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オリジナル
㉛α×甥を育てるβ(美形×平凡)
しおりを挟むΩの姉が死んだ。夫と2人、交通事故だった。2人には小さな子供がいた。姉も夫も、早くに親を亡くしていて、子供には身寄りがなかった。
ーー平凡(夕月)以外には。
大学4年の時に、姉の遺児を引き取った夕月。それから就活と育児をすげー頑張った。でも結局、子供がいたら正社員なんてなかなかなれなくて。大学卒業後、時間に融通がきくバイトとかしながら生活してた。
そんなある日、4歳になった甥っ子(瑠羽斗)とお散歩に来ていた夕月。日々の疲れから、ちょっとうとうとしてた。そうしたら瑠羽斗が駆け出していて。ハッとして追いかけるけど、その時には道路に飛び出していて。
間に合わないーー!と思ったけれど、危機一髪、誰かが瑠羽斗を助けてくれた。
顔を真っ青にさせて追いついて、助けてくれた人にお礼を言う。恩人はめちゃめちゃカッコよくて、背が高くて、いかにも成功者!みたいな感じの人。
(この人、αだ……)
がっしりした腕で瑠羽斗を抱き上げるその人をみて、夕月は思う。
「ちゃんと見てなきゃ危ないだろう!」
「っ!!」
ぼんやりしていたらそう、頭上から怒鳴られた。ハッとして視線をあげるとαだろう男(将)は厳しい目で夕月を見ている。
「ご、ごめんなさい……」
「私じゃなくて、この子に謝るべきだろう!」
「っるう、ごめんね。怖かったよね」
震える腕を伸ばすと、キョトンとしていた瑠羽斗が嬉しそうに抱きついてきた。
姉の遺した大切な命を失わずに済んだことに安堵して、小さな体をギュゥと抱きしめる。
「……少しいいだろうか」
控えめにかけられた声に、またハッとする。すっかり将のことを忘れていた。
将は2人を促して、先程まで夕月たちがいた公園のベンチに座る。
「さっきは怒鳴って悪かった」
「いっ、いえ!本当のことなので、謝らないでください!僕が悪いんですから!!」
頭を下げてきた将にあわてる夕月。顔を上げてもらって、それから自己紹介をした。
「ーーそれで、どうしてあんなことに?」
穏やかな声で問いかけてくる将に、夕月は自分の身の上を聞かせるかどうか迷う。
(自分とは身分とかも違う人だし……)
そう思って、何も無いと言おうとするが、
「疲れた顔をしている。もしなにか悩んでいるなら、誰かに話した方が楽になるんじゃないか?」
そう言われてしまって。そうしたら、心がグラついてしまった。
そうして自分の身に起こったことをゆっくりと話し出す。その間将は、静かに聞いてくれて、時折身を乗り出そうとしたり、走り出そうとする瑠羽斗の事も相手してくれていた。
全部話し終わると、ぽふんと頭に手を置かれる。
「ぅえ……」
「辛かったな。よく、頑張った」
わしゃわしゃと頭を撫でられると、その瞬間胸がいっぱいになって。夕月は将にすがりついて泣いてしまった。
ーーそれから2人は連絡を取り合う仲になる。事情を知った将が、夕月と瑠羽斗をなにかと気にかけてくれるようになったのだ。
助けてもらった上に、そんな事までしなくていいと伝えたけれど、自分がやりたいだけ。可愛いこの子の喜ぶ顔が見たいだけ。そういって食事に連れて行ってくれたり、休みの時は瑠羽斗を預かってくれるようになる。
最初に会ったあの日から、瑠羽斗はすぐに将に懐いたし、なんだかんだと助かっているので、夕月はどんどん将と親密になっていった。
そうしていればこんなに素敵な男に惹かれないわけなどなくて。
(でも、僕はβだ。彼と結ばれることなんてない)
話を聞くところによると、エリート会社員な将。αとして申し分ない容姿や社会的地位を持っている彼が、毎日生きていくのも必死な子持ちの男などを選ぶはずが無い。今こうして3人で楽しい時間を過ごせているのも奇跡のような巡り合わせなのだ。
(高望みはしない。早くるうを預けられる場所を探して、それからちゃんとした仕事に就かなきゃ。それでこの人の助けを借りなくていいようにしなきゃ)
そう心に決め、育児もそうだが仕事探しに本腰を入れる夕月。
今まで以上に忙しそうに、また疲れている夕月に、将は心配して声をかけて来るが、夕月は「大丈夫です」「正職として働ける仕事を探してるだけなんです」といって突っぱねる。
そうしていたら案の定。無理が祟って倒れてしまう。
(あ。るうのお迎えどうしよう)
それが夕月が意識を失う前に思ったこと。
目が覚めたら病院のベッドの上だった。
「気がついたか?」
「御子柴さん……」
「どうしてこんなになるまで……」
泣き疲れたような瑠羽斗を抱いて、夕月の顔を覗き込む将は、ひどく悲しそうな顔をしていた。
「はやく、ひとりだちしなきゃって。あなたの迷惑にならないよう、るうとふたり、生きてかなきゃって、思って……」
ぼんやりしたまま呟く夕月に、将は眉間に皺を寄せ、それから夕月の手を強く握る。
「迷惑なんて思っていない。むしろ、君たちが離れていく方が辛い」
「……どうして、そんなに優しくしてくれるんですか。僕なんかに構わずとも、沢山の人が周りにはいるでしょう?」
その手の温もりに、優しい言葉に、勘違いしてしまいそうになる。
「そんなのは決まっている」
泣いてしまわぬように目をつぶった夕月の耳に、しっかりとした声が響いた。
「そんなの、私が君を……君たちを好きだからだ」
「っ貴方はαでしょう?こんなβの僕にそんなこと言って、どうするんですか」
「αだとかβだとか、そんなことは関係ない。私は一生懸命頑張っている君が、笑顔が可愛いこの子が好きなんだ。だから私に君たちを守らせてくれ。私の手で、君たちを幸せにさせてくれ」
真剣な表情でそういう将。
そんなに愛おしそうに見つめられたら、虚勢を張り続けるなんて無理で。
「僕も、貴方が好きです……」
涙を零しながら告げる夕月。
こうして番になれないながら、2人は結ばれる。
それから3人は幸せな家族になるのだが、αの深い愛情や、夕月がαに対して「この人の子供を産めたら」なんて思う気持ちが奇跡を起こしたのか、夕月の第二の性がβからΩに変わるのはもう少し先の話。そしてそれによって、二人の間に子供ができるのは、もっともっと先のお話。
α×甥を育てるβのお話。
CP名:御子柴将×在岡夕月+小島瑠羽斗(甥)
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