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1巻
1-2
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「いきなり呼び立ててすまなかった。要件というのは隣にいる彼のことだ」
「その方は?」
「今朝、近くで鍛錬をしていたら叫び声が聞こえてな。この者は精霊の森にいたのだ」
「精霊の森に……? どうやって入られたのですか」
「それがわからぬのだ。城に戻ってから確認したが結界は破られてはいなかった。それにこの者自身、どうやってここに来たかわかっていない様子なのだ」
「それは一体……いや君、名は何と?」
怪訝そうに首を傾げる宰相は枢に近づいてくる。枢の座るソファの傍に立つと少し硬い声で質問を投げかけてきた。
「え? あ、えと……。仲谷枢、です」
「ナカタニ、カナメ? 聞いたことのない名前だな。どこから来たのだ?」
「あっ……と、日本、です」
「ニホン? どこだそれは?」
「どこ、って言われても……」
「あの場所へはどうやって入った」
「……気がついたらあそこにいました」
「そのようなことがあるはずがない。あそこは精霊が住まう神聖な森であるから、魔法で強固な結界が張られているのだ。王城の者以外が結界を壊さずに侵入することなどできまい」
「っでも! 僕は気がついたらあそこに倒れてて、何が何だかわからないのにそんなっ!」
まるで責められているようだった。自分には身に覚えがないことなのに、なぜそんなに問い詰めてくるのだろう。
じわりと目尻に涙が浮かぶ。見られたくなくて下を向き、こぼれてしまわないよう唇を噛む。
「……あ」
俯いた視界にふわふわと何かが映り込む。それは自分が倒れていた〝精霊の森〟で出会った、あの光る精霊だった。
精霊は優しく枢の頬にすり寄る。その小さな温もりに少しだけ落ち着いた。
「そうキツく言わずともよいだろうロドリゴ。怯えてしまっている」
「は。申し訳ございません。ですが、精霊の森にいたということは、王城の結界に何か不備があったか、その者が何かの力を使ったとしか……いずれにせよ大問題です」
「まあそう結論を急ぐな。ロドリゴ。私はこの者――カナメがエステル大陸に伝わる『神子』ではないかと思っている」
「神子、ですか?」
なんだそれは、と枢は思った。
(みこってあれ? 赤い装束で神社にいる?)
いつの間にか頬から離れ、空中でクルクルと楽しそうに踊っている精霊を上目遣いで見ながら首を捻る。
「この者が、違う世界から現れ、国に繁栄と幸福をもたらすという神子である、と?」
「そうだ。確信はない。だがカナメのような者を見たことはないし、名も知らぬ場所から来たと言うではないか。この国の名前も私のことも何一つ知らない。異世界から来たというほうがよほど筋が通っているではないか?」
「確かに、仰る通りです。ですが、もし本当に神子であるというなら、何か証拠を見せていただかないと、私は納得できかねます」
「そんな、証拠って言われても」
依然として枢のことを不審者だと思っている様子の宰相――ロドリゴ・エルチェットに、枢の眉根も寄り不機嫌な様子を露わにする。
(そりゃあ僕が不審者だっていうのは認めるよ。でもいきなり神子だなんだって言われた挙句、証拠を見せろ? いくら何でも失礼すぎない?)
俯いたままではあるが、胸の内で怒りの感情を吐き出す。そんな枢に気づいているのかいないのか、宰相は話を続けた。
「伝承によると異世界からの神子は不思議な力を使えるそうです。その力によって国に繁栄と幸福をもたらすのだとか。あなたはどんな力を使えるのですかな? 見たところ体内魔力はないようですが?」
ぐっ、と宰相が一歩こちらに近づくが、彼の言葉と態度に業腹した枢は、背中を少し後ろに反らす。するとトンッと何かに当たった。
「……ロドリゴ」
少しキツめの口調が頭上から聞こえた。え、と思ったときには、後ろから回された腕が枢の腹部をしっかり抱いていた。
(え? 何これ。どういうこと?)
あまりにも突然のことに顔を上げると、美しい顔がすぐ近くに映る。
「え……」
「カナメは見知らぬ土地にいきなり来てしまったのだ、状況を理解するのにまだ時間がかかる。それなのに無理を強いるつもりか?」
「……いえ、そのようなことは」
アシュレイと宰相が何か言っている。しかしそれらは何一つ耳に入ってこない。
なぜなら、枢は視界に広がる綺麗な光景に釘付けだったからだ。
「え、えっ……?」
「……カナメ?」
キラキラとした光がアシュレイの髪を照らす。幻想的に見えるそれは、たくさん集まった精霊たちによるものだった。先ほどまで枢の周りで遊んでいた精霊もその中へ入っていく。
「わぁ! すごいいっぱい。綺麗……」
キラキラと光の粒を降らせる精霊たちは、とても楽しそうに戯れている。その光景に目を奪われていると、不意に真上から紫の輝きが枢を射貫いた。
「どうした? 何を見ている?」
カチリと視線が絡んだその瞬間、ぶわっと枢の顔が赤く染まった。
「っっわぁ~~!? ごめ、ごめんなさいっ! はなっ、離して……!」
至近距離で見つめられていることも、自分の腹に腕が回っていることも、すべてを急に思い出し、恥ずかしくなって思わず叫んでしまう。
間近で叫ばれたアシュレイは驚きに目を見開いているが、枢はそれどころではない。慌てふためいてアシュレイから離れると、立ち上がって駆け出した。テーブルに膝をぶつけたが構っていられない。
ベッドの近くまで逃げると、フットボードを背もたれにズルズルと床にしゃがみこむ。
アシュレイも宰相もリオンも、枢の行動に呆気に取られた様子だ。
「びっくり、した……っ」
恥ずかしさに身悶えていると、誰かが近づいてくるのがわかった。
おそらくアシュレイだが、このまま傍に寄られては、たまったものではない。しかしそんな枢の気も知らず、彼は目を瞠りながら枢に近づいてくる。
「っひ……! せ、精霊さん助けて!」
「精霊……? 何を言っているんだカナメは……っ!?」
あっという間に枢の前にたどり着いたアシュレイが枢に手を伸ばす。触られる、そう思ってぎゅっと目を瞑った瞬間、パチンとその場にそぐわない音がした。
「――え?」
「なんだ、今のは……?」
眉をひそめ、再びこちらに手を伸ばそうとするアシュレイ。
「っ!」
けれども再びパチンと音がして、アシュレイの手は何かに弾かれていた。
「あ……?」
「ッ、カナメっ!」
「ひっ!!」
「お前、何をした!?」
アシュレイはぐっとこちらに身を乗り出す。まるで恫喝するように大きな声を上げるものだから、枢はすくみあがる。
(っ怖い! やだ、助けて精霊さん――!!)
