初配信でリスナー(大悪魔)と契約しちゃった件

キリン

文字の大きさ
7 / 10

「第六話」リスナー(大悪魔)との契約

しおりを挟む
 服部ナオトラ。
 それは、ダンジョン配信者を志す者ならば、誰もがその実力を認めざるを得ない強者。

 魔法を使える配信者が上位を独占する中、流星の如く現れたスーパールーキー。魔法を使えない凡人でありながら、刀一本で数多のモンスターを斬り伏せ、幾つものダンジョンを制覇してきた超人。

 ──そんな人間離れした彼女が、ボクの目の前で片膝をついている。

 血の滲んだ衣服、荒い呼吸、構えることすら出来ないほどの疲弊……自らを殺さんとする敵を目の前にして、彼女は感じたことのない「恐怖」を感じている様子だった。動画で見た時よりも弱々しく、ただの女の子のような儚さだ。

「ガァアアアアアアアアアアア!!!!」

 それをここまで追い詰めたのは、巨大な牛の頭のモンスター。──ミノタウロス。スフィンクスやグリフォンとは比べ物にならないほどに凶暴で、手強いモンスターであり、未だに誰も討伐したことがないと言われる「無敵の怪物」……正真正銘のバケモノだ。

 震えながら寧ろ、ボクはナオトラの強さに衝撃を受けた。あのミノタウロス相手にたった一人でここまで持ちこたえ、現在進行系で生きている。──だが、それも限界だ。

「ガァアアアアア!!!!」

 振り下ろされる剛腕、避ける素振りもそんな事をする気力すら無い。彼女はただ涙を流しながら、訪れる死を眺めているだけだった。

 ──ナオトラが!
 ──やばい!
 ──Ω\ζ°)チーン

 無論、そうならないために。そんな事をさせないためにボクは来た!

「うぉぉああああああああああああ!!!!」

 走り出し、滑り込む。へたり込んだナオトラの服を掴み、そのままの勢いでミノタウロスの拳からギリギリ逃れる。しかし拳の威力は凄まじく、風圧だけでボクとナオトラは吹き飛ばされてしまった。

 ──うぉおお助けたぁアアアアア!
 ──神展開!
 ──8888888

 加速するコメント欄。しかし、ボクは二度目の絶体絶命に直面していた。
 あまりにも高い、高い場所からボクは落下していた。ミノタウロスの風圧でいくらか飛ぶとは思っていたが、まさかこんなことになるとは予想外だった。──迫る地面。死ぬ……走馬灯が見えかけたところで。

「……ッ、『烈風』!」

 ナオトラの雄叫びとともに、握っていた刀が縦横無尽に振るわれる。ボクとナオトラさんを包んだのは風だった、斬撃により生じる風……それが、着地の衝撃を和らげたのだ。

「っ……な、ナオトラさん!」
「……」
 ──し、死んだ?
 ──おい馬鹿やめろ
 ──日本\(^o^)/オワタ
「……生きてる、気絶してるだけ」

 ほっと一息……というわけにはいかなかった。
 振り返るとそこには、息を荒げてこちらを睨んでいるミノタウロスがいた。

「……ぁ」

 死ぬ、今度こそ死ぬ。
 ナオトラさんは気絶した。持っているのはサバイバルナイフだけ。周りには誰もいない、勝てるわけがない。負けたら死ぬ、死んだら……お父さんを探せなくなる。

 でも、どうしようもないじゃないか。

「ガァアアアアアアアアアアアア!!!」

 振るわれる剛腕、逃げることすら考えられない。考えようとも、思わない。
 加速し続けるコメント欄に、ふと……目を落とす。

 ──助けて欲しいか?
 ──助けて欲しいか?
 ──助けて欲しいか?

 そこには、何度も同じリスナーから、同じコメントが連投されていた。

 助けて欲しいか。
 ああ、よくある話だ。死にかけている配信者にこうやってコメントを送って、必死に助けを求めるその様を悪趣味に眺める……そういう輩が。

 だから、このコメントはただの悪意。──それでも。

「たすけて……!」

 頭を抱え、蹲り、ただそう呟いた。
 誰にも届かない、聞き届ける人もいない……誰もいないダンジョンの奥地にて、その声は虚しく消えた。

「承知した、我が君」

 そう、聞き届ける人間はいなかった。
 そこにいるのは黒く、どこまでも黒ずんだ片翼を携えた……片翼の天使だった。

「散れ」

 それは、ただの言霊。
 しかし天使がそう呟いた瞬間、向かってきていた剛腕は爆ぜた。いいや破壊は腕に留まらない……爆竹を仕込んだカエルのごとく、ミノタウロスの身体はバラバラに吹き飛んだ。

 ──え?
 ──マジ?
 ──何があった

 地獄絵図。ミノタウロスの肉片や血液が雨として降り注ぐ中、それでも片翼の天使は怪しく……ボクの方を見ていた。

「……あなたは」
「自己紹介が遅れたな」

 動揺するボクのことなど気にもせず、その天使は片膝をつき……ボクの手の甲にキスをしてきた。

「我が名はサタン。ここに、貴女への服従を示す」

 血の雨の中、鳴り響くコメントの中……僕の手の甲には黒い紋章が浮き出た。
 こうして、ボクは契約した。片翼の天使……いいや、リスナーに化けた大悪魔サタンと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...