エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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225 シイラの真実。3

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 どうやら向こうの世界に戻らない選択をした場合、向こうの体は行方不明か死亡となるらしい。

 そして失踪後、死亡したと見做されるまでには、約7年掛る。
 私が苦しんだ期間は、それ以上だけれど、彼女達が関わったのは約8年。

 だから、妥当だと思う。
 7年間苦しんで、7年間、悩み続ければ良いと思う。

「はい、私もそう思います」

「ネネさん、あの、私は無理に納得して頂かなくても」
「私は虐められた事が無いので、そこまで共感が出来無いかも知れませんが、それでも」
《いや、アレは半ば虐めだろ、マフラー事件でハブかれてたろうが》

「アレは、それこそ仕方が無かったんですよ。気まず過ぎて、誰も、どうしようも無かった」
《親兄弟に相談すれば終わるだろうが》

「プライドだとか、それこそ恥ずかしいとかで、言えなかったんだと思います。だから関われなかったし、思い出すのもそれなりに嫌だったろうし、だから良い方法が浮かばなかったんだと思います」

《俺なら、少しは関わるけどな》
「少しなら有りましたよ、最低限、休んだら席が近くの子がプリントをくれたり話し掛けてくれた。けど、アレは義務感から、持ち回りで担当してたんだろうなと思ってます」

《それは流石に穿ち過ぎだろ》
「けど良いんです、同級生としての義務は果たしてくれた、だからそれ以上は恨まない」

《まぁ》
「ですが、人としては最低なので、同級生としての最低限の義務以外果たすつもりは有りませんし。コレに冷たいだとか、文句を言う方とは、それ以上会話する気は有りません」

《ま、賢明だな》
「流石、ご賢明であらせられる」
「ちょっ、皇帝褒める定型文」

「あ、分かりますか、好きだったんですよ中華ドラマ」
「あー、分かります、衣装が煌びやかで小道具も最高」

《シイラ》
「あ、すみません、脱線しましたね。何か、本当に、つい嬉しくて」

《普通に話せる、遠慮しないで良い状態が、か》
「はい、言語化助かります」

《おう》
「良いんですよ、心配なら少しずつ慣らせば良いんです、それにシイラさんなら直ぐに慣れますよ。レンズと言う強力なお兄ちゃんに、悪魔、ヒナちゃんも私も居るから大丈夫です」

 ずっと、言い切れる強さが羨ましかった。
 あの失敗が無かったら、違う親から生まれていたら、少しは違ったのかも知れない。

 ずっと、そう考えていた。
 けれど同時に、申し訳無かった。

 苦しめてしまったから、苦しむしか無い。
 いつか、万が一にも幸せになったら、幸せになるなと言われるかも知れない。

 それがとても怖かった。
 凄く、生きる事が怖かった。

《怖かったよな、何処に地雷が有るか分からない》
「失敗が有ったとしても、です。いつか、お互い様だったんだな、それで済ますべきだった事です。絶対に、8年も粘着する様な事じゃ有りません、しかも相手の勘違いだったんですから」

 本当に、知らなかった。
 不倫の事も、ご両親から引き取りを拒否をされた事も。

 でも、本当に辛そうだったから、精一杯の言葉のつもりだった。
 けど、つもり、にしかならなかった。

 だから、出来るだけ関わる事を止めた。
 不用意な発言で傷付けてしまったから、もう、何も言わない様にしようと。

 けど言いたくて、言って、また後悔して。
 どんどん自分を否定した。

 やっぱり、関わっちゃいけないんだ、と。

「ありがとうございます、ゆっくり、噛み砕きたいと思います」
《おう》
「ですね」

 まだ少ししか、虐められていた実感が無い。

 ただ、虐められていた事には、納得はしているけれど。
 暫く私には時間が掛かる。

 それがどれ位かは分からないけれど。
 多分、7年は掛からないと思う。

 多分。



『嬉しい涙の匂いです』
「凄い、種類まで分かるんですね」

『はい、成分が違います』
「あぁ、成程」

『でもまだ安定していません』
「ですね、コレは消化にかなり掛かりますから」

『消化剤と言うモノが有ります、何が消化剤になりますか』

「んー、関わり、ですかね。ちょっとずつ足場を確認して、少しずつ体重を掛けるので、もしかしたら量より質かも知れません」

 不安定な足場は怖いです。
 崩れるかも知れない、そう思いながら体重を掛けるのも怖いです。

 分かります。
 何処まで言って良いのか私も悩みます。

『心にも効く万能薬が有ればと思います』

「それはちょっと怖いかもですね、どちらかと言うと、違法薬物の気配がするので」

『違法薬物は万能薬になりますか』
「一時的に絶大な影響が有るかと、但し代償が大きいので、だからこそ違法なんですけどね」

『見合いませんか』

「死が迫っていないなら、大き過ぎる代償かと。それだけ影響が有る、副作用も強い、そんな感じだそうですから」

『私でも作れませんか』
「万人用は特に難しいかと」

『何故、難しいと思われるのでしょうか』
「体の反応は、ある程度、一定の法則を持ってますけど。1つの言葉でも、其々に受け取り方は違う。それと同様に、心に作用する薬は、そこを万人向けは流石に難しいかと」

