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番外編
誕生
しおりを挟む※ウィリアムとミレイアの子供が生まれる話。
♢♦︎♢
ーー花の二の月の一日。今年もミレイアの誕生日を迎えた。だが、例年と違い酷く静かで控えめなお祝いとなる。
それもそのはず。
ミレイアのお腹は大きく膨らみ、あと数日で出産という時期だったのだ。
お腹が張って辛いらしく、彼女はベッドの上にいる。その周りに枢やアシュレイ、ウィリアムが集まり祝福を述べていた。
「お誕生日おめでとうございますミレイア様!」
「おめでとうミレイア。体は大丈夫か?」
「カナメ様、アシュレイ殿下。ありがとうございます。体は大丈夫ですわ。少しお腹が張って痛いですけれど、もうすぐこの子に会えると思うと嬉しくて」
優しく腹部を撫でながらミレイアは微笑む。だが、小さく息を吐く様子も見せており、体調が優れないのは明らかだった。
「無理はするなよミレイア。しっかり横になって休め」
「ウィリアム様。これくらい大丈夫ですわ」
「僕たち、これで失礼しますね」
「まぁ。もうお戻りになられますの?」
「もとから長居するつもりはなかったんだ。簡単でもいいからお前に祝いの言葉を伝えたくてな」
「そうなんです。目的は達成しましたし、ミレイア様は気にせずゆっくり休んでください!」
「……お二人とも、ありがとうございます」
枢たちの言葉にホッと力を抜くと、ミレイアはベッドに体を沈ませた。それを見てから、二人は部屋を後にする。
「ーー楽しみだね、アシュレイ!」
「ああ」
♢♦︎♢
ーーそしてその日はすぐにやってきた。
ミレイアの誕生日から3日後。明け方から城内はバタバタと慌ただしかった。
「陣痛が始まったって?」
「ああ……」
「ミレイア様っ」
ミレイアの部屋の前でオロオロするのはウィリアム、アシュレイ、枢の三人だ。
侍医やメイド以外の者は室内に入ることは許されておらず、かといってこの場を離れることも出来ず。扉の前に張り付き、彼女の様子を伺うことにしたようだった。
「っ、大丈夫でしょうか……?」
「結構な時間がかかっているな」
「ミレイア……」
部屋の中からかすかに洩れるミレイアの呻き声。男である彼らには想像もつかない苦しみの中にいるのだろうと思うが、傍で支えることは叶わず、この場所で祈ることしか出来ない。
ーーどれくらいそうしていたのか。
日は高く昇り、昼も近づいた頃。部屋から歓声とそれに負けないほど大きな泣き声が聞こえた。
「っ、生まれた……!!」
「やったな兄上!!」
「ッああ……。ああ! よかった!!」
ウィリアムの目には涙が浮かんでいる。それにつられて枢も泣きそうになっていれば、不意に扉が開いた。
「おめでとうございます、陛下。王妃様もお世継ぎ様もご健康でいらっしゃいます。さあ、中へ」
メイドに促されウィリアムは室内に消える。それを見送って枢はアシュレイに寄りかかった。
無事に産まれたことに安堵して力が抜けてしまったのだ。
「よかった……。本当によかった!」
「そうだな。母子ともに健康だそうだから、なによりだ」
「うんっ」
二人は寄り添いあったまま扉を見つめている。それから少しして、再び開扉された。覗いたのはウィリアムだった。
「お前たちも入るといい」
「ぇ、でも……っ」
「ミレイアが、子供たちを見て欲しいそうだ」
「こども、たち……?」
疲れているだろうミレイアを思って断ろうとしたが、彼女がいいというのと、ウィリアムの発した「子供たち」という言葉が気になって入室する。
ベッドの上にはひどくくたびれた様子のミレイアと、その腕に抱かれる小さな塊が見えた。
恐る恐る近づいて気づく。
「ふたご……?」
「そうなんですの。……驚きましたわ。まさか、双子だったなんて!」
疲れているが、喜びと慈愛に溢れた笑顔をミレイアは見せてくれた。腕に抱かれた二つの命は、今は安らかに眠っている。
「ミレイア様……本当におめでとうございますっ! こんな、可愛い双子……。ほんと、すごいっ」
「……お疲れ様、ミレイア。兄上もミレイアも、本当におめでとう」
「あぁ。ありがとう」
ウィリアムはミレイアの横に腰掛け、彼女とその腕の子供たちをまとめて抱きしめる。その美しい光景に、そして皆が無事であったことに。その場にいた誰もが瞳をうるませていた。
ーー花の二の月の四日。国王ウィリアムと王妃ミレイアとの間に、双子の男女が誕生する。
イリアスとアリアと名付けられた子供たちは、城の皆に愛されながらすくすくと成長していくのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ということで、無事にミレイアが出産しました!
先に生まれたのが男の子で「イリアス」
妹が「アリア」です。
イリアスが金髪、アリアが銀髪で
親のカラーリングがくるっと入れ替わったような
色味をしてます。
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