パンッ!! と、一際高い音がした。
「殿下!」
大きな破裂音のすぐあと、宰相とリオンの声が聞こえて、バタバタと足音がする。
枢が恐る恐る目を開けると、枢の目の前にはキラキラ光る小人の集団が、そしてその向こうには床に尻もちをついたアシュレイがいた。
「……精霊さん?」
まるで枢をアシュレイから守るような精霊たちにポカンとしていると、大きな声で現実に引き戻された。
「貴様、アシュレイ殿下に何をした!」
「魔法を使ったのか!? この方を誰だと思っているのだ……!」
リオンに怒鳴られ、ビクッと肩が大きく揺れる。自分の腕で体を抱きしめ縮こまると、目の前の精霊たちの煌めきが一層増していく。
(守ってくれてるの……?)
先ほどからアシュレイの手を弾いていたのは、どうやらこの精霊たちらしい。そして枢の恐怖心が強くなると精霊たちの輝きも増すようだ、と枢は気づいた。
キラキラしている精霊を見ていると、今度はアシュレイの声で現実に呼び戻された。
「よいのだ二人とも」
「っ、ですが殿下!」
「よいと言っている。……それよりカナメ」
「っ、は……い」
「お前は精霊が見えるのか?」
「た、たぶん……」
「先ほど私を弾いたのは精霊か?」
「多分、そう……です」
「多分、というのは?」
「僕が何かしたわけじゃない、というか。精霊さんたちが勝手にしたというか……」
ちら、と精霊に目をやるとフワフワと傍に近寄ってくる。手を伸ばすとそこにすり寄り、他の精霊たちも枢が落ち着いたのが伝わったのか、思い思いに空中に漂い出した。
手を顔の前に持ってくると、そのままついてきた精霊は枢の鼻先にそっと触れる。それがくすぐったくて、表情が緩んだ。
「……なるほど」
アシュレイは頷きながら呟くと立ち上がる。真上から見下ろされて、あの森での光景を思い出した。
「カナメ。どうやらお前は神子で間違いないらしい」
「っ、そんな!? 僕がそんなもののわけ……っ!」
「精霊が見えるのだろう? この国で精霊が見える者は多くない。それに精霊は神聖なもので人間が使役できるようなものではないのだ。精霊の力を借りるにも、祈りを捧げなければ精霊魔法を使うことすらできぬ。だがお前は、お前が命じずとも精霊がお前のために力を振るったと言ったな?」
「は、はい……」
「それは普通では有り得ぬこと。……お前があの森に現れたことや精霊の力……精霊魔法を使えること、すべてを踏まえて、私はお前を神子であると断言しよう」
「ま、魔法なんて僕、使った覚え……」
「私を弾いたではないか。考えてみたが、おそらくそれは精霊魔法の一つ、結界だ。どのような原理かはわからないが、お前が精霊魔法を使っているのは間違いないだろう」
その紫の瞳でジッと見つめられると、それ以上何も言えなかった。その間にもアシュレイは宰相とリオンに指示を出している。
「エルチェット宰相。これは国にとっての大事である。私はしばらくしたら国王に謁見するから、先触れでそのことを伝えてもらいたい。その間にリオン、お前は客間の準備を。それと侍従を一人用意してくれ」
「……侍従、でございますか」
「あぁ。カナメにつける。急ぎ準備するように」
「はい。承知いたしました」
宰相もリオンもそれぞれ言われた通りに動き出す。
「ではカナメ。立てるか?」
「ぅあ、はい」
アシュレイから手が差し出される。どうしたらいいのか一瞬悩み、ややあってその手を掴んだ。ギュッと力を入れて握られるとそのまま引っ張り起こされるが、あまりの勢いに前につんのめってしまった。
「わっ、わ……!」
倒れるかと思ったが、枢はガッシリとしたアシュレイの体に抱きとめられた。
「えっ!? あ、あの!?」
「あぁ、すまない。倒れそうだったのでつい、な」
そう言うとアシュレイはすぐに体を離してくれた。
一瞬のことであったが、ひどく心臓が跳ね狼狽えてしまう。
意に介していない様子のアシュレイは「こちらに」と枢に言うと、再びソファへと招く。
今度は隣ではなく、枢の正面に座った。
「いろいろな準備ができるまで、少し私と話をしよう。いまさらだが自己紹介だ。私の名前はアシュレイ・クリフォード・ネオブランジェ。この国の第二王子だ」
「お、おうじ!?」
「今いるここはネオブランジェ王国の王宮内にある私の部屋だ。精霊の森で倒れているお前を見つけ、私が連れてきた。私は王子ではあるがこの国の騎士でもある。騎士団では団長という地位にいる」
「……きしさま」
もう、何を言っていいのかわからない。確かにお金持ちだろうなとは思っていたが、まさか王族だとは。それも位の高いであろう第二王子。
最初に出会ってから今に至るまで、思い返してはサアッと顔が青ざめていく。
(どうしよう。突き飛ばしたり、手を叩いたりしちゃった……!)
枢が心の中でアワアワと慌てふためいていると、アシュレイが続けた。
「そう緊張せずともいい。これまでのお前の言動を咎めるつもりはないし、むしろもっと砕けてもらって構わない」
「そ、そんなことできません! で、殿下に対して……」
「アシュレイでよい」
「むっ、無理です……」
「ではアッシュ、と」
「も、もっと無理、です!」
「どちらかだ。選べ」
「そ、そんなぁ」
この人は本当に、最初に出会ったあの人と同じなのだろうか?
あのときはこの人の持つ威圧感と美しさに恐れを抱いた。だが今はどうだろう?
(色んな意味でこわい……。けど、こわくない)
自分でもよくわからないけれど、名前呼びを強要されているが、白戸瑞希に感じたような不快感はなにもない。それどころかちょっとくすぐったさすら感じる。
(なんでかな? この人の雰囲気が変わった……?)
