エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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218 リコリスと養護施設。1

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『どうですか』

 ヒナ様はいつも無表情だけど。
 多分、今は心配はしてくれてるんだと思う。

「まぁ、普通」
『そうですか、では夏休みの計画について教えて貰えませんか、以前と今の予定についてです』

「前の」

『はい、無かったら今ので構いません』

 前。
 お母さんとお父さんと一緒に居た時と、今と。

「何でそんな事」
『合う合わないは誰にでも有ります、まだ無理なようでしたら帰ります』

「何で、そう簡単に、もう終わった事みたいに」

『良く覚えていませんが、以前の私は学校にも行けませんでした、ですので何故かと問われても分からない事が多いです』

 知ってた。
 私達とは違う子が居るって。

 けど、でも、なら最初から。

 違う。
 本当は、別に言う必要が無かった。

 最初から言わない事だって有る。
 有るから、だから、気を付けろって。

 なのに。

「ごめんなさい」
『いえ。私にはアナタの気持ちが分かりません、どうすれば良いのか教えて貰えたら善処するつもりです』

 分からないから、聞いてるだけ。
 それだけ。

 けど、凄く嫌だ。

 嫌だけど。
 ちゃんと言わないと、それが伝わったら、今度は本当に捨てられる。

「仕方無いって分かってるけど、捨てられたんだって、思ってる」

『では殴られ暴言を吐かれたいのでしょうか』
「何でそうなるの」

『そうなる可能性が高いので、施設行きの判断を下したのでは』

「でも、お父さんも、お母さんも」
『何事にも限度は有ります、無限と言える事は、悪魔や精霊の命位なものです』

「でも私は、癇癪だって起こして無いし」
『癇癪だけ、暴言や暴力が無ければ、子供は必ず親に愛されますか』

 そんな事は無いって、授業で習ったけど。

「けど、酷い事だって、傷付ける様な事だって言って無いのに」
『では行動はどうですか』

 面倒だから、関わらなかった。
 アンバーにも優しくなかった。

 けど、でも。

「でも、私だって頑張った!人種は、察しが悪いから、だから合わせなきゃ」
『他に選択肢は有りませんでしたか』

「有ったかもだけど!そうするのが、1番だと、思ったから」

『その選択が合わなかったのではないでしょうか、1度の事だけでしょうか』
「ちょっと位見逃してくれたって良いじゃん!大人なら、親なら、ちょっとは我慢してくれたって良いじゃん!!」

『ちょっと以上に我慢していたとは思いませんか』
「言ってくれなかった!何処を直せも何も言ってくれなかった!!」

『私も全て答えを教えて貰えませんが』
「アンタは頭が良いからでしょ!私は、バカだし、察しが悪いから。だから、少し位、もっと言ってくれたって良いじゃん」



 やっぱり。
 あの子、まだ納得して無いんだ。

 分かっている筈なのに、分かっていない。
 納得したくないから、当たり散らしてるだけ。

 あの子は、納得させようともしてくれているのに。
 歩み寄ろうとしてくれてるのに。

『合う合わないでは、説明が付きませんか』

「分かってる!分かってるけど!!」
《でも親なんだから、あんなに可愛がってくれてたのに、って。分かるよ、けどさ、限度が有るんだよ》
『ならアンタさ、可愛がってくれたんだからって、機嫌が悪いと無視する様な親に傷付かないワケ?』

《私はアンタみたいに分からず屋じゃなかったのに、ココに居るんだよ?なら私は何なの?》
『私は合わない種ってだけで、どうしても一緒に居るのが無理だって。諦めるしか無いのに、誰のせいでも無いのに、まだ親のせいにしてるアンタは何なのよ』

《だから離れるしか無いのに、何でアンタはその子に怒ってるのよ》
『だから離れられたって、まだ分かんないワケ?』

 泣いても手加減してくれるのは、相性が良い身内だから。
 親だからって、何でも我慢出来るワケじゃない。

 合う合わないが有る。
 生きてるから、生き物だから。

『私は大丈夫ですが』
《ごめんね、私達が嫌なんだ》
『私達をアンタと一緒にしないで。そうやって他責的だから、だからそうやって当たり散らす。そんな姿を見てられないから、だから。傷付ける前に、離れるしか無かったって、私達ですら』
《はい、分かって貰うには、先ずは冷静な話し合い。ココは一旦、離れましょうね、各自部屋に戻って下さい》

『はい』
《ごめんね、アナタは悪くないから、じゃあね》

 ココには、本当に色んな理由でココに来た子が居る。
 けど思い遣れない、思い至れないなら、私達は関わらない。

 同じ施設だからって、仲間なワケじゃない。
 関わる、関わらないを選ぶ権利は、私達にも有るのだから。



『私も退出すべきでしょうか』

《アナタがどうしたいか、よ、リコリスちゃん》

「ごめんなさい」

 私がどうすべきか、委ねた筈ですが。
 返事が有りません。

《リコリスちゃん、アナタがどうしたいか、教えて貰えるかしら》

「分かりません」

《そう、じゃあ2人に任せるわね》

 それから2人になりました。
 談話室は、とても静かです。

「ごめんなさい」
『いいえ、気にしていませんので問題は有りません』

 悲しみよりも、怒りが大きいです。

「何で、気にしないでいられるの」

『私が分かっているべき事を分かっていない為、幼いアナタが苛立ちを覚えた、どっちもどっちだと思いますが』

「ごめん、今日はもう帰って」

『分かりました』

 分かり合えませんでした。
 話し合いは頓挫し、疑問だけが残りました。



《ヒナと揉めたのは知ってるが、責める為に来たんじゃない。調子はどうだ》

 ヒナから、暫く面会が出来無かったとは聞いてるが。
 ガチで孤立してるなコレは。

「別に、どうせ私が悪いんだし」

《はぁ、ココも合わないなら他に行けば良いだろ》

「そんな事したら」
《合わないのは仕方無い、そう受け入れないで自分を追い詰めても、誰も喜ばない。合う形が他と違うなら、合う場所を探すか、合わせるか》

 ヒナが言ってた通り、悲しみより怒りなんだな。

「何で、私ばっかり」
《不公平だとは思うが、なら種属を変えるのか?悪霊種は相当合わないのが増えるぞ》

 生理的に人種とは相性が悪く、言い表し難い不快感、時には恐怖心を湧かせる事も有るらしい。

 それに妖精種も、本来は人種とは相性が悪い。
 悪戯をするのが、本来の妖精の存在意義。

 だからこそ無意味に苛立ったり、不愉快さが湧いたりもする。

 それを抑え込めるかどうかは、理性。
 しかも理性との勝負は、何も人種だけじゃない。

 向こうの道理が適応されるコッチは、ドワーフと妖精は仲が悪くなり易いし、妖精は人種に怯えがち。

 妙さんの蛍の妖精は、本当に相性を越えた情愛。
 それにジュリアとロミオも、人種と悪霊種。

「私も人種の子に生まれたかった」

 片方は人種らしいが。
 そうか。

《そうか、じゃあ話を聞いてみるか》

 酷かも知れないが。
 無駄な理想は、早々に壊しておいた方が良いだろう。



『私ね、お母さんもお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも人種だよ。けど、お父さんは分かんないんだ』
《それは何でだ?》

『あのね、お母さん、家族から縁を切られたから。私が居たら、赤ちゃんが居れば、家族の仲間にしてくれると思ったんだって』

《成程な》
『うん、けどね、誰の子か分からないからダメだって。産まれるまで会わないって、でも、私がAz-i-wû-アズ・イ・ウ・gûm-ki-グム・キ・mukh-ťiムク・ティだから。怖いから、ダメなんだって』

《君の種属は》
『あ、精霊種のセドナ属だよ、セイウチ犬って言われてる』

《そうか、イヌイットの系譜か》
『うん、お兄さん凄いね、南では珍しいから知ってる人って少ないんだ』

 私はクジラの頭に犬の脚、セイウチの尻尾。
 後は全身、黒い鱗。

 でも、人種の特徴も有る。
 手や胴体は人種だから、獣人。

 頭が人種だったら亜人で、もしかしたら、そう生まれてたら違ったかもだけど。
 人種だから、セドナ属が怖いのは変わらないから、大きくなるまで変える必要は無いって言ってた。

《お母さんはどうした》

『私を、ちゃんと育てなかったから、強制労働所。家族になれなかったからって、私を置いて、走って逃げようとしたんだって』

《お母さん、学園には行ってたのか?》
『ううん、合わないって言ってサボって、何回も転校したけどダメだったんだって。それで、何処かに行っちゃって、一族決別証とか言うの作ったんだって』

《あぁ、アレな。良く知ってるな》
『うん、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが教えてくれた、私のお母さんの事も全部』

《そうか、まだ会ってるのか?》
『ううん、怯えてるって分かったから、偶にお手紙だけ。心臓がね、ドキドキしたり、凄く大変そうだから止めたんだ』

《そうか、優しいな》

『ううん、怯えてるって、直ぐ分からなかったから。もっと早くに、来ないで良いよって、言えたら良かったんだけど』
《大丈夫、人種は意外と強いし、分かってて会いに来てくれたんだ。大丈夫、悪いのは母親、次に運だ》

 運が悪かっただけって、皆言ってくれる。
 それに、このお兄さんも。

 匂いで直ぐ分かった。
 人種と人が違うって、良く分かった。

『うん』
《ありがとう、話してくれて》

『大丈夫、私はココが長いから何でも知ってるよ、何でも相談してね』

「うん、ありがとう」

 私、最初は人種に産まれてたらって、思ったけど。
 今はもう大丈夫、猟犬属の子と仲良しだから変えないんだ。
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