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【第一部】第一章 憤怒の黒炎

襲撃

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『君たちを襲った兵士いるでしょ?、何処の国の兵士か調べてきて、もちろん、ノブとアメリアで』

「と言われたのはいいものの、何処を探せばいいのやら」
「ですねぇ」
呑気にボリボリ二人で金平糖を食べている信長とアメリア、二人はてくてくいろんな場所を歩いていた、クソ野郎ナポレオンの土下座を条件に、自分たちを襲った者がどこの国の兵士かを探すために。
トテトテ歩くアメリアを隣で見ながら、信長は思う。
「・・・・・儂思うんだが、お主は少し美形すぎないか?、男前な儂と同格じゃぞ?」
「あなたが男前なのについてはノーコメントですが、私が美形なのは認めましょう」
滅茶苦茶自分の事を誉めまくるアメリアにイラっと来ながら、信長は気晴らしに辺りを見渡す。
「・・・・・止まれ、アメリア」
そこで、気づいた。
お目当ての兵士どころか、人っ子一人いない事に。
周りには高い建物、梯子があるとしても登るのに10秒かかるぐらいの高さだ。
(・・・・・・狙い撃ちするには、丁度いい高さじゃな)
「アメリア、儂から離れるな」
「?、どうしま
「伏せろぉっ!」
信長が背中の刀を抜き、声に驚いたアメリアが伏せる。

次の瞬間、無数の弾丸が信長を襲った。

ガガガガッガッ!、と、放たれる直径9ミリ程度の凶弾を、信長は自分の愛刀で殴り落とす。
ギィンギィインジャイン!、金属音が響く中、信長は叫ぶ。
「アメリアッ!、絶対に動くな!、動いたら拳骨じゃ!」
「はっ・・・・・・・はいい!」
耳を抑えるアメリアを横目で見ながら、信長は360度全方位から来る凶弾を落とし続ける。
「はっはっは!、さすが儂!、戦国の世で鉄砲相手に剣で張り合ったのは儂ぐらいじゃろうな!」
「喜んでる場合じゃないですよぉ!」
ドドドドドドッ!、と凶弾は止むことなく降り注ぎ、信長の頬や腹部、さらには腕を貫通した。
ガキィン!、ギギィン、ブチュ!、血が吹き飛び、鉛玉が吹き飛ばされるこの惨状に、アメリアは耳を塞ぐしかなかった。
だが、余は無情なもので、一人の少女の願いも受け入れてはくれないようだ。
「ぐはっ・・・・・っ」
ブシュウっ!、と、信長の肩に銃弾が貫通し、手から刀がすり落ちる。
(しまっ)
「アメリアアアアアっ!」
とっさにアメリアの上に覆い被さり、信長は放たれる銃弾を背中で受ける。
一発、二発、三発。
余りにも無情な攻撃が、無防備な背中に突き刺さる。
アメリアにはまだ一発も当たってはいない。
信長が全て受けているからだ。
だが、これがいつまでも続くとは思えない。
信長の背中はすでに7発ほど銃弾を受け、そのうち2か所は急所だ。
普通に痛いし、出血で意識も朦朧としている。
絶体絶命、という奴なのだろう。
(クソっ・・・・・・じゃから不意打ちは嫌いなんじゃ・・・・・ッ!)
激痛の中、信長は思考する。
(・・・・・・・・・神様)
そっと、自分の痛む両手を合わせ、祈る。
かつて、自分の国に来た異国の者が教えてきたやり方で。
(儂は初めて祈るが、お主はあらゆる人間を許し、願いを聞き届けるのじゃろう?)
「信長公!、信長公!」
アメリアが覆い被さる信長の肩を揺らす。
片手に血が付いたのを見て、さすがの無表情な顔も崩れて、泣いていた。
(だったら・・・・・・・・)
目を閉じた信長、泣き続けるアメリア。
そして、降り注ぐ弾丸の中。

「わーったよ、もう寝てろ、あとは全部俺が片づけてやる」

声が聞こえたと同時に、銃弾が止んだ。
次に屋根の上にいる銃撃隊の悲鳴が聞こえた。
そして、それを最後に信長の意識は途絶えた。
辺りには、銃兵の血が吹き散らされていた。





~約10分後~
「あれが尾張の大うつけ、ねえ」
遠く高い其処から、それは倒れる信長を見ていた。
つまらなそうに、それでいて期待するように。

「俺の弱点は俺の踵だからいいけど、あんたはそんな女の子が弱点だろ?、同情するぜ全く」

そう言って、太古の英雄は走る。
恐らく人類最速の、その足を以て。





 
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