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「第八話」チャンス
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ダンジョンを出るや否や、ボクとナオトラさんはカメラのフラッシュの群れに襲われた。そんなに人通りの多い場所ではないのに、ダンジョン入口の近くには沢山の人だかりができていた。数人の警官が両手を広げながら、押し寄せる人の波を食い止めていた。
「……いっぱい」
「蒼井殿、顔が腑抜けていますぞ? 拙者の主君として恥じぬよう、もっと背筋をピンとしてくだされ」
「そ、そんなこと言っても……こんな沢山の人に囲まれるの初めてで……」
「本当に初配信だったのでござるか……」
ドン引きするナオトラさんに苦笑いを浮かべていると、中年の警官一人がボクの方に近づいてくる。何やらスマホとボクの方を交互に見て……その後に頷き、こう言ってきた。
「君、雨宮蒼井ちゃんだね?」
「えっ? あっ、はいそうです。あの……すみませんこんな騒ぎを起こしてしまって」
「いやいや、ダンジョン配信ではよくあることだから気にしなくていいよ。まぁ、おじさんは危ないからあんまり好きじゃあ無いが……」
何処か遠い目をした中年の警官は、「ふぅ」と息を吐いてから言った。
「蒼井ちゃん、実は君には捜索願が出されているんだよ。──君のお母さんから、家出なんじゃないかってね」
「っ……」
そう言えば、あれからどれだけの時間が経っているのだろうか。
色々なことが有りすぎて時間の概念を考えていなかったが、少なくとも入った時には太陽が空にあった……だが今、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
「まぁなんにせよ、君を見つけることができてよかった。まぁまさかダンジョンの中にいるとは思わなかったけど……さぁ、パトカーまで案内するよ」
「ま、待ってください!」
「? なんだい?」
分かっている、こんなことでお願いをするのは違うと。自分が間違っていることも、道理に反していることも……それでも、掴んだこのチャンスを逃したくない。
「お願いします、お母さんには言わないでください。やめたくないんです、配信者!」
「……」
「警察殿、拙者からもお願いでござる! 拙者、この御方に仕えると決めたのでござる!」
ボクとナオトラさんの声を聞き、中年の警察官はしばらく帽子をいじりながら、深い溜め息をついた。
「残念だけど、そういう理由で君を放っておくのは無理だ」
「そんな……」
「ただし、君にはチャンスを与えようじゃないか」
チャンス? ボクがそう言うと、中年の警察官は頷いた。
「君が、お母さんを説得するチャンスさ」
「……いっぱい」
「蒼井殿、顔が腑抜けていますぞ? 拙者の主君として恥じぬよう、もっと背筋をピンとしてくだされ」
「そ、そんなこと言っても……こんな沢山の人に囲まれるの初めてで……」
「本当に初配信だったのでござるか……」
ドン引きするナオトラさんに苦笑いを浮かべていると、中年の警官一人がボクの方に近づいてくる。何やらスマホとボクの方を交互に見て……その後に頷き、こう言ってきた。
「君、雨宮蒼井ちゃんだね?」
「えっ? あっ、はいそうです。あの……すみませんこんな騒ぎを起こしてしまって」
「いやいや、ダンジョン配信ではよくあることだから気にしなくていいよ。まぁ、おじさんは危ないからあんまり好きじゃあ無いが……」
何処か遠い目をした中年の警官は、「ふぅ」と息を吐いてから言った。
「蒼井ちゃん、実は君には捜索願が出されているんだよ。──君のお母さんから、家出なんじゃないかってね」
「っ……」
そう言えば、あれからどれだけの時間が経っているのだろうか。
色々なことが有りすぎて時間の概念を考えていなかったが、少なくとも入った時には太陽が空にあった……だが今、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
「まぁなんにせよ、君を見つけることができてよかった。まぁまさかダンジョンの中にいるとは思わなかったけど……さぁ、パトカーまで案内するよ」
「ま、待ってください!」
「? なんだい?」
分かっている、こんなことでお願いをするのは違うと。自分が間違っていることも、道理に反していることも……それでも、掴んだこのチャンスを逃したくない。
「お願いします、お母さんには言わないでください。やめたくないんです、配信者!」
「……」
「警察殿、拙者からもお願いでござる! 拙者、この御方に仕えると決めたのでござる!」
ボクとナオトラさんの声を聞き、中年の警察官はしばらく帽子をいじりながら、深い溜め息をついた。
「残念だけど、そういう理由で君を放っておくのは無理だ」
「そんな……」
「ただし、君にはチャンスを与えようじゃないか」
チャンス? ボクがそう言うと、中年の警察官は頷いた。
「君が、お母さんを説得するチャンスさ」
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