31 / 50
番外編
彼と騎士と侍従長③
しおりを挟む
スピンオフその③。本格的にロイドが動き出します。
♢♦︎♢
「ユーリ」
呼ばれた声に、ユリウスはどきりと肩を跳ねさせた。振り向いた先には思った通りの人物が。
「っ、ロイド、殿……」
「この間はえらく楽しそうなことしてたねぇ」
「……何のことでしょう」
「精霊の森でのお茶会だよ。賑わってたみたいじゃないか」
見られていたのか、とユリウスは少しだけ苦い気持ちになる。
咎められる何かがあるわけではないし、ロイドには関係のないことなのだからそう思う必要はまったくない。けれど、彼の前で笑顔を見せないようにしている手前、あの現場を見られていたのはなんとなくバツが悪かった。
「ねぇユーリ? どうして俺には笑わなくなったの?」
「そ、れは……っ。ロイド殿の、気のせいでは?」
「呼び方もよそよそしいしねぇ? 前は『ロイドさん』って呼んでくれてたじゃないか。なぁ、なんで?」
頬と頬が触れ合いそうなほど、顔を近づけられる。耳元で囁かれた声に小さく身動ぐと、クスリと笑われた。
「もしかして、俺がお前のことからかってると思ってる?」
「っ……‼︎」
「やっぱりかぁ~」
「や、めてください……ッ!」
揶揄するような響きに、ユリウスは一歩距離を取ろうとする。しかしロイドはそれを許さなかった。
いつの間にか腰に回された腕が、ユリウスの動きを封じ込める。
「な、んで⁉︎ 離し……ッ」
「離さないよ。俺、前に言ったよね? お前の一番になりたいって。騎士としても術師としても、一人前になろうとするお前の支えになりたいって。……忘れたのか?」
「…………っ」
「なにを勘違いしてるか知らないが、リオンなら俺のーー」
「ユリウス?」
ロイドが何か言う寸前、第三者の声がした。
驚いて振り返れば、そこにはマクシミリアンが立っている。
「マクシミリアン‼︎」
「何をしてるんだそんなところで? もうすぐ交代の時間だぞ」
「あっ、あぁ‼︎ すまない! すぐ行くっ」
「っ、おいユーリ……」
「申し訳ありませんが! 職務がありますので私はこれで!」
「オイ‼︎」
ロイドを押しやるようにして体を離すと、ユリウスはこちらの顔も見ずに走り去っていく。
なんとも言えない気持ちでその背を見送っていれば、じっとりと視線が突き刺さる。
「……何か御用ですか? マクシミリアン副団長殿」
「貴方は、なぜユリウスに近づくのですか?」
「なぜ、とは? 理由を貴殿に離す必要がありますか?」
「どのような理由か知りませんが、騎士の仕事に支障をきたされては困るのです。貴方が近くにいるとアレは落ち着かない」
「……へぇ? 私が近づくと落ち着かないと?」
「そうです。なにかしでかしてからでは遅いのです。できるだけユリウスの心を乱さないでいただきたい」
「…………まぁ、善処いたします」
「そうしてください。……それでは私はこれで」
一礼するとマクシミリアンはロイドに背を向け歩き出そうとする。ーー瞬間。
「あぁそうだ。副団長殿の初恋の君は見つかりましたか?」
「ーーっ⁉︎」
聞こえた言葉に目を見開き、マクシミリアンは慌てて振り向く。
しかしその時には、何事もなかったように悠然と歩き出した、男の背中しか見えなかった。
「どうして、貴方がそれをーー‼︎」
問いかけた声にいらえる者はなく。角を曲がって見えなくなったロイドの背中を、見つめることしかできないマクシミリアンだけが残された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出会いの話にまだ触れられない!
どうなってるんですかね?
