ヴィティスターズ!【ワイン擬人化♂】

独身貴族

文字の大きさ
27 / 44
motto

シルヴァーナ編

しおりを挟む
ドイツワインの日-シルヴァーナ編

《キャスト》
シルヴァーナ:
ミュラー・トゥルガウ(ミュラー):
リースリング:
ピノ・ノワール:

────────────────────────以下台本


シルヴァーナ
「ようこそ! ミュラー君。君が来るのを楽しみにしていたのですよ!」

シルヴァーナN
「……そう言って、彼を出迎えたことが、遠い昔のように思える……」

***(場面転換)

シルヴァーナN
「私、シルヴァーナは、トランシルヴァニアで生まれました。その後、今のドイツのあたりへ場所を移し、伝統的なワイン作りを行ってきました。20世紀に入ると、甘口ワインの流行と共に仕事量も増え、忙しい日々を送っていました。そんな折、紆余曲折あって、ミュラー・トゥルガウという品種と、共に仕事をすることが増えていきました」

[se:走り寄る]

ミュラー
「シルヴァーナ先輩! この間頂いた本ですが、とても興味深く、非常に勉強になりました! またおすすめの本がありましたら、是非教えてください!」

シルヴァーナ
「いいですよ。あなたは本当に本の虫ですね。勉強熱心なのは良いことです」

ミュラー(楽しそうに)
「本は知識の宝庫です。至る所に発見があり、楽しくて仕方がありません! シルヴァーナ先輩やリースリング先輩の足を引っ張らないよう、勉学に励みますので、もっともっと、僕にいろんな事を教えてくださいね!」

シルヴァーナ
「ええ、もちろん。君のような熱心な後輩を持てて、私は嬉しいです」

***

シルヴァーナN
「でも、あなたは足を引っ張るどころか、私を超えて、ずっと先へ行ってしまった──」

***(場面転換)

[Se:ドアを乱暴に開ける]

リースリング
「おい、シルヴァーナ」

シルヴァーナ(疲れたように)
「……せめてノックしてから入ってください、リースリング」

リースリング(イラついた様子で)
「お前のワイン、最近質が落ちているそうじゃないっすか。どーしたんだよ、らしくもない」

シルヴァーナ
「放っておいてください。私は忙しいんです……」

リースリング
「忙しい、忙しいって……(舌打ち)あちこちで愛想振り撒くわりには、最近俺にはよそよそしいし、ホントどーしたんすか。元々あんたは甘口ばかり作る品種じゃないでしょ。それが甘口が流行ってるからと言って、リープフラウミルヒばかり作って……」

シルヴァーナ(イラつきつつ)
「ああ、うるさいな、あなたはいつも小言ばかり……。私にばかり構わないで、たまにはミュラー君にも会ってあげたらどうです。寂しがってましたよ」

リースリング
「……焦ってんすか? ミュラーに、仕事を取られそうで」

シルヴァーナ(突き放すように)
「……違います。私のことに口を出さないでください。リースリング」

リースリング
「(舌打ち)そっすか。ま、あんたの問題だしな」

[Se:出ていきドアを閉める]

シルヴァーナ
「(長いため息)」


***(場面転換)

シルヴァーナN
「焦っていた。確かに私は焦っていた。後輩であるミュラー君の人気が私を超えた時、喜ぶ一方で、自分はこのまま忘れらさられてしまうんではないかと怖くなった。甘口ワインが流行なら甘口を作り、他で仕事があるなら他所へ足を運んだ。……気がつけば、私の周りには粗悪品たちが転がっていた。人気は落ちる一方で……私はとても荒んでいた。──そんな時に、今度は赤ワインが流行に乗り、あの男がドイツへ、足を踏み入れた」

***(場面転換)

[Se:足音]

シルヴァーナ(にこやかに)
「ようこそドイツへ。ピノ・ノワール、いえ、シュペート・ブルグンダー。ドイツでは赤ワインの生産がまだ少ないので、皆あなたの話で持ちきりですよ。あなたは素晴らしい品種ですから、きっとこの土地でも、名声を手にするのでしょうね」

