生き急がない二人

ゆるふわ詩音

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手を振る

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ある日のお風呂。

しょーが顔を洗っていて、しぃは浴槽に浸かりながら足のマッサージをしている。

「しょーってさ、よく手を振るじゃん」

「おん」

「誰に振ってるの?」

「考えたらわかるやんか」

しょーはシャワーを浴びる。

「……元カノ?」

「ぶっ! ちがうよぉ」

しょーは顔の水滴を左手で拭き取り、なんでぇとしぃを不満そうに見る。

「しぃに決まってるやん」

「いやいや……だって私に手を振ったらなにするか知ってるでしょ」

しぃは手を立てて横に振り、苦笑いをする。

「おーいってやると、後ろ向くやんね」

「自分に向けられてるとは一ミリも思わないからね」

「……お前にしかやらんし」

しょーは右に口角を上げてカッコつける。

「いや、芸能人なんだからファンにやりなよ」

「ええやんかぁ、彼女や~ん」

しょーはプウッと頬を膨らませる。

「あっ、でもこの前手を振ってみたら振り返されてビビったよ」

しぃは腕のマッサージをする。

「いつ!」

しょーはしぃに近寄る。

「生放送の歌番組で」

「上がったら再現して!!」

「イヤだよ」

「……ケチ」

しょーはいじけてしまった。

「まぁ、たまにつられて振っちゃう時があるから安心して」

「他のメンバーにはしてないやんな?」

しょーは5人のボーカルグループに所属している。

「するわけないでしょ」

あなたが彼氏なんだからと半笑いをするしぃ。

「そうやろな」

しょーは白い歯を見せ、笑った。

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