エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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229 虐め。1

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《私も虐められてたんですよ~》

 目の当たりにすると、やっぱり、苦手。
 けれど、多分、姉も姉で生きる為にやっていた事。

 きっと何処かに、見習うべき点が有る筈。

「どうやら、私も、でして」
《あぁ~、気付かない子って、本当に居るらしいですからね~》

 鼻で笑う様な嘲笑。
 大丈夫ですかね、香水屋さん。

『普通なら、周りを良く見れば、異変に気付けた筈だ』
《そうそう、なのに気付かないって、だからイジメられてたんじゃないですかね?》

「確かに、鈍感さが苛立ちを覚えさせたのかも知れませんが、だからって8年も粘着しますかね」
《ほら~、そうやって恨みがましい所とか、自分の不幸の演出の為に何でも悪く取るのって良くないですよ?》

 私は言われ慣れていると言うか、良く目にした文言なんで平気なんですが。
 香水屋さん。

『合わないから避けられてただけで、暴力も暴言も無い』
《やっぱり、単にイジメって思い込んでただけ、じゃないですかね~》

『それ、虐めって誰が決めるのかな、誰が虐めじゃないって決めるんだろうか』

《そりゃ偉い人ですよ~、で、誰から見てもイジメだってなったらイジメだと思いますけど。多いんですよね、ただ注意されただけなのに、イジメだ~って大袈裟に騒ぐ人》

 性格が悪くても、それこそ愚か者でも、数を打てば正解に1つは当たる。
 ってレンズさんが言ってましたけど、つまりコレ、なんですかね。

『けれど、本人が嫌だと思えば、それこそセクハラになるんだよね?』
《ですけど~、何でも限度って有ると思うんですよ~。体調を心配されただけで、セクハラだーって、明らかにモテないブスが騒いでましたけど。注目されたいだとか、同情されたいからって、良く起きるんですよねぇ~》

 私は、今回もお試しに、と顔を変えている。
 気弱そうで、幼く、整っていない地味な顔に。

 この顔のお陰か、凄い顎を上げてニコニコしてらっしゃる。
 他人の顔で、ココまで自尊心が満たされて満足出来るって、逆に凄い。

「みたいですね」

《あぁ~、やっぱり社会人未経験なんですね~。少しは社会に出たら、その歪んだ考えも少しは、変わるんじゃないですかね?》
「ですよね」

 聞き慣れたと言うか、見慣れた常套句。
 なら、社会に出てもモラハラや食い尽くしが治らないのは何なのか、と思うんですが。

 そうなると論を覆して、今度は育ちだと書くか、切り捨てろと投げ出すか。

 共通する似た様な事でも、コロコロと根拠も論拠も変える。
 育ちだ、自己責任だ、周りが悪い。

 やっぱり、正論と綺麗事の区別って難しいですよね。

《も~、そうやって直ぐに話を切るからダメなんだと思いますけど。ちゃんと、マトモに生きようって、少しは努力してます?》
「はい、私なりに、ですが」

《私なりに、ねぇ~。自分に甘くしても、良い事って無いよ?》



 論拠も何もかもがグチャグチャでも、パッと見て正しい様に思える事は言えるし、書ける。
 けれど物事の本質、根本の問題となると、二転三転するんだよな。

《凄いな、コイツが自分に甘いって見抜けたワケだけど、何処でそう思ったんだ?》
『そうだね、教えてくれないかな、女性との関わりが薄かったから』

《いや、そうかな~って》
《そう感じたんだろ、何処でだ?》
『ね、僕は全然分からなかったから、教えてくれると助かるな』

《あ~、えっと~、例えば~。あ、ほら、お化粧とかも全然》
「すみません、肌が弱くて出来無くて、幾ら試してもダメだったんです」

 あぁ、向こうでそうだったのか。
 男は化粧しなくても何も言われないが、女はしないと言われるんだ。

 肌が弱いのは辛いよな。

《いや、でも、じゃあ魔法で》
「すみません、私が出来る事って、少ないので」

《ほら、こうゆうとこだよ。ちゃんとした女の子なら、出来る事を》
「すみません、自由になるお金も無くて、化粧水ですらバレたら気が済むまで怒鳴られてたので」

《だから、そう言う事だけじゃ》
「編み物なんてやる暇が有るなら働け、家事をしろ、勉強しろ。少しでも門限を破ると、食事は抜き、洋服は姉が置いていった僅かなお古しか許されていませんでした」

《そうやって後出しで》
「ごめんなさい」

《だから、そうやって被害者ぶるからイジメられるんじゃん。少しは学習しなよ、言い訳ばっかりしてないで、ココで出来る事を増やせば良いじゃん》

 一部は正論だが、その殆どが綺麗事なんだよな。
 何をしても怒られるのに、行動しろ、関われって無茶が過ぎるだろ。

 なら、虐待児は全員、明るく朗らかなのしか居ないだろうが。

『そう、君はそうやって、頑張ってきたんだね』
《そうなんです、私だって嫌な事は有ったけど》
《そうか、例えばどんな虐めだったんだ?》

《もう、本当にいっぱい有って、大概の事はされてきたんですけど~。そうですねぇ~良く有ったのが、やっぱり、物を隠された事ですね》

 された事を思い出すと言うより、虐めの定番を探してる感じだが。
 石は熱を発さなかったんだよな。

『そう、大変だったね、品物は戻って来たのかな』
《大体はゴミ箱だったんですけど~、靴箱に筆箱が有ったり~、それこそ高い所に置かれたりですね~》
《あぁ、有るよな、好きな子に嫌がらせ》