おまけにここに来て今度はマクシミリアンの初恋の君……。
収拾つかなくなってきました‼︎
リオンは出てこないけど、ユリウスとロイドを
2人にさせない第三者が必ずいる……。
だからこその『彼と騎士と侍従長』なんですが。
♢♦︎♢
「ユーリ」
呼ばれた声に、ユリウスはどきりと肩を跳ねさせた。振り向いた先には思った通りの人物が。
「っ、ロイド、殿……」
「この間はえらく楽しそうなことしてたねぇ」
「……何のことでしょう」
「精霊の森でのお茶会だよ。賑わってたみたいじゃないか」
見られていたのか、とユリウスは少しだけ苦い気持ちになる。
咎められる何かがあるわけではないし、ロイドには関係のないことなのだからそう思う必要はまったくない。けれど、彼の前で笑顔を見せないようにしている手前、あの現場を見られていたのはなんとなくバツが悪かった。
「ねぇユーリ? どうして俺には笑わなくなったの?」
「そ、れは……っ。ロイド殿の、気のせいでは?」
「呼び方もよそよそしいしねぇ? 前は『ロイドさん』って呼んでくれてたじゃないか。なぁ、なんで?」
頬と頬が触れ合いそうなほど、顔を近づけられる。耳元で囁かれた声に小さく身動ぐと、クスリと笑われた。
「もしかして、俺がお前のことからかってると思ってる?」
「っ……‼︎」
「やっぱりかぁ~」
「や、めてください……ッ!」
揶揄するような響きに、ユリウスは一歩距離を取ろうとする。しかしロイドはそれを許さなかった。
いつの間にか腰に回された腕が、ユリウスの動きを封じ込める。
「な、んで⁉︎ 離し……ッ」
「離さないよ。俺、前に言ったよね? お前の一番になりたいって。騎士としても術師としても、一人前になろうとするお前の支えになりたいって。……忘れたのか?」
「…………っ」
「なにを勘違いしてるか知らないが、リオンなら俺のーー」
「ユリウス?」
ロイドが何か言う寸前、第三者の声がした。
驚いて振り返れば、そこにはマクシミリアンが立っている。
「マクシミリアン‼︎」
「何をしてるんだそんなところで? もうすぐ交代の時間だぞ」
「あっ、あぁ‼︎ すまない! すぐ行くっ」
「っ、おいユーリ……」
「申し訳ありませんが! 職務がありますので私はこれで!」
「オイ‼︎」
ロイドを押しやるようにして体を離すと、ユリウスはこちらの顔も見ずに走り去っていく。
なんとも言えない気持ちでその背を見送っていれば、じっとりと視線が突き刺さる。
「……何か御用ですか? マクシミリアン副団長殿」
「貴方は、なぜユリウスに近づくのですか?」
「なぜ、とは? 理由を貴殿に離す必要がありますか?」
「どのような理由か知りませんが、騎士の仕事に支障をきたされては困るのです。貴方が近くにいるとアレは落ち着かない」
「……へぇ? 私が近づくと落ち着かないと?」
「そうです。なにかしでかしてからでは遅いのです。できるだけユリウスの心を乱さないでいただきたい」
「…………まぁ、善処いたします」
「そうしてください。……それでは私はこれで」
一礼するとマクシミリアンはロイドに背を向け歩き出そうとする。ーー瞬間。
「あぁそうだ。副団長殿の初恋の君は見つかりましたか?」
「ーーっ⁉︎」
聞こえた言葉に目を見開き、マクシミリアンは慌てて振り向く。
しかしその時には、何事もなかったように悠然と歩き出した、男の背中しか見えなかった。
「どうして、貴方がそれをーー‼︎」
問いかけた声にいらえる者はなく。角を曲がって見えなくなったロイドの背中を、見つめることしかできないマクシミリアンだけが残された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出会いの話にまだ触れられない!
どうなってるんですかね?
おまけにここに来て今度はマクシミリアンの初恋の君……。
収拾つかなくなってきました‼︎
リオンは出てこないけど、ユリウスとロイドを
2人にさせない第三者が必ずいる……。
だからこその『彼と騎士と侍従長』なんですが。
14
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった
神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》
「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。
全3話完結
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。