ちら、と目線を前に向けると、やはりひたすらに美しい顔がこちらを見つめている。
あの森で見た眼光の鋭さと、圧倒されるような威圧感は今はなりを潜めていた。
ボーッと見つめているとアシュレイに問いかけられる。
「それで? 何と呼ぶか決まったか?」
「へっ!?」
「アシュレイか、アッシュか。どちらにするのだ」
「で、殿下では……?」
「駄目だ」
「う、……では、アッシュ殿下と……」
「……まぁいいだろう。今はそれで」
ふっと小さく微笑んだアシュレイに、枢の心臓がどくんと跳ねる。
すると、タイミングを見計らったかのように、扉がノックされた。
「失礼いたします。アシュレイ殿下。お部屋の用意ができました。ジュードもおります」
扉の向こうから聞こえたのは、リオンの声。聞き慣れない名前も聞こえたが、ジュードとは誰だろうか。
「二人とも入れ」
アシュレイが言うと、リオンとその後ろから小柄な少年が入ってきた。
「急だったにもかかわらずご苦労だった。それでは私は謁見に向かう。その間にカナメのことを頼んだ。くれぐれも丁重にもてなすように」
「かしこまりました」
リオンとその隣の少年は綺麗な礼をとる。アシュレイはリオンたちに頷き、一度枢に視線を向けてから、部屋をあとにした。
アシュレイがいなくなり、残された三人の間には微妙な空気が流れ始める。が、そこはやはりアシュレイの侍従。リオンが動いた。
「それでは神子様。お部屋を用意いたしましたので、こちらへ」
「えっ、あ、はい……っ」
〝神子様〟というのが一瞬、誰のことを指すのかわからず反応が遅れてしまう。
枢を一瞥するリオンの視線に冷たさを感じて瞬間的に下を向き、そのまま彼に続いた。自分の後ろにはジュードと呼ばれた少年もついてきている。
廊下に出ると辺りはしんと静まり返って、人の姿はなかった。広く長く伸びる廊下に、なんともいえない不安が胸をよぎる。
三人は無言のまま歩く。少しして大きな扉の前まで来ると、リオンは足を止めた。
「こちらが神子様のためにご用意したお部屋になります」
リオンがそう言うと、枢の後ろにいたはずのジュードが扉を開けた。
促されるままに中に入ると、そこは先ほどまでいたアシュレイの部屋と変わらないほど豪華な造りの部屋だった。
「こ、こんな豪華な部屋……!」
「貴方様は神子であらせられます。ここは賓客をおもてなしするための部屋でございますから、ごゆるりとおくつろぎくださいませ」
礼をとるリオンに、枢は慌てる。
「そんな! 僕に頭を下げるなんてやめてください! 僕はその……神子なんかじゃないと思いますしっ! きっと何かの間違いで……」
「貴方様はアシュレイ殿下の言葉が間違いだと仰るのですか?」
「で、でも!」
「殿下は、貴方様は神子であると、精霊の力が使えると仰いました。私たちはそれを見ることができませんので、事実かどうかはわかりかねます。エルチェット宰相も貴方様から魔力は感じないと仰っておりましたし。ですが、主が貴方様をもてなせと命じたのですから、私たちはそれに応えなければなりません。――言いたいことがおわかりになりますか?」
枢は唇を噛み、グッと下を向く。
……枢は自分が受け入れられていないことはわかっていた。異世界とやらに来たことが事実だとして、こんな得体の知れない人間が〝神子〟だと言われて、そう簡単に信じきれるものじゃないことも。
さっきの場所にいた中で精霊が見えていたのは枢だけで、それも本当に存在するのか怪しい。もしかしたら枢の妄想かもしれない。
それなのに、主に命令されたからとはいえ、こうして寝泊まりする豪奢な部屋を用意してくれるだけありがたいと思わなければならないのだろう。
それがどんなに自分を見下した発言であっても、言外に迷惑だと言われていても。
(こんなの慣れっこだ。いつも見下されてたし。邪魔者扱いされてたし)
噛んでいた唇をゆっくりと開く。
「わかりました。お手間を取らせてすみません。お部屋、準備してくださってありがとうございます」
「わかっていただけてよかったです。こちらのジュードが神子様のお世話をいたしますので、何かございましたらお気軽にお申しつけください」
それでは私はこれで、とリオンは一礼し、素早くその場をあとにする。
取り残された二人は、やはりなんとも言えない空気のままだ。
「あの、神子様。とりあえず椅子にお座りになりませんか?」
「あ……、はい」
労るようにかけられた声に、枢はゆっくりと顔を上げる。
こちらを見つめる少年の目には、心配の色が浮かんでいた。
「どうぞ、こちらのソファに」
ジュードに言われた通り、枢はソファに腰掛ける。
「なにかお飲み物をお持ちしますね」
「あ、やっ。いいですそんな! 僕なんかに気を遣わないで……その、ジュードさん、ですか?」
「ジュードで結構です」
「そんな、呼び捨てなんて」
「侍従に敬称をつけて呼ぶ者はおりません。私は神子様の侍従ですので、どうぞジュードと。敬語も必要ございません」
枢は少しためらったが、間を置いて声をかけた。
「じゃあ、ジュード。その、〝神子様〟って呼ぶのやめてくれないかな?」
「なぜでしょう」
「僕はたまたま精霊が見えるだけで、魔法なんて使えない。きっと神子っていうのもなにかの間違いだと思うんだ。それに、僕には『仲谷枢』っていうちゃんとした名前がある。呼んでくれるなら名前で呼んでほしいなって」
歳が近い雰囲気があるからだろうか。それとも、労るように声をかけてくれたことで少しだけ安心したのだろうか、しっかりとジュードの顔を見ながら言うことができた。
しばらくお互いに見つめ合うと、ジュードは優しく微笑んだ。
「かしこまりました。それではカナメ様と呼ばせていただきます」
「いや、様はいらない……」
「それでは、神子様とお呼びいたしましょうか?」
「う、ぐ。カナメ様で大丈夫です……」
「ありがとうございます。それでは私はお茶の準備をしてまいります」
「へ? 僕、さっきいらないって」
「ご遠慮なさらないでください。じっくりと茶葉を選んでまいりますので、その間おくつろぎくださいませ」
「あ……」
にっこり笑顔を見せると、ジュードはそのまま出ていってしまった。
