57 / 96
オリジナル
57.爽やか×虐められっ子(美形×平凡)
しおりを挟む中学時代、何をした訳でもないのに
「根暗」「オタク」「キモイ」といって虐められていた平凡(凛月)。怖くて辛くて悲しくて、学校に行きたくなかったけど、高校進学のために保健室登校とかも交えながら、どうにか卒業まで通い続けた。
(ーーよし!僕の人生、ここからだっ!!)
そうして凛月は、同級生が誰もいないであろう遠方の高校に合格。進学と同時に高校デビュー……とまではいかないが、脱根暗を目指してイメチェンを決意。
髪も染めて、野暮ったいメガネからコンタクトにして……と、少しは垢抜けた雰囲気になる。
そうして迎えた入学式。
「うそ……なんで……」
式終了後、クラス割りを見た凛月は愕然とする。なぜならそこには、中学時代自分を虐めていた主犯格のイケメン(忍)の名前があったからだ。
(なんでどうして?だれもココ受けてないと思ったのに!なんでよりによってアイツがっ!?)
あまりの衝撃に過呼吸になりかける凛月。と、その時。
「おい、大丈夫か?」
すぐ後ろから声をかけられる。
振り返ると爽やかな印象のイケメン(蒼)が立っていて、心配そうに凛月を見ていた。
「ぅ、あ……その」
「具合悪そうだけど……」
「ちょっと、息、苦しくて……ッ」
「保健室いくか?先生に場所聞いてくるけど……」
「だ、いじょぶ……ちょっと休めば……」
「そか。ならちょっと待っててな」
そう言って蒼はどこかへ走っていく。しばらくすると戻ってきて
「そこら辺にいた先生に、ちょっと休んでから移動するって言ってきたから。ゆっくりしてな」
「あっ、ありがとう」
ニカッと笑った蒼。その優しさにホッとして、大分落ち着くことが出来た。
しかも1人でも良かったのに、彼は凛月の体調が良くなるまでずっと傍についていてくれたのだ。
それから2人は仲良くなる。奇遇なことに同じクラスで、席も前後だったこともあり、高校で出会ったにもかかわらず親友のような間柄に。
ーーひとつだけ嫌なことがあるとすれば、それは忍も同じクラスだという事。
忍の周りにはいつも美男美女が集まっていて、いかにも陽キャ一軍の集まりといった感じ。
蒼にもよく陽キャたちから声がかかるものの、いつも凛月を優先してくれる。
……そうやって優しく接してくれる蒼に、凛月はいつの間にか恋をしていた。蒼と過ごす毎日が、楽しくて嬉しくてソワソワして、顔がにやけてしまう。
そんな近頃、どこからか強い視線を感じるようになる。視線を巡らせればそれは忍で。
睨みつけるように鋭い視線で、彼は人集りの中から凛月を見ている。
(なっ、なに……!?怖い!!)
思わずビクリと肩が揺れる。すると凛月の前の席からこちらを向いて話していた蒼にもそれは分かって。
「どうした凛月?」
「や、えとっ、何でもない……ッ!!」
大好きな蒼との会話なのに、忍のせいで、全然楽しめない。
(なんなんだよ~!!)
って混乱する凛月。
……だけどこれは始まりで。それから何故か忍が絡んでくるようになった。
席も離れてるのに、「消しゴム忘れたから貸してくんね?」って言ってきたり、移動教室の時に凛月を捕まえて、「俺こいつと行くから先行ってて」と陽キャたちを先に行かせたりと、意味不明な行動を取りだす。
これには周囲もだが、1番凛月が驚く。
(なになにマジで!怖い!関わらないでほしいっ!!)
驚く……というより恐怖である。虐められていた過去があるのだ、また虐められるのではという不安を感じ、毎日胃を痛めている。
その度凛月は蒼の元に逃げる。
「うう蒼くん……。もうやだよぉ」
「凛月……」
「なんでこんな僕なんかに話しかけてくんの……怖いぃ」
泣きべそをかく凛月を見ながら、蒼はチラリと忍に視線を投げた。すると、思いっきり目が合う。
「……悪い凛月」
「へ…………?」
「ちょっと用事できたから、離れるな」
「えっ、なに?どこ行くん??」
「すぐ戻ってくるから。大人しく待っとけよ~」
ポンポンと凛月の頭を撫でてから、蒼は教室を出る。それを目で追っていれば、彼の後に続くのは忍で。
「……なんであの二人が?」
ポカンとしたまま2人を見送る凛月。
凛月を残して教室を出た2人は、空き教室まで来ると向き合う。
「尾神さ、どういうつもりなの?」
「どういうって、なにが?」
「最近やけに凛月に絡んでくるじゃん。それでアイツが困ってるって、わかんない訳ないよな?」
ニコリ、けれども目は笑っていない表情で、蒼は問う。それを冷めた目で見遣ってから、忍は小さく鼻を鳴らす。
「だったら何?なんかお前に関係ある?」
「関係って……あるだろ。友達が困ってんのに、知らん顔なんて出来ないだろ」
「でもこれは俺とアイツの問題だし、お前がなんか言おうが、俺はやめる気ねぇから」
「ふざけんなよ。毎日お前のせいで嫌な思いしてんだぞ凛月は!」
「……で?アイツが嫌な思いしたとして、お前に影響とかある?ないよな?別に付き合ってるわけでもないだろ、お前ら」
「付き合う……って、男同士だぞ……」
「それが?そんなことに拘ってるようなお前にとやかく言われたくないんだよね、コッチは。ただの友達なら邪魔しないでくんない?アイツ、俺のにすんだからさ」
そう言って部屋を出ていく忍。すれ違う瞬間、忍は睨みつけられた気がした。
……それからなんとも言えない気持ちで教室に戻る蒼。席に着けば、心配そうに凛月が顔をのぞきこんでくる。
「蒼くん大丈夫?なんか変な顔してるけど……。尾神になんかされたのか?」
「尾神……。いや、別に……」
凛月の向こう、目線だけでこちらを見ている忍が見える。
(凛月を自分のものに……それって、コイツを好きってことだよな?)
