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婚約破棄します

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「ローズ、君とは結婚できない
すまないが婚約破棄しよう」

 俺の名はレオン。この国の第1王子だ
そして目の前にいる婚約破棄を告げた相手は幼い頃からの婚約者ローズ
彼女は家柄も良く、美しく聡明だ
王も王妃も、そして国民も皆、彼女が俺の妃になる事を望んでいる
しかし、俺は・・・ 俺は


「婚約破棄とはどういう事ですか?レオン様」


 いきなり学園の人気の少ない庭園に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたローズは突然の事に肩を震わせている
まあ、突然婚約破棄するなんて言えば驚くか
俺もこのまま彼女と結婚するつもりでいた
 しかし気がついてしまったのだ、決められた人生、決められた婚約者・・・ 否、俺はもっと自由でいいはずだ!
 そんな矢先運命的な出会い
俺は真実の愛を知ってしまったのだ


「好きな相手ができた
彼女を愛してしまったのだ
君には悪いが、俺は君よりも彼女と共に生きていきたいのだ」

 俺は素直な気持ちをローズに伝えた
ローズには申し訳ないが、俺は彼女に惹かれてしまった


 しばらく黙っていたローズが唐突に口をひらいた
「彼女とはマデリーン様の事ですね」

「なっ!?」
 何故俺の思い人をローズが知っているのだ
 確かにマデリーンは俺の思い人、愛しい彼女なのだが
「・・・何故彼女を知っているのだ?」
 そうローズに問い詰める
 ローズの奴め、俺達の事に気付いて調べたのか!思わず俺はローズをにらみつけた

「はぁ・・」
 ローズはため息をつきながら、冷たい目で俺を見ながら
「わかりますわよ」

「楽しそうに2人きりでお会いしたりしているそうじゃないですか・・・
 劇場やカフェなどの街中デート、海や湖、高原など色々な所に行っているみたいですね」

「なにっ!?」  
 いやな汗が出る
 何故ローズはそんな事まで知っているのだ
 やはり俺達の事を調べたのだな!

「何故知っている!みたいな顔をしていますが、あなたがたは堂々としすぎです
 何人ものかたがあなたがたを見てますよ」
 ローズは一呼吸して続ける
「ちなみに、私とのお茶会をすっぽかしてマデリーン様とお会いしていた事も陛下はご存じです」

 ん?父上もマデリーンの事を知っているのか!
 ならば父上にもマデリーンを紹介しようじゃないか!!俺の運命の人だと

 
 俺の様子を見ていたローズが再びため息をつきながら
「本当に婚約破棄でよろしいんですね?」
と、強めに聞いてくる
「もちろんだ!納得してくれるのか?」

「共に生きたいとまでいう方なんですから、私は大人しく引き下がりますわ・・・
それではマデリーン様とお幸せに」
 うつむきながらそう言うとそのままローズは去って行った
 最後に一言だけ残して・・・ 

「女は化けますよ」
と、恨みがましいセリフだがまあいい
 これで俺はマデリーンと正式に婚約できる


 俺はマデリーンの待つ裏庭に向かう
 マデリーンに婚約破棄の事を伝え、そのままプロポーズしよう!
 ふふふ、マデリーンは細身なのに、胸のボリュームがすごいのだ!!! 結婚までは清い関係でいたいとの事だが、胸位触ってもいいよなっ!! だって婚約者になるんだから


 ローズは確かに美しい!
 しかし、いつも胸元のしまった洋服を身につけ、あまり膨らみのない胸を見るたびに俺は空しさを感じていた
 俺は大きな胸が好きだ!あるかどうか分からないような胸よりも、大きな胸に顔をうずめたいっ!! 揉みほぐしたいっ

 幼い頃よりずっと婚約者の膨らまない胸を空しく見つめながら過ごす日々・・・
 突然の運命の出会い!遠目からも分かる大きな胸、俺好みの可愛らしい容姿!一目で恋に落ちたよ
 それからは婚約者がいる事も忘れ、もうアピールさ
 幸いマデリーンも俺に惹かれ付き合う事になったが、婚約者がいる身では胸さえ揉ませてもらえなかったが、これでやっとあの胸に触れる!!


 ニヤニヤと裏庭に向かうとマデリーンが建物の影で待っていた
 金色の髪、大きな瞳の可愛らしい顔
 そして盛り上がった大きな胸!!
 どれをとっても俺の好みだ

「マデリーン!  んんっ!?」
 愛しい彼女の名を呼んだ途端、いきなりマデリーンの頭上に大量の水が降り注ぐ・・・

 一瞬の事過ぎて何が起きたか分からなかったが、誰かが建物の上から水を捨てたらしく運悪くそこにいたマデリーンに掛かってしまったようだ

「マデリーン!!大丈夫かっ?
誰だ?上から水を捨てたのは?」
 慌ててマデリーンのそばに駆けていく
 マデリーンはびしょ濡れになって
「誰よ~ こんな事するのは」
と憤慨している 

「まっマデリーン!?」
 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 俺は元婚約者ローズを探している
 いや、まだ正式に婚約破棄はしていないから婚約者のローズだな

 先程別れたばかりだからまだそこら辺にいるはずだ
 もしかしたら人気のない所で泣いているかもしれない

 ローズを見つけたら、やはり婚約破棄は辞めようと伝えよう!
 父上や母上や皆が望んでいる婚姻だ、そう簡単には辞める訳にはいかないよな
 俺には例え胸がなくても昔からの婚約者のローズが一番だ
 マデリーンの事は一時の気の迷いだったんだ


 マデリーンが水を被ったその時俺は見てしまった・・・
 崩れた化粧、びしょ濡れになったドレス、そこには俺の愛した彼女はいなかった

 そこにいたのは、化粧が落ちお世辞にも可愛らしいとは言い難い地味めな顔
 何よりびしょ濡れになった衣類の下には俺の望んでいた大きな胸ではなく、大量のパットが透けて見えていた・・・


 ~~マデリーンは全てがまやかしだった~~

 俺はマデリーンに別れを告げ、ローズを探す
 やり直そう、ローズ!




 しかし、ローズは見つからず俺は王宮にトボトボと戻った
 明日にでもローズの家に行こう
 昔からの婚約者だ、いきなり婚約破棄だと言われても向こうも困っているだろう
 婚約破棄はなかった事にしてもらえばいいだろう!

 そんな甘い事を考え、王宮に着くと俺は既に王太子ではなくなっていた・・・
 ローズとの婚約破棄の事が既に知れ渡り、父上や母上に見捨てられてしまった


 その後新たな王太子には第2王子、俺の弟が就きその婚約者にローズが収まった・・・
 婚姻式、初めてローズの胸元の開いたドレスを見た時俺は叫びそうになった
 
 昔から膨らまないささやかな胸だと思っていたそれが、開いた胸元からこぼれ落ちそうな位の物だと知った時
「何で婚約破棄をしてしまったんだ~」
と、王太子の座も大きな胸も・・・ 全てを失って目眩を起こしていると、ローズが近づいてきた
 そして
 
「だから言ったでしょう?
 女は化けるって」
 今まで見た事もないような妖艶な笑顔でローズはクスクスと囁いた

~~終わり~~
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