「あれって、僕に一人の時間をくれるってことだよね。ジュード、僕と変わらないように見えるのに、すごく気が利いてるっていうか」
いろいろと考える時間をくれたのだろう、ジュードの優しさに頭が下がる。それと比べて自分は、と枢は自己嫌悪に陥りそうになる。
ソファの背もたれに背中を預けて、枢は深いため息をついた。
「なんで僕ってこんなにダメなんだろうな。人に気を遣ってもらうばっかりで、人を喜ばせることも、楽しませることもできない……」
熱いものがこぼれてしまわないように、ぎゅっと目を瞑りその上に左腕を乗せる。
「もっと僕に自信があったら違ったかな……。何か誇れるものがあったなら」
ないものねだりだとわかっているが、それでもなにかに縋りたかった。
「どうしたらいいんだろうね、精霊さん」
呼びかけると、どこからともなくキラキラと精霊が集まってくるのがわかる。枢を慰めるように頬や手のひら、つむじなどをさわさわと撫でている。
「ふふ、くすぐったい。それに、あったかいな。でもどうして僕、精霊さんが見えて、殿下の言う『魔法』? が使えたんだろ……」
信じられない出来事ばかりが起こったからだろうか、精霊のもたらす温もりに、次第に睡魔が襲ってくる。それほど時間もかからず、枢はソファに座ったまま眠りについた。
「ん、ぅ」
何かが触れたような気がして、ゆっくりと目を開く。うすぼんやりとする視界に輝かしい何かが見えた。
「精霊、さん?」
覚醒しきれない頭でそう考え、それに手を伸ばすと触れる前に掴まれた。
「うわ、あ!?」
「起きたか?」
見たことのある光景だな、と思いながら、自分の手を掴むそれに目をやり、そのまま視線を左に滑らす。案の定、そこにはベッド横の椅子に腰かけるアシュレイの姿があった。
「っ、アシュレイ殿下っ!?」
「よく眠っていたな」
「え、あれ!? いつからそこに? ていうか僕、いつの間にベッドに!?」
起きたばかりの頭はなかなか動いてくれず、枢は混乱していた。
確か自分はソファに座っていたのではなかったか。そしてそれは昼時のこと……
そう思い出して辺りを見渡すと、薄いカーテンの向こうに見える空はすでに暗くなっていた。
「う、うそ。夜……?」
「私が抱きかかえても起きないほどぐっすりと眠っていたぞ」
「だ、だっこ!?」
枢は目を瞠り、キョロキョロしていた視線を瞬時に彼に戻す。と、そこで視線が交差した。
ビクッ、と肩を揺らすと、枢は勢いよく下を向いた。そのとき掴まれたままだった手が目に入る。
「っつ……!!」
弾かれたように、思い切りその手を振り払ってしまった。
そしてすぐに青ざめる。
「あ……!」
(そうだよ! この人、第二王子だった! これって思いっきりヤバいやつじゃ!?)
自分をベッドまでわざわざ運んでくれた相手に対して、感謝も述べず、ましてや手を振り払うなど、相手が王子でなくとも失礼なことだ。
(さっき精霊さんだと思ったのだって、多分この人の髪の毛だ。もしかして、起きるまで横にいてくれたとか?)
とりとめもないことをああだこうだと内心で考えていると、その様子を見ていたアシュレイが枢に声をかけた。
「いろいろと考えているところ悪いが、夕食にしないか? それとも腹は減っていないか?」
「ぇ……? あ、はい、いただきます」
(あれ? 怒って、ない?)
昼に聞いたのと同じ、思わず枢が拍子抜けするほどあっさりとした声音だった。
惚けたままの枢はアシュレイに促されるままテーブルへと連れていかれる。
「食事の準備をさせるから少し待ってくれ」
「あ、はい」
返事をすると、アシュレイの掛け声とともにジュードがワゴンを押して室内に入ってきた。それと同時に、アシュレイは枢の隣に腰を下ろす。
「……ん?」
(いや、タイミングよく食事を持ってくるのもそうなんだけど、そもそもなんでこの人は僕の隣に座るんだ?)
何が起こっているのか理解できないまま、目の前のテーブルに食事が並べられていく。
「お待ちしている間に少し冷めてしまいましたので、今から温めます」
「えっ」
どうやって、と言う前にジュードが掲げた手のひらからかすかな熱を感じる。温かいな……と枢が思っていると、眼前の料理から湯気が立ち上り始めた。
「なに今の!?」
「今のが魔法でございます」
「魔法!?」
「はい。これは火魔法の一つです。指定した範囲を透明の膜で覆い、火魔法で発生させた熱で、中のお食事を温めています」
「なにそれすごいっ!」
摩訶不思議な現象に驚きつつ、枢はジュードをキラキラした目で見た。見上げられたジュードは、少し恥ずかしそうにしながらも、どこか誇らしそうだ。
「今のが魔法。めっちゃすごい……」
「感動しているところすまないが、せっかく温めてもらったんだ、冷める前に食べようか」
昼に自分が使ったらしい精霊魔法とは違うな、などと思っていると、苦笑混じりの声が聞こえてハッとする。
一体、何度こんなことを繰り返すのか。
(うぅ。穴があったら入りたい)
枢は心の中で頭を抱えた。
そうして二人は食事を開始した。ジュードは食べないのかと聞くと、「侍従が主人と同じ席で食事を摂るなど言語道断でございます」と笑顔で言いきられた。
仕方がないので食事に集中することにしたが、どうにも隣が気になってしまう。
「あ、あの」
「ん? なんだ?」
「なんで隣、なんですか……?」
先ほどから思っていたことを聞いてみた。すると彼は食事の手を止めて言った。
「――隣のほうが安心するかと思って」
「え……?」
「カナメ、正面から見られるのは好きじゃないだろう?」
「っ!」
「いつも目が合うと下を向く。だから横なら目が合わないからと思って」
「そ、れは」
「隣も嫌だったか?」
「……嫌、というか。恥ずかしい、です」
「それはなぜ?」
「僕は殿下みたいにナイフとフォークは上手く使えないし、食べ方も綺麗じゃないし……」
「そんなことは誰も気にしていない。カナメの好きなように食べたらいい。昼間だって気にしていなかっただろう?」
「あのときは! っ、僕も食べるのに一生懸命だったっていうか」
「じゃあ今も集中したらいい……あとカナメ」
「はい」
「殿下ではなくアッシュだ」
「その方は?」
「今朝、近くで鍛錬をしていたら叫び声が聞こえてな。この者は精霊の森にいたのだ」
「精霊の森に……? どうやって入られたのですか」
「それがわからぬのだ。城に戻ってから確認したが結界は破られてはいなかった。それにこの者自身、どうやってここに来たかわかっていない様子なのだ」
「それは一体……いや君、名は何と?」
怪訝そうに首を傾げる宰相は枢に近づいてくる。枢の座るソファの傍に立つと少し硬い声で質問を投げかけてきた。
「え? あ、えと……。仲谷枢、です」
「ナカタニ、カナメ? 聞いたことのない名前だな。どこから来たのだ?」
「あっ……と、日本、です」
「ニホン? どこだそれは?」
「どこ、って言われても……」
「あの場所へはどうやって入った」
「……気がついたらあそこにいました」
「そのようなことがあるはずがない。あそこは精霊が住まう神聖な森であるから、魔法で強固な結界が張られているのだ。王城の者以外が結界を壊さずに侵入することなどできまい」
「っでも! 僕は気がついたらあそこに倒れてて、何が何だかわからないのにそんなっ!」
まるで責められているようだった。自分には身に覚えがないことなのに、なぜそんなに問い詰めてくるのだろう。
じわりと目尻に涙が浮かぶ。見られたくなくて下を向き、こぼれてしまわないよう唇を噛む。
「……あ」
俯いた視界にふわふわと何かが映り込む。それは自分が倒れていた〝精霊の森〟で出会った、あの光る精霊だった。
精霊は優しく枢の頬にすり寄る。その小さな温もりに少しだけ落ち着いた。
「そうキツく言わずともよいだろうロドリゴ。怯えてしまっている」
「は。申し訳ございません。ですが、精霊の森にいたということは、王城の結界に何か不備があったか、その者が何かの力を使ったとしか……いずれにせよ大問題です」
「まあそう結論を急ぐな。ロドリゴ。私はこの者――カナメがエステル大陸に伝わる『神子』ではないかと思っている」
「神子、ですか?」
なんだそれは、と枢は思った。
(みこってあれ? 赤い装束で神社にいる?)
いつの間にか頬から離れ、空中でクルクルと楽しそうに踊っている精霊を上目遣いで見ながら首を捻る。
「この者が、違う世界から現れ、国に繁栄と幸福をもたらすという神子である、と?」
「そうだ。確信はない。だがカナメのような者を見たことはないし、名も知らぬ場所から来たと言うではないか。この国の名前も私のことも何一つ知らない。異世界から来たというほうがよほど筋が通っているではないか?」
「確かに、仰る通りです。ですが、もし本当に神子であるというなら、何か証拠を見せていただかないと、私は納得できかねます」
「そんな、証拠って言われても」
依然として枢のことを不審者だと思っている様子の宰相――ロドリゴ・エルチェットに、枢の眉根も寄り不機嫌な様子を露わにする。
(そりゃあ僕が不審者だっていうのは認めるよ。でもいきなり神子だなんだって言われた挙句、証拠を見せろ? いくら何でも失礼すぎない?)
俯いたままではあるが、胸の内で怒りの感情を吐き出す。そんな枢に気づいているのかいないのか、宰相は話を続けた。
「伝承によると異世界からの神子は不思議な力を使えるそうです。その力によって国に繁栄と幸福をもたらすのだとか。あなたはどんな力を使えるのですかな? 見たところ体内魔力はないようですが?」
ぐっ、と宰相が一歩こちらに近づくが、彼の言葉と態度に業腹した枢は、背中を少し後ろに反らす。するとトンッと何かに当たった。
「……ロドリゴ」
少しキツめの口調が頭上から聞こえた。え、と思ったときには、後ろから回された腕が枢の腹部をしっかり抱いていた。
(え? 何これ。どういうこと?)
あまりにも突然のことに顔を上げると、美しい顔がすぐ近くに映る。
「え……」
「カナメは見知らぬ土地にいきなり来てしまったのだ、状況を理解するのにまだ時間がかかる。それなのに無理を強いるつもりか?」
「……いえ、そのようなことは」
アシュレイと宰相が何か言っている。しかしそれらは何一つ耳に入ってこない。
なぜなら、枢は視界に広がる綺麗な光景に釘付けだったからだ。
「え、えっ……?」
「……カナメ?」
キラキラとした光がアシュレイの髪を照らす。幻想的に見えるそれは、たくさん集まった精霊たちによるものだった。先ほどまで枢の周りで遊んでいた精霊もその中へ入っていく。
「わぁ! すごいいっぱい。綺麗……」
キラキラと光の粒を降らせる精霊たちは、とても楽しそうに戯れている。その光景に目を奪われていると、不意に真上から紫の輝きが枢を射貫いた。
「どうした? 何を見ている?」
カチリと視線が絡んだその瞬間、ぶわっと枢の顔が赤く染まった。
「っっわぁ~~!? ごめ、ごめんなさいっ! はなっ、離して……!」
至近距離で見つめられていることも、自分の腹に腕が回っていることも、すべてを急に思い出し、恥ずかしくなって思わず叫んでしまう。
間近で叫ばれたアシュレイは驚きに目を見開いているが、枢はそれどころではない。慌てふためいてアシュレイから離れると、立ち上がって駆け出した。テーブルに膝をぶつけたが構っていられない。
ベッドの近くまで逃げると、フットボードを背もたれにズルズルと床にしゃがみこむ。
アシュレイも宰相もリオンも、枢の行動に呆気に取られた様子だ。
「びっくり、した……っ」
恥ずかしさに身悶えていると、誰かが近づいてくるのがわかった。
おそらくアシュレイだが、このまま傍に寄られては、たまったものではない。しかしそんな枢の気も知らず、彼は目を瞠りながら枢に近づいてくる。
「っひ……! せ、精霊さん助けて!」
「精霊……? 何を言っているんだカナメは……っ!?」
あっという間に枢の前にたどり着いたアシュレイが枢に手を伸ばす。触られる、そう思ってぎゅっと目を瞑った瞬間、パチンとその場にそぐわない音がした。
「――え?」
「なんだ、今のは……?」
眉をひそめ、再びこちらに手を伸ばそうとするアシュレイ。
「っ!」
けれども再びパチンと音がして、アシュレイの手は何かに弾かれていた。
「あ……?」
「ッ、カナメっ!」
「ひっ!!」
「お前、何をした!?」
アシュレイはぐっとこちらに身を乗り出す。まるで恫喝するように大きな声を上げるものだから、枢はすくみあがる。
(っ怖い! やだ、助けて精霊さん――!!)
