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シナリオ

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秋の訪れが香ってきてもいいはずなのに、まだまだ汗は滲み、冷房や扇風機をしまうには早い時期。
いつもと変わらず、図書室入って左側。手前と奥に長い机がひとつずつあり、横に10、計20もの机が均等に並べられている。
僕はいつも手前の先頭から三番目の机の端に座る。ここなら時計も見やすく、カウンターも近い。

誰もいない空間が素晴らしくいい、だが今日は違う。

「なんでお前がいつもの僕のせきにいるんだ!」

「いいじゃん!先生の場所暖めておいたんだよ!」

「冬にやれ。暑いだけだわ。あとその先生いじりキツイからやめてくれ。」

「この間の続き書いてくれた!?」

「はい、どうぞ。」

「やったー!「放課後の図書館」!こんな素敵な話を無料で読めるとか最高すぎ!」

「出世払い。毎月1000円。溜まっていってますので。」

「たっか!じゃあいいです!」

「じゃ、持ち帰ります。」

「うう、、!やっぱ読む!せめて100円!」

「10分の1。。まぁいっか。はいよ。」

「楽しみだったんだぁ!暖にこんな才能があったなんて知らなかったよ。」

素人の趣味をここまで喜んで貰えるとは。正直思ってもみなかった。

「あ、そういえば!今は初恋の話だけど、暖の初恋って誰なの?」

僕はこの時、いや、この後も分からなかった。恋とは何か、好きとは何か。あの日が来るまでは。
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