嫌われ者は異世界で王弟殿下に愛される

希咲さき

文字の大きさ
29 / 50
番外編

ウィリアムとミレイアの結婚式

しおりを挟む


「ミレイア様……、とっても素敵です!!」
「ありがとうございます、カナメ様!」

 枢は瞳を潤ませながらミレイアを見ていた。
 本日は彼女とウィリアムの結婚式当日だった。

 この日のために、ひと月かけて用意されたウェディングドレスを身にまとったミレイアは、かつてないほど美しかった。
 プリンセスラインのドレスは何枚もチュールを重ねてあり、縫い付けられた宝石がキラキラと輝いている。トレーン部分にも細やかな刺繍が施してあり、陽の光に反射して、美しい模様を浮かび上がらせていた。
 編み上げられた髪の毛には青色の花が飾られ、彼女の豊かな金髪をより一層彩っている。
 愛するウィリアムと同じ銀色の輝きを放つジュエリーや、ティアラ。それらに嵌められた二人の瞳と同じ青色の宝石。眩く輝くそのどれもが、ウィリアムとミレイア、二人の結婚を祝福しているようだった。

「なんだか、ドキドキしてきましたわ……!」
「僕もですっ」
「カナメ様が緊張してどうするんですの?」
「そうなんですけど~!!」

 ミレイアにクスクスと笑われながら話していると、控え室の扉が開く。

「準備は出来たか? ……ミレイア、とても綺麗だな」
「アシュレイ殿下、ありがとうございます! ですが、そういうことは私ではなくカナメ様に言ってあげてくださいまし」
「うぇ……!?」
「おっと、そうだな。愛しのつがいの前で、人のつがいを褒めるのは良くないか」
「そうですわ!……っと、そろそろ式が始まりますわね。お二方とも席にお戻り下さいませ」
「あぁ、そうさせてもらう」
「待ってますね……!」

 にこやかな笑みをこぼすミレイアに手を振り、二人は教会の中へ戻り、席へと腰を下ろした。

「アシュレイ、準備は大丈夫?」
「もちろんだ。カナメは大丈夫か?」
「っ僕は、言っても精霊さん呼ぶだけだし……」
「緊張してるだろう? 本当に大丈夫か?」
「大丈夫……!! でも、ドキドキし過ぎて不安だから、手は握ってて欲しい……」
「わかった」

 ヒソヒソと話していると、足音が聞こえる。顔を上げるとそこには司祭が立っていた。

「……始まるな」
「うん……ッ」

 しんと静まりかえった室内。ややあって重厚な扉が開く音が聞こえた。
 そちらに目をやれば、腕を組んで歩いてくるウィリアムとミレイアがいた。

 王冠を戴きジュストコールに身を包んだウィリアムは、凛々しく威厳に満ち溢れていた。その傍らのミレイアは先程見た通りだが、頬をバラ色に染めており、幸せそうな様子が伺える。

 一時は揃って攫われ、身の危険を感じたこともあるからだろうか、そのミレイアを見ると、涙が浮かんでくる。

(ふたりが幸せそうで、本当に良かった……)

 祭壇の前に並び立つ二人の背を見ながら、アシュレイと繋いだままの手に力を込める。
 彼は優しく握り返してくれて、それにホッと息をつく。

 厳かな雰囲気のまま式は進む。

「ウィリアム・アーノルド・ネオブランジェ。汝はミレイア・エルチェットを生涯の伴侶とし、愛し抜くことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「ミレイア・エルチェット。汝はウィリアム・アーノルド・ネオブランジェを生涯の伴侶とし、愛し抜くことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「では誓のキスを」

 言われて向き合った二人が、小さく微笑みあったのが見えた。
 ウィリアムがミレイアのベールを持ち上げる。その下から覗いた美しい青色は、涙でキラキラと輝いていた。
 それがゆっくりと閉じられると、触れるだけのキスがおとされた。

「っ、アシュレイ」
「あぁ」

 目を開け、唇を二人が離した瞬間。枢は小さな声で精霊を呼んだ。

「精霊さん、お願い」

 ふっと現れた十匹ほどの精霊たちは、新郎新婦の頭上へと飛んでゆく。
 気づいたミレイアが「あ、」と小さく声をあげると同時に、精霊たちはくるくると踊りだし、二人に黄金色の煌めきを降らせた。
 かと思えば、今度はどこからか吹いてきた風に乗り、真っ赤な薔薇の花びらが宙に舞う。

 その幻想的な光景に、式場にいる誰もが感嘆のため息をもらした。

 自分たちのサプライズが成功したことを確信し、枢は大きく息を吐く。それからミレイアたちを見ると、彼らもまたこちらを見ていた。

『ありがとう』と口の動きだけで伝えられたそれに、枢はアシュレイと顔を見合せ、嬉しそうに微笑んだ。

 ーーこうして、国王夫妻の結婚式は幕を閉じる。

 式が終われば今度はパレードだ。二人を乗せた馬車が街に繰り出せば、盛大な歓声が上がる。
 誰も彼もが二人を祝福する声が響き、その日はネオブランジェ国内が賑わい続けていたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ということで、ウィリアムとミレイアの結婚式でした。
ジューンブライドってね!
(水の一の月は現代日本でいう六月)

精霊が降らせたのはなんでしょうね?魔法使う時も
金色の粒が舞ってましたけども、これはそれとは関係ないです()
薔薇の花びらは、アシュレイが風魔法に乗せて振らせました。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。