パンッ!! と、一際高い音がした。
「殿下!」
大きな破裂音のすぐあと、宰相とリオンの声が聞こえて、バタバタと足音がする。
枢が恐る恐る目を開けると、枢の目の前にはキラキラ光る小人の集団が、そしてその向こうには床に尻もちをついたアシュレイがいた。
「……精霊さん?」
まるで枢をアシュレイから守るような精霊たちにポカンとしていると、大きな声で現実に引き戻された。
「貴様、アシュレイ殿下に何をした!」
「魔法を使ったのか!? この方を誰だと思っているのだ……!」
リオンに怒鳴られ、ビクッと肩が大きく揺れる。自分の腕で体を抱きしめ縮こまると、目の前の精霊たちの煌めきが一層増していく。
(守ってくれてるの……?)
先ほどからアシュレイの手を弾いていたのは、どうやらこの精霊たちらしい。そして枢の恐怖心が強くなると精霊たちの輝きも増すようだ、と枢は気づいた。
キラキラしている精霊を見ていると、今度はアシュレイの声で現実に呼び戻された。
「よいのだ二人とも」
「っ、ですが殿下!」
「よいと言っている。……それよりカナメ」
「っ、は……い」
「お前は精霊が見えるのか?」
「た、たぶん……」
「先ほど私を弾いたのは精霊か?」
「多分、そう……です」
「多分、というのは?」
「僕が何かしたわけじゃない、というか。精霊さんたちが勝手にしたというか……」
ちら、と精霊に目をやるとフワフワと傍に近寄ってくる。手を伸ばすとそこにすり寄り、他の精霊たちも枢が落ち着いたのが伝わったのか、思い思いに空中に漂い出した。
手を顔の前に持ってくると、そのままついてきた精霊は枢の鼻先にそっと触れる。それがくすぐったくて、表情が緩んだ。
「……なるほど」
アシュレイは頷きながら呟くと立ち上がる。真上から見下ろされて、あの森での光景を思い出した。
「カナメ。どうやらお前は神子で間違いないらしい」
「っ、そんな!? 僕がそんなもののわけ……っ!」
「精霊が見えるのだろう? この国で精霊が見える者は多くない。それに精霊は神聖なもので人間が使役できるようなものではないのだ。精霊の力を借りるにも、祈りを捧げなければ精霊魔法を使うことすらできぬ。だがお前は、お前が命じずとも精霊がお前のために力を振るったと言ったな?」
「は、はい……」
「それは普通では有り得ぬこと。……お前があの森に現れたことや精霊の力……精霊魔法を使えること、すべてを踏まえて、私はお前を神子であると断言しよう」
「ま、魔法なんて僕、使った覚え……」
「私を弾いたではないか。考えてみたが、おそらくそれは精霊魔法の一つ、結界だ。どのような原理かはわからないが、お前が精霊魔法を使っているのは間違いないだろう」
その紫の瞳でジッと見つめられると、それ以上何も言えなかった。その間にもアシュレイは宰相とリオンに指示を出している。
「エルチェット宰相。これは国にとっての大事である。私はしばらくしたら国王に謁見するから、先触れでそのことを伝えてもらいたい。その間にリオン、お前は客間の準備を。それと侍従を一人用意してくれ」
「……侍従、でございますか」
「あぁ。カナメにつける。急ぎ準備するように」
「はい。承知いたしました」
宰相もリオンもそれぞれ言われた通りに動き出す。
「ではカナメ。立てるか?」
「ぅあ、はい」
アシュレイから手が差し出される。どうしたらいいのか一瞬悩み、ややあってその手を掴んだ。ギュッと力を入れて握られるとそのまま引っ張り起こされるが、あまりの勢いに前につんのめってしまった。
「わっ、わ……!」
倒れるかと思ったが、枢はガッシリとしたアシュレイの体に抱きとめられた。
「えっ!? あ、あの!?」
「あぁ、すまない。倒れそうだったのでつい、な」
そう言うとアシュレイはすぐに体を離してくれた。
一瞬のことであったが、ひどく心臓が跳ね狼狽えてしまう。
意に介していない様子のアシュレイは「こちらに」と枢に言うと、再びソファへと招く。
今度は隣ではなく、枢の正面に座った。
「いろいろな準備ができるまで、少し私と話をしよう。いまさらだが自己紹介だ。私の名前はアシュレイ・クリフォード・ネオブランジェ。この国の第二王子だ」
「お、おうじ!?」
「今いるここはネオブランジェ王国の王宮内にある私の部屋だ。精霊の森で倒れているお前を見つけ、私が連れてきた。私は王子ではあるがこの国の騎士でもある。騎士団では団長という地位にいる」
「……きしさま」
もう、何を言っていいのかわからない。確かにお金持ちだろうなとは思っていたが、まさか王族だとは。それも位の高いであろう第二王子。
最初に出会ってから今に至るまで、思い返してはサアッと顔が青ざめていく。
(どうしよう。突き飛ばしたり、手を叩いたりしちゃった……!)
枢が心の中でアワアワと慌てふためいていると、アシュレイが続けた。
「そう緊張せずともいい。これまでのお前の言動を咎めるつもりはないし、むしろもっと砕けてもらって構わない」
「そ、そんなことできません! で、殿下に対して……」
「アシュレイでよい」
「むっ、無理です……」
「ではアッシュ、と」
「も、もっと無理、です!」
「どちらかだ。選べ」
「そ、そんなぁ」
この人は本当に、最初に出会ったあの人と同じなのだろうか?
あのときはこの人の持つ威圧感と美しさに恐れを抱いた。だが今はどうだろう?
(色んな意味でこわい……。けど、こわくない)
自分でもよくわからないけれど、名前呼びを強要されているが、白戸瑞希に感じたような不快感はなにもない。それどころかちょっとくすぐったさすら感じる。
(なんでかな? この人の雰囲気が変わった……?)