『誤解の無い言葉選びは難しいです』
「ですよね、本当、本当にそう思います」

『でもレンズも私も大丈夫です、誤解はしません』

「ありがとうございます、私もですよ。良い知恵は出せないかも知れませんが、少しは共感が出来る、と思います」
『はい、ありがとうございます』

「いえいえ、コチラこそ、ありがとうございます」
『ネネさんもお礼返しをします、何でですか』

「ヒナちゃんに関われている、そのお礼だと思います、ご褒美的な存在ですから」

『私はご褒美ですか』
「はい、ご褒美です」

 シイラはあまり断言しません。
 でも断言しました。

 私は、今は、ご褒美の様な存在です。



《今日はもう、完全に合格点だろ》

 今日は生姜焼き弁当。
 ヒナはネネと、で俺はシイラと。

 不揃いに切られた豚肉に、妙さん手作りの紅ショウガと生姜焼きをドンと乗せた、豪快な弁当。
 マヨネーズも入れるか考えたんだが、ココだと大抵は自家製。

 となると入れるのは母親料理だ、と言う事で。
 入れなかったんだが。

「はい、親父料理、合格です」

 1つ問題は片付いたが。
 まだ、残ってると言えば残ってるんだよな。

 家族の事、特に父親の事がな。
 けど、でもだ。

《失踪って、最高の復讐だよな》

「ですよね、お父さんもお母さんも、お姉ちゃんも。全員、困れば良いんですよ、困って怯えて暮らせば良い」

 意外だな、姉も父親も大して恨んで無いらしい。

《そこまで恨んで無いんだな》
「まぁ、私の性根を褒めて貰いましたけど、半々ですから」

《頭でっかち》
「器用貧乏」

《ブス》
「ハゲ」

《ハゲは本当にダメだ》
「ブスもかと」

《ふふふ》
「本当に、お兄ちゃんですね、急に意味不明な事をしたり言う」

《あぁ、そう良い面もネットから吸収してたんだな》

「兄らしく、本当に良い様に受け取りますね。コレは単にそうなのかな、で、情報の副産物なだけですから」
《合ってる合ってる、急にちょっかい出したくなるんだよ》

「で、偶にマジギレされる」
《だな、けど弟にだけだからな、流石に義理の妹には無理だ》

「そこは弁えるのに」
《お前は危うく俺の家に産まれ掛けた妹だからな》

 しかも、また血の違う繋がりの、俺が見捨てた。
 いや、アレが粗末に扱った命。

 俺が本当だと信じられる位、しっかり断酒して欲しかった。
 もし、それなら。

「それは、受け取り方が難しいんですが」
《俺や弟、妹に似て賢い》

「母も、見ましたか」
《あぁ、少しだけな。真逆過ぎるだろ》

「不思議ですよね、アレからコレが産まれるなんて」
《だから、血じゃない。ただまぁ、父親って言う余白が有ったのは事実だけどな》

「まぁ」
《いや父親と関わった時間、俺と大差無いだろ》

「有りますよ、記憶には無いですけど、写真には残ってますから」
《んなの関わりとは言わないだろ、記憶に無いは無い》

「酔っ払いの言い草」
《あ、酒は飲めるか》

「酔うと泣くので無理ですね」
《あぁ、けど終わったんだ、少しはマシになるだろ》

「まぁ、そうかもですけど」
《まさか、ココでも飲んで無いのか》

「はい、あのフワフワした感じが、何か。何をしでかすか分からない感じで、凄く怖いんですよね」
《あー、じゃあ禁酒だな、一生飲むな》

「飲みませんよ、どうせ味匂いも好きじゃないですし」
《子供舌》

「老人舌、聞きましたよ、苦くて酸っぱい食べ物が好きだって」
《おう、ま、若いのには分からないよな》

「向こうでは、捨てられたり毒を盛られても分からない様にと、敢えて脳や舌が退化した影響だ。との研究結果が有るそうで」

《マジか》
「嘘です」

《お前》
「あー、美味しいなー、凄く美味しー」

 ガキか。
 いや、ヒナで言う赤ちゃん返りか。

 やっと、安全地帯を安全だと認識した。

 まぁ、サレオスが居るんだし、ヒナも居るんだ。
 ゆっくり、掴まり立ちでもすれば良いだろ。

 俺だってココじゃ、まだまだガキの部類だしな。

《なー、人生赤ん坊》
「お前もな」

 本当に、実の妹みたいな憎たらしさだな。
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