《それだけだったら、まだ、良いんですけどね~。連絡先をあっちこっちに書かれたり、仲良くなったフリしてプリクラとか写真をバラ撒かれたり、呼び出されたりで。もう、私の場合は、本当に大変だったんですよ~》

 自分とシイラは違うって、良く言えるな。

『あぁ、因みに言うとこの子、親にも有る事無い事言い触らされて疎外されてたらしいんだけど。君だったら、どうしてたんだろうか』

《それでも仲良くしたいって子は来てくれるワケだし~、合う子と一緒に居れば良いだけ、じゃないですかね~》
『仲良くすると仲間はずれになるとしても、なんだね』

《それは、その場合は~。もう開き直って、卒業するまで》
『8年間、それが続いたのは、彼女の責任なんだよね』

《別に、そこまでは言いませんけど~、謝ったり》
「改めて謝罪もしましたし、手紙も書きました、長文も短文も。けど目の前で破かれて、コレだけ私は傷付いたんだ、だから絶対に許さない。そう言われ、小学校を卒業した後、中学校は別のクラスでしたが。他の子に話し掛けようとすると、無理、と言って逃げられていました」
《けど、何とか出来るんだよな》

《まぁ、暴力とか、それこそ暴言も無いなら。それこそ卒業まで気にせず》
『あぁ、大学への進学資金も母親に使い込まれていて、家にお金も無かったそうだよ』

「はい」

《それは、大変だったとは思うけど、そこまではお金を出してくれてたんだし》

『そうだね、それで君なら、どう逃げるんだろうか』



 以前の記憶は消され、改めて話し合う事になったワケだけれど。
 本当に、僕のお客さんだったとはね。

《それはもう、家から逃げ出すとか、それこそ施設とか》
《施設までは金が必要な距離、家に金は無い。外面が良い母親と無能な警察のせいで通報も叶わない、録音機器も無い、証拠も痣も無く児相は見逃した。けど、君なら出来る、逃げ出せる》

『どう、逃げ出せるのかな?』

《最悪は、体を》
「すみません、通信機器も持たせて貰えなかったんです」

《何、さっきから後出しして》
「すみません、大変な苦労をされてきたと聞いたので、既に予測が出来ていたかと」

《いや、別にそこまで》
「虐められてたんですよね、凄く酷い虐め」

《けど、それとコレとは》
「あ、ですよね。家の事情とか違いますもんね」

《確かに、ウチは両親揃ってたし、通信機器だって持ってたけど》
「すみません、余談なんですけど、お小遣いって本当に毎月貰えて。しかも、後から徴収されないんですか?」

《そうやって被害者ぶろうとするから》
「すみません、本当にウチが変だったのか、知りたくて」

《だからって》
『そうだね、それで、体をどうするのかな?』

《私じゃないですけど、例えばで、それこそ体を売るとか》
『通信手段が無くても向こうは出来るんだね』

《いや、それは、少し難しいとは思いますけど。それこそ変なチラシとか》
「すみません、母は働いていないので四六時中家に居たのと、買い物は全てレシート提出だったので公衆電話も無理でした」

《けどお金持って逃げて、そこで何件も電話して、雇って貰えば良いじゃん》
『体を売れる場所、そんなに多かったんだね』

《いや、良く知りませんけど。私なら、最悪は、そうした手も有るかなと思って》
『そう、じゃあ他には?』

 道徳貯金を貯めたがる者の殆どは、自身が体験した事しか基準にしない。
 そして最後の最後、表面をなぞった快感の対価を支払わない。

《いや、私、家には多少恵まれてたから。良く、分からないけど》
『良いんだよ、大変だったね、けど無理はしなくて良いからね。本当は秘策が有るんだよね』
《コレの事は気にしないでハッキリ言って良いからな、遠慮は無しだ》

「はい、どうぞ」

《いや、体を売るしか、今は出ないけど。その環境で、長く居たんだし、他に》
「すみません、思い浮かばなかったです」

《父親とか、それこそ親戚とか》
「父親とは関わった記憶は殆ど無いのに嫌われていて、連絡も拒否する宣言をされました、親戚が居るかどうかすら分かりませんでした」

 彼女から辛さを感じないけれど。
 寧ろ、僕の心が酷く痛い。

 戦争も無い平和な国なのに。
 彼女には逃げ場が無かった。

《まぁ、事情が事情だし、手段は限られるよな》
《ですよねぇ~》

『けれど、彼女はもっと、努力すべきだよね』
《ですねぇ~、与えられる事が無いなら、それこそ》
『有るよ、居るだけで、存在するだけで彼女は十分に価値が有るのだから』
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