ちら、と目線を前に向けると、やはりひたすらに美しい顔がこちらを見つめている。
あの森で見た眼光の鋭さと、圧倒されるような威圧感は今はなりを潜めていた。
ボーッと見つめているとアシュレイに問いかけられる。
「それで? 何と呼ぶか決まったか?」
「へっ!?」
「アシュレイか、アッシュか。どちらにするのだ」
「で、殿下では……?」
「駄目だ」
「う、……では、アッシュ殿下と……」
「……まぁいいだろう。今はそれで」
ふっと小さく微笑んだアシュレイに、枢の心臓がどくんと跳ねる。
すると、タイミングを見計らったかのように、扉がノックされた。
「失礼いたします。アシュレイ殿下。お部屋の用意ができました。ジュードもおります」
扉の向こうから聞こえたのは、リオンの声。聞き慣れない名前も聞こえたが、ジュードとは誰だろうか。
「二人とも入れ」
アシュレイが言うと、リオンとその後ろから小柄な少年が入ってきた。
「急だったにもかかわらずご苦労だった。それでは私は謁見に向かう。その間にカナメのことを頼んだ。くれぐれも丁重にもてなすように」
「かしこまりました」
リオンとその隣の少年は綺麗な礼をとる。アシュレイはリオンたちに頷き、一度枢に視線を向けてから、部屋をあとにした。
アシュレイがいなくなり、残された三人の間には微妙な空気が流れ始める。が、そこはやはりアシュレイの侍従。リオンが動いた。
「それでは神子様。お部屋を用意いたしましたので、こちらへ」
「えっ、あ、はい……っ」
〝神子様〟というのが一瞬、誰のことを指すのかわからず反応が遅れてしまう。
枢を一瞥するリオンの視線に冷たさを感じて瞬間的に下を向き、そのまま彼に続いた。自分の後ろにはジュードと呼ばれた少年もついてきている。
廊下に出ると辺りはしんと静まり返って、人の姿はなかった。広く長く伸びる廊下に、なんともいえない不安が胸をよぎる。
三人は無言のまま歩く。少しして大きな扉の前まで来ると、リオンは足を止めた。
「こちらが神子様のためにご用意したお部屋になります」
リオンがそう言うと、枢の後ろにいたはずのジュードが扉を開けた。
促されるままに中に入ると、そこは先ほどまでいたアシュレイの部屋と変わらないほど豪華な造りの部屋だった。
「こ、こんな豪華な部屋……!」
「貴方様は神子であらせられます。ここは賓客をおもてなしするための部屋でございますから、ごゆるりとおくつろぎくださいませ」
礼をとるリオンに、枢は慌てる。
「そんな! 僕に頭を下げるなんてやめてください! 僕はその……神子なんかじゃないと思いますしっ! きっと何かの間違いで……」
「貴方様はアシュレイ殿下の言葉が間違いだと仰るのですか?」
「で、でも!」
「殿下は、貴方様は神子であると、精霊の力が使えると仰いました。私たちはそれを見ることができませんので、事実かどうかはわかりかねます。エルチェット宰相も貴方様から魔力は感じないと仰っておりましたし。ですが、主が貴方様をもてなせと命じたのですから、私たちはそれに応えなければなりません。――言いたいことがおわかりになりますか?」
枢は唇を噛み、グッと下を向く。
……枢は自分が受け入れられていないことはわかっていた。異世界とやらに来たことが事実だとして、こんな得体の知れない人間が〝神子〟だと言われて、そう簡単に信じきれるものじゃないことも。
さっきの場所にいた中で精霊が見えていたのは枢だけで、それも本当に存在するのか怪しい。もしかしたら枢の妄想かもしれない。
それなのに、主に命令されたからとはいえ、こうして寝泊まりする豪奢な部屋を用意してくれるだけありがたいと思わなければならないのだろう。
それがどんなに自分を見下した発言であっても、言外に迷惑だと言われていても。
(こんなの慣れっこだ。いつも見下されてたし。邪魔者扱いされてたし)
噛んでいた唇をゆっくりと開く。
「わかりました。お手間を取らせてすみません。お部屋、準備してくださってありがとうございます」
「わかっていただけてよかったです。こちらのジュードが神子様のお世話をいたしますので、何かございましたらお気軽にお申しつけください」
それでは私はこれで、とリオンは一礼し、素早くその場をあとにする。
取り残された二人は、やはりなんとも言えない空気のままだ。
「あの、神子様。とりあえず椅子にお座りになりませんか?」
「あ……、はい」
労るようにかけられた声に、枢はゆっくりと顔を上げる。
こちらを見つめる少年の目には、心配の色が浮かんでいた。
「どうぞ、こちらのソファに」
ジュードに言われた通り、枢はソファに腰掛ける。
「なにかお飲み物をお持ちしますね」
「あ、やっ。いいですそんな! 僕なんかに気を遣わないで……その、ジュードさん、ですか?」
「ジュードで結構です」
「そんな、呼び捨てなんて」
「侍従に敬称をつけて呼ぶ者はおりません。私は神子様の侍従ですので、どうぞジュードと。敬語も必要ございません」
枢は少しためらったが、間を置いて声をかけた。
「じゃあ、ジュード。その、〝神子様〟って呼ぶのやめてくれないかな?」
「なぜでしょう」
「僕はたまたま精霊が見えるだけで、魔法なんて使えない。きっと神子っていうのもなにかの間違いだと思うんだ。それに、僕には『仲谷枢』っていうちゃんとした名前がある。呼んでくれるなら名前で呼んでほしいなって」
歳が近い雰囲気があるからだろうか。それとも、労るように声をかけてくれたことで少しだけ安心したのだろうか、しっかりとジュードの顔を見ながら言うことができた。
しばらくお互いに見つめ合うと、ジュードは優しく微笑んだ。
「かしこまりました。それではカナメ様と呼ばせていただきます」
「いや、様はいらない……」
「それでは、神子様とお呼びいたしましょうか?」
「う、ぐ。カナメ様で大丈夫です……」
「ありがとうございます。それでは私はお茶の準備をしてまいります」
「へ? 僕、さっきいらないって」
「ご遠慮なさらないでください。じっくりと茶葉を選んでまいりますので、その間おくつろぎくださいませ」
「あ……」
にっこり笑顔を見せると、ジュードはそのまま出ていってしまった。