ーーそれから蒼は、男同士で付き合うということについて考えたり、凛月と忍の行動とかを気にするようになる。
それで分かったのは、凛月が恐らく自分を好きだという事と、気づかれないようにしているが、忍がずっと凛月を見ていること。
(それと、俺と仲良くなりだしてから尾神が凛月に絡み出したってことか……)
三角関係の予感に、少しだけ嫌な気持ちになる蒼。けれど、自分を見つめる凛月の仕草や顔が近頃可愛く見えてきており、正直付き合ってもいいかも……と思い始めている。
そんなある日、またまた忍が、立ち上がった凛月の腕を掴んで引き止めた。いつもと違ったのは、それでバランスを崩した凛月が、忍へ倒れ込んだこと。
そして、遠目で見ても分かるくらいに、2人の唇が触れたこと。
(ーーッ!!)
それを目にした瞬間、言葉にできない怒りが蒼の胸に沸き起こった。
「凛月」
「っ蒼くん!あの、えとっ……!」
「大丈夫?怪我はない?」
「う、うん……」
「よかった。……ほら、こっち来て」
「あ、うん……ッ!?」
声を荒らげないよう、気持ちを落ち着けて凛月を呼ぶ。少し強ばった顔をしつつも、それに従おうとした凛月だが、その動きが直ぐにとまる。見れば、忍が自分の腕を掴んだままだった。
「手、離せよ」
「なんで?」
「俺、凛月に用があるから」
「俺もあるけど」
「凛月、嫌がってるってわかんねぇ?」
「わかんねぇな。なんも言われてねぇし」
「……凛月」
「ッな、なに?」
「尾神のこと、どう思ってんの?はっきり言って教えて?」
「そ、それはっ」
2人の間に挟まれてオロオロする凛月。気弱な性格なのは分かっているから、彼自身で忍を切るよう仕向けるため、蒼は言葉を発した。
「ちなみに俺はね、凛月のこと好きだよ。もちろん、恋愛的な意味でね」
「え……!?」
「お前……」
「好きだから、ソイツじゃなくて俺のそばに来て欲しいし、素直に凛月の気持ち聞かせて欲しいな」
優しく微笑むと、凛月は顔を真っ赤にして、それからすぐに忍の手を振り払ってこちらに駆けてくる。
「ほ、ほんとに好き……?」
「うん、好きだよ。凛月といると楽しいし、見てて可愛いなって思うし、人に取られたくないって思うくらい好き」
「嬉しいっ!……ぼ、僕も好き!大好き!!」
「ホントに?嬉しいな。でも、ソイツも凛月のこと好きみたいだから、ハッキリここで凛月のアイツに対する気持ち聞かせて欲しい」
凛月を自分の腕の中に囲いながら蒼は言う。
それに対し凛月は、なんでもないように答えた。
「……?そんなの嘘だよ。だって尾神、中学から僕のこと虐めてたし、ほんとずっと怖くて……。中学の時から今までずっと、尾神のことは嫌いだったよ」
「……そうなんだ」
「うん!……ねえ正直に言ったよ?これでいい?僕と蒼くん、両想いなの?」
「うんうん、そうだよ。両想い。今日から恋人同士だよ」
まっすぐ凛月を見つめて愛の言葉を囁けば、凛月は涙を流して喜び、蒼に抱きつく。
そうしながら、蒼は凛月の背中の向こうで、人でも殺しそうなほどの凶悪な顔でこちらを睨んでくる忍に視線を投げて、口角を上げる。
「残念だったな、尾神。凛月は俺のものだよ」
ーーこうしてクラスメイトがいる教室で繰り広げられた告白劇は幕を閉じる。
我に返った凛月が真っ赤になって大声で叫んでどこかに逃げ出してしまったり、女子達が失恋したと落ち込みまくったりはしたものの、それも数日で落ち着いた。
それから蒼と凛月は、学校中で知られるカップルとなり、卒業しても社会人になっても、幸せに暮らしている。
公開失恋となった忍だが、あの日以降学校にあまり来なくなった。凛月もちょっかいを掛けられることが無くなり、いつしか彼のことは忘れてしまったのだった。
CP名:有島蒼×青木凛月
43
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる