エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

文字の大きさ
156 / 255

154 19番目の悪魔の相手。1

しおりを挟む
「あの、すみません、アナタを知っています」

 正直、面食らった。

《そうか》
「あの、でも私としては、アレに関してはどうとも思っていません。と言うかそれは、罪についてです。無知で教養不足ですが、アレは、私は罪だとは思いません」

《ありがとう》

 あまりの事に、俺は愛想笑いしか出なかった。

「そうなりますよね、分かります、すみません」
《いや》

「すみません、出しゃばりました、失礼しました」

 謙遜が如何に人を傷付けるか、分かっていた筈が。

『レンズ』

《悪い、謝ってくる》
『はい、待ってます』

 突然の事だったとしても、向こうは俺の為に話し掛けて来たのに。
 俺は想定していたのに、あまりに無愛想だった、反応が悪過ぎた。

《すまない》
「へ、何で、しょうか」

《悪かった、突然の事と言えど、想定していたのに。本当に、すまなかった》
「いえ、すみません、もう少しお知り合いになってからとは思ったんですが。それも何か、違うかと、思って。すみません、コレは私の自己満足なんです、本当にすみませんでした」

《いや、少なくとも俺の為にも、言ってくれただろうに。本当にすまなかった》
「いえ、本当に大丈夫ですから、本当にすみませんでした」

 最悪だ、もっとしっかり想定していれば、覚悟をしていれば。
 こんな謝罪合戦には、ならなかった筈が。

『そろそろ、もう良いかな』
「あ、私は大丈夫なんですが」
《すまない、アナタは、保護者か後見人だろうか》

『夫だよ』

 しまった、悪魔が相手だからと。

《違うんだ本当に、すまなかった、どれもコレも初めててで。他意は無いんだ、本当にすまなかった》
『悪魔を夫とする人に会ったのも、敢えて話し掛けられ許しを得たのも、初めてなんだね』

《あぁ》
「すみません、戸惑わせるつもりは」

《違うんだ、嬉しかった、本当にありがとう》

 最初から、こう言えていれば良かったものを。
 本当に。

『不慣れだったそうだよ、大丈夫』
「でも、本当にすみませんでした」
《違うんだ、アナタは本当に間違って無い。ありがとう、なのに本当に、すまなかった》

『今回は彼の失敗だよ、気にしないであげる事も優しさじゃないかな』
《是非そうしてくれ、頼む》

「じゃあ、お言葉に甘えます」
《ありがとう》
『じゃあ、失礼するよ』

《あぁ、ありがとう、本当に助かった》
『いえいえ』

 悪魔が居てくれて、本当に助かった。
 繊細な相手への対応の仕方が、まだまだ不慣れだ。

 もっと勉強して、もっと想定を具体的にしないと。
 いつか、本当に傷付ける事になる。

《はぁ、すまなかった》
『いえ、当惑していたのは分かりました。ですが何故ですか、善意でした、勇気を持っての発言でした』

《だよな、なのに面食らった、驚きが勝って初動をミスった》

 驚いた、慌てた。
 そして愛想笑いで流そうとした。

 本当に、最悪だ。

『勇気と繊細さは別の筈です、繊細だからと言って、必ず勇気が無いワケでは無い筈です』

 全く以って、その通り。

 なのに身構えた、相手が無神経だったり目立ちたがり屋だと、無意識に無自覚に構え。
 酷い対応をした。

《だよな、なのに、本当に間違えた》

 ココでの初めての、大きな失敗かも知れない。
 善意からの勇気有る発言に対して、あんな態度は、マジで失礼だ。

『向こうには居ませんでしたか』

《あぁ、出会わなかった。周りに居ても、多分、気付かなかっただろうな》

 目立ちたくて宣言するか、周囲との同調の為に発言するか、気を引きたくて言い寄って来るか。

 単なる善意で、俺の為に言って来た人間が居たとしても。
 俺には気付け無かった。

『無いならお友達になるべきでは』

《あぁ、だな》



 余計な事では無かったと信じたかったけれど、あの反応は。

『ヤキモチを妬いてしまうよ?』

 東洋のフツ女と西洋の美男。
 そりゃ夫婦には見えませんよね、しかもイケメンにしてみれば、さぞ有り得なかったんでしょう。

 やっぱり、余計な事をした。
 もう少し、前フリをするか何かを。

『私の兄が失礼しました』

 白い美幼女が、飛んで来た。
 何故。

 と言うか、兄って。

「あの、さっきの方の」
『妹です、レンズは不器用です、環境が良くありませんでした』

「あぁ」
『友人になりたいそうです、まだ反省しています、学びたいんだそうです』

「一体、私から何を」
『レンズが話します、良いですか』

 美幼女のお願いを断れる者が、向こうでもココでも居るんだろうか。

『断っても構わないよ。必ずしも、彼女で無ければいけないワケでは無いだろう?』
『はい、ですが折角です、出会いは時に運です』

 無表情が、逆に可愛い。

 何ですか、この生きるお人形さんは。
 許されるなら剝製にするかお人形にしたい位の、美幼女。

 凄い、自分にはそんな趣味は無かった筈なのに。
 コレクターになってしまいそう。

『どうしたい』

「私のお願いを、聞いてくれますでしょうか」

『内容によります』

 可愛くて美しくて、賢くてらっしゃる。

「もしドレスを選ぶ事が有れば、私も同行させて下さい」
『今で良いですか』

「はい、何かご入り用で?」
『いいえ、レンズの為です、それに着せ替えが楽しい事だと分かりますので構いません』

「ありがとうございます、では鑑賞している間に、お話をお伺いさせて頂きます」
『ありがとうございます、レンズ、早く来て下さい』

 走って来てる。
 やっぱり彼は悪人じゃない。

 と思う。
 多分。



《正直に言うと、無意識に無自覚に、警戒してた。もっと言うと目立ちたくて宣言するか、周囲との同調の為に発言するか、気を引きたくて言い寄って来るか。そんなんばっかだ、その警戒心が抜けきれて無かった、すまなかった》

 俺の方から、こうして詳しく話し合おうと誘えば良かったんだ。
 なのにだ、本当に、全く。

「想定してましたが、彼が夫では無いと思われた所で、完全に心が折れ掛かりました」
『折れてたけれどね』
《そこは本当にすまなかった、初めてなんだ、悪魔のマトモな連れ合いに出会ったのは》

「マトモでは無いかもですが」
《いやそれは無いだろ、バカは善意から善意を伝えない》

「何か狙いが有るかも知れない」
《それは》
『彼女の事は、フラウロスと最後まで競り合ったんだ、良い猜疑心だろう?』

「褒められてる気がしない」
『だろうね、君が良い事だと認めていないのだから』

「コレ、過度な猜疑心は悪では?」

《いや、多分、アナタの場合は過度じゃないだろ》
「ならアナタのも過度な警戒心では無いのでは」
『失敗した事が、殆ど無いんじゃないかな』

《正直、少ない方だと思ってるし、失敗の殆どは挽回するか誤魔化してきた》

「流石、天の才」
『それ、ネネさんも言ってました、流行りでしたか』

 勢い良く試着室から飛び出て来たと思ったら、クルクル回るのか。
 サービス精神を、一体何処で覚えたんだヒナは。

「何でも似合ってしまう。はい、一部で流行りましたが、知り合いにネネと言う方は居ません」
『ネットだね』
《あぁ、成程な》
『何でココにネットは有りませんか』

『有るよ、簡易で疑似的なモノだけれど、美術館は行った事は有るかな』

『無いです、有りますか』
『有るよ』
《有るのか》
「有るんだ」

『ふふふ、感想の言い合いや解説、裏話や妄想を書き込めるノートだよ。だから病院の様な場所にも置いてある、愚痴や改善策の相談、励ましの為にね』

「何で教えてくれませんでしたか」
『勿論、僕だけを頼って欲しいからだよ』

 凄いな、本気で言ってるぞ。

『悪魔は嫉妬深くて独占欲が強いです』
《ヒナは違うけどな》

『まだ愛が良く分からないからだと思います』
「成程」
《もう少し待ってくれ、良いな?》

『はい』

「レンズさん、コレを私へのお詫びと、彼女へのお礼に買ってあげて下さい」

 成程、賞罰感覚が良いからこそ、悪魔に気に入られたのかも知れないな。
 確かに、妥当に思える。

《おう、分かった》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった中学生、朝霧詠無。 彼の魂はそのまま天国へ……行くことはなく、異世界の住人に転生。 ゲームや漫画といった娯楽はないが、それでも男であれば心が躍るファンタジーな世界。 転生した世界の詳細を知った詠無改め、バドムス・ディアラも例に漏れず、心が躍った。 しかし……彼が生まれた家系は、代々ある貴族に仕える歴史を持つ。 男であれば執事、女であればメイド。 「いや……ふざけんな!!! やってられるか!!!!!」 如何にして異世界を楽しむか。 バドムスは執事という敷かれた将来へのレールを蹴り飛ばし、生きたいように生きると決めた。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処理中です...