「あれって、僕に一人の時間をくれるってことだよね。ジュード、僕と変わらないように見えるのに、すごく気が利いてるっていうか」
いろいろと考える時間をくれたのだろう、ジュードの優しさに頭が下がる。それと比べて自分は、と枢は自己嫌悪に陥りそうになる。
ソファの背もたれに背中を預けて、枢は深いため息をついた。
「なんで僕ってこんなにダメなんだろうな。人に気を遣ってもらうばっかりで、人を喜ばせることも、楽しませることもできない……」
熱いものがこぼれてしまわないように、ぎゅっと目を瞑りその上に左腕を乗せる。
「もっと僕に自信があったら違ったかな……。何か誇れるものがあったなら」
ないものねだりだとわかっているが、それでもなにかに縋りたかった。
「どうしたらいいんだろうね、精霊さん」
呼びかけると、どこからともなくキラキラと精霊が集まってくるのがわかる。枢を慰めるように頬や手のひら、つむじなどをさわさわと撫でている。
「ふふ、くすぐったい。それに、あったかいな。でもどうして僕、精霊さんが見えて、殿下の言う『魔法』? が使えたんだろ……」
信じられない出来事ばかりが起こったからだろうか、精霊のもたらす温もりに、次第に睡魔が襲ってくる。それほど時間もかからず、枢はソファに座ったまま眠りについた。
「ん、ぅ」
何かが触れたような気がして、ゆっくりと目を開く。うすぼんやりとする視界に輝かしい何かが見えた。
「精霊、さん?」
覚醒しきれない頭でそう考え、それに手を伸ばすと触れる前に掴まれた。
「うわ、あ!?」
「起きたか?」
見たことのある光景だな、と思いながら、自分の手を掴むそれに目をやり、そのまま視線を左に滑らす。案の定、そこにはベッド横の椅子に腰かけるアシュレイの姿があった。
「っ、アシュレイ殿下っ!?」
「よく眠っていたな」
「え、あれ!? いつからそこに? ていうか僕、いつの間にベッドに!?」
起きたばかりの頭はなかなか動いてくれず、枢は混乱していた。
確か自分はソファに座っていたのではなかったか。そしてそれは昼時のこと……
そう思い出して辺りを見渡すと、薄いカーテンの向こうに見える空はすでに暗くなっていた。
「う、うそ。夜……?」
「私が抱きかかえても起きないほどぐっすりと眠っていたぞ」
「だ、だっこ!?」
枢は目を瞠り、キョロキョロしていた視線を瞬時に彼に戻す。と、そこで視線が交差した。
ビクッ、と肩を揺らすと、枢は勢いよく下を向いた。そのとき掴まれたままだった手が目に入る。
「っつ……!!」
弾かれたように、思い切りその手を振り払ってしまった。
そしてすぐに青ざめる。
「あ……!」
(そうだよ! この人、第二王子だった! これって思いっきりヤバいやつじゃ!?)
自分をベッドまでわざわざ運んでくれた相手に対して、感謝も述べず、ましてや手を振り払うなど、相手が王子でなくとも失礼なことだ。
(さっき精霊さんだと思ったのだって、多分この人の髪の毛だ。もしかして、起きるまで横にいてくれたとか?)
とりとめもないことをああだこうだと内心で考えていると、その様子を見ていたアシュレイが枢に声をかけた。
「いろいろと考えているところ悪いが、夕食にしないか? それとも腹は減っていないか?」
「ぇ……? あ、はい、いただきます」
(あれ? 怒って、ない?)
昼に聞いたのと同じ、思わず枢が拍子抜けするほどあっさりとした声音だった。
惚けたままの枢はアシュレイに促されるままテーブルへと連れていかれる。
「食事の準備をさせるから少し待ってくれ」
「あ、はい」
返事をすると、アシュレイの掛け声とともにジュードがワゴンを押して室内に入ってきた。それと同時に、アシュレイは枢の隣に腰を下ろす。
「……ん?」
(いや、タイミングよく食事を持ってくるのもそうなんだけど、そもそもなんでこの人は僕の隣に座るんだ?)
何が起こっているのか理解できないまま、目の前のテーブルに食事が並べられていく。
「お待ちしている間に少し冷めてしまいましたので、今から温めます」
「えっ」
どうやって、と言う前にジュードが掲げた手のひらからかすかな熱を感じる。温かいな……と枢が思っていると、眼前の料理から湯気が立ち上り始めた。
「なに今の!?」
「今のが魔法でございます」
「魔法!?」
「はい。これは火魔法の一つです。指定した範囲を透明の膜で覆い、火魔法で発生させた熱で、中のお食事を温めています」
「なにそれすごいっ!」
摩訶不思議な現象に驚きつつ、枢はジュードをキラキラした目で見た。見上げられたジュードは、少し恥ずかしそうにしながらも、どこか誇らしそうだ。
「今のが魔法。めっちゃすごい……」
「感動しているところすまないが、せっかく温めてもらったんだ、冷める前に食べようか」
昼に自分が使ったらしい精霊魔法とは違うな、などと思っていると、苦笑混じりの声が聞こえてハッとする。
一体、何度こんなことを繰り返すのか。
(うぅ。穴があったら入りたい)
枢は心の中で頭を抱えた。
そうして二人は食事を開始した。ジュードは食べないのかと聞くと、「侍従が主人と同じ席で食事を摂るなど言語道断でございます」と笑顔で言いきられた。
仕方がないので食事に集中することにしたが、どうにも隣が気になってしまう。
「あ、あの」
「ん? なんだ?」
「なんで隣、なんですか……?」
先ほどから思っていたことを聞いてみた。すると彼は食事の手を止めて言った。
「――隣のほうが安心するかと思って」
「え……?」
「カナメ、正面から見られるのは好きじゃないだろう?」
「っ!」
「いつも目が合うと下を向く。だから横なら目が合わないからと思って」
「そ、れは」
「隣も嫌だったか?」
「……嫌、というか。恥ずかしい、です」
「それはなぜ?」
「僕は殿下みたいにナイフとフォークは上手く使えないし、食べ方も綺麗じゃないし……」
「そんなことは誰も気にしていない。カナメの好きなように食べたらいい。昼間だって気にしていなかっただろう?」
「あのときは! っ、僕も食べるのに一生懸命だったっていうか」
「じゃあ今も集中したらいい……あとカナメ」
「はい」
「殿下ではなくアッシュだ」
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