43 / 50
番外編
⑤-2
しおりを挟む※『彼と騎士と侍従長⑤』の続きです。
♢♦︎♢
「っ、あの花祭りの日。仲睦まじいお二人の様子を見て分かりました。私はなんて恥ずかしい勘違いをしていたのだろうと!」
「だから誤解だって言ってるだろ!?」
「誤解なわけが無い!! 貴方はっ! ……貴方は甘い言葉を囁くだけで、肝心なことは何も言ってくれなかった。あの時のお二人の距離ほど、私たちは近づいたことなんてなかった。それが、全てではないですか……」
「ユリウス……ッ」
肩を震わせながら俯いてしまうユリウス。その場に重苦しい沈黙が落ちるが、それを破ったのは同じくらい重いため息をついたリオンだった。
「ーーいい加減にしてくださいますか?」
「っリオン、殿……?」
「何度も言いますが、私はこんなクソ野郎なんて欠片も好きではありません。出来れば他人であって欲しいくらいです」
「で、でも……」
「キスをしていたというのがなんの事かは分かりませんが、二年前の花祭りの日に兄と待ち合わせたのは確かです。でもそれはそんな気色悪い理由ではなく、単に二番目の兄に子供が生まれたので、その出産祝いを一緒に選んだだけのこと。なによりーー」
そこで言葉を切ると、ギロリとユリウスを睨みながらリオンは言った。
「私、好きな人がいますので。こんな男に似ても似つかない、硬派で真面目を絵にかいたような素敵な人です」
「え……」
「なのであなたが心配するようなことは何一つありません。それでも気になると言うなら、そこの男に言って実家から戸籍でもなんでも取り寄せて見せてもらってください。いい加減、貴方たち二人に巻き込まれるのは御免です」
腕を組んでフン、と鼻を鳴らす。それから今度はロイドに向き直る。
「元はと言えばお前がちゃんとしてないから悪いんだろ、クソ兄貴が! 追いかけ回すだけ追いかけ回して、肝心なことは伝えてないとか阿呆か。これ以上俺を巻き込んだら、お前の悪行全部ユリウス殿にバラすからな! わかったか!!」
「わ、わかった! わかったから落ち着け、な?!」
「指図するな! ……はぁ。とりあえず、あとは二人で話し合ってください。私はこれで失礼します」
一息に捲し立てたかと思えば、それからすぐに疲れた顔をしてリオンは城の方へ戻って行った。
残された二人は彼の勢いに圧倒されたまま、しばらく固まっていた。それからハッとしたようにロイドが動き出す。
「ユリウス!!」
「っ……!」
その声にユリウスも覚醒し、弾かれたように逃げ出そうとした。ーーけれど。
「行かせない」
「離してくださいっ!!」
「離さない! いいから、俺の話を聞いてくれ!!」
「ッいまさら、なにを……」
背後から強く抱きしめられて動きを止められる。耳元で聞こえた声は語尾が震え、切実さを滲ませていた。
「……好きだ」
「っ!!」
「お前が好きだ、ユリウス。初めて会ったあの日、笑顔が可愛いやつだと思った。力があるのにそれを鼻にかけることなく、努力して真面目に仕事に取り組んで、本当にすごいやつだと思ったよ」
「ロイド、殿」
「会えば可愛い顔で近寄ってきてくれて、俺の言葉に喜んでくれて。純粋で愛おしくて、そんなお前を傍で支えてやりたいと思った。……だから、その気持ちをちゃんとお前に伝えてただろう?」
ーー確かにロイドは『お前の一番になりたい』『騎士としても術師としても、一人前になろうとするお前の支えになりたい』、そうユリウスに言ったことがある。
だがそれはユリウスが花祭りで二人の姿を見かけて少ししてからの事だった。当然、それが本気だと受け取れるわけがなかった。
「……そんなの、本気になっていく私を見て、からかってーー」
「いい加減にしろよユリウス」
「っ、んッぅ!?」
押し殺した声が聞こえたと思った瞬間、後ろから顎を掴まれ振り向かされた。そして抵抗する間もなく唇に噛みつかれる。
「ぁや、っ!! んん、ッはなし……っン!」
「好きだと言わず、キスもしない。そんな態度だったから俺の言葉が信じられないと言ったな? なら今、どちらもしたぞ。これでもまだ信じないって?」
「ふ、ぁッ。やめて、くださ……」
「なら今ここで抱いてやろうか?」
「ーーいっ!?」
激しいキスに翻弄されながらも、弱々しく抵抗しようとするユリウス。それをロイドは許さなかった。
背後から拘束したまま、己の膝をユリウスの足の間に捩じ込む。唇を離し自由になった口を、今度は彼の首元に這わせ、ギチリと歯を立て噛み付いた。ユリウスが痛みに顔を顰めるが、ロイドは無視をする。
「なっ、ぁ……やめてッ、ロイドさ……!」
「やめない。お前が俺の気持ちを信じるまで、絶対にやめない。受け入れないと言うなら、本当にこの場でお前を犯す」
言いながら自由な方の手を服の中に潜り込ませ、鍛えられたその腹をまさぐり出す。
「ッわ、わかりました! わかりましたから、もぅ、やめて……っ!!」
震える声が聞こえ、ロイドはやっと動きを止める。差し込んだ手も足も引っ込め、それから優しく拘束を解いた。
ユリウスはペタリと地面に座り込んでしまう。
「……怖がらせて、悪かった」
同じように膝を折ったロイドが、後ろからまた抱きしめてくる。ユリウスはそれに逆らわなかった。
「本当に、好き……なんですか?」
「当たり前だ。お前に伝えてきた言葉は全部、本当の気持ちだ」
「俺、ずっとからかわれてるってッ。本当はリオン殿と過ごしたいのに、ロイドさん優しいから俺の相手してくれてるんだって……」
「俺は好きでもないやつに構うほど暇じゃない」
「信じて、いいんですよね……?」
「そうでないと困る」
「っ、よか……たぁ」
己の首に回された腕にしがみつくと、ユリウスは身体を震わせながら涙を流す。小さく漏れる嗚咽が、ロイドの胸を締め付けた。
「本当に、俺のせいで不安にさせてすまなかった。好きだユーリ。お前の傍にいさせてくれ」
「おっ、俺もすき……ですっ。また前みたいに、一緒にいたいぃ」
ーーこうしてすれ違っていた二人は、二年ぶりに想いを通じ合わせることができた。
なおこの後。再度の護衛交代時に泣き腫らした顔を見られて、一悶着あったのは別のお話……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
てことでどうにか収まるところに収まった二人でした!
めっちゃ長くなった……。
ユリウスが可愛らしくなってきたな。
そしてリオンさんが美人でかっこいい人から
口の悪い人になりつつあるような……。
全部ロイドが悪い。
13
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。