ピノ・ノワール(気に入らなさそうに)
「ふん……そういえば、近くの店で、シルヴァーナ、お前のワインが売られていたが……随分と格を下げたな。いつからそんな、自分を安売りするようになった?」

シルヴァーナ(苦々しく)
「う……。あなたには、関わりのないことでしょう……」

ピノ・ノワール
「(ため息)……シルヴァーナ。こっちへ来るんだ」

シルヴァーナ
「え? は、はい」

[Se:足音]

ピノ・ノワール
「お前は何もわかっていない。大方(おおかた)、新しく台頭(たいとう)してきた品種たちに追い越されるのを恐れて、手当たり次第に仕事を請け負っているのだろうが、──そのやり方は間違っている。……座りなさい」

シルヴァーナ
「……はい」

[Se椅子に座る]

[Se:ワインをグラスに注ぐ]

ピノ・ノワール
「……飲んでみろ」

シルヴァーナ
「……(ワインを飲む)……(ハッとして)これは……私の……」

ピノ・ノワール
「そうだ。フランケン地方でお前が作った白ワインだ。甘口が流行る中で、お前が守り続けた、品の良い、骨格のしっかりとした辛口だ。このワインがなんと呼ばれているか知っているか?」

シルヴァーナ
「いえ……」

ピノ・ノワール
「──ドイツの王リースリングをも凌ぐ、シルヴァーナの実力を味わえるのは、このフランケンのみ──私は、このワインを飲んだ時、これこそがシルヴァーナという品種の姿を体現していると実感した。──お前の本来の姿は、この中にあるんじゃないか?」

シルヴァーナ
「私の本来の姿……」

ピノ・ノワール
「流行に乗るのもいい。甘口を作るのもいい。リープフラウミルヒは素晴らしいワインだ。だが、粗悪品を出してまでばら撒くほど、お前は安い男なのか? ……原点回帰だ。一度、自分をよく、見つめ直せ」

シルヴァーナ
「原点回帰……」

[Se:ガタンと、椅子から立ち上がる]

シルヴァーナ
「ありがとうございます、ピノ・ノワール。忘れていたものを、思い出したような気がします。フランケン……確かにここに、私はいた」

ピノ・ノワール
「ふん。私に関わりがないとは、よくも言ってくれたものだ。伊達にワインの王を名乗っているわけじゃない。品種の不調や不作は、ワインを見ればすぐにわかる。迷える時には導いてやることも、王の務めだ」

シルヴァーナ
「……やはり、あなたは尊敬に値する」

ピノ・ノワール
「いかなる時も心に留めておけ。──『すべてはワインの中にある』」

シルヴァーナ(恭しく)
「ええ、しかと刻みました。改めて、ワインの王へ、敬意を」

***(暗転)

ミュラー(走ってきて)
「シルヴァーナ先輩! この間教えていただいた本も、とっても面白かったです!」

シルヴァーナ
「ふふ。それは良かった」

ミュラー
「へへ。なんだか最近の先輩は、調子が良さそうでホッとしました。あまりこん詰めても良くありませんよ? 息抜きも必要です。そう言っていたのは、先輩でしょ?」

シルヴァーナ
「ふっ。そうですね」

ミュラー
「と、いうわけで、少し僕に付き合ってください、シルヴァーナ先輩。畑に珍しい蝶々がいたんです。写真に収めようと思ったのですが、手元になくて……とっても綺麗だったので、先輩にも見てもらいたいんです。確かこっちに……あっほら、いたいた! あの蝶々です! なんという名前かご存知ですか? あとで図鑑で調べてみます。……」(編集にて、だんだんフェードアウト)

***

シルヴァーナ
「そうです。迷う必要はなかったのです。私は私のままでいい。伝統を守り、技術を磨き、そして次の世代の礎になれ。それこそが私の存在意義なのだろうと、そう考えるようにしている」

END
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...