嫌われ者は異世界で王弟殿下に愛される

希咲さき

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番外編

⑤-2

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※『彼と騎士と侍従長⑤』の続きです。

          ♢♦︎♢

「っ、あの花祭りの日。仲睦まじいお二人の様子を見て分かりました。私はなんて恥ずかしい勘違いをしていたのだろうと!」
「だから誤解だって言ってるだろ!?」
「誤解なわけが無い!! 貴方はっ! ……貴方は甘い言葉を囁くだけで、肝心なことは何も言ってくれなかった。あの時のお二人の距離ほど、私たちは近づいたことなんてなかった。それが、全てではないですか……」
「ユリウス……ッ」

 肩を震わせながら俯いてしまうユリウス。その場に重苦しい沈黙が落ちるが、それを破ったのは同じくらい重いため息をついたリオンだった。

「ーーいい加減にしてくださいますか?」
「っリオン、殿……?」
「何度も言いますが、私はこんなクソ野郎なんて欠片も好きではありません。出来れば他人であって欲しいくらいです」
「で、でも……」
「キスをしていたというのがなんの事かは分かりませんが、二年前の花祭りの日に兄と待ち合わせたのは確かです。でもそれはそんな気色悪い理由ではなく、単に二番目の兄に子供が生まれたので、その出産祝いを一緒に選んだだけのこと。なによりーー」

 そこで言葉を切ると、ギロリとユリウスを睨みながらリオンは言った。

「私、好きな人がいますので。こんな男に似ても似つかない、硬派で真面目を絵にかいたような素敵な人です」
「え……」
「なのであなたが心配するようなことは何一つありません。それでも気になると言うなら、そこの男に言って実家から戸籍でもなんでも取り寄せて見せてもらってください。いい加減、貴方たち二人に巻き込まれるのは御免です」

 腕を組んでフン、と鼻を鳴らす。それから今度はロイドに向き直る。

「元はと言えばお前がちゃんとしてないから悪いんだろ、クソ兄貴が! 追いかけ回すだけ追いかけ回して、肝心なことは伝えてないとか阿呆か。これ以上俺を巻き込んだら、お前の悪行全部ユリウス殿にバラすからな! わかったか!!」
「わ、わかった! わかったから落ち着け、な?!」
「指図するな! ……はぁ。とりあえず、あとは二人で話し合ってください。私はこれで失礼します」

 一息に捲し立てたかと思えば、それからすぐに疲れた顔をしてリオンは城の方へ戻って行った。
 残された二人は彼の勢いに圧倒されたまま、しばらく固まっていた。それからハッとしたようにロイドが動き出す。

「ユリウス!!」
「っ……!」

 その声にユリウスも覚醒し、弾かれたように逃げ出そうとした。ーーけれど。

「行かせない」
「離してくださいっ!!」
「離さない! いいから、俺の話を聞いてくれ!!」
「ッいまさら、なにを……」

 背後から強く抱きしめられて動きを止められる。耳元で聞こえた声は語尾が震え、切実さを滲ませていた。

「……好きだ」
「っ!!」
「お前が好きだ、ユリウス。初めて会ったあの日、笑顔が可愛いやつだと思った。力があるのにそれを鼻にかけることなく、努力して真面目に仕事に取り組んで、本当にすごいやつだと思ったよ」
「ロイド、殿」
「会えば可愛い顔で近寄ってきてくれて、俺の言葉に喜んでくれて。純粋で愛おしくて、そんなお前を傍で支えてやりたいと思った。……だから、その気持ちをちゃんとお前に伝えてただろう?」

 ーー確かにロイドは『お前の一番になりたい』『騎士としても術師としても、一人前になろうとするお前の支えになりたい』、そうユリウスに言ったことがある。
 だがそれはユリウスが花祭りで二人の姿を見かけて少ししてからの事だった。当然、それが本気だと受け取れるわけがなかった。

「……そんなの、本気になっていく私を見て、からかってーー」
「いい加減にしろよユリウス」
「っ、んッぅ!?」

 押し殺した声が聞こえたと思った瞬間、後ろから顎を掴まれ振り向かされた。そして抵抗する間もなく唇に噛みつかれる。

「ぁや、っ!! んん、ッはなし……っン!」
「好きだと言わず、キスもしない。そんな態度だったから俺の言葉が信じられないと言ったな? なら今、どちらもしたぞ。これでもまだ信じないって?」
「ふ、ぁッ。やめて、くださ……」
「なら今ここで抱いてやろうか?」
「ーーいっ!?」

 激しいキスに翻弄されながらも、弱々しく抵抗しようとするユリウス。それをロイドは許さなかった。
 背後から拘束したまま、己の膝をユリウスの足の間に捩じ込む。唇を離し自由になった口を、今度は彼の首元に這わせ、ギチリと歯を立て噛み付いた。ユリウスが痛みに顔を顰めるが、ロイドは無視をする。

「なっ、ぁ……やめてッ、ロイドさ……!」
「やめない。お前が俺の気持ちを信じるまで、絶対にやめない。受け入れないと言うなら、本当にこの場でお前を犯す」

 言いながら自由な方の手を服の中に潜り込ませ、鍛えられたその腹をまさぐり出す。

「ッわ、わかりました! わかりましたから、もぅ、やめて……っ!!」

 震える声が聞こえ、ロイドはやっと動きを止める。差し込んだ手も足も引っ込め、それから優しく拘束を解いた。
 ユリウスはペタリと地面に座り込んでしまう。

「……怖がらせて、悪かった」

 同じように膝を折ったロイドが、後ろからまた抱きしめてくる。ユリウスはそれに逆らわなかった。

「本当に、好き……なんですか?」
「当たり前だ。お前に伝えてきた言葉は全部、本当の気持ちだ」
「俺、ずっとからかわれてるってッ。本当はリオン殿と過ごしたいのに、ロイドさん優しいから俺の相手してくれてるんだって……」
「俺は好きでもないやつに構うほど暇じゃない」
「信じて、いいんですよね……?」
「そうでないと困る」
「っ、よか……たぁ」

 己の首に回された腕にしがみつくと、ユリウスは身体を震わせながら涙を流す。小さく漏れる嗚咽が、ロイドの胸を締め付けた。

「本当に、俺のせいで不安にさせてすまなかった。好きだユーリ。お前の傍にいさせてくれ」
「おっ、俺もすき……ですっ。また前みたいに、一緒にいたいぃ」

 ーーこうしてすれ違っていた二人は、二年ぶりに想いを通じ合わせることができた。

 なおこの後。再度の護衛交代時に泣き腫らした顔を見られて、一悶着あったのは別のお話……。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

てことでどうにか収まるところに収まった二人でした!
めっちゃ長くなった……。
ユリウスが可愛らしくなってきたな。
そしてリオンさんが美人でかっこいい人から
口の悪い人になりつつあるような……。
全部ロイドが悪い。
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