大仕事ですね」

「ええ。でも、やりがいがあると思います」

 私は微笑んだ。

「あなたたちの仕事が、人々の生活を変えます」

 大工が、頷いた。

「わかりました」

 彼は、他の職人たちを見た。

「やりましょう」

 修繕が、始まった。

 職人たちが、家々を点検していく。

 私も、一緒に回った。

 一軒目。

 老夫婦が住む、小さな家。

 屋根が、大きく傷んでいた。

「これは……」

 大工が、眉をひそめた。

「次の雨で、崩れる可能性があります」

「すぐに、修繕してください」

 私は、指示した。

「最優先です」

 老夫婦が、涙を流した。

「お嬢様……ありがとうございます」

「当然のことです」

 私は、彼らの手を握った。

「安心して、暮らせるようにしましょう」

 二軒目。

 若い夫婦と、幼い子供がいる。

 壁にひびが入り、隙間風が入る。

「冬は、寒かったでしょう」

 私が、尋ねた。

「はい……でも、仕方ないと」

 夫が、申し訳なさそうに答えた。

「これからは、違います」

 私は、職人に指示した。

「壁を補強し、断熱材を入れてください」

「窓も、新しいものに交換します」

 妻が、驚いた表情を浮かべた。

「本当に……いいんですか?」

「もちろんです」

 私は微笑んだ。

「子供が、健康に育つ環境が必要です」

 修繕は、順調に進んだ。

 毎日、職人たちが働いている。

 住民たちも、手伝っている。

 村全体が、活気に満ちていた。

 一ヶ月後。

 最初の10軒が、完成した。

 私は、それを見て回った。

 屋根は新しく葺き替えられ。

 壁は補強され、塗り直されている。

 床は平らになり、窓は新品だ。

「素晴らしい仕事です」

 私は、大工に言った。

「ありがとうございます」

 彼は、満足そうに頷いた。

「住民の方々が、喜んでくれて嬉しいです」

 私は、修繕された家を見た。

 老夫婦が、新しい屋根の下で笑っている。

 若い夫婦が、子供と暖かい部屋で過ごしている。

 これが、私のやりたかったことだ。

 ある日、グレンが報告に来た。

「お嬢様、隣領から使者が来ています」

「隣領?」

 私は、驚いた。

「何の用件ですか?」

「移住について、だそうです」

 私は、立ち上がった。

「通してください」

 応接室に、一人の男性が待っていた。

 40代ほどの、商人風の男だ。

「初めまして、エリナ様」

 彼は、深々と頭を下げた。

「私、隣領のバイエルン村から参りました」

「商人のヨハンと申します」

「ようこそ」

 私は、彼に座るよう促した。

「どのようなご用件でしょうか」

「実は……」

 ヨハンが、切り出した。

「フェルゼン領の噂を聞きまして」

「噂?」

「はい。財務大臣が視察に来られたとか」

 彼の目が、輝いた。

「そして、素晴らしい評価を受けたと」

 私は、頷いた。

「確かに、視察はありました」

「やはり」

 ヨハンが、身を乗り出した。

「それで、お願いがあります」

「私の村から、人を送りたいのです」

「移住……ですか?」

「はい。20家族ほど」

 彼は、真剣な表情だった。

「我が村は、仕事がありません」

「畑は痩せ、収穫も少ない」

「若者たちが、希望を失っています」

「だから……」

 ヨハンの声が、震えた。

「フェルゼンで、受け入れていただけないかと」

 私は、少し考えた。

 20家族。

 おそらく、80人から100人。

 現在の人口に、さらに加わる。

 住居は……修繕が進めば、対応できる。

 仕事も、農地拡大で必要だ。

「わかりました」

 私は、答えた。

「受け入れましょう」

 ヨハンの目が、見開かれた。

「本当ですか!」

「ええ。ただし、条件があります」

 私は、指を立てた。

「まず、面接をさせてください」

「働く意欲がある方だけを、受け入れます」

「次に、最初の3ヶ月は試用期間です」

「その間に、この領地に合うか確認します」

「そして、住居は提供しますが」

「食費や生活費は、自己負担です」

 ヨハンが、何度も頷いた。

「承知しました」

「素晴らしい条件です」

「では、いつ頃来られますか?」

「2週間後に、最初の5家族を」

 ヨハンが、答えた。

「その後、様子を見て残りを」

「わかりました」

 私は、手帳に書き込んだ。

「準備を整えておきます」

 ヨハンが、帰った後。

 オスカーが、尋ねた。

「お嬢様、本当に大丈夫ですか?」

「100人も増えたら……」

「大丈夫です」

 私は、自信を持って答えた。

「むしろ、これはチャンスです」

「人口が増えれば、経済も活性化します」

「消費が増え、生産も増える」

「そして、税収も増える」

 私は、計算書を広げた。

「前世の知識では、これを『経済の好循環』

 と言います」

 オスカーが、資料を見た。

「確かに……理に適っています」

「でも、リスクは?」

「もちろん、あります」

 私は、頷いた。

「住居が足りなくなるかもしれない」

「食料が不足するかもしれない」

「でも、それは対処できます」

 私は、窓の外を見た。

 修繕中の家々。

 働く職人たち。

 笑顔の住民たち。

「私たちは、準備ができています」

 その夜、マリアが尋ねた。

「お嬢様、隣領からも人が来るんですね」

「ええ。フェルゼンの噂が、広がっているみたいです」

「すごいことですね」

 マリアが、目を輝かせた。

「半年前は、誰も来たがらなかった場所なのに」

「今は、みんなが来たいと言ってくれる」

「それは、みんなの努力の結果です」

 私は、手帳を閉じた。

「私一人では、何もできなかった」

「オスカー、グレン、マリア」

「そして、全ての住民の協力があったから」

 マリアが、微笑んだ。

「お嬢様は、謙虚ですね」

「でも、本当のことです」

 私は、窓の外を見た。

 月明かりに照らされた村。

 修繕された家々が、並んでいる。

 半年前とは、まるで違う光景。

 そして、これからもっと変わる。

 2週間後、新しい住民が来る。

 その次も、また誰かが来るだろう。

 フェルゼン領は、成長し続ける。

 私は、そう確信していた。

「さあ、準備を始めましょう」

 私は、新しいページを開いた。

「移住者受け入れ計画」

 そう書いて、項目を列挙し始めた。

 住居配置、職業配分、教育支援。

 全てを、丁寧に計画する。

 それが、私の仕事だから。

 そして、それが私